クラス転移で勇者召喚かと思ったら子作り奴隷召喚だった 作:稲月
お待たせしすぎてしまいました(本当にすみません)。
二章は「セレン vs 主人公達」が最初のお話の主軸になります。
淫乱皇女によって強制的に爛れていく姿をお楽しみいただければ!
また、こちらのプロローグは少し先の未来の話です。
それではよろしくおねがいします(後書きに書籍化の宣伝がございます)。
二章プロローグ
その時。本物の死の恐怖というものを、俺は生まれて初めて思い知った。
それは文字通り、自分の生命が今まさに失われようとしている時にしか得られない、悍ましい感覚だった。
月明かりだけが頼りの暗い平原。一人の女の子の切羽詰まった叫び声が響く。
「竿斗くんッ! 逃げようッ! ねぇ!」
俺のすぐ隣で夕凪が叫んでいた。彼女は大粒の涙を浮かべながら、震える指で俺の腕を強く掴む。
だけど俺の足は動かない。恐怖と絶望で膝が震えて、ただ呆然と立ち竦むことしかできなかった。
「……っ! あ……」
夕凪に腕を後ろに引かれたせいで、俺は草むらに尻餅をついてしまう。
背後からは夕凪の小さな悲鳴が聞こえてきた。
——そして、俺たちの恐怖の元凶がすぐ目の前に立ちはだかる。
「クカカカ……。まさか今代の勇者が、これほどまでに臆病で軟弱な者だったとは」
底冷えするほどに、低い声。まるで蝿の群れが耳元で舞っているかのような強い不快感の残る声だ。
それは重く、力強く、そして有り余るほどの傲慢と侮蔑に満ちたものだった。
ズン、ズン、とその影は一歩ずつ俺の方へと歩み寄ってくる。
月光を背中に浴びて動くその存在は、およそ人間とは思えないほどの大きな影を俺と夕凪の上に落とした。
……当然だ。だってそいつは本当に、人間なんかじゃ無いのだから。
「全くもって、つまらん仕事だ。貴様には心底落胆させられたものよ。殺し甲斐のひとつもありはしない」
魔族。この世界における、人類の天敵。
それこそが、今まさに俺たちを殺そうとしている存在の名前であった。
およそ三メートルはあろうかという巨躯。暗い赤色の眼光。浅黒い肌は夜闇によく馴染む。
大人の頭ほど大きなその拳が、俺の目の前でギリギリと強く握り締められた。
「貴様には遺言を聞く価値すらない。せいぜいそのその女もろとも、無様に屍を晒すがいい」
魔族の拳が高く振り上げられる。夕凪の息を呑む音が耳元で妙にハッキリと聞こえた。
俺はその瞬間に、全ての時間がゆっくりになったような感覚を得る。
脳裏に過ぎ去るのは、この世界に来てからの数週間の記憶。
クラスメイトの女子たちと心を交わして、互いを知って、そして爛れた日常が当たり前になりかけていた記憶だ。
まだ志半ばだった。みんなと約束した目標は、もうすぐそこまで届きかけていたのに。
たった二人で離宮の外なんかに出るんじゃなかった。
深く大きな後悔も、今となっては何の役にも立ちやしない。
「……ごめん、みんな」
「竿斗くん……」
夕凪が後ろから俺に抱きつく。彼女は死んでも離さないとばかりに、俺の身体を腕で強く強く包み込んだ。
あと数秒後には、俺も夕凪も潰れたトマトのように赤い肉塊になっているのだろう。
痛みは感じるだろうか。意識はどうなるんだろう。来世は存在するのかな。
全身を支配する恐怖の中で、俺は現実逃避をする。
それでも魔族の拳は容赦なく、俺たちへ向けて途方もない勢いで振り下ろされた。
「死ねッ!」
巨大な拳が視界を真っ黒に埋め尽くす。
迫り来る死の気配に、俺はそっと目を閉じて。
『——サオト。腕を』
どこからか聞こえた凛とした声が、俺の魂を震わせた。
満月の眩しい、異世界の夜の事だった。
拙作が電子書籍化いたしました! オリオンノベル様から刊行中です(創刊らしいです!)
本日8/25より、各種サイトでご購入いただけます。
コミックシーモアでのみ、限定SSがつくらしいのでオススメです。
表紙イラストは蒼咲ゆきな先生が担当してくださりました。
皇女セレンと秋穂夕凪が登場しています。絵が良すぎる!
書籍の主な内容は以下の通りです。
・本編 11万字
→web版22話くらいまでと基本同じで、細かい表現等を修正しています。
・書き下ろし 2万字
→セレン新編です。怒涛の濡れ場が続きます。
webではなかなか出番が来なかった彼女ですが、この話ではセレンの知られざる(?)本音が垣間見られます。
・シーモア限定SS 5千字
→くるみ新編です。本作初の日本でのお話で、ギャグ回です。
悪巧みポンコツぶりっ子がお好きな方には是非読んでもらえると嬉しいな。
ご興味のある方は是非サイトを覗いてもらえると嬉しいです。
2巻の書籍化作業も現在進行中です。書き下ろしは何書こうかな……。
引き続きどうぞ宜しくお願いします。