※この作品はR-18です。

ヤリチンリトに寝取られるお話   作:大軍

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古手川唯とナナ・アスタ・デビルークの場合(1)

 翌日。

 

唯は——リトを、呼び出した。

 

放課後の空き教室。夕日が斜めに差し込んで、無人の机に長い影を落としている。

ドアを閉めて、窓を閉めて、カーテンも引いた。

 

リトが——壁にもたれて、こっちを見ている。

制服の袖をまくった腕。少しだけ乱れた髪。相変わらず——爽やかで、余裕のある目。

 

あの目で——昨日、御門先生を……。

 

(——やめなさい。思い出すな)

 

唯は——腕章をぎゅっと握った。

 

「結城くん。——単刀直入に聞くわ」

 

「なに」

 

「あなた——ナナさんにも、何かしてるの」

 

リトの表情が——動かなかった。

眉も、口元も、目の奥も——何一つ。

 

「何かって?」

 

「とぼけないで。あの子が最近——おかしいの。前はあなたのことを目の敵にしていたのに、最近は——妙に大人しい。あなたの近くにいる時だけ、目を伏せている」

 

唯は——声に力を込めた。

 

「ナナさんは——あなたに流されるような子じゃないわ」

 

そう言いながら——唯の内心には、別の声があった。

 

あの子は——小柄で、胸もなくて、まだ子供みたいで。

リトの噂の相手は——モモ、籾岡、御門先生、ティアーユ先生。全員、胸がそれなりにある。

ナナの体型は——Aカップ。身長151センチ。華奢で、幼くて。

 

(あの身体じゃ——結城くんの好みじゃないでしょう)

 

口には出さなかった。出すはずもない。

でも——唯の中には、確かにその計算があった。

 

リトが——ふうん、と鼻で笑った。

 

「流されないって、古手川がそう思ってるんだ」

 

「思ってるじゃないわ。事実よ。あの子は真っ直ぐで、正直で——嘘をつけないタイプ。あなたみたいな男の手口は通じないの」

 

「へえ」

 

リトが——壁から背中を離して、一歩、近づいた。

 

唯の心臓が——跳ねた。反射的に——半歩、退がった。

 

「じゃあさ——古手川」

 

「なによ」

 

「確かめてみれば」

 

「——は?」

 

リトの目が——真っ直ぐ、唯を捉えた。

あの目。あの——何を考えているのかわからない、爽やかで、でもどこか底が見えない目。

 

「お前がナナに——ありえないような要求をしてみろよ」

 

「ありえない要求って——何を言って——」

 

「俺を——懲らしめるのに協力しろって、ナナに頼め」

 

唯の眉が——ぴくっと動いた。

 

「つまり——風紀活動として、あなたを罰するのを手伝えと」

 

「そう。それも——普通じゃ考えられないくらいの要求を。お前の頭で考えて、好きにしろ」

 

リトが——さらに半歩、寄った。

唯の背中が——黒板に触れた。退がれない。

 

「もし俺がナナを——お前の言う通り、嘘で操ってるなら」

 

リトの声が——低い。

 

「ナナは、お前のありえない指示に——疑問を抱くはずだ。普通の反応をするはずだ。おかしい、この人何言ってるの、って」

 

「……当然でしょう。ナナさんは——まともな子よ」

 

「だろ? だったら試してみろ。——もしナナが、お前のどんな指示にでも従うとしたら」

 

リトの唇が——ふっと、笑った。

 

「それは——俺のせいじゃなくて、ナナがそういう子だってことだ」

 

唯は——黒板に背中を押し付けたまま、リトを見上げていた。

 

論理は——わかる。

リトが嘘をついているなら——ナナは操られているだけ。操られた人間は、第三者からの矛盾した指示に対して、正常な判断ができるはず。

でも、もし——ナナが自分の意思でリトに従っているなら——唯のどんな要求にも、独立した判断で応じるか拒否するかを——自分で決められる。

 

筋は——通っている。

 

通っている——のが、怖い。

 

「……わかったわ」

 

唯は——声を絞り出した。

 

「試してみる。ナナさんに——私の方から話をしてみるわ」

 

「好きにしろ」

 

リトが——壁に戻って、また、もたれかかった。

 

「ただし——結果は全部、お前の目で見ろよ。古手川」

 

その言葉の意味が——唯には、まだわからなかった。

 

空き教室を出た。

廊下の窓から——夕日が、長い影を引いている。

 

唯は——スマホを握りしめていた。

ナナさんに——何を頼むか。どんな要求をすれば——検証になるのか。

 

(ありえないことを——ナナさんに頼む、って)

 

何が「ありえない」のか。

そもそも——私は、ナナさんに何を頼もうとしているのか。

 

リトを——懲らしめるのを、手伝え。

それ自体は——普通の要求だ。ナナだって前から「リトを見張ってる」と言っていた。

 

でも——リトは「ありえないくらいの要求を」と言った。

 

(……ナナさんが普通に従うなら——それは通常の範囲。ナナさんが拒否するなら——それはナナさんの正常な判断。でも——もし——)

 

もし、どんなことを頼んでも——ナナが従ったら。

 

唯は——足を止めた。

 

廊下の窓の外で、夕日が沈みかけている。

風紀委員の腕章が——オレンジ色に染まっていた。

 

         *

 

あたしは——廊下を歩いていた。

 

コテ川から——メッセージが来た。

『放課後、空き教室に来てほしい。結城くんのことで話がある』

 

結城くんのこと——か。

 

あたしは——スマホをポケットに押し込んで、歩きながら——昨夜のことを、思い出していた。

 

         *

 

昨夜。リトの部屋。

 

「——ナナ。ちょっと聞け」

 

リトが——ベッドの端に座って、あたしを見ていた。

いつもの軽い声じゃなかった。ほんの少しだけ——真面目な目。

 

あたしは——リトの隣に座った。

まだ服は着ている。まだ——始まっていない時間。

 

「古手川が——俺のこと、嗅ぎ回ってる」

 

「コテ川が?」

 

「ああ。俺とお前の関係を、疑い始めてる」

 

あたしの心臓が——どくん、と跳ねた。

 

バレてる? あたしとリトが——毎晩、こんなことしてるのが——コテ川に?

 

「まだ確証はない。でも——あいつの勘はいいから、時間の問題だ」

 

リトが——天井を見上げた。

 

「ナナ。お前、古手川と——風紀の見回り、一緒にやってるだろ」

 

「……うん。コテ川は——あたしのこと、味方だと思ってるよ。見回りも手伝ってくれるし——」

 

「そう。古手川にとって、お前は数少ない協力者なんだ。——もし俺とお前の関係がバレたら、どうなると思う」

 

あたしは——考えた。

 

コテ川は——風紀委員だ。規律を重んじる。ヤリチンの結城リトを——敵視している。

そのコテ川が——あたしとリトがこんな関係だと知ったら。

 

「コテ川は——あたしのことも、敵だと思うだろうな」

 

「そうだ。お前と一緒に風紀活動してたこと自体が——古手川にとっては裏切りになる。最悪、古手川が風紀委員の仕事を続けられなくなるかもしれない」

 

「……それは——」

 

あたしは——唇を噛んだ。

 

コテ川は——うるさくて、真面目で、堅くて。でも——まっすぐな人だ。

あたしに「結城くんに気を許しちゃダメ」って、何度も何度も言ってくれた。

あたしを——守ろうとしてくれていた。

 

その人が——あたしのせいで、風紀委員の立場を失う。

 

「だから——古手川の前では、演技しろ」

 

リトの声が——静かだった。

 

「俺のことを——嫌いなフリをしろ。前みたいに。『リトなんかスケベなだけのやつ』って態度で」

 

「嫌いなフリ……」

 

「古手川が何か聞いてきても——全部否定しろ。俺とは何もない、あいつのことなんか知らない——って」

 

あたしは——リトの顔を見た。

 

いつもの——何を考えてるかわからない顔。

でも、今は——ほんの少しだけ、あたしの方を向いている視線に——計算とは違うものが見えた気がした。

 

「俺も——ナナの前では、嫌いな演技をする。古手川が見てる時は——お前のことをからかったり、わざと嫌な態度をとる」

 

「……え」

 

あたしは——一瞬、息が詰まった。

 

リトが——あたしのことを嫌いなフリをする。

 

嘘だとわかっている。演技だとわかっている。

昨夜だって——あたしの乳首をあんなに丁寧に弄って、あたしの中で気持ちよさそうに声を漏らしていたくせに。

 

それなのに——「嫌いなフリ」の言葉が、胸の底に——ちくり、と刺さった。

 

「……わかった」

 

声が——小さかった。

 

「わかったけど——あたし、演技——うまくないぞ」

 

「知ってる。だから単純にやれ。リトなんか大嫌いだ、って。——お前は普段からそう言ってたんだから、元に戻るだけだろ」

 

元に戻る——だけ。

 

でも——もう、あの頃のあたしじゃない。

あたしの身体は——リトに変えられて、リトなしでは調子が狂って。

乳首がリトの気配を拾うたびに——きゅっと硬くなる、この身体は——もう、前のあたしじゃない。

 

それでも——コテ川のために。

あの真面目で不器用な人のために——元の、あたしのフリをする。

 

「……わかったよ。やってやる」

 

リトが——あたしのツインテールの片方を、くしゃっと掴んだ。

 

「よし。——じゃあ明日な」

 

乱暴な手つき。でも——不思議と、嫌じゃなかった。

 

         *

 

——それが、昨夜の話。

 

あたしは——空き教室のドアの前に、立っていた。

 

中から——声が聞こえた。

コテ川の声。はっきりした、強い声。

 

あたしは——深呼吸をして、ドアを開けた。

 

「——来たぞ、コテ川」

 

空き教室の中。夕日が——壁を赤く染めている。

 

コテ川が——腕章をつけたまま、教壇の横に立っていた。

黒髪ロング。ツリ目。胸がブラウスの下でぱつんと主張している。

 

そして——リトが。

 

椅子に——座らされていた。

 

両手が——背もたれの後ろで縛られている。白い紐。足首も——椅子の脚に括りつけられている。

 

あたしの目が——リトに吸い寄せられた。

 

リトの顔。俯いている。髪が額にかかって——目が見えない。

でも——口元が、ほんの微かに——力が入っている。

 

(——リト)

 

駆け寄りたかった。

 

あたしの指が——スカートの端を掴んだ。ぎゅっと。

縛られているリトを見て——胸の奥が、ぎゅうっと締まって——足が一歩、前に出かけた。

 

あの手に——昨夜、乳首をつままれた。あの手が——あたしの頭を撫でた。

あの手が——白い紐で、後ろに縛られている。

 

(だめだ——演技——演技しろ——)

 

あたしは——足を止めた。

奥歯を噛んで、頬の内側に力を入れて——感情を、飲み込んだ。

 

コテ川が——あたしを見た。

 

「ナナさん。来てくれてありがとう」

 

「……おう。それで——なんだよ、これ」

 

椅子に縛られたリトを——指で差して、聞いた。

できるだけ——興味のない声で。

 

「見ての通りよ。結城くんを尋問中。風紀委員として——やらなきゃいけないことがあるの」

 

コテ川の目が——鋭い。あのツリ目が——リトを、見下ろしている。

でも——その目の奥に、何か——揺らぎがある。覚悟と恐怖が入り混じったような——不安定な光。

 

「ナナさん」

 

「なんだよ」

 

「一応——聞いておくけれど」

 

コテ川が——あたしの方に、真っ直ぐ向き直った。

 

あたしの心臓が——うるさくなった。

 

「ナナさんは——結城くんとは、無関係よね」

 

——来た。

 

リトが言った通りだ。この質問が——来ると。

 

あたしは——リトを見なかった。見たら——目で全部、バレる。

コテ川だけを——真っ直ぐ見返した。

 

「当たり前だろ。あんなスケベなやつ——あたしが関わるわけないだろ」

 

声が——震えなかったことに、自分で驚いた。

嘘は苦手だ。人間は嘘をつく。動物は嘘をつかない。あたしは——動物の側にいたいと、ずっと思ってきた。

 

でも——今は。コテ川のために。

 

「……そう。よかった」

 

コテ川が——小さく、息を吐いた。肩の力が、ほんの少しだけ抜けた。

安堵——が見えた。あたしの答えを聞いて——安心している。

 

あたしが嘘をつかないと——信じている。

 

(……ごめん、コテ川)

 

胸が——痛かった。乳首じゃない。もっと奥の——心臓の横あたりが。

 

「じゃあ——お願いがあるの」

 

コテ川の声が——少し、低くなった。

 

「なんだよ」

 

「結城くんの尋問に——協力してほしいの。風紀活動の一環として。あなたなら——あの男の嘘を見抜けるかもしれないから」

 

尋問に——協力。

 

コテ川が何をさせるつもりなのか——わからない。

リトからは——「古手川の前では嫌いなフリをしろ」としか言われていない。それ以上のことは、何も。

 

でも——ここで断ったら、怪しまれる。

前のあたしなら——「リトをやっつけるのに協力? やってやるよ!」って即答してた。

だから——今も、そうする。コテ川が何を頼んできても——前のあたしなら受けるはずのことは、全部受ける。

 

あたしは——椅子に縛られたリトを、ちらりと見た。

 

リトの目が——前髪の隙間から、一瞬だけ——あたしを見た。

 

何を言う目でもなかった。何を命じる目でもなかった。

ただ——「お前次第だ」と言っている。そんな視線。

 

あたしは——コテ川に向き直った。

 

「わかった。——あたしにできることなら」

 

コテ川が——頷いた。

風紀委員の腕章が——夕日に照らされて、赤く光っていた。

 

あたしは——覚悟を決めた。

 

コテ川が何を言い出すか——見当もつかない。

でも——あたしとリトの関係がバレるわけにはいかない。コテ川を守るために——嘘をついたんだ。

なら——最後まで、この嘘を通す。なんでも聞く。コテ川の指示に——全部、従う。

 

たとえ——あたしの乳首が、今この瞬間も、制服の下できゅっと硬くなっていたとしても。

 

リトが——同じ部屋にいるだけで。

縛られた手が——あたしの乳首を知っている手が——こんなに近くにあるだけで。

 

         *

 

コテ川が——教壇の上に両手をついて、あたしに向き直った。

 

「ナナさん。これから私が説明することを——落ち着いて聞いて」

 

「……おう」

 

「結城くんは——何人もの女性に、無理やり手を出しているの」

 

コテ川の声が——低く、硬い。ツリ目が——リトを、射抜くように見ている。

 

「先生にも。クラスメイトにも。自分の立場を利用して——断れない状況を作って——卑劣な手口で」

 

あたしは——黙って聞いていた。

リトの顔を——見ないように。見たら——何かが崩れる気がした。

 

「だから——今日、ここで。あの男にわからせるの。自分がどれだけ酷いことをしてきたか。自分がされる側になれば——少しは理解するでしょう」

 

コテ川の目に——光があった。正義の光。信念の光。

この人は——本気でそう信じている。リトが悪で、自分が正義だと。

 

あたしは——小さく頷いた。

 

「……わかった。それで、あたしは何をすればいいんだよ」

 

コテ川が——一瞬、口を噤んだ。

唇が——微かに震えた。言いかけて——飲み込んで——もう一度、口を開いた。

 

「じゃあ——まず」

 

声が——少しだけ、揺れた。

 

「服を——脱がせなさい」

 

「……は?」

 

「結城くんの。制服を——脱がせて」

 

(——それだけか)

 

あたしは——内心で、少しだけ拍子抜けした。

服を脱がせる——なんて。あたしは毎晩、リトの服を脱がして——リトに脱がされて——。

 

(いや——そういうことじゃない。演技。演技だ)

 

あたしは——椅子に縛られたリトの前に、立った。

 

リトの顔が——あたしを見上げている。前髪の隙間から。

 

演技しろ。嫌いなフリをしろ。

 

「——ふん。ざまあみろよ、リト」

 

声が——思ったより、ちゃんと出た。

前のあたしなら、こう言っていたはずだ。こういう声で。こういう態度で。

 

あたしは——リトのネクタイに手をかけた。

 

ぐいっ——と引っ張って、結び目を緩める。

慣れた手つきだった。毎晩——リトの服を脱がせる時と、同じ。

少しだけ力加減を乱暴にして——乱暴に見えるように。

 

ネクタイが——するっと抜けた。

 

次に——ブラウスのボタン。上から。ひとつ、ひとつ。

 

あたしの指が——リトの胸の前で動く。ボタンを外すたびに——リトの肌が、少しずつ露出していく。

鎖骨。胸。腹筋のライン。

 

……見慣れた身体だった。

この身体に——毎晩、のしかかられて。この腹筋に——あたしの涙が、何度も落ちた。

 

「……天罰だぞ、このスケベ」

 

ぼそっと——呟きながら、ブラウスを肩から剥がした。

 

リトは——無表情だった。何も言わない。ただ——あたしの手を、見ている。

 

後ろで——コテ川の息を呑む音が聞こえた。

 

振り返ると——コテ川が、少しだけ目を見開いていた。

あたしが——躊躇なくリトの服を脱がせたことに——驚いている。

 

当然だ。普通の女の子なら——男子の服を脱がせるなんて、もっと恥ずかしがるはず。もっと手間取るはず。

あたしは——慣れすぎていた。

 

(しまった——)

 

でも——コテ川は、それ以上は追及しなかった。

少しの沈黙があった。コテ川が——唇を舐めた。

 

「次——」

 

コテ川の声が——さっきより、低い。

 

「抱きついて——無理やり、キスしなさい」

 

——キス。

 

あたしの心臓が——どくんっと跳ねた。

 

コテ川が——あたしに。リトに——キスしろと。

 

(やりたい——)

 

いや。

 

(やりたくないって——言わないと。演技——)

 

あたしは——コテ川に向き直って、眉を寄せた。

 

「こ、こんなの——やりたくないんだぞ⁉」

 

声が——裏返った。

 

「こんなスケベ野郎にキスするなんて——反吐が出るぞ! あたしの唇が穢れるだろ!」

 

リトを——指差して、叫んだ。

演技だ。全部演技だ。あたしの唇は——もう何十回も、こいつの唇と——舌と——ちんぽに触れている。穢れるも何もない。

 

コテ川が——少したじろいだ。

 

「そ、そうよね……嫌よね。ごめんなさい、ナナさん。でも——これは、あの男にわからせるために——」

 

「……っ」

 

あたしは——唇を噛んだ。

コテ川が——あたしの反応に安堵している。あたしが嫌がることが——コテ川にとっての「正常」なんだ。

 

あたしが——こんなスケベ野郎にキスなんてしたくない、と思うのが——当然だと。

 

(コテ川は——あたしを信じてる。あたしがまともな子だって——信じてる)

 

リトに——近づいた。

椅子に縛られたリトの——目の前に、立った。

 

リトが——あたしを見上げている。

 

あたしが顔を近づけた瞬間——リトが、ふっと首を傾けた。

あたしの耳元に——唇が寄って。

 

「——本当はいつも嫌だったか?」

 

小さな——囁き。コテ川には聞こえない。

 

あたしの胸が——ぎゅっと締まった。

 

違う。違う。嫌じゃない。嫌だったことなんか——一度もない。

リトとキスするのが嫌だなんて——そんなの——。

 

あたしは——慌てて、リトの耳元に口を寄せた。

 

「ちっ——違うに決まってるだろ……っ。あんたに言われた通り——演技してるだけだ……っ」

 

声が——震えていた。バレないように。コテ川に聞こえないように。

 

「誤解——すんなよ……っ あたしは——」

 

リトが——ニヤリと笑った。

 

ほんの一瞬の——あの口元。コテ川からは見えない角度。あたしだけが見える——あの笑い方。

 

(——こいつ)

 

わかっていて——聞いたのだ。あたしの本音を。この状況で。

 

あたしは——リトの顔に向き直った。

 

「——天罰だ。このスケベ」

 

そう言いながら——リトの頬を両手で掴んで、唇を——押し当てた。

 

ちゅっ——。

 

リトの唇。何度も触れた。何度も吸った。何度も——舐めた。

知っている感触。知っている温度。知っている——味。

 

「え——」

 

後ろで——コテ川の声が漏れた。小さな——驚きの声。

気にしない。今は——気にしちゃだめだ。

 

あたしは——唇を押し付けたまま、リトの反応を待った。

 

リトが——顔を背けた。

 

「——やめろ」

 

冷たい声。拒絶する声。

 

あたしの——心臓が、ぐにゃっと潰れた。

 

(——え)

 

リトが——あたしのキスを、拒否した。

 

今まで——一度も。

一度も——リトはキスを嫌がったことがない。あたしが咥えても、あたしが舐めても——こいつは受け入れて、もっと奥まで来いと、頭を押さえつけて——。

 

なのに——「やめろ」と。

 

目の奥が——じわっと熱くなった。

 

(嫌なの——? あたしのキスが——嫌なの——?)

 

声が——出なかった。喉の奥が詰まって——鼻の奥が、つーんと痛い。

 

涙が——込み上げてきた。こんなところで泣いたら——全部バレる。コテ川に——全部——。

 

リトの顔が——また、あたしの耳元に近づいた。

 

「——演技だ。バカ」

 

囁き。唇が——耳たぶに触れた。ほんの——かすかに。

 

あたしの身体が——びくっと震えた。

 

(演技——そうだ——演技——)

 

リトも——嫌がるフリをしているんだ。コテ川の前だから。

あたしが無理やりキスして——リトが嫌がる。それが——「懲らしめ」の構図だから。

 

ハッ——として。

 

涙が——引いた。完全には引かなかったけど——溢れる前に、止まった。

 

あたしは——リトの耳元に唇を寄せた。

 

「わ——わかってる……っ」

 

声が——まだ少し、震えている。

 

「わかってる——から——」

 

わかってなかった。一瞬——本気で傷ついた。あたしのキスが嫌なんだと——本気で、思った。

 

でも——演技だ。全部。あたしも、リトも。

 

あたしは——もう一度、リトの唇に——自分の唇を押し当てた。

 

ちゅ——♡

 

今度は——少しだけ、深く。唇を開いて——リトの下唇を、吸った。

 

「天罰——だぞ——このスケベ——」

 

唇を離す瞬間に——呟いた。唾液の糸が——あたしとリトの唇の間に、細く一本だけ——光って——ぷつん、と切れた。

 

コテ川が——見ていた。

あたしは——コテ川を振り返った。

 

コテ川の目が——揺れていた。

唇が——少し開いて。何か言いかけて——何も言わない。

 

「——もっと」

 

コテ川の声が——微かだった。

 

「もっと……激しく。下品にやりなさい」

 

あたしは——コテ川の目を見た。

 

あのツリ目の奥に——正義じゃないものが——ちらついている気がした。

でも——今のあたしには、それを考える余裕がない。

 

「……そうだな」

 

あたしは——リトに向き直った。

 

「リトには——もっと必要だよな。こんなもんじゃ——足りないよな」

 

演技だ。同調する演技。コテ川の命令に従っているフリ。

 

でも——身体は、嘘をつけなかった。

 

あたしは——リトの髪を掴んだ。ツインテールが揺れる。ぐいっと引っ張って——リトの顔を上に向けさせた。

 

「天罰だ——クソリト——」

 

唇を——叩きつけた。

 

んちゅっ♡——

 

今度は——舌を入れた。

 

リトの口の中に——あたしの舌が、滑り込む。

リトの舌が——あたしの舌に絡んだ。

 

ちゅぷ♡——じゅる♡——んちゅ♡♡——

 

水音が——静かな空き教室に響いた。

あたしの唾液と、リトの唾液が混ざって——唇の隙間から、ちゅり、と音がする。

 

(あ——やばい——)

 

身体が——熱くなってきた。

 

キスしてるだけなのに——乳首が、きゅっと硬くなっている。

制服の下で——布に擦れるたびに、ちりちりと——。

 

リトの舌が——あたしの上顎を、ぺろっと舐めた。

 

「んっ——♡」

 

甘い声が——漏れた。小さく。でも——漏れた。

 

(だめ——声——出しちゃ——)

 

コテ川が——後ろにいる。

 

あたしは——唇を離さなかった。離せなかった。

リトの舌を——吸って。噛んで。舐めて。

 

れろっ♡——ちゅぱ♡——じゅるるっ♡♡——

 

頭の中が——ぼんやりとしてきた。酸素が足りない。鼻から息を吸っているのに——リトの匂いばかりが入ってきて——頭が、ふわふわする。

 

リトの匂い。知ってる匂い。あたしの乳首を弄る手の匂いと、同じ——。

 

「——ストップ」

 

コテ川の声が——遠くから聞こえた。

 

あたしは——はっ、と我に返った。

 

唇が——べちゃっと音を立てて、リトの唇から離れた。

唾液が——あたしの顎を伝って、顎先から——ぽたり、と制服のリボンの上に落ちた。

 

「は——❤ はぁ——❤ は……っ❤」

 

息が——戻ってこない。肩で呼吸している。

唇が——てらてらと光っている。自分の唾液と、リトの唾液で。

舌が——口の中で、まだリトの味を探している。

 

リトの唇も——濡れていた。あたしの唾液で。光っている。

 

あたしは——ふらつく足で、コテ川の方を向いた。

 

「コテ——川……」

 

呂律が——回らなかった。

舌が——まだリトの舌の感触を覚えていて、うまく動かない。

 

「つ、次は——なにすれば——いいんだよ……」

 

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