※この作品はR-18です。

クラス転移で勇者召喚かと思ったら子作り奴隷召喚だった   作:稲月

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11話 本当は分かっていたこと

 

 はじまりは、どうしようもなくありきたりで、呆れるほど陳腐なものだった。

 

『これ? よっ……と。はい』

 

 高校に入って初めての学園祭。クラスの出し物の準備に向けてわいわいと賑わう放課後の教室、その隅っこ。

 画材を取ろうと高い棚に背伸びで手を伸ばす私の後ろから、1人の男子がすっと現れて、それを取ってくれた。

 

「え? ……あ」

 

 驚きと困惑。受け取りながら固まってしまう。

 子供の頃からいつも影の薄かった私は、困りごとがあっても誰にも気づかれない。

 自分から頼る勇気も無くて、1人で頑張ろうとする癖が染みついていた。

 

「え、えと、ありがとう……ございます」

 

 かろうじて、感謝の言葉は絞り出せた。

 でも小さすぎる声は、何でもない顔で去っていくその男の子に届いていたか、自信がない。

 

 

 ……私に、気付いてくれた。

 

 

 こんなありふれた一幕が、私の初恋。

 秋穂 夕凪(あきほ ゆうな)が、釣谷 竿斗に恋した瞬間だった。

 

 

 

 

 でも、すぐに気付いた。彼の視線の先はいつも同じ人へ向く。

 美澄 英理(みすみ えり)さん。学校中の誰もが知る美人のクラスメイト。

 

 勝ち目なんて、考えるだけ無駄だった。

 彼の想いに気付いた私はすぐにこの恋を忘れようとして、それでも想いは募るばかり。

 

 ……”タイプは巨乳のお姉さん“。

 彼と仲のいい親友の内緒話をこっそり聞いた日もあった。

 ほとんど掴むこともできない控えめな自分の胸に、行き場のないやるせなさを感じる。

 

 でも、美澄さんもモデル体型で巨乳とまではいかないし、歳だって私たちと同じ。

 次の週から、少しだけパッドの厚い下着(ブラ)を着ける無様な私がいた。

 ……彼の視線は変わらない。

 

 

 お願い、もう一度だけ私に気付いて。

 

 

 

 

 1年間、地味で臆病で無力な私は、結局ただ彼を見ていることしかできなかった。

 

 彼に対する周囲の女子からの評判は、言ってしまえば平々凡々。

 分け隔てない素直さがウリの、だけどモテない男の子。

 

 だから期待を捨てられなかった。

 美澄さんが彼に振り返らない事を祈るだけの、情けない私が憎らしい。

 

 今日が人生2回目の学校祭。この日で終わりにしようと決意していた。

 

 閉幕式が終わったら、はっきり彼に気持ちを伝える。

 それすらできない私であれば、ここできっぱり諦める。

 何度も家で練習した告白(せりふ)を、頭の中で繰り返す。

 

 ……式が終わって30分経っても、彼の姿はどこにも見つけられなかった。

 

 ああ、神様は私にチャンスすらくれないんだ。

 

 溢れそうな涙を堪えながら、荷物を取りに暗い教室へ戻る。

 生徒たちもすっかり帰るなりして、学校の中は酷く寂しい。

 

 そして、いた。

 しぃんと暗い廊下を照らす、ひとつだけ灯った私たちの教室の明かり。

 その中でたった1人、青いシャツを手に持つ想い人が。

 

『あっ! よかったぁ〜! ほらこれ、忘れ物。秋穂さんのでしょ? 

 土日挟んだら洗濯しても落ちないんじゃないかと思ってさ』

 

 そのシャツは、多忙な学園祭当日のさなかで画材をこぼして汚れてしまった、私のクラスTシャツだった。

 シャツに名前のプリントなんかない。あるのはクラスメイトそれぞれで違う、背番号とオリジナルキャッチフレーズ。

 私のそれを、覚えててくれたんだ

 

 

 ……どうして、今になって。

 

 

 ……どうして、あなたは私に気付いてくれるの。

 

 

「ありがとう」の一言は、今度は口に出せなかった。

 渡せてよかった、じゃあまた! と言って、彼はすぐに去ってしまった。

 

 

 

 

 週明け。なんとか彼にお礼を伝えた私は、もはや膨れ上がった想いに押し潰されてしまいそうだった。

 だけどすっかりタイミングを逃してしまい、告白する勇気はまたどこかへと消えている。

 

 教室からは、学校祭をきっかけに交際し始めたカップルの噂話がそこかしこから聞こえてくる。

「学祭マジック」なんて呼んでいるらしい。

 私に魔法は起きなかった。私じゃ魔法を起こせなかった。

 

 

 いっそ物語のような、“本物の魔法”があったらいいのに。

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 ぐじゅり、と音を立てて引き抜かれる剣。

 目を大きく見開きながら、声も出せずに両手で首を抑えて倒れ込むクラスメイト。

 手を伸ばせば届く距離に広がる、赤色と、鉄の臭い。

 

 私の冴えない高校生活は、惨劇とともに終わりを迎えた。

 吐き気と震えが止まらない。

 

 訳もわからず裸に剥かれ、人形のような皇女の言いなりに動く。

 

『秋穂夕凪、母体評価C』

 

 検査員から冷たく告げられる声。

 AやBばかりのクラスの中で、数少ないC評価が私だった。

 

 脳内にこびりついた鮮血の画。

 死や追放への恐怖で心臓が張り裂けそうになる。

 

 いつだって誰にも存在を気付いてもらえない私。

 ああ、きっとすぐにでも街の隅っこに捨てられて、孤独に泥に塗れて死ぬんだ。

 

 ……釣谷くん。

 

 心の中で何度も必死に彼を呼ぶ。

 彼だけは、きっと私を見つけてくれる。

 きっと私の心をまた救ってくれる。

 

 彼が城に残れたかはわからない。

 せめて、無事で生きていて。

 

 

 

 

『え!? つ、釣谷じゃん!』

『ちょ、こっちみんな! 変態ヤロー!』

 

 その部屋に入ってきた彼の顔を見て、暗かった心に光が差し。

 目線を下げれば彼の裸を見て、私の顔に赤が差し。

 

『んあっ……ああっ……ッ、ぅうんぁ……っ、はぁ、はぁ、……んぅああッ!』

 

 たちまち広がった目の前の光景に、心の壊れる音がした。

 

 じゅっぷぷぷぷ、じゅぷん! ぬぷぷぷぷぷ、どちゅん! 

 

 初めて見る、初恋の男性の血走った赤黒いペニス。

 それを恍惚とした表情で股ぐらへ飲み込む、見知らぬ少女。

 

 ぬらぬらと光る鉄杭が見え隠れを繰り返すたび、下腹部の淫紋を通して皇女の快感が私の子宮を殴りつけてくる。

 

 私は処女のはずなのに。

 私が自分で知りたかった感覚なのに。

 

 パン! パン! パチュ! パン! 

 

 大好きなあの人のペニスの形、発する熱、抽挿のリズム。

 結ばれているのは私じゃないのに、最愛の相手にしか伝えないはずの彼の秘密を、身体が確かに伝えてくる。

 

 私が初めてを感じている今この瞬間も、あの人が感じている初めては私じゃない。

 一方通行で強引に与えられる、喪失の感覚と性の快感。

 

「んああッ! ああ゛ッ! イヤッ! んあ゛ッ!?」

 

 強すぎる快感にひどく下品な声が勝手に飛び出す。 

 誰にも触れられていないはずの秘裂から、愛液がとろとろと流れ出す。

 皇女の絶頂とともに、快感が子宮の中で爆発した。

 

 2人のキスの感覚まで淫紋から伝わってこなかったことは、救いなのかな。

 私のファーストキスだけは、変わらず私のものだった。

 

『……“魂の抱擁(アニマ・ブラキゥム)”』

 

 そして、桃色の魔法とともに再訪する悪夢。

 脳が壊れるほどの快感が子宮を焼く。

 

 ぱっちゅ! ぱちゅん! ぐちゅんっ! 

 

「ん゛お゛ッ♡  あ゛ッ♡  ん゛あ゛あ゛ッ♡!」

 

 ……きもちいいっ……いやだっ! 

 

 ……き゛も゛ち゛い゛い゛ッ……しりたくないッ!! 

 

 涎と愛液を垂れ流しながら、打上げられた魚みたいにビクンビクンと痙攣がとまらない。

 私がいま叫んでる声は、悲鳴か嬌声かどっちだろう。

 

 やがて、その時が訪れる。

 入っていないはずのペニスが膨らみ、感じないはずの抽挿がラストスパートをかける。

 

 いやだ いやだ いやだ! 

 彼の子種が他の女に注がれる感覚なんてッ! 

 

 どっっっちゅんッ……!! 

 

「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!」

 

 どびゅうううっ! と子宮へと叩きつけられる灼熱。

 膣内が煮え滾るマグマに満たされていく。

 男に胎を征服される多幸感。

 

 なのに自分の秘部を見ても、そこには愛液しか。

 悲しみと悔しさと快感で涙が止まらない。

 

 私にとっての、大好きな人から貰う初めての快感。大切なはずの記憶。

 それは、赤の他人へ与えられた快感で染められてしまった。

 

 敵だったはずの女を抱きしめたまま、満足そうに、幸せそうに眠る彼の顔が見える。

 

 

 “本物の魔法”なんて、ろくなもんじゃない。

 

 

 

 

 縦長の和室の後方。彼から1番遠い席で食事を摂る。

 距離のせいで、ここからじゃ彼の表情も確かめられない。

 

 不思議と冷静だった。

 

 きっと、私の心は一度、完全に壊れちゃったんだ。

 それともあの快感で、ほんとに脳みそがおかしくなっちゃったのかな。

 

 食事の前、気絶した彼が戻ってきた時には、とっくに覚悟を決めていた。

 

 この世界は、私の大切なものを簡単に奪っていく。

 

 評価も待遇もどうでもいい。

 

 ただ、彼が欲しい。

 それ以外はいらない。

 

 クラスメイトも、別に全員死んだっていい。

 そうすれば私と彼は絶対に結ばれるから。

 

 冷え切った心と熱い想いが、割れた心に同居している。

 

 大丈夫。彼は基本、ヘタレだ。

 正面から押せば受け入れてもらえる。

 

 本当はとっくに分かっていたことだ。誰よりも観察していたから。

 足りなかったのは勇気だけ。

 

 食事が終わり、私は髪と服を整える。

 

 そして他の何にも目もくれず、真っ直ぐと。

 近づくにつれ暗い表情も見えてきた、彼の元へ。

 

 

 息を整えて。

 

 

 ずっと、言えなかった言葉を。

 

 

「あ、あの! ……釣谷くん。少しだけ、お話させてもらえませんか? 

 ……大事なご相談が、あるんです」

 

 

 私の全てを、捧げさせてください。

 






ちょっと改行を多めに使ってみました。
読みにくかったら遠慮なく教えていただけると幸いです。
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