※この作品はR-18です。

ヤリチンリトに寝取られるお話   作:大軍

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モモ・ベリア・デビルークの場合(5)

 

シーツが、持ち上がった。

掛け布団の端を、静かに、音を立てないように捲る気配。

ベッドのスプリングが、わずかに沈む。

もうひとりぶんの体重が、マットレスに乗った。

 

リトさんが——わたしのベッドの中に入ってきた。

 

全身に、鳥肌が走った。

背中に、体温が近づいてくる。

まだ触れていない。触れていないのに、空気の温度が変わった。

数センチ。たった数センチの隙間に、リトさんの身体がある。

 

(起きなきゃ)

 

思考が叫ぶ。

起き上がって、叫んで、「何してるんですか」と罵声を浴びせるべきだ。

ナナなら「何やってんだ、この変態!」と蹴り飛ばしている。

古手川さんなら「破廉恥な!」と平手打ちだ。

それが正しい反応。それがまともな女の反応。

 

——なのに。

 

足が動かない。

声が出ない。

瞼が、開かない。

 

寝たふりを——続けている自分がいた。

 

(どうして……)

 

分からない。分からないふりをしている。

本当は分かっている。

起きたら——この時間が終わる。

リトさんが「悪い、間違えた」と笑って出ていく。それで終わり。

でも寝ていれば——リトさんは、ここにいる。

 

その理屈を認めたくなくて、わたしはきつく目を閉じた。

 

すう、すう、と。

眠っている呼吸。完璧な演技。

尻尾だけが、シーツの下でぎゅうぎゅうと自分の太腿に巻きついている。

 

リトさんの指が、わたしの髪に触れた。

 

ぞくっ……。

 

ショートボブのピンク髪。その毛先を、指の腹で撫でるように。

触れているのか触れていないのか分からないほどの圧力。

羽毛のような。空気のような。

なのに——肌が、その感触を過剰に拾い上げる。

 

指が、耳の後ろに移動した。

産毛を撫でるような動き。

くすぐったい。くすぐったいのに、身体が逃げない。

 

「……寝てるか、モモ」

 

囁き声。

低くて、近くて、鼓膜の奥に直接落ちてくるような声。

吐息が耳の縁にかかった。温かい。

 

(っ……!)

 

返事をしなかった。

眠っている。眠っているのだから、返事はしない。

 

リトさんの指が、首筋に降りた。

鎖骨の少し上。Tシャツの丸い襟元から覗く肌を、指先だけでなぞる。

ぞ、くっ……。

 

「モモのベッドに入るの、初めてだな」

 

独り言のように、リトさんが言った。

寝ている相手に話しかけている。そういう体裁。

 

「いつもモモの方が俺のベッドに来てたから」

 

指が、肩の線をたどっている。

Tシャツの肩口。薄い生地の上から、肩甲骨の丸みをなぞるように。

 

「あれ、嬉しかったんだけどな」

 

心臓が、どくん、と跳ねた。

 

「シャツ一枚で潜り込んできてさ。わざと胸押しつけてくるし」

 

やめて。

やめてください。

聞きたくない——聞きたくない言葉ばかり、正確に選んでくる。

 

「でも、ある日から来なくなっただろ」

 

指が、背中の中心を降りていく。

背骨のラインに沿って。Tシャツの上から。

一椎ずつ、なぞるように。

 

「あれ——俺が寝相悪いふりして、モモの尻尾いじった日からだよな」

 

——。

 

呼吸が、一瞬止まった。

 

全身の血液が、顔に集まるのが分かった。

耳の先まで。首筋まで。シーツに埋めた頬が、火を灯したように熱い。

 

知っていた。

リトさんは、知っていた。

あの夜のこと。

寝ぼけたふりをして——わたしの尻尾を指で挟んで、くりくりと弄って——。

声を殺して、シーツを噛んで、何度も何度も身体を痙攣させたあの夜のことを。

 

寝相が悪かっただけ。偶然だと思っていた。

偶然だと——思い込もうとしていた。

 

「寝返り打ったら、たまたまモモの尻尾が手に当たってさ」

 

嘘だ。

嘘だと、今、確信した。

 

「でもモモ、逃げなかったよな」

 

ずるい。

ずるい、ずるい、ずるい。

 

「声我慢してたけど、尻尾はずっと俺の手に巻きついてた」

 

(やめてっ……!)

 

叫びたかった。

顔を枕に押しつけて、耳を塞ぎたかった。

でも——起きたら負けだ。

起きたら、この話を「聞いていた」ことになる。

聞いていたのに「起きなかった」ことになる。

それは——わたしが、望んでここにいたという証明になる。

 

だから動けない。

だから寝たふりを、続けるしかない。

 

リトさんの指が、背中の下端に到達した。

Tシャツの裾。パジャマとの隙間。

素肌が、ほんの数ミリだけ露出している場所。

 

そこに——指先が触れた。

 

「ぅ——」

 

声が漏れた。

唇の隙間から、空気と一緒に。

極小の、吐息のような声。

 

慌てて息を止めた。

寝息。寝息に紛れ込ませろ。

すう……すう……。

 

リトさんの指が止まらない。

腰の窪みを、親指の腹でくるりと撫でる。

くすぐったいのとは違う。もっと深いところに響く刺激。

体温が直接肌に伝わって、内臓がきゅっと縮むような感覚。

 

ぞくぞくぞくっ……。

 

鳥肌が、腕まで広がった。

乳首が、Tシャツの内側で硬くなっているのが分かる。

ブラはしていない。寝る時は着けない。その無防備さが、今は致命的だった。

 

「……ん」

 

リトさんの鼻が、後頭部に近づいた。

髪の匂いを嗅いでいる。

吐息が、うなじにかかる。

 

「いい匂い」

 

ぞわっ、と。

尻尾が、太腿の間でびくっと跳ねた。

 

指が、腰からお尻の方へ滑っていく。

パジャマの上から。丸い膨らみの頂点を、掌で包むように。

昼間叩かれた場所。あの、ぱしん、の場所。

 

今度は叩かない。

撫でている。ゆっくり、ゆっくりと。円を描くように。

 

ぬる……っ。

 

掌の熱が、薄い生地を通して伝わってくる。

お尻の皮膚が、その手に馴染んでいくのが分かる。

嫌だ。嫌なはずだ。なのに——腰が、ほんの僅かに、手の方に押し戻されそうになる。

 

歯を食いしばった。

唇を閉じて、声を殺す。

すう、すう、と。眠っている、眠っている、眠っている。

 

ふっ——と。

 

手が、離れた。

 

愛撫が止んだ。

リトさんの指がわたしの身体から消えた。

 

一瞬、ほっとした。

終わったのだと思った。

もう行ってくれる。もう——。

 

背中の向こうで、布の擦れる音がした。

リトさんが、何かをしている。衣擦れ。スウェットのゴムを引き下ろすような——。

 

ことん、と。

 

何かがお尻に触れた。

 

硬い。

熱い。

——素肌の感触。

 

布越しではなかった。

パジャマの薄い生地を隔てて、その向こう側にある硬いものは——剥き出しだった。

 

思考が、白く弾けた。

 

(——え)

 

分かる。

分かってしまう。

あれだけリトさんのベッドに忍び込んでいたのだ。

朝、リトさんの身体に密着して目覚めた時、腰の辺りに感じたことのある——あの硬さ。

あの時は布越しだった。今は——違う。

 

(うそ……出してる……)

 

大きい。

パジャマのわたしのお尻に押しつけられた、その硬さ。熱さ。

脈打っているのが、薄い生地一枚を通して直接伝わってくる。

お尻の割れ目に沿って、ぐっ……と押しつけられている。

 

どくん。どくん。どくん。

 

心臓が、もう誤魔化せないくらい暴れている。

頬が熱い。耳が熱い。全身が、血液で沸騰しそうだった。

 

リトさんの手が、わたしの右手に触れた。

 

指を絡めるように。

力が入っていない手を、ゆっくり持ち上げる。

 

——後ろに。

 

身体の後ろに、手を誘導していく。

 

分かっている。

何をさせようとしているのか。

抵抗すれば止まる。手を引っ込めれば終わる。

でも——手が、力を入れない。

 

リトさんの指が、わたしの手を包み込んだまま——そこに、導いた。

 

指先が、硬いものに触れた。

 

素肌。

直接、触れている。

熱い。指先が火傷しそうなくらい、熱い。

硬い。石のように硬い。なのに表面は滑らかな皮膚で——その下で、どくん、どくん、と脈打っている。

 

(……おおきい)

 

手のひらで、包みきれない。

指を伸ばしても、先端に届かない。

カリの段差が、指の腹にはっきりと引っかかる。

血管の浮き出た筋が、指先に凹凸として伝わってくる。

生々しい。生きている。手の中で、熱い血液が脈を打っている。

 

リトさんの手が、わたしの手の上に重なった。

握らせるように。指の位置を直すように。

親指をここ、残りの四本はこう——と教えるように。

 

「……っ」

 

指が、それを握った。

 

ずくん、と。掌の中で脈打った。

びくっ、と肩が跳ねた。

 

「いい子」

 

囁き声が、耳に落ちた。

 

リトさんの手が、わたしの手を上下に動かした。

ゆっくりと。根元から先端へ。先端から根元へ。

硬い竿を、握ったまま、しごく動き。

 

ぬるっ……くちゅっ……。

 

先端の辺りが、湿っていた。

指の腹に、とろりとした液が絡みつく。先走り。熱くて、ぬるぬるしていて——。

その液が指の間に広がるたびに、手の動きが滑らかになる。

掌全体に、リトさんの熱が伝わってくる。

 

「上手い」

 

褒められた。

寝ている人間を褒めている。おかしい。おかしいのに。

その言葉が、胸の奥で熱い何かになって弾ける。

 

リトさんの手が、わたしの手から離れた。

 

——動きが止まらなかった。

 

わたしの右手は、リトさんの手がなくなっても——自分の意思で動いていた。

上下に。ゆっくりと。硬い幹を、握って、しごいて。

掌に吸いつくような肌の感触。カリの段差を越えるたびに、指の間でぬるっと先走りが溢れる。

 

くちゅ……くちゅ……くちゅ……。

 

先走りが手のひらを伝って、指の間がぬるぬるになっていく。

手が止められない。

眠っている演技をしながら——手だけが、起きている。

 

(わたし……何して……)

 

考えたくない。

考えたら終わりだ。

これは——寝ているから。寝ているから、無意識だから。

意識はない。意志はない。だから悪くない。

 

リトさんの呼吸が変わった。

深くなった。少し荒くなった。

吐息がうなじにかかるたびに、背中がぞくぞくする。

 

「モモ……」

 

名前を呼ばれた。

低い声で。切なそうに。甘い声で。

 

手の中のものが、ぴくん、と跳ねた。

硬さが増した。カリの部分が、指の隙間で主張するように膨張する。

掌の中で、それが一回り太くなるのが分かった。

 

「やば……っ、モモ、上手すぎ……」

 

ずるい。

そんな声出さないで。

そんな風に褒めないで。

寝てるんです。わたしは寝てるんです。

 

くちゅっ♡ くちゅっ♡ くちゅっ♡

 

手が速くなっていた。

いつの間にか。リトさんに教えられたリズムより、少し早く。

先端に指が触れるたび、ぬるっとした液が溢れて、手のひら全体がてらてらに光っているのが——見なくても分かる。

 

「っ——」

 

リトさんの身体が、強張った。

 

腰がぐっと前に出た。

お尻に押しつけられていた硬いものが、更に強く圧迫される。

剥き出しの熱が、パジャマ越しにお尻の肉に食い込むように。

 

「出る——」

 

ぴくっ♡

 

びゅるっ♡♡

 

掌の中で、それが脈打った。

どくん、どくんと、大きく。

熱い液体が、勢いよく吹き出した。

指の間を、手首を、白い精液が溢れていく。

 

びゅるるっ♡♡ どくっ♡ びゅっ♡

 

一度では終わらなかった。

二度、三度と、波のように。

手のひらを、指の間を、とろりとした精液がどろどろと溢れていく。

 

量が——多い。

手の中に収まりきらない。

掌から溢れた白い液が、わたしの手首を伝ってシーツにこぼれ落ちた。

 

ぬるっ……とろっ……。

 

更に——お尻の方にまで流れた。

リトさんのものから零れた精液が、パジャマの生地にべっとりと染みていく。

丸いお尻の膨らみを伝って、生地の上をゆっくりと。温かくて、重くて、ぬるぬるしている。

 

「……はぁ」

 

リトさんが、深く息を吐いた。

 

掌が、じんじんしている。

精液の匂いが、シーツの中に充満していた。甘くて、重くて、生々しい匂い。

わたしの手は、まだそれを握ったままだった。

力が入らない。離せない。

指の隙間から、とろりと精液が垂れている。

 

リトさんの唇が、わたしの耳に触れた。

触れたか触れないかの距離。

 

「ありがとな、モモ」

 

ちゅ、と。

 

耳たぶに。

羽のように軽いキスがひとつ。

 

ベッドが、軽くなった。

体重が消えていく。シーツが整えられる。

足音が——遠ざかっていく。

 

ドアが閉まった。

 

かちゃ、と。ドアノブが元の位置に戻る音。

廊下の足音が消える。

 

沈黙が、部屋を満たした。

 

わたしは——目を開けた。

 

暗い天井。

カーテンの隙間から、月明かりが細く差し込んでいる。

 

右手を、顔の前に持ってきた。

月光に照らされた指が、白い液体でてらてらと光っている。

指の間から、とろりと糸を引いて——シーツに垂れた。

 

お尻が、ぬるぬるしていた。

パジャマに染み込んだ精液が、肌に張り付いている。

生温かくて、ぬめっとしていて——。

 

枕に顔を押しつけた。

 

「——っっっ!!」

 

声にならない悲鳴を、羽毛の中に叩き込んだ。

 

顔が熱い。身体が熱い。全身が熱い。

心臓が壊れそうなほど暴れている。

 

右手が、まだ震えている。

あの硬さの残像が、掌にこびりついている。

脈打つ感触が。膨張する感触が。溢れ出す熱さが。

素肌の——あの生々しい温度が。

 

(わたし——しごいてた)

 

認めたくない事実が、額の裏で点滅している。

 

寝たふりをしながら。

自分の意志で、手を動かして。

リトさんのものを——直接握って——。

 

シーツが、精液で濡れている。

明日、洗わなきゃ。自分で。誰にも見られないように。

 

(リトさんの、匂いが……)

 

枕に顔を押しつけたまま、わたしは身動きが取れなかった。

右手が、まだ閉じたままだった。

握った感触を——手放せないでいた。

 




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