五時間目が終わる五分前から——私の心臓は、もう授業のことなど考えていなかった。
あと五分。
あと五分で——あの子が来る。
保健室のデスクに広げたカルテの文字が、ぼやけて見えた。
ペンを持つ右手の指先が——微かに震えている。
左手は机の下で、タイトスカートの太腿をぎゅっと握っていた。
リトくん。
名前を頭の中で呼ぶだけで——下腹がとくんと脈打つ。
あの日から——もう何度、この身体を開いたか数えていない。
保健室のベッドで。私の部屋のソファで。バスルームの壁に押し付けられて。
二十六年間誰にも渡さなかった身体を——十六歳の少年に、何度も何度も。
(……やめなさい。今は——仕事中よ)
白衣の襟を正した。
ピンクのノースリーブの胸元を——ちらりと見下ろす。Hカップの谷間が深く覗いている。下着は——もちろん着けていない。
このかっこうに意味があると知ったのは、リトくんに抱かれてからだ。
「面倒だから」じゃない。「誰かに気づいてほしかった」——リトくんにそう言い当てられた夜の、あの声が、まだ耳の奥にこびりついている。
五時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
私は——コーヒーカップを手に取った。冷めかけた液体を一口だけ含んで、苦みで頭を切り替える。
もうすぐ来る。あと三分。着替えて、廊下を歩いて、ドアをノックして——。
こんっ。
ノックの音に——心臓がびくっと跳ねた。
「先生ー。ちょっといいですか」
……違う。
この声は——リトくんじゃない。
「はい、どうぞ」
ドアが開いた。
古手川唯。
風紀委員の腕章。黒髪ロング。ツリ目。ブラウスの第一ボタンまできっちり留めた制服。
いつも通りの——真面目で、堅くて、隙のない女の子。
(……またこの子)
「先生、お忙しいところすみません。保健室の備品確認と——少しだけ、お話を聞いていただけますか」
丁寧な口調。背筋を伸ばした立ち姿。
一分の乱れもない制服から——B88の胸がぱつぱつとブラウスを押し上げていて、それだけが唯一の破綻。本人は必死に隠しているけれど——この子のスタイルは、制服が敵なのよ。
「もちろん。座ってちょうだい」
にっこりと微笑んだ。
養護教諭、御門涼子。穏やかで、優しくて、大人の余裕がある——完璧な仮面。
古手川さんがベッドの縁に座った。
チェック表を取り出して、真剣な顔で項目を読み上げていく。
「包帯の在庫が——先週より三本減っています。消毒液も残量が半分以下で——」
聞いている。ちゃんと聞いている。
でも——心の中は、別のことでいっぱいだった。
(早く終わらないかしら)
リトくんが来る。もうすぐ来る。
いつもの理由——「頭が痛い」とか「指を切った」とか——そんな嘘を並べて、保健室のドアを開けて。
そこから先は——カーテンを閉めて、白衣を脱がされて——。
「先生?」
「——え? ああ、ごめんなさい。続けて」
危なかった。意識が飛んでいた。
古手川さんの目が——私を見ている。
茶色のツリ目。鋭い。この子の目は——真面目さの裏に、観察力がある。
何かを見抜こうとする目。風紀委員の——監視の目。
(……バレてないわよね)
一瞬、背筋が冷えた。
リトくんとの関係。保健室での密会。教師と生徒の禁断の——。
もし知られたら——教師人生が終わる。それどころか、医師免許にまで響く。
でも——気をつけている。完璧に。
保健室のカーテンは閉める。鍵はかけないけれど——足音には常に注意している。リトくんの匂いが残らないように、換気もする。コーヒーの香りで消す。
学校ではリトくんに対する態度を変えていない。「結城くん」と呼ぶ。敬語が混ざる距離感。保健室に来る他の生徒と同じ対応。
(大丈夫。知られるわけがない。この子は真面目すぎて——むしろ裏なんて想像もできないはず)
古手川さんが——チェック表を閉じた。
「先生。もう一つ——相談したいことがあるんですが」
「何かしら」
古手川さんの目が——少し伏せられた。
膝の上で握られた手が——白い指が——きゅっと力んでいる。
「最近——結城くんのこと、どう思われますか」
——。
空気が——変わった。
私は——表情を動かさなかった。
眉一つ。口角のミリ単位。全部——コントロールしている。
「結城くん? どうもこうも——普通の生徒よ。何がそんなに気になるの?」
「普通——ですか」
古手川さんの声が——低くなった。
「先生は——噂、ご存知ですよね。結城くんが複数の女子生徒と——」
「ああ、噂ね。聞いているわ。でも噂は噂よ。教師として証拠もなく生徒のプライバシーに踏み込むわけにはいかないでしょう?」
完璧な回答。教師としての正論。
心臓は——少し速いけれど。
「でも——先生のところに、結城くん、よく来ますよね」
「保健室は開放してるもの。誰でも来るわ」
「でも結城くんが来る頻度は——」
「古手川さん」
少しだけ——声を硬くした。
「結城くんが保健室に来る理由は、しょっちゅう怪我をするからよ。思春期の男の子は無茶をして、すぐに擦り傷を作るの。それだけ」
古手川さんの唇が——きゅっと結ばれた。
何か言いたそうな顔。でも——教師に反論する言葉が見つからないようだった。
(——やめてちょうだい。この話題は)
心の中で——苛立ちが、芽を出していた。
この子は——何が知りたいの?
リトくんのことが気になるなら——それは風紀委員としての関心なのか、それとも——。
(……まさか、この子——リトくんのことが、好き?)
思い当たった瞬間——胸の奥が、ちくりと痛んだ。
古手川唯。十六歳。ツリ目の美少女。B88のグラマラスな身体。
真面目で、プライドが高くて、「結城くんのような男は絶対に許さない」と公言している。
「絶対に許さない」——なんて言う子ほど、気になっている。
教師をしていれば、そんなことはいくらでも見てきた。
(この子は——リトくんのことが好きなのに、認められないのね)
だから保健室に来る。リトくんの動向を探りに。
「風紀委員として」を盾にして——本当は、リトくんの近くにいたいだけ。
(——可哀想に)
でも——無駄よ。
リトくんは——私のもの。
この身体で。この唇で。保健室のベッドの上で——何度も繋がった。
あの子の名前を呼ぶ権利は——私にある。
「涼子さん」と呼ばれる甘さは——この子には、一生わからない。
こんっ——。
ノックの音が——また響いた。
「先生ー。指切っちゃったんですけど」
——リトくん。
心臓がどくんっと跳ねた。全身の血が一気に熱くなった。
でも——顔には出さない。
「はい、どうぞ」
ドアが開いて——リトくんが入ってきた。
ワイシャツの袖を捲った腕。少し汗ばんだ首筋。涼やかな目。
リトくんの視線が——一瞬だけ、古手川さんに向いた。
それから私を見た。何事もないように。
「あ、古手川。おつかれ」
「……結城くん」
古手川さんの声が——硬くなった。
ツリ目が鋭くなる。身体が——僅かに強張る。
「何しに来たの」
「指切った。絆創膏もらいに」
リトくんがひらひらと右手を振った。人差し指に——小さな切り傷。
(——いつもの口実ね)
私は椅子から立ち上がった。
「見せてちょうだい」
薬棚に向かう。背中にリトくんの視線を感じる。
いつもなら——わざとお尻を突き出して、ストッキングの太腿をちらつかせるところだけれど。
今日は——できない。古手川さんがいる。
絆創膏と消毒液を手に取って、振り向いた。
リトくんがベッドの縁に座っている。古手川さんの——隣に。
近い。二人の距離が近い。
リトくんの肩と古手川さんの肩の間は——十センチもない。
古手川さんが——身体を強ばらせているのがわかる。リトくんの体温を意識しているのだろう。
(……もっと離れなさい。そんなに近くに座らないで)
私は——リトくんの正面に立った。
いつもなら前屈みになって胸元を見せるのに——今日は、椅子を引き寄せて座った。古手川さんの視線があるから。
リトくんの指を取って、傷口を消毒する。
ガーゼで押さえて——絆創膏を巻く。
「——はい、おしまい」
指を離す。
リトくんの指が——一瞬、私の手に触れた。いつもの——あの、さらりとした接触。
ぴくっ——。
背筋に電流が走って——反射的に、唇を噛んだ。
顔に出ていない。出ていないはず。
古手川さんが——こちらを見ていた。
ツリ目が——私の顔を、じっと観察している。
(——何を見てるの。何も起きていないわよ)
「結城くん。もう行っていいわよ」
「はい。ありがとうございます、御門先生」
リトくんが——にこっと笑った。爽やかな笑顔。
でも——立ち上がらなかった。
「古手川も見回り? えらいな」
「……あなたに褒められる筋合いはないわ」
「そんなこと言うなよ。いつもこの学校のために頑張ってるだろ」
「……っ」
古手川さんの頬が——僅かに赤くなった。
褒められて——動揺している。この子は——本当にわかりやすい。
でも——問題はそこじゃない。
リトくんが——帰らない。
古手川さんが——帰らない。
保健室に三人。
カーテンの向こうのベッドは——空のまま。
二人きりになれない。
(……早く、帰ってちょうだい。古手川さん)
苛立ちが——喉の奥で熱くなっていくのがわかった。
「古手川さん。備品の確認は終わったかしら?」
「はい。でも——まだ相談が——」
「相談なら、また明日でもいいわよ? 今日は少し——カルテの整理が立て込んでいて」
笑顔で言った。穏やかに。でも——追い出しの意図を乗せて。
古手川さんの目が——私を見上げた。
その目に——尊敬と、心配と、そして——何か別のものが混在していた。
(……この子は——私のことを心配してくれている?)
純粋な好意。年上の女性への憧れ。
先生みたいな大人になりたい——そう思ってくれているのが、伝わってくる。
一瞬——胸がちくりと痛んだ。
(ごめんなさいね、古手川さん。あなたが憧れている「御門先生」は——もういないの)
「でも先生——」
「古手川さん。無理はしないで。あなたも——授業があるでしょう?」
立ち上がった。
白衣の裾を翻して——保健室のドアに歩み寄って、開けた。
退室を促す。笑顔で。動線で。空気で。
古手川さんは——唇をきゅっと結んだまま、立ち上がった。
リトくんを——一度だけ振り返った。
鋭い目でリトくんを見て——それから、私を見た。
何かを言いたそうな目。
でも——言葉にならなかった。
「……失礼します」
古手川さんが保健室を出ていった。
黒髪がばさっと揺れて——廊下の空気に消えた。
ドアを閉めた。
振り向いた瞬間——リトくんが、にやっと笑っていた。
「——大変だね、先生」
「あなたのせいよ」
私は——白衣のボタンに手をかけた。
「あの子——あなたのことが好きなのよ。わかってるでしょう?」
「知ってる」
「じゃあ——なんとかしてちょうだい。毎回毎回来られたら——」
「毎回——なに?」
リトくんの声が——低くなった。
あの涼やかな目が——私を射抜いた。
「——あなたと、二人になれないじゃない」
言ってしまった。
二十六歳の養護教諭が——十六歳の生徒に。
リトくんが——立ち上がった。
ゆっくりと歩いて来て——私の前に立った。
「涼子さん」
名前を呼ばれた。
それだけで——膝が、かくんと力を失った。
(——だめ。まだ。確認しなきゃ)
私は——崩れそうな膝に力を入れ直して、保健室のドアを開けた。
廊下を——左右に覗く。
古手川さんの黒髪は——もう見えない。
足音も——消えている。
念のために——廊下の端まで歩いて、角を曲がった先も確認した。
誰もいない。完全に。
ふう、と息を吐きながら保健室に戻ると——リトくんが窓辺に立っていた。
カーテンの裏側で——窓の鍵をかち、と上げている。
「何してるの?」
「換気。——暑いし」
リトくんがにやっと笑った。
あの片方だけ口角が上がる笑み。意味深な笑み。
でも——今はそんなことより。
私は——ドアを閉めて、振り返って、リトくんを見た。
「やっと——いなくなったわ」
声が——もう、さっきまでの「御門先生」じゃなかった。
甘い。とろっとした、女の声。舌の上に蜂蜜でも転がしているみたいな。
「あの子には——ちょっと困ってるのよね、実は」
くすっ——と笑った。悪意のない笑い方。でも——目が笑っていない。
「あーあー。先生、愚痴多い」
「愚痴じゃないわよ。ふふ——真面目でいい子なのはわかってるの。でもね」
私はリトくんの方に歩いていきながら——白衣をするりと脱いだ。椅子の背もたれにかける。
「あの子が保健室にいると——リトくんと、二人になれないでしょう? それがね——ちょっと……ふふ」
笑って——誤魔化した。
言葉を選んでいるつもり。大人として——教師として。
でも——声が甘えている。笑いの奥に、不満がにじんでいる。
「わかんない」
「もう、わかってよ。あの子がいる間——私がどれだけ大変だったか。スカートの中、ぐちゃぐちゃだったのに——ずっと平気な顔してたのよ?」
恥ずかしいことを——平然と言っている。
数ヶ月前の自分が聞いたら卒倒する台詞。
でも——リトくんの前だと、こうなる。
教師の仮面も、大人の余裕も、全部脱げてしまう。
この子だけに見せる——私の本当の顔。
リトくんが——窓際のカーテンを軽く直して、ベッドの縁に座った。
「あの子さ、先生のことめちゃくちゃ尊敬してるよね」
「……そうみたいね。先生みたいな大人になりたいですって——真面目な顔で言うのよ、あの子」
私は——ふっ、と笑った。
苦笑——のつもり。でも口元が——少し歪んでいた。
「可愛い子よ。本当に。でも——もし知っちゃったら、どうなるかしらね。あの子が憧れてる『御門先生』が……ふふ、こんなことしてるなんて」
声が——蕩けている。笑いで包んでいるけれど——知的さの欠片もない、ねっとりとした女の声。
「知られたら泣くだろうね。あの子の中の先生像」
「泣いちゃうかもしれないわね——だから、気をつけないと」
リトくんの目を——見た。
涼やかな瞳。あの中に——私が映っている。
目が合うだけで——下腹がとくん♡と疼く。膝の裏が甘く痺れる。
「……リトくん」
声が——もう一段、低く甘くなった。
「ん?」
「座って」
私は——リトくんの前に膝をついた。
保健室の冷たいリノリウムの床が膝がしらに当たる。
タイトスカートが太腿のあたりで突っ張って——ストッキングの太腿がむちりと露出する。
ノースリーブの胸元が前屈みで開いて——Hカップの谷間がたっぷりと覗く。
目線がリトくんの——腰の位置になる。
私の手が——リトくんのズボンのベルトに伸びた。
バックルを外す。金具がかち、と鳴った。ジッパーを下ろす。
ボクサーの上から——もう、硬くなりかけている輪郭がわかる。
(——もう半分勃ってる。古手川さんがいる間も、こうだったのかしら)
布地を下げた。
硬く張り詰めたものが——弾けるように現れた。
まだ完全ではないけれど——竿に血管が浮き始めていて、カリの段差がくっきりしている。先端がてかりと光っている。
「ふふ——やっぱり、私がいないとダメなのね」
見上げた。リトくんの顔を。
上目遣いで——にこっと笑う。彼女みたいに。恋人みたいに。
勘違い——かもしれない。
リトくんにとって私が特別なのかどうかなんて、本当はわからない。
でも——そう思いたい。思わせて。今だけでいいから。
「先生。いつもみたいに、気持ちよくお願いしますよ」
リトくんの声が——あの涼しいトーンで落ちてきた。
「いつもみたい」——その言葉に、身体がかあっと熱くなった。
「いつも」がある。日常がある。こういう行為が——私たちの「いつも」に組み込まれている。
「先生の綺麗な顔に——チンポ、似合ってるよ」
「——っ、ひどいわね」
普通なら——怒る場面でしょう。侮辱よ。
養護教諭にそんなことを言う十六歳の男の子なんて——最低だわ。
でも——嬉しい。
嬉しくて——身体の芯がじゅんっと甘く溶けた。
(――似合ってるって言われた♡)
口元を——ぷくっとふくらませてみせた。
わざと。怒ったフリ。恋人にいじられた時の——甘えた仕草。
(じゃあ——いつもより、気持ちよくしちゃうんだから)
右手で——根元を握った。
指が一周しない太さ。熱い。脈打っている。
左手で竿の中ほどを支えて——唇を、先端に寄せた。
ちゅ……♡
唇が——カリの先端に触れた。
柔らかい粘膜同士。体温が混ざる。先走りの塩気が——舌先にじわりと広がった。
「んっ……♡」
唇を開いて——先端を含んだ。
舌でカリの裏側を——ゆっくりと、舐め上げた。
れろっ♡——れろっ♡
裏筋のライン——カリの段差から竿の根元に向かう細い筋。ここがリトくんの弱いとこ。
知ってる。何度も咥えて、覚えた。
「んぅ——♡ ん、ちゅ……♡♡」
舌先で裏筋をぺろぺろと舐めながら——右手で根元をゆっくりしごく。
頬の内側で——先端を包むように吸う。
ちゅぱっ♡ ちゅっ♡
リトくんの太腿が——微かに震えた。
(——来た。反応してる♡)
嬉しい。この身体が——私の舌で反応してくれるのが、たまらなく嬉しい。
もっと深く——。
唇を沈めた。竿の半分まで。舌を下にぴたりと押し付けて、口腔の天井で上側を擦る。
ずぶっ……♡ ちゅぷっ♡
「ん゛っ♡♡ んちゅ……♡♡ じゅる♡♡」
頭をゆっくり前後に動かす。
出し入れのたびに——唾液がぬるぬると竿を包んで、水音が保健室に響く。
じゅぽ♡ じゅぽ♡——ちゅぷっ♡
でも——。
リトくんは——声を漏らさない。
太腿が微かに震えるだけ。腰が少しだけ揺れるだけ。
長い。太い。そして——なかなか、イかない。
五分——十分——。
顎が——痺れてきた。
口をずっと開けているから——咀嚼筋がじんじんと疲労する。
首も——前後に振り続けて、痛い。首の後ろが攣りそう。
じゅぽ……じゅぽ……ちゅぱ…………♡
動きが——鈍くなっていく。
唾液が顎を伝って、ぽたぽたと太腿に落ちている。ノースリーブの胸元にも——唾液のシミが広がっている。
「んぷ……♡ ……はぁ……♡」
一度——口を離した。
ぷはっ——と息を吐いて、肩で呼吸する。
唇から竿まで——唾液の糸がつう、と伸びて——ぷつり、と切れた。
「ごめんなさい……♡ 今日——ちょっと、調子が……」
リトくんを——見上げた。
上目遣い。涙目。唾液でぐちゃぐちゃの唇。
「疲れたの、顎が……あと首も……♡ もうちょっと頑張る——けど——」
言い訳。みっともない言い訳。
二十六歳の女が——十六歳の男の子を口でイかせられなくて——謝っている。
でも——心の中では。
(……長くしゃぶれて——嬉しかった♡)
ずっと咥えていたかった。あの硬さが口の中にある感覚。リトくんの味。
もっと——もっと長く——。
そして——もう一つ。
ずっとやってほしかったプレイが——ある。
自分からは言えなかった。恥ずかしすぎて。
でも——今なら。「疲れたから」を口実にして——頼める。
「リトくん……♡」
「ん」
「あのね……♡ 私の口じゃ——イけないなら……♡」
唾液でてらてらの唇を——ぺろ、と舐めた。
「喉の奥——使っていいわよ……♡」
リトくんの目が——僅かに開いた。
「喉でシゴくから——リトくんが、好きに動いて……♡ 私の頭——掴んでいいから……♡」
言ってしまった。
自分から——喉奥を犯してくれと頼んだ。
(……もう完全に、壊れてる。私)
リトくんが——にやっと笑った。
「先生——そういうの好きなんだ」
「っ——好きとかじゃなくて——リトくんが気持ちよくなるなら——♡♡」
嘘。好き。大好き。
喉を犯されるのが——想像しただけで——もう——。
リトくんの手が——私の頭に触れた。
栗色のショートボブに——指が沈んだ。後頭部を——がしっと掴まれる。
「行くよ、涼子さん」
「んぁ——♡♡ ま、待っ——心の準備——」
ずぶっ♡♡
待ってくれない。
一気に——喉の奥まで押し込まれた。
カリの段差が舌の付け根を擦って——先端が喉壁にぐぷっ♡と当たった。
「んぐっ♡♡♡!! ぐっ♡♡——ん゛ん゛っ♡♡♡」
喉が——拡張される。気管の入り口が圧迫される。呼吸が——できない。
涙が——反射で、ぶわっと溢れた。
リトくんの手が——頭を固定したまま。
腰が——引かれて——、また突かれた。
ずぶっ♡♡ ずぷっ♡♡
「ぐぽっ♡♡♡ んぐ♡♡ ご、ごぽっ♡♡♡♡」
保健室に——下品な音が響き渡った。
喉奥を硬い肉棒が抉るたびに——ぐぽ♡ぐぽ♡と水音が破裂する。
唾液が——制御できない。口の端から——どろどろと溢れて、顎を伝い、首を伝い、Hカップの谷間に流れ落ちていく。
両手が——リトくんの太腿を押さえている。
抵抗——の仕草。形だけの。押し返そうとする力は——入っていない。
指が——リトくんのズボンの布地を、くしゃっと掴んでいるだけ。
顔は——涙と唾液でぐちゃぐちゃ。
薄緑色の知的な目は——とろんと蕩けて、焦点が合っていない。
鼻から空気を吸おうとして——鼻水まで垂れている。
御門涼子の——「いい女」の面影は——もうどこにもない。
リトくんの腰が——加速した。
ずぷっ♡♡ ぐぽっ♡♡ ずぶっ♡♡♡ ぐぽっ♡♡♡♡
「ん"ん"ん"っ♡♡♡♡ ——ぐぷっ♡♡♡♡♡」
喉が——もう自分の体の一部じゃないみたいだ。
リトくんのものが出入りするための——穴。道具。
おもちゃみたいに使われている。
両手が——もう太腿を押していない。
力が抜けて——だらんと垂れ下がっている。
ぐぽ♡♡ ぐぽ♡♡ ずちゅっ♡♡♡ ぐぷっ♡♡♡♡
涙が——止まらない。
苦しくて出る涙と——気持ちよくて出る涙が——混ざっている。
どっちがどっちかもう——わからない。
リトくんの手が——私の後頭部を強く掴んだ。
ぐっ、と押し込まれて——根元まで。鼻先がリトくんの下腹に押し付けられた。
「——っ♡♡♡♡♡」
どくんっ♡♡♡——
喉の奥で——脈打った。
びゅるるっ♡♡♡——と、喉壁に直接——熱い塊が叩きつけられた。
「ん"ん——♡♡♡♡♡♡ ん゛ぐっ♡♡♡♡♡♡♡」
飲めない。一度に多すぎる。
精液が——喉から逆流して、鼻腔に回った。鼻から——白い液体が、ぶくぶくと泡立った。
どくっ♡♡ どくっ♡♡ どくっ♡♡♡——
まだ出てる。まだ——注がれている。
喉が——精液でいっぱいに——溢れて——。
「っぷはぁっ♡♡♡♡!!!」
リトくんが——ようやく引き抜いた。
私の口から——精液と唾液がごぽっ♡♡と溢れ出た。白い液体が唇から糸を引いて、顎を流れ落ちて、ノースリーブの胸元をべちゃべちゃと汚していく。
「げほっ——けほっ——♡♡ けほ——っ♡♡」
むせた。激しくむせた。
肩が——がくがく震えている。涙と鼻水と唾液と精液が——顔中をぐちゃぐちゃにしている。
目の前が——白く霞んでいる。酸欠で。
私は——膝をついたまま、肩で息をした。
呼吸が——戻ってくるのに、何秒かかったのかわからない。
はぁ——はぁ——はぁ——。
喉が——じんじんと痺れている。リトくんの形が——まだ残っている。
声帯のあたりが——腫れぼったくて、声が——出ない。
ようやく——顔を上げた。
リトくんの顔を——見上げた。
涙でぐしゃぐしゃの、唾液と精液でどろどろの——私の顔で。
——にこっ♡と、笑った。
「気持ちよかった♡?——リトくん♡」
声が——ガラガラに枯れていた。喉を犯された後の——掠れ声。
でも——精一杯の笑顔を向けた。
リトくんが——私の頭を、ぽんっと撫でた。
「うん。気持ちよかった」
——嬉しい。
嬉しくて——また涙が出そうになった。
「ねえ——リトくん♡」
「ん?」
「私ね——リトくんのためなら、なんでもするわ♡ 何回でも——何時間でも♡」
掠れた声で——ささやいた。
「先生じゃなくて——リトくんの女として。ずっと——そばにいたい♡」
口元から——まだ精液が垂れている。
顎に——白い雫がゆっくりと伝っている。
薄緑色の目が——蕩けきった甘さで、リトくんだけを見ている。
「この保健室は——リトくんと私だけの場所。誰にも——渡さないわ♡」
——その声を。
保健室の窓から忍び込む風が、カーテンの隙間を微かに揺らした先で。
古手川唯が——聞いていることも知らずに。