五時間目と六時間目の間の——休み時間。
今日も——放課後に、結城くんに呼ばれている。
生物準備室。二人きり。いつもの——あの部屋。
(……また、なのかしら)
胸の奥が——きゅっと、縮む。
不安——だと思う。たぶん、不安。
だって——先生と生徒なのに。こんなこと、続けていたら——。
でも——断れなかった。一度も。
結城くんが「放課後、来て」と言うと——わたしの口は「うん」と答えてしまう。
「だめ」と言わなきゃいけないのに。「やめましょう」と——ちゃんと——。
結城くんの手が——浮かんだ。
大きな手。指が長くて——わたしの手首を掴むと、片手で余る。
あの手で髪を掴まれると——頭が後ろに引かれて——喉が晒されて——。
(——っ)
首筋が——ぞくっと、粟立った。
あの手が——わたしのスーツのボタンを外す時の——焦らすような、ゆっくりした動き。
ブラウスの中に入ってくる指の——熱さ。
耳元で「先生」と囁かれると——膝から力が抜けて——。
叩かれた時の——あの、ぱんっ——という音——。
(……何を考えているの——わたしは——‼)
頬が——熱い。廊下で。授業の合間に。
こんなことを想像している自分が——いる。
(……不安だから。不安だからドキドキしてるだけ——)
太腿を——きゅっと、閉じた。
スカートの下で——もう、じんわりと——。
(——違う。これは——汗——暑いだけ——)
気付かぬうちに早くなる鼓動と廊下を叩く足音。
廊下の角を曲がったところで——声が聞こえた。
「——だから! 昨日のアレは何だったのかって聞いてるの——‼」
古手川さんの声。いつもの鋭さに——怒気が混じっている。
「アレって言われても、マッサージだろ? モモの肩が凝ってたから」
結城くんの声。涼しい。まるで——天気の話でもしているみたいに。
「マッサージ——‼ あんな顔をするマッサージがどこに——‼」
古手川さんの声が裏返った。
廊下に——反響している。何人かの生徒が足を止めて、こちらを見ている。
まずい——このままだと、人だかりになってしまう。
わたしは——小走りで二人の元に駆けた。
「あ、あの——二人とも——?」
古手川さんが——振り返った。
ツリ目に涙が——薄く滲んでいる。怒りの涙。
結城くんが——わたしを見た。
いつもの表情。穏やかで——何も悪いことなどしていないという顔。
「ティアーユ先生——」
古手川さんの声が——少しだけ、弱くなった。
「こんなところで言い合いをしたら——目立っちゃうわ。ね? 二人とも、少し場所を変えましょう?」
わたしは——二人の間に入って、両手を広げた。
精一杯——落ち着いた声を作る。
先生らしく——しなきゃ。
*
保健室の隣にある——小さな相談室。
御門が出張の日で——使われていない部屋が二つある。
結城くんを奥の部屋に待たせて——手前の部屋に古手川さんを通した。
「はい——お茶。落ち着いて」
紙コップにお茶を注いで——古手川さんの前に置いた。
古手川さんは——椅子に座ったまま、膝の上で拳を握っている。
黒髪が——顔の横で揺れている。俯いて——表情が見えない。
「……古手川さん」
「…………」
「何があったの? さっき——結城くんと何かあったの?」
古手川さんが——顔を上げた。
ツリ目が——わたしを見ている。何かを言おうとして——唇が動いて——でも、音にならない。
「……昨日」
ぽつりと。
「昨日——放課後に——結城くんと——モモさんが——」
言葉が——途切れた。
古手川さんの頬が——じわりと赤くなっていく。
何があったのか——具体的に言えないのだとわかった。
「……大丈夫よ、ゆっくりでいいから」
わたしは——古手川さんの手に、自分の手を重ねた。
温かい——小さな手。震えている。
(……かわいそうに)
よほどのことがあったのだろう。
結城くんとモモさんが——何か、古手川さんの前で不適切なことをしたのかしら。
……でも——結城くんが、そんなひどいことをするかしら。
あの子は確かにちょっとスキンシップが多いけれど——根は優しい子だと思うのよね。
古手川さんが厳しすぎるのかもしれない。
風紀委員だから——些細なことでも大げさに捉えてしまうのかも。
いけない——先生なのに、どちらかの肩を持っちゃだめ。
公平に——両方の話を聞かなきゃ。
「……あの二人が——」
古手川さんが——また口を開いた。
「あの二人が——教室で——」
声が——掠れて、止まる。
唇を噛んで——視線を落とした。
(……言えないのね)
それほど——恥ずかしいことだったのかしら。
でも——曖昧なままでは話が進まない。
わたしは——古手川さんの手を優しく握り直した。
「うん——うん。大丈夫よ。無理しなくていいから」
声を柔らかくして——待つ。
先生として——生徒の言葉を、辛抱強く待つのが仕事。
……でも。
(……あと三十分で——六時間目が終わる)
ちらり——と、壁の時計を見た。
放課後の——結城くんとの約束。あの、そわそわが——また、お腹の奥に戻ってくる。
あの手。あの声。あの——ぱんっ——という——。
(——だめ。今は——古手川さんの話を——)
「…………」
古手川さんが——黙っている。
もう五分は経っている。
(……困ったわ)
寄り添いたい気持ちは——本当。
でも——このままだと、放課後の時間に間に合わなくなる。
結城くんを——あまり待たせるのもよくない。
隣の部屋で一人で待っているのは——退屈でしょうし。
(……先に結城くんの方を聞いた方が——早いかもしれない)
結城くんなら——はっきり答えてくれるはず。
何があったのか——率直に教えてくれる子だから。
「——古手川さん」
わたしは——古手川さんの肩に、そっと手を置いた。
「無理に今すぐ話さなくていいからね。少し一人で——落ち着いて」
古手川さんが——顔を上げた。
ツリ目が——わたしを見ている。何かを訴えるような——縋るような目。
「先に——結城くんの方から話を聞いてくるわね。そうしたら、また戻ってくるから」
「…………ティアーユ先生」
「ん?」
古手川さんの唇が——動いた。
何かを言いかけて——。
「……いえ——何でもありません」
視線を——落とした。
握りしめた拳が——白くなっている。
わたしは——古手川さんの頭を、一度だけ撫でた。
柔らかい黒髪が——指の間を滑る。
「すぐ戻るから——ね」
立ち上がって——相談室を出た。
廊下を——数歩。隣の部屋の前で足を止めた。
(……結城くん——何があったのかしら)
ドアノブに——手をかけた。
*
部屋に入った。
結城くんが——窓際の机に腰かけていた。
午後の日差しが——横顔を照らしている。あの涼やかな目。
「結城くん——お待たせして——あの、古手川さんの話を——」
言いかけた——その瞬間。
結城くんが——立ち上がった。
わたしの横を通り過ぎて——ドアの方へ。
かちゃっ。
鍵を——閉めた音。
結城君の体で見れないけど、明らかに閉めた音。
(……あ——)
心臓が——跳ねた。聞き慣れた音。
この音がすると——いつも——。
でも——鍵がかかったということは——誰も入ってこない。
古手川さんも——入ってこない。
少しだけ——安心した。
バレない。ここは——二人だけの——。
(……安心——してる——わたし——?)
結城くんの手が——手首を掴んだ。
振り返る間もなく——椅子に座らされた。
目の前に——結城くんの顔。あの目。
何も言わない。言わないまま——ポケットから黒い布を出した。
見覚えがある。前にも——使われた。
抵抗しなかった。
黒い布が——目の上に巻かれる。視界が——消えた。
暗闇。
ヘッドホンが——耳に被せられた。
外の音が——遠くなる。消えていく。遠い海の底に沈んでいくみたいに——。
世界から——切り離された。
目が見えない。耳が聞こえない。残されたのは——触覚と、嗅覚と——。
結城くんの手の匂い。
大丈夫——鍵はかかっている。誰も来ない。誰にも——バレない。
「——っ」
指が——スーツのジャケットのボタンに触れた。
一つ——外される。二つ——外される。
焦らすように——ゆっくり——ゆっくりと。
朝——想像した通りの——あの手つきで。
(……やっぱり——こうなる——)
ジャケットが——肩から滑り落ちた。
ブラウスの上から——結城くんの手が、胸に触れた。
くにっ——♡
Iカップの膨らみが——大きな手に包まれる。
ブラウスの薄い生地越しに——指の腹が、乳房の丸みに沿って動く。
「ん——っ」
声を——噛み殺した。
大丈夫。鍵がかかってる。でも——声は——壁越しに——。
結城くんの声が——ヘッドホン越しに、微かに聞こえる。
途切れ途切れで——何を言っているのか——はっきりとは——。
「——すげ——……こ——胸——」
(……胸——? 胸が——すごい——?)
褒めてくれている——のかしら。
そう思ったら——恥ずかしいのに——嬉しくて——胸が——きゅっと——。
(……わたし——褒めてもらえて——嬉しい——なんて——だめ——)
ブラウスのボタンが——上から順に外されていく。
布地の間から——白い肌が晒される。ブラジャーの——ラベンダー色のレースが——。
結城くんの指が——ブラジャーのカップを捲り上げた。
Iカップの乳房が——ぼろんっ——と、零れ出る。
くにゅっ♡——。
素肌を——直接掴まれた。
「ぁ——っ♡」
乳首が——硬くなっている。朝の廊下で——もう、硬くなっていた。
指先が——その突起を見つけて——こりこりっ♡——と転がす。
「やっ——声——出ちゃ——壁——薄かったら——」
必死で——唇を噛む。
でも——耳が聞こえないから——自分の声の大きさがわからない。
小声のつもりで——実際には——もっと漏れているかもしれない。
でも——鍵はかかってる。大丈夫。大丈夫——。
結城くんの声が——また、途切れ途切れに響いた。
「——手川——見ろ——この——乳首——」
(——乳首——って——わたしの——? 結城くん——独り言——かしら——)
結城くんは——たまに、こうやってわたしの身体を実況する。
自分で自分に興奮しているみたいに——わたしの身体を言葉にする——変な癖。
でも——そうやって言葉にされると——自分の身体を意識してしまって——余計に——感じて——。
考える間もなく——身体を動かされた。
椅子から——立たされて——机に手をつかされる。
前屈みの姿勢。お尻が——後ろに突き出される。
スカートが——めくり上げられた。
ストッキングの上から——お尻の丸みを、両手で鷲掴みにされる。
ぐにっ♡——。
「っ——ぁ——♡」
ストッキングが——指で裂かれた。
びりっ——という振動が——太腿に伝わる。
ショーツが——横にずらされた。
空気が——直接、秘所に触れる。
(濡れてる——朝からずっと——こうなるって——わかってた——)
結城くんの指が——陰裂をなぞった。
ぬるっ——♡
「ぁ——っ♡♡」
愛液が——指に絡みつく。
わたしの身体は——もう、準備ができてしまっている。朝から——ずっと——。
結城くんの声が——また聞こえた。ヘッドホン越しの——途切れた声。
「——見て——先生——もう——こんな——なって——」
(……見て——わたしの——おまた——見て——って言ってるの——?)
恥ずかしい——でも——結城くんがわたしの身体を見たいと思ってくれている——それが——。
嫌なはずなのに——嬉しい——って思ってしまう——もう——おかしい——。
先端が——触れた。
硬い。——硬い。
怒張した陰茎が——入口にぴたりと押し当てられている。
カリ首の段差が——ひくついた粘膜に食い込むように——じわりと——圧を——。
先走り液が——ぬるっ——と——陰裂を伝って垂れる。
「だめ——結城くん——声——出ちゃう——隣に——聞こえ——」
ずぶっ——♡
入った。
一気に——奥まで。
太い。硬い。——熱い。
陰茎の幹が——膣壁を左右に押し広げて——カリの段差が粘膜のひだを一つ一つ抉るように擦りながら——ずるずると——奥へ——奥へ——沈んでいく。
内臓が——押し上げられる。お腹の底から——脳天に向かって——圧が——突き上がってくる。
「ぁ——ぐっ——♡♡♡」
痛い——のに。
痛いのに——脳の奥が——ぱちぱちと——火花を散らしている。
苦しさと——気持ちよさが——同じ場所から——同時に——溢れて——どっちがどっちか——わから——。
「ぁ——あっ——い————きも——ち——♡♡——」
言葉が——壊れた。
痛いのか気持ちいいのか——自分の口が何を言っているのか——もう——。
歯を食いしばった。唇の内側に——血の味。
でも——声が——漏れた——絶対に漏れた——。
鍵——鍵はかかっ——てる——大丈夫——でも——声は——壁を——。
ぱんっ♡——。
お尻を——叩かれた。
「ひぁっ——♡♡」
あの音。朝——想像した——あの——ぱんっ——。
お尻の痛みと——膣の中の圧と——乳首の疼きが——三つ同時に——脳に流れ込んで——。
想像よりも——ずっと——ずっと——。
頭が——溶ける。
ぱんっ♡——ぱんっ♡——。
腰が——動き始めた。
引いて——突く。引いて——突く。カリの段差が——出口で引っかかって——ぐちゅっ♡——と膣口を押し開けて——また——ずぶっ♡——と奥まで——。
一往復ごとに——脳の回路が——一本ずつ——焼き切れていく。
ずちゅっ♡ ぬぷっ♡ ずちゅっ♡
水音が——静かな部屋に響いている——はずだ。
わたしには——聞こえない。ヘッドホンが——全部吸い込んでいる。
でも——隣の部屋の古手川さんには——この音が——?
(——聞こえてたら——どうしよう——‼)
でも——鍵——鍵——かかってる——。
恐怖と——快楽が——同時に——脊髄を駆け上がる。
怖い。バレたら終わる。先生が——生徒に——こんな——。
なのに——怖いのに——膣が——きゅうっ♡——って——締まる——恐怖で——感じてる——?
(——おかしい——わたし——おかしい——壊れて——)
「おねが——しず——かに——して——あぁっ♡——声——わた——し——もう——だめ——♡♡」
声を絞り出した。自分がどれくらいの声量で喋っているのか——わからない。
囁いているつもりなのに——実際には——もっと——。
結城くんの腰が——速くなった。
ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡——
お尻と腰がぶつかる音。肉と肉が打ち合う音。
陰茎が——抜けかけて——また突き込まれる——そのたびに——カリが——膣壁の一番敏感な場所を——抉って——。
「やっ——速——っ♡♡——む——り——頭——おかし——なっ♡♡——」
結城くんの声が——ヘッドホン越しに、断片的に届く。
「——手川——先生の——中——すごい——締まっ——」
(——中——すごい——締まってる——って——わたしの——こと——?)
褒められてる。また——褒められてる。
わたしの中が——気持ちいいって——言ってくれてるの——かしら——。
(——嬉しい——嬉しいって——思っちゃ——だめ——なのに——んっ♡♡)
ぬぷっ♡ずちゅっ♡ぬぷっ♡——
奥を——突かれるたびに——思考が飛ぶ。
結城くんが——わたしの身体を褒めてくれている。それだけで——膣が——きゅうっと——。
「——こんな——エロい身体——先生なのに——」
それだけは——聞こえた。
耳元に近づいて——ヘッドホンの上から——大きな声で言った——から。
「えっ——えろ——っ♡♡——そんなこと——言わな——ぁっ♡♡♡」
恥ずかしい。恥ずかしいのに——膣が——きゅうっと締まった。
恥ずかしい言葉で——感じてしまう。この身体が——もう——。
「——古——見ろ——先生——イきそう——」
(——見ろ——先生が——イきそう——って——そんな——実況——しないで——♡♡)
恥ずかしい。自分のイく顔を——結城くんが見ている。目隠しの下で——どんな顔をしているのか——自分ではわからない。
でも結城くんにだけは——全部——見えてる——。
ぱんっ♡♡♡——
一際深く——突き上げられた。
「ひぁっ——♡♡♡——やっ——奥——‼」
子宮口を——叩かれた。
頭の中が——真っ白になりかけた。
「おねが——結城くん——声——出ちゃう——隣の部屋——聞こえちゃったら——」
涙が——目隠しの布を濡らしている。
鍵はかかってる——誰も入ってこない——でも——声は——壁を超えて——。
必死で声を殺しているのに——身体が裏切る。
膣が——痙攣するように締まって——腰が——勝手に——後ろに押し返して——。
「——手川——わかった——?——先生——おれの——」
(——わかった——って——わたしが——結城くんのもの——って——こと——?)
うん——わかってる。わかってるから——もう——許して——。
ぐちゅっ♡♡ぐちゅっ♡♡ずぷっ♡♡——
ピストンが——さらに速くなる。
お腹の奥で——硬い陰茎が——膣壁を抉るように——角度を変えて——。
カリの段差が——あの場所を——擦った。
「——ッッ♡♡♡♡」
来る。来る。来る。
「だめ——イっちゃ——声——出ちゃ——古手川さんに——バレ——」
ぱんっ♡♡ぱんっ♡♡ぱんっ♡♡——‼
「ぁああっ——♡♡♡♡♡」
——イった。
全身が——びくんびくんっ♡——と痙攣する。
膣が——ぎゅうっ♡♡♡——と、結城くんの陰茎を絞り上げる。
脚が——震えて——机に手をついていなかったら——崩れ落ちていた。
頭が——真っ白。
ヘッドホンの中の静寂が——快楽の波に飲まれて——無になる。
余韻で——ひくひくと膣壁が脈打つ中——結城くんの陰茎が——まだ、中にいる。
硬いまま——脈打っている。
朦朧とした意識の中——結城くんの声が——最後に、一つだけ——聞こえた。
「——な——古手川——これが——先生の——本当の——顔——」
(——本当の——顔——? わたしの——本当の顔——これが——?)
そうかもしれない——これが——わたしの——本当の——。
結城くんにしか——見せられない——先生じゃない——ただの——女の——顔——。
結城くんだけが——知ってる。それで——いい——。
どくん——♡
中に——出された。
結城くんの陰茎が——膣の奥で脈打って——どくん♡——どくん♡——と、熱いものが——子宮に向かって注ぎ込まれる。
精液の——ぬるりとした重さが——お腹の底に——溜まっていく。
「ぁ——っ♡♡——あつ——い——」
全身が——ぞくぞくと——震えた。
背骨に沿って——冷たい痺れと熱い痺れが——交互に駆け上がる。
指先が——つま先が——じんじんと——感覚が戻ってこない。
結城くんが——ゆっくりと、抜いた。
ずるっ——♡♡
「ぁ——……っ!」
ずるり、と抜き去る時の擦れに、わたしの体はブルりと震えた。
カリの段差が——膣口を擦りながら出ていく。
抜けた瞬間——ぷっ——と、精液が溢れた。太腿の内側を——白い筋が——ゆっくりと——。
わたしは——机に突っ伏したまま——しばらく動けなかった。
結城くんがわたしを犯していた時間を見るに、5分は経ったと思う。
ヘッドホンと目隠しを——結城くんが外してくれた。
光が——眩しい。午後の日差しが——涙で滲んでいる。
結城くんは——いつもの涼やかな顔で——わたしの頭を一度だけ撫でた。
何も言わない。いつも——そう。
(……古手川さん——)
思い出した。隣の部屋で——待っている。
服を——直さなきゃ。
ブラウスのボタンを——震える指で留める。スカートを下ろす。
裂けたストッキングは——どうしようもない。スカートで隠すしかない。
太腿の内側が——べたべたで——歩くたびに——ぬるっと擦れる。
(……大丈夫——ばれない——鍵はかかってたから——声は——たぶん——大丈夫——)
「わ、わたし、古手川さんのところに……行くわね……」
廊下に向かう。
結城くんが閉めてくれた鍵を開けようとする。
(あれ——?——鍵が……)
鍵が空いている。
私が動けない間に結城くんが開けてくれたのだろう。
廊下に——出た。
数歩。隣の部屋のドアの前。
深呼吸を——一つ。先生の顔を——作る。
ドアを——開けた。
「古手川さん——ごめんなさい、遅くな——」
言葉が——途切れた。
古手川さんが——こちらを見ていた。
椅子に座ったまま——こちらを——見ている。
その目が——。
この世のものではない——何かを見た目だった。
ツリ目が——大きく見開かれて——瞳孔が開いている。
頬の赤みは——消えていた。血の気が引いて——蒼い。
唇が——薄く開いたまま、——微かに震えている。
恐怖でもない。怒りでもない。嫌悪でもない。
もっと——もっと深い場所にある——名前のつけられない何か。
目が——合った。
古手川さんの瞳が——わたしを捉えた瞬間——ぐらっ——と、揺れた。
わたしの顔を見て——わたしの首筋を見て——わたしのブラウスの乱れを見て——。
そして——立ち上がった。
「…………なんでも、ありません」
声が——平坦だった。
感情を——何もかも削り落としたような——空洞の声。
「失礼——します」
古手川さんは——わたしの横を通り過ぎた。
すれ違う瞬間——古手川さんの身体が——微かに、震えていた。
廊下に出て——角を曲がって——足音が——消えた。
走らなかった。歩いていった。規則正しい足音で。
その規則正しさが——逆に——怖かった。
「…………」
何が——あったのかしら。
わたしが結城くんの部屋にいる間に——何か、あった?
自分で解決したのかしら。それとも——やっぱり、言えなかった——?
(……かわいそうに——でも——)
でも——。
古手川さんが——帰った。
ということは——。
もう——隣の部屋に——誰もいない。
この階に——わたしと結城くんだけ。
(——やっと——二人きりに——なれた——)
心臓が——跳ねた。
罪悪感よりも先に——安堵が——胸に広がった。
古手川さんのことは——申し訳ないけれど——また明日、ちゃんと話を聞こう。
今は——。
太腿の内側が——ぬるっ——と、滑る。
精液が——まだ、中から溢れてきている。
(——早く——綺麗にしなきゃ——)
綺麗に——しなきゃ。
お口で——綺麗にしなきゃ。
結城くんは——中に出した後——ちゃんと舐めて綺麗にしないと——怒る。
前に一度——あまりに激しく犯されて動けないでいたら——お尻を五回叩かれた。
「先生がやらなきゃ誰がやるの?、先生が片付けなきゃだめでしょ」って——真顔で——言われた。
でも——逆らえなかった。
逆らえない。あの目で言われると——わたしの口は——はい——と言ってしまう。
(……上手にできなかったら——また——お仕置き——)
お仕置き。
お尻を叩かれる。——ぱんっ♡——って。
さっきの——あの——脳が焼ける——あの——。
(……上手にできたら——結城くん——褒めて——くれるかな——)
褒めてくれる。きっと。
「上手だな、先生」って——頭を撫でてくれる。
あの大きな手で——髪を——くしゃっ——て——。
それか——もっと——いいこと——。
上手に舐めたら——もう一回——してくれる——かもしれない。
今度は——正面から——抱き締めて——キスしながら——ゆっくり——。
(——っ♡♡)
太腿が——きゅっと、閉じた。
期待で——お腹の奥が——また——じんわりと——熱くなり始めている。
さっき——あれだけ——されたのに。
唾を——ごくり——と、飲んだ。
立ち上がった。スカートの裾を直して——髪を整えて。
先生の顔——じゃなくて。
結城くんの——女の顔で。
隣の部屋のドアに——手をかけた。