クラス転移で勇者召喚かと思ったら子作り奴隷召喚だった 作:稲月
「検査結果がまとめ終わるまで、とりあえず皆さんと一緒にお待ちください!」
いまだ興奮冷めやらぬ茶髪さんに指示を受けた俺は、部屋の入り口とは反対側にある通路を歩いていた。
シャワーどころかタオルも貸してもらえなかったので、萎んだペニスや腰回りがちょっとカピカピしていて気持ち悪い。
重たい足を動かしながら、ついさっきの出来事を考える。
思いっきり搾り取られた……。
いつものオナニーでは到底得たことのない尋常ならざる快感だった。
まだ腰の奥に快感の名残がじんわりと染みついている。
ていうかそんな気はしてたけど、やっぱり勇者の種って精子の事だったんだな……。
ということは、他の男子たちも同じ目にあった訳だ。
茶髪さんの可愛らしい顔が頭に浮かんでくる。
あの笑顔が他の奴らにも向けられたからと思うとなんだかムカついてきた。
理不尽な嫉妬を抱えながら歩いていくと、次の部屋が見えてきた。
今度はけっこう大きい部屋のようだ。
部屋に入ると、そこには大きなテーブルと椅子が並べられているのが目に入る。
そしてそこに座るのは、真っ裸の男達。クラスメイトだ。
どうやら食事が出されたらしい。
夢中で料理にがっついていたり、突っ伏して寝ていたり、皆は思い思いに過ごしている。
部屋の入り口と出口には武装した兵士が2人ずつ。
誰もその近くには寄っていない。
中学時代からの親友の顔が見えたので、とりあえずそこへ向かった。
「おう、
近づく俺に気づいた
目の前の皿の上には、山盛りの料理が取り分けられていた。
「お前、こんな状況でよくそんな食っていられるな……」
「バッカお前、あんだけ空っぽに絞られたら食わなきゃ干からびちまうだろーが!
ほら、ちょっと冷めてるけどまだ沢山あるぜ」
桃田が指し示した隣のテーブルには、様々な料理がずらりと並んでいた。
だが正直、今はまるで食欲が湧かない。
周りの男どもが揃って素っ裸なのも最悪だ。
料理はいらない事を手振りで示しつつ、俺も桃田の正面に座って話し出す。
「やっぱり、お前らも皆あのお姉さんに絞られてたんだな。
どいつもこいつも股間がカピカピで気持ち悪いったらありゃしない」
「ダハハ、まさか異世界に来て早々あんな目に遭うなんて思ってなかったぜ。
つーかあのねーちゃん達、まじで美人だったよな!
他の奴らもみんな夢中になっちまってその話ばっかりだしよ。
お前も彼女とかいねーし、すっかり手玉に取られて惚れちまったんじゃないの?」
桃田が揶揄うような目でニヤニヤしながら聞いてくる。
う、うぜー! 惚れてねーし!
誤魔化すように話題を変える。
「そんなことよりさ、俺たちこれからどうなるんだよ。
お前はなんか聞いてないの?」
「いや、何も。あの兵士にここで待ってるように言われただけだ。
でもエロゲマイスターの俺からすれば、この先の展開はおおよそ予想がついてる。
あのオナホで調べられた俺たちの精子、それの優劣が全てを決めるんだろうな」
俺はその言葉に頷く。大体同じ意見だった。
あの皇女は勇者作りに不要な者も存在すると言っていた。
そしてその末路は、おそらくこの国の下町に放り出されるという事。
この国のことを何一つ知らない俺たちが突然放り出されたところで、まともに生きていくなんて絶対に不可能だ。
不安に駆られた俺は桃田に問いかける。
「桃田、お前はどうだった。大丈夫そうかよ」
だが桃田は少し得意げな顔で返事をした。
「ふふん。それがよ、俺の番が終わった時あのお姉さん、けっこう驚いてたんだぜ?
軒並み高いステータスで、優秀な種だって言ってくれたんだ。
だからたぶん俺は大丈夫だ。少なくとも捨てられはしないと思う。
そう言ってから、深刻そうな顔に転じた桃田が俺を目を見る。
「で、お前は? あの光る文字は読めねえけど、お姉さんの反応とかは分かりやすかったはずだ。
……場合によっては、覚悟を決めなきゃいけないかもしれないぜ」
俺の時、どうだったか。
突然のことだったし、気持ち良すぎたのもあって頭は働いていなかったけど……。
「……なんかオナホがめちゃくちゃ光り輝いて、お姉さんもはしゃいでたな」
桃田が目を見開いて笑う。
「ええ!? まさか俺越えかよ!
何、もしかしてお前の精子って光り輝いてんの!?
だっはっは、実験体のネズミみてーじゃん! めちゃくちゃウケる」
「おおい! 俺は真面目に相談してんだよ!
マジで殴るぞ!」
笑う桃田をなじりつつ、心の中では少し安心していた。
確かにあの感じなら、俺も捨てられることはない気がするな。
桃田が悪ガキみたいな顔をしながら、小声で言う。
「つーことはだぜ、きっと俺たちこれからめちゃくちゃ子作りするってことだよな。
これってすっげー役得じゃね!?
やっぱ相手はうちの女子達だったりするのかな」
「おいおい、お前は彼女がいるだろ。
あちこち手を出して愛想尽かされても知らないぞ」
桃田はこのクラス内に長いこと付き合っている
すっかり親公認の仲でセックスもお互いの家で何度もしているというのを、こっそりと自慢話でよく聞かされていた。
栗栖さんはこのクラスどころか学年全体でも、男子から人気高い女子トップ3には入る超美人だ。
そんな彼女が桃田とは幼馴染で、中学時代から付き合っているのは有名な話である。
桃田は「親友のお前にだけだぜ」と、こっそり栗栖さんとのあんなことやこんなことまでよく話してくるが、正直羨ましくてちょっとウザい。
だが今は、彼女も一緒にこの世界に呼び出され、そしてこの城のどこかに居るわけだ。
桃田も彼女のことが心配なはずだ。
昔から彼女との事は色々と茶化しながら話してはくれるが、桃田が彼女に一途でゾッコンなのはよく分かっていた。
役得なんて言葉も、本心じゃないことくらい分かる。
桃田の内心を気遣おうとして、俺はついその話に触れてしまった。
「栗栖さんは何でも優秀だから、絶対大丈夫だって。
毒島さんのあれは、事故みたいなものだ」
毒島さんの名前を出した途端、桃田の顔がわずかに青白くなる。
「……あの子、本当に死んだんだよな。
やな奴ではあったけど、この国の奴らにとっては別に何の害もなかったはずなのに」
赤色の惨状を思い出してか、桃田は食事の手が止まる。
そうだ、毒島さんは転移してから何も反抗的な行動を起こしていなかった。
それはつまり、他の女子達もいつどんなきっかけで殺されてしまうか分からないということだ。
桃田は重々しい顔をして、俺の目をまっすぐに見る。
「なあ釣谷。もし今後、俺があいつを守れる場所にいなくて、お前があいつの近くにいるような事があったらさ。
俺の代わりに守ってやって欲しいんだ。頼む」
その顔は、今まで見た桃田の表情の中で最も真摯で、真剣で、誠実だった。
俺の答えも当然決まっている。
「ああ。任せろ」
多くは答えない。
こんな状況下で俺にできることがどれだけあるかは分からないんだ、無責任なことは言えない。
でも、1番の親友に託された以上、そんな時が来れば全力で応えたい。
柄にもなく真面目な雰囲気になった事を誤魔化すように、ちょっとふざけた口調で続ける。
「ま、栗栖さんとの子作り命令を出された時はどうなっちゃうかわかんないけどね!」
「おいっ! ふざけんな! 手ぇ出したらマジぶっ飛ばすからな!」
俺の冗談に桃田が笑いながら握り拳を見せつけてくる。
そうやって恐怖や緊張が和らいできた時、ひときわ大柄な兵士が部屋に入ってきて、馬鹿でかい声で俺たちに呼びかけた。
部屋には一気に緊張が走る。
「全員、聞け! 検査の結果が出た。
これから番号順に勇者の種の品質を伝える。
品質はランクで分類し、良いものから順にA、B、C、D、Eの5つ。
呼ばれた者はランクごとに分かれて順に並べ」
いよいよだ。
ここできっと、この世界での運命が決まる。
大柄な兵士は、手元の紙を見ながら順に読み上げ始めた。
「1番、C! ここに並べ。
2番、C! お前はその後ろだ。
3番、D! ……」
次々に男子達が呼ばれていく。
……CやDが多い。ランクは5つあるらしいが、真ん中かその下ということになる。
正直、彼らにいい未来が待っているとは思いがたい。
呼ばれた奴らも皆顔から血の気が引いている。
「10番、D! ……チッ、ハズレばかりだな。
こんなステータスから魔王と戦える勇者が生まれるとは到底思えん」
呼び出しの途中、大柄兵士はしかめ面でそんなことを呟く。
やはり、少なくともCまではハズレ扱いか。
だが今のところB以上は誰もいない。
心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
検査の時のあの光り方を思い出せ。きっと大丈夫なはずだ。
脳内では安心しろ、落ち着けと繰り返し自分に言い聞かせるが、感情は恐怖で侵食されていく。
「11番! ……ほう、Aランクだ!」
桃田だ! よかった!
あいつの絶倫自慢にはいつも呆れていたが、今はその性豪ぶりが功を奏したのかもしれない。
小さくガッツポーズを取る桃田は、部屋の端側に1人で並ぶ。
「ふむ、素晴らしいステータスだ。バランスも良い。
よく励むことだな」
大柄兵士の顔に初めて笑みが浮かんだ。
そしてまたすぐに次の番号を呼び始める。
……だが、桃田以外はやはりC以下だ。
俺は最後の16番目。もうすぐ呼ばれる……!
両手を合わせて握り込み、目を瞑ってひたすら祈る。
「14番、D!」
頼む、せめてB以上であってくれ。
「15番、E! ……ふん、クソの役にも立たんステータスだ」
押し殺したような泣き声が聞こえる。
頼む!
「16番!」
頼む!!!!
…………。
あれ、ランクが聞こえてこない。
恐る恐る目を開くと、怪訝な表情の大柄兵士が目に入る。
紙を見つめたまま十数秒経って、ようやく口を開いた。
「……ふむ、16番。SSSランク。
だが、そんなランクは聞いたことがない。
それにこのステータス、にわかには信じがたいな。間違い無いのか?」
SSSランク?
インフレしたソーシャルゲームみたいなランクだ。
だが間違いなく、アタリ。
思わず小さくガッツポーズをする。
疑問顔の大柄兵士へ、横にいたチビ兵士が報告をあげる。
「検査担当のエリアンドラ女史より、最高待遇で迎えるため別で案内を寄越すと連絡が入っております」
「大馬鹿者、それを早く言わんか! よし、お前は1番前に来い」
安心して力が抜けそうになるのを堪え、前へ進む。
唖然として俺を見るクラスメイトたちの横を抜け、大柄兵士の目の前に並んだ。
「ふぅむ、こんなとてつもない力を秘めているような顔には見えんが、まあ良い。
これから貴様達の今後について伝える。一度しか言わぬからよく聞くように」
俺はきっともう身の安全の心配はない。
だが、後ろで震える男子達、そして親友の今後はどうなるか。
途中の大柄兵士のガッカリした顔を思い出す。
少なくとも、この全員が揃うことはもうないんだろうな。
……ひとりぼっちには、なりたくないな。