※この作品はR-18です。

クラス転移で勇者召喚かと思ったら子作り奴隷召喚だった   作:稲月

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4話 現実になってしまった

 

 大柄兵士は部屋に並んだ俺たちを見回しながら話し出す。

 

「まず、Cランク以下の者はこの城から出ていってもらう。

 残念だが、魔王を倒せるほどの強さをもつ勇者は産まれ得ないからな」

 

 いきなり残酷な現実が降ってきた。

 Cランク以下? 

 そんなの、俺と桃田以外の全員じゃないか。

 

 勝手に呼び出しておいてあまりに理不尽な話だが、騒ぎ立てる者はいない。

 すぐ近くに本物の剣を携えた兵士たちが俺たちを見張っているからだ。

 その切れ味は全員がよく分かっている。

 

「……聞き分けがよくて助かるな。

 よほど見せしめが効果的だったらしい」

 

 ふざけやがって。

 魔王がどうとか言ってるが、お前らの方が悪魔なんじゃないのか。

 そんな罵倒が浮かんでくるが、当然表には出さずに黙って聞く。

 

「まずCランクの者6名。

 貴様らは勇者こそ作れぬが、そこそこ優秀な才能をもつ子供は期待できる。

 よってこの後、優秀な種を求める各貴族達のもとで子作りに励んでもらう手筈だ。

 まだ配属は決まっていないが、3日もあれば話がつくだろう。

 それまでは貴族院の客間で暮らしてもらう。

 これも当然、我が国の政治に関わる話だ。拒否権はない」

 

 なるほど。全然悪い話ではないように聞こえる。

 子作りというなら健康も大事なはずだ。衣食住は保証されるだろう。

 背後からは安堵のため息が聞こえてくる。

 

「次にDランクの者4名。

 貴様らは言ってしまえばステータスは一般人と大差が無い。

 よって街に降りて平民の1人として暮らしてもらう。

 だが、固有スキルは市井の者達にとっては貴重なものだ。遺伝の可能性もある。

 努力次第では平民の中でも良縁が得られるだろうから励むといい」

 

 えっ固有スキル? 

 やっぱあるのかよ、転移特典! 

 いや、今の言い方的にただ珍しいだけで特別ってほどではない感じだ。

 俺たちだけの特権ではないし、盤面をひっくり返すような強力な能力でもないんだろうな。

 

「そして、Eランク4名。

 これは固有スキルも確認されなかった正真正銘の一般人だ。

 同じく街に降りてもらうが、平民としての暮らしは普通に送ることもできるだろう。

 めげずに生き方を探すことだな」

 

 普通に暮らすって、この国の文字も文化も何も知らないのにそれは無理だろう。

 才能がない者にはとことん興味がないらしい。残酷な話だ。

 

「あ、あの……質問してもいいでしょうか」

 

 その声にチラリと後ろを見れば、Dランクの列に並ぶ男子が震えながらも手を上げていた。

 

「よかろう。言ってみろ」

 

「例えば、なんですけど……。 こ、この国の軍や施設で雇ってもらうなんて、お願いできないんですか……?」

 

 確かに、何にも知らずに放り出されるより多少キツくてもどこかに所属できた方が安心感はあるだろう。

 だが、返答は無慈悲だった。

 

「駄目だ。Dランク以下は単純にステータスが低すぎてこの王城や貴族達には必要ない。働き手は街で探すんだな」

 

 質問した男子は黙りこくってしまう。

 別の男子がまた質問した。

 

「固有スキル? っていうのは、どうやったら確認したり使ったりできるんですか」

 

 そう! 俺もそれが知りたい。

 

「固有スキルについて調べられることはその有無だけだ。どんなスキルかは本人以外の誰にもわからん。

 よって貴様らの固有スキルの使い方は吾輩も知らぬ。

 弛まぬ訓練や普段の暮らしの中で己のスキルを見つけ出し、使いこなせるよう努力せねばならん」

 

 え、ええ〜……めっちゃ手探りじゃん。

 俺にも固有スキルはあるんだろうけど、手がかりがないんじゃ調べるのは苦労しそうだ。

 

「……他に無いなら、街へ降りる者は全員城外まで送ろう。

 なに、我が国も鬼ではない。Dランク以下の者も裸無一文では放り出さん。

 余っている衣服と3日分の生活費は持たせてやるから安心しろ」

 

 けっ、何が鬼ではないだ。鬼の方がマシだっての。

 

 奥の通路から兵士達が衣服などを持ってきて、どさりと床に下ろす。

 Cランク以下の男子達は服を着ると、城外への通路へ案内されていった。

 

 14人。数時間前まで一緒に授業を受けていたはずの同級生が、2度と会えないかもしれない場所へ去っていった。

 

 

 

 残ったのは俺と桃田の2人。

 まさかここまで少人数に絞るとは思っていなかった。

 大柄兵士がまた手元の紙を見て話しだす。

 

「さて、本来はAランクの者を勇者離宮へ連れて行く予定だったが、状況が変わった。

 勇者を作るために必要なのは、16番。お前1人だけだ」

 

 大柄兵士が指さしたのは俺。16番。

 

 ……え、桃田は? 

 

「Aランクの11番は、同じくこの城におわすヘルドラング大公爵の元で励んでもらう。

 安心しろ。高待遇には変わりないからな」

 

 ああ、おんなじ城なのか。

 なら桃田とはまた会えるかもしれないんだな。

 

 俺はこのままひとりぼっちにはならなさそうな事に安堵していたが、後ろを振り返ると桃田は真剣な顔で考え込んでいた。

 そして口を開く。

 

「あの、一緒に呼び出された女子たちはどうなるんですか? 

 俺、あの中に付き合っている子がいるんです」

 

 ……そうだった。桃田の彼女である栗栖さんはどうなっているんだろうか。

 問われた大柄兵士は一瞬悩んだような顔をして、答えた。

 

「最初に死んだ女以外は全員無事だ。

 だが、貴様はもう会うことは叶わんだろう。

 ……男とは違い、召喚した女どもは全員が勇者離宮へ送られ、そこで子作りに励んでもらう手筈になっている。

 つまり、彼女らとはそこの16番が番うわけだ」

 

 俺が、クラスメイトの女子達全員と子作りをする……? 

 絶望したような表情の桃田が目に入る。

 

「同情はしよう。だが検査の結果が全てだ。

 16番の方が男として優秀だった。貴様も十分悪くなかったがな。

 貴様の相手となる大公爵の娘達も美人揃いだ。早めに諦めをつけて、新しい愛を見つけるのがいいだろう」

 

 わずかに気の毒そうな顔の大柄兵士が、声も出せずにいる桃田へそう声がける。

 

 桃田と目が合う。

 絶望や悔恨、悲哀がぐちゃぐちゃに混じったような顔。

 桃田は拳を握りしめながら、血を吐くように言葉を紡ぐ。

 

 

「……釣谷。親友同士の約束、覚えてるよな? 

 

 ……絶対、守ってくれよ。託すぞ」

 

 

 涙を堪えながら血走った目で、真っ直ぐに俺の目を見つめて桃田はそう言った。

 

「……ああ。任せろ」

 

 ついさっき約束した時と同じ答え。

 でもその意味はさっきとは全く違う。

 

 現実になってしまったんだ。桃田はもう、栗栖さんを守れる場所には行けない。

 そこにいられるのは、俺だけだ。

 込められるだけの覚悟を込めて、桃田の目を見つめ返す。

 

 ふ、と。

 桃田は眉を下げて自虐的に薄く笑い、俺から目を逸らした。

 

 自分の彼女に親友と子作りさせる事を認めたんだ。

 桃田の内心は、きっと俺にも計り知れないほどの悔しさでいっぱいなんだろう。

 

 俺さえいなければ、桃田は彼女と一緒に暮らせたはずなのに。

 俺は何もしていないのに、桃田への罪悪感が胸いっぱいに広がっていく。

 

 重い空気の中、大柄兵士が桃田の肩をパンと叩いた。

 

「気に病むな。人生にはこんな苦難だってあるものだ。

 ……さあ、吾輩はお前の案内が役目だ。別れが済んだらすぐに向かうぞ。

 おい、16番。貴様はまもなく別の案内役がくる。ここで待っていたまえ」

 

 そう言って大柄兵士は桃田を連れて出口へ進んでいく。

 

 桃田は振り返らなかった。

 

 

 

 案内役はすぐに部屋にやってきた。

 知っている顔だ。

 

 やや小柄な身長に、ゆったりした白い服から覗く肉付きのいい身体。

 特徴的な垂れ目とウェーブがかったセミロングの茶髪。

 

 この短時間で忘れるわけもない。

 俺から勇者の種をたっぷりと搾り取った、あの茶髪お姉さんであった。

(他の男子達からも搾り取っていたことは無かったものとする。俺が決めた)

 

「お待たせしました〜。ついデータに夢中になってしまって……えへへ。

 改めまして、ソフィア・エリアンドラです。

 16番さんのご案内役を務めさせていただきますね」

 

 明るい部屋で見たソフィアさんの微笑みは、それはもう可愛すぎなのであった。

 緩い垂れ目が俺の心を溶かしていく。

 なんだ、この人。包容力の塊か? 

 

 大柄兵士がいた時の緊張感は、すでに部屋から完全に消滅していた。

 ソフィアさんに見惚れながらも、姿勢を正して話を聞く。

 

「16番さんはこれから、この城の西の離れにある勇者離宮という場所で生活していただきます。

 そこでたっくさん子作りをして、つよーい勇者を産んでもらうのがお役目ですね!」

 

 無邪気な笑顔で子作りとか言われると、どういう反応をすればいいか困るな……。

 

「勇者離宮へ入る前にいくつか準備も必要なので、まずは別の部屋へ向かいましょう!」

 

 ソフィアさんが歩き出すので、俺もついていこうとして気づく。

 

「あ、あの……俺、服着てないんですけど……」

 

 流石にずっと素っ裸で城を歩き回るのはまずいのでは? 

 普通に恥ずかしいし。

 

「ああ、大丈夫ですよ。 偉い人たちは通らない通路で行きますし、今着てもまたすぐ脱いでもらう事になりますから〜」

 

 俺を安心させるようにソフィアさんが笑顔で答えてくれるが、全然安心できない。

 え? また脱がされるって何? 

 俺の疑問を置き去りにしてソフィアさんがまた歩き出してしまうので、仕方なく全裸のままついていく。

 

 今度は見張り役の兵士たちもソフィアさんの指示によって別の持ち場へ失せたので、2人きりでの移動だ。

 

 俺の中ではどこか、この先の展開に期待してしまう自分がいるのを感じ取っていた。

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