柔らかな陽光が白亜の校舎に降り注ぎ、トリニティの回廊へ規則的に並んだ陽だまりを作り出す。午後の穏やかな時間。放課後の授業が終わる直前の、束の間の静けさの中を先生とナギサは歩いていた。
゛今日視察するのは、新しく出来た部活動だったよね゛
「は、い。んっ……! なんでも、レッドウィンターから来た文学を、自分達でも作り出そう、と、しているそうで、あ、うぅ……!」
二人の歩調は不思議なほどにゆっくりとしている。素知らぬ顔でポケットに片手を入れて歩く先生と、その前を案内しようとするナギサ。どちらも歩くのが早いわけではないが、それでも普段の二人を知るミカであれば、何か違和感を覚えたに違いないほどだ。セイアであれば、その原因までも見抜いたかもしれない。
゛どうしたのナギサ。歩くのが遅くなってるよ。……みんなにばれちゃうよ?゛
「……っ。せん、せい……~っ!」
ナギサが真っ赤な顔で先生を振り返る。しかしその瞬間先生がポケットの中で何かをかちかちと操作すると、びくりと彼女は身体を震わせて俯いてしまうのだった。
「お、おもちゃを、中に入れて視察だなんて……ふっ、ふー……ぅっ! へ、変態……なんて、ことを……!」
゛でもナギサもまんざらでもなさそうだよね゛
「~ぁっ! だ、だめです、つよく、しないで……!」
腸内をグネグネと掻きまわし、振動で蕩けさせていくシリコン質のディルド。ナギサは生徒がまだいっぱいいる白昼に、アナルに異物を埋め込んだまま視察をするという羞恥プレイを行っているのだった。
゛入れる前から濡らしてたし……ナギサの方が変態じゃないのかな?゛
「そんな、こと……ぁっ、は、ひきゅっ……! ふ、ふ、ふー……~うぅっ!」
ナギサが思いもよらなかった変態的な行為は、先生から言い出したことである。人払いをしたティーパーティーのテラスで、ちょっとだけ悪いことをしてみない? と些細な悪戯でもするかのような提案がされ、背徳的なプレイがはじまった。
(これのどこが、ちょっとだけ、なんですかっ!)
そう内心で怒りながらも、ナギサにはじわじわと込み上げてくる肛悦を耐え忍ぶことしかできなかった。
先生の言葉に戸惑い、その情熱的な視線に心臓の鼓動がうるさくなった。そして仕方ないですね……と下着とタイツを下ろした時には、クロッチ部分に小さく糸が引いていたことを思い出す。
受け入れたのも自分だ。この状況に羞恥と、背徳感と……それから興奮を覚えてしまっているのも、自分。それで先生に怒りをぶつけたところで、口先だけになってしまうのは明らかだった。
それに先生は先程から、ナギサが彼の言葉責めに抗おうとするたびにディルドの振動を強くしている。意地悪な目つきでナギサの痴態を見つめている。弱点を完全に意のままに虐められるのだから、形だけの反抗はより強い責めを誘うばかりだ。
「せんせい、だめ、です。もう、だめ、イ、く……!」
゛うん。新しい部活、ちゃんと見に行かないとね。活動が正しく行われているか、ね゛
「うー、くうぅー……っ!」
それでいて、ナギサがアナルイキしそうになるとぴたりとおもちゃの動きを止めてしまう。ふっと快感の途切れたもどかしさに先生を睨んでも、余裕たっぷりに微笑むばかりだ。
そうしているうちにチャイムが鳴り、部活動に向かう生徒達が廊下を行きかい始める。二人だけだったときにさえ誰かに露見したらとドキドキしてたまらなかったのに、盛んに生徒とすれ違うようになっていよいよナギサの心臓ははちきれんばかりだった。
「ナギサ様、先生、ごきげんよう!」
「ご、ごきげんよう……!」
゛お疲れ様゛
(ああ、もう……! 心臓が、うるさいです……!)
ナギサはそれでも出来る限りいつもの振る舞いを取り繕って見せていた。天から糸で引かれたように真っ直ぐ伸びた背筋、楚々として気品に溢れた足取り……しかしその歩みは遅々としている。
羞恥に染まった顔を伏せ、陽だまりから柱の影に、影から陽だまりに、常ならばあっという間の道のりを、ふわふわとした思考の中で辿っていく。あとどれくらいで着くのかもよくわからないでいるのに、先生は容赦なくスイッチを入れる。その度にお尻の中で快感が生まれ、攪拌され、不自然に身体が跳ねて足が止まる。生徒に不審に思われないよう、微妙に内股気味になった足で、また歩き始める。
(せん、せいぃ……!)
強張った翼の先端がいじらしく先生の袖に触れているというのに、彼はそれにも気付かないふりをしているかのようだった。
秘所はぐっしょりと濡れそぼり、タイツの内側は太ももの下の方まで愛液で湿っている。裾の長いスカートでなければ、その厭らしいシミが他の生徒に見えてしまうところだった。
そうして夢見心地で歩いているうちに、不意に先生が゛ナギサ゛と彼女の翼を撫ぜた。んひぅ……っ! と消え入るような鳴き声と共に、ナギサの肩が跳ねる。
有翼の生徒にとって、翼は性感帯ほどではないにしろ敏感な場所である。特にその根元と先端は触れられるとくすぐったくてたまらない。けれど何より重要なのは彼女達のアイデンティティーとも、象徴とも言えるそこに触れてよいのは、心を許した相手だけであるということだ。
翼を撫でられるのは他の種族で言えばキスをされる感覚に近く、肉体的なものよりも精神的な快楽が大きい。ナギサは今、心を直接撫でられるような甘美な幸福感に不意打ちで襲われたのだった。
ややあって、ゆっくりと振り向く姿はぷるぷると震えていた。
「は、い……?」
゛ここじゃないかな゛
「……あ」
そう言われてナギサはようやく、目的の部室に辿り着いていたことに気付く。先生が口に出さなければ、そのまま通り過ぎてしまうところだったことにも。
『ロマンス文学部』と華やかに装飾された看板など、普段なら見過ごすはずもないのに。
「……先生。普通に教えてくれれば、よいでしょう……!?」
゛ごめんごめん。でも触ってきてたのはナギサの方だよ?゛
「っもう!」
その通りなのでナギサは何も言えず、ぷいと顔を背けた。そうして息を整えてからドアをノックする。もちろんディルドは動いたままだった。
「ごめんください」
「はい……な、ナギサ様!? と、シャーレの先生!? な、ぬあぜここに!?」
「あなたがロマンス文学部の部長ですね?」
「は、はひ!」
「本日は新設されたロマンス文学部が、適切な活動をされて、いっ、るのか……抜き打ちで、視察に参り、ました。……入ってもよろしいですか?」
「ど、どうぞ!」
゛あはは、そんなに慌てないで。ゆっくりでいいから……ね?゛
「は、はい!」
部長は、学園の首長と話題の組織の長が予告なしに現れたことへの驚きでいっぱいいっぱいのようだった。慌てる彼女に案内されて部室に入れば、壁の一面を占有する本棚が目に入る。なるほど文学部らしい部屋であり、その背表紙はどれもレッドウィンターでよく見かける本ばかりだった。
「こ、こちらにおかけください……!」
「ありがとうございます」
そうして部長はぱたぱたと隣室へ向かい、部室には二人だけが取り残される。
「……ふう」
ナギサがソファーに腰掛ける直前、一瞬動きをとどめたのを先生は見逃さなかった。今の彼女のアナルにはディルドが挿入れられている。その取っ手部分は完全には埋まり切らず、ショーツとタイツとで固定している状態なのだ。
座ればそれが押し込まれてより苦しいのは想像にかたくない。しかし座らないのも不自然なので……ナギサは意を決し、ゆっくりとお尻を柔らかな座面に沈めていく。
「く、ふ……っ」
耳を澄ませていなければ聞こえないような小さな吐息が、ナギサの口から零れ出た。ソファーは軋む音一つも立てずに柔らかくナギサを受けとめたが、異物はぐにゅぅ……! と確かに彼女を深く突き刺したのだ。
先程よりも更に深く、体重が乗った分だけ奥を。これまで届いていなかった場所をぐりぐりと掻き混ぜられ、ナギサの視界にぱちぱちと白く火花が弾ける。
それでも声を抑えられたのは彼女の理性の賜物だった……のだが。
゛ナギサ゛
「せん、せい? なに、を゛っ……お゛ぉ~むっ!?」
そこに先生が追い打ちをかけた。優しく声を掛け、肩に手を置き……そして体重を軽く掛ける。焦らされ続けていたナギサにとってその一撃は致命的だった。咄嗟に口を手のひらで塞いでいなければ、部長にまで聞こえる濁声となるところであった。
「~っふ、くっ! せん、せい、だめ、だめっ、です……! それ、おく、きてぇ……っ!」
゛ナギサ、ここにはいっぱいレッドウィンターの本があるね゛
「は、ひっ。みれば、わかる、でしょう……っ!?」
゛とても熱心に活動してるみたいだけど……視察だからね、もっとちゃんと見ないとだめだよ゛
「みます、みますからっ! おさえるの、やめて、くださいぃ……っ……!」
白いハイヒールのつま先が切なげに踊る。肩を押さえられているせいで菊口は根元までディルドを咥えこみ、その一挙一動をあますことなく腸壁で感じ取ってしまうようになっていた。
「や、あ、ああっ、いじ、わる……! いじわる、です……っ! これ、おと、ひびいて……!」
゛もしかしたら聞こえちゃうかな?゛
「や、あぁ……っ! みみもと、ささやくのも、だめ、だめ……っ!」
ヴヴヴ……とくぐもった駆動音が座面から響く。近くで耳を済ませなければ聞こえないような小さな音だが、身体の中から直接振動が伝わってくるナギサにそんなことはわからなかった。
先生の中性的で落ち着いた声が鼓膜を揺らす。じんわりと脳内に染みこんで、心地よく痺れさせていく。
白金の髪を振り乱し、膝に置いた手を握りこんだり、開いたりして悶えているのに、先生は容赦なくナギサの身体を押し込んでくる。
そうして隣室から茶器の音を聞くと、ナギサの耳朶をそっと食(は)み、ぐぐぐぅっ、と力を一層強く掛けた。
「あ、は、あああ゛……っ……ッ~!」
゛イって゛
「あ、イ、く……イキ、ます……っ!」
ふわりとナギサの意識が浮き上がる。足のつま先を弓の弦のようにピンと伸ばし、びくびくと身体を密やかに痙攣させたまま紅潮したおとがいをさらけだした。翼は無意識に先生の手を包み込み、甘えるようにさすっている。
゛ちゃんとイケたね。偉い偉い゛
「あ、ふ、く、フー……ぅ……ッ!」
(あ、頭、撫でられて……)
ナギサは頭を撫でる手のひらの温もりに惑溺しながら、息を整えようとしていた。しかしその手もすぐに離れ、寂しさが残る。ディルドの動きも止まってしまった。
「紅茶が入りました……! あれ、ナギサ様……」
隣室から戻ってきた部長がナギサを見て首を傾げる。どきりと心臓が跳ねた。
(ば、ばれてませんよね?)
「もしかして、部屋が暑かったでしょうか?」
「……いえ。大丈夫です。お気に、なさらず」
「それなら……では、紅茶をどうぞ。先生も」
゛ありがとう゛
「ありがとうございます」
差し出された紅茶の爽やかな香りに、絶頂の余韻でぼやけていた思考が輪郭を取り戻していく。ナギサは深く、深くその芳香を味わってから、白磁のカップに口を付けた。
「あれって……」
「シャーレの先生とナギサ様、距離が近いね……」
「ナギサ様の顔、ちょっと、その……」
「ね。いつもの二倍くらいお美しいわ……もしかして先生のお陰?」
「これ、キテるんじゃない?」
「先生と生徒、禁断の恋愛……!」
「燃える!」
隣室の入り口から五人の生徒が顔を覗かせ、ひそひそと二人を噂していた。
「……あちらは?」
「部員です。……すみません、外させましょうか?」
「……いえ、結構、です」
彼女達の声はナギサに聞こえていた。かなり確信を突いているものだから、ナギサは恥ずかしくて仕方なくいっそう羞恥を煽られる。
しかし注意するだけの気力もなかった。
「ナギサ様、髪が顔に張り付いてらっしゃるの、イイ……!」
「あれを見るとわたし、その……ふふふ、下品なのでやめておきます」
「芸術だわ。あの紅顔……あの優美な所作……どう表現すれば……」
「あの信頼に溢れた目……! やばいですわ、尊みであの世に羽ばたいてしまいそうですわ」
「次の部誌ネタ、決まり……!」
゛みんな元気だね゛
「あはは……元気すぎて困るくらいです」
人間関係は良好。肩書きや権力を争っている気配はない。それだけでトリニティの中ではかなり珍しい部類だった。
「さて、では活動内容の確認……そうですね、あなた方の作品を見せていただけますか?」
「「「「「「ヒェっ」」」」」」
「? 何か不都合なことでも」
「いえいえいえ! そんなことは誓って! 誓ってございません!」
「え? わたしたちの作品がナギサ様に……? 好き勝手書き散らした妄想を……?」
「お目汚しなんてものじゃありませんわよ! 死ぬ! 誰かわたしたちを殺して、コロシテ……!」
「……わたしの前作、先×ナギでしてよ」
「おま、お前ぇ! 何事! 死刑!」
「あ、ああ……」
(なるほど)
阿鼻叫喚。どうやらナギサは地獄の蓋を開いてしまったようだった。
■
「皆さん、かなり精力的に活動されておられるようですね」
゛そうだね。問題は無さそう……いや、最後に発生してた気もするけれど゛
誰が学園の権力者に自分の作品を仔細に読まれ、怪しい表現について意図の説明を求められるなどと想像するだろうか。ある種の拷問を味わった部員達は、血を吐いて床に沈んでいった。
視察は終わったのだ。活動が認められる代わりに、彼女らの大事なものを犠牲にして。
「少し心が痛みましたが……手を抜くわけにはいきませんから」
゛うん゛
回廊に注ぐ陽光は傾きかけている。終わりの早い部活の生徒達とすれ違う中で、誰も見ていない瞬間を見計らって、ナギサはそっと先生に肩を預けた。
「それで、その……お時間、いただけますか? これだけ意地悪しておいて放置なんて、まさか……しませんよね?」
見上げる瞳はどろりと情欲に潤んでいた。リモコンを操作すれば、ほんの僅かにそれが見開かれ、ナギサは先生にしがみつかなければ立っていられないようになる。
これ以上ないというほどの発情が、触れた肌から伝わってくるようだった。先生は頷き、ナギサの身体を支えて暗がりへと消えていった。
■
「ここであれば、誰にも見つからない、はずです」
゛ここって……゛
「わたしの、セーフハウス、です。ッあ、ふ……!」
迷路のように入り組んだ道をナギサの案内に従って進むと、人目を憚るように隠されていた部屋へと辿り着いた。
トリニティは歴史の長い学園であり、後ろ暗い政争も中には含まれる。有事を想定したセーフハウスは、代々各派閥の長に受け継がれるものであった。
゛……なんか、休憩室みたいだね゛
「そう言われると、そのように使おうとしているので否定できないのです、が、ぁっ……!」
゛休憩って、そっちの意味じゃなかったんだけど゛
「あっ、え……!」
三人は寝られるサイズのベッドが堂々と鎮座している。部屋の内装は質素なだけに、先生が休憩室だという感想を抱いたのも無理はない。そのままの意味で漏らした言葉だったのだが、どうやらナギサは別の意味と勘違いしてしまったのだった。
「ま、紛らわしいではありませんか! もう、もう……っ!」
゛ごめんごめん゛
翼で先生を軽くはたいてから、ナギサは部屋の隅にあった収納ボックスから何かを取り出した。先生は一瞬それを見て、ベッドに向かおうとして、それからもう一度首を振ってナギサを見た。
゛ナ、ナギサ? それは、あれだよね?゛
「……手錠と、アイマスクです」
゛気のせいかな。私にはそれがガチのやつに見えるんだけど゛
「このセーフハウスに襲撃してきた相手を拘束するための物ですから、当然かと……」
右手には鈍色の光沢を放つ手錠、左手には一切の光を透かさない漆黒のアイマスク。とろりと蕩けた目で迫りくるナギサに、先生は恐怖した。
逃げ場はない。この部屋唯一の出口はいつのまにかナギサが背にしていた。荒事に不得手なナギサが相手であっても、先生の勝ち目はない。
゛ちなみにそれで、どうするつもりかな?゛
「これは、その……」
ナギサが言いにくそうに目線を逸らす。
「……使って、ほしいのです」
゛私に?゛
「はい。先生に……」
先生は内心でほっとした。わたしとここで一生暮らしましょう、などと言われる恐ろしい想像が、想像のままで済んだことにである。
今日はかなりナギサを辱めたという自覚があるだけに、その安堵はひとしおであった。
゛一応聞くけど、なんで?゛
「……言わなくては、だめ、ですか?」
゛嫌なら言わなくてもいいよ゛
ナギサが先生の手に、二つの拘束具を乗せる。そのままぽふりと先生の胸に頭を押し付けると、髪に挿した百合の香りが華やかに先生の鼻孔をくすぐった。
「……先程の、本」
そのまま先生の腰に手を回すとくるりと位置を入れ替え、もろともにベッドに倒れ込む。ナギサは自ら先生に押し倒される形となって、白金の髪をしどけなくシーツに広げさせたまま、ぼう、とした瞳で熱っぽく先生を見上げていた。
「わたしをモデルにした生徒が、このように先生に押し倒されて、睦言を囁かれているものがありました」
゛それはアウトなんじゃないかなあ……゛
「ええ。以前のわたしであれば、禁止していたのでしょう。ですが……」
ナギサは胸元で両の手首をくっつけ、先生へと差し出す。手錠などなくとも手首を掴んで抑えれば拘束できてしまいそうな、華奢な腕。対生徒を想定した手錠など着けられれば、どうすることもできないに違いない。
「いいなあ、と思ってしまったのです」
ぽつりと、艶めく唇が零す。
「何も抵抗できない状態で、先生に身体も、心も支配されて……それが、羨ましいなあと、わたしもされてみたいな……と」
゛だから禁止にしなかったの?゛
「……はい。その、変、でしょうか」
゛変なんかじゃないよ゛
「あっ……」
先生はナギサの視界をアイマスクで隠してしまった。自分から頼んだとはいえ、暗闇は暗闇だ。驚いているうちに、軽やかな金属音が二つして、両手も手錠で拘束されてしまった。
「こ、れ……本当に、手を動かせないのですね」
゛そうだね。今、ナギサは何もできないよ゛
「はあぁ……っ!?」
少しでも情報を得ようと研ぎ澄まされた聴覚に流し込まれる、先生の声。ぞくぞくと背中が痺れて、たまらなくなる。
「んっ、ああー……っ! おしりの、おもちゃ、動いて……!」
同時に激しく駆動し始めたディルドに、快感はさらに膨らんでいく。
゛こんなことされたいだなんて、ナギサは変態だね゛
「あ、あ、ああ……! や、あっ、へんたい、だなんて……」
゛じゃあどう言えばいいのかな?゛
「あう……!」
先生がナギサの両足を持ち上げ、がばりとM字に大きく開かせてしまう。それはナギサにとってあまりにも、あまりにもはしたない格好だった。
「あ、ああ、せんせい、これ、だめですっ! こんなかっこう、はずかしすぎます!」
゛ナギサ゛
「あふっ」
゛駄目だよ。口答えも、抵抗も……ね?゛
「あ、はああ……!」
かあっと頭が燃えるように羞恥がこみあげているのに、先生の一言で何もできなくなってしまう。抵抗しなくてはいけないはずなのに、支配されている、求められているという実感に心は幸福で打ち震える。
ナギサはすっかり、隷属のマゾヒズムに目覚めてしまっていた。
手を拘束されただけならばいくらでも抵抗しようがあるというのに、ナギサの心は全身を縛られたかのように感じていた。先生がナギサの靴を、タイツを脱がせていっても、肌を撫ぜる感触に息を漏らすばかりだった。
゛ナギサ、すごい濡れてるね。こんなので歩いてたんだ゛
「あ、み、みないで、くださ、あひゅっ……!」
゛足首までぐしょぐしょだよ。……もしかしたら、誰か気付いたかもしれないね゛
「あ、や、あっ……! や、いや、ばれて、なんてぇ……っ!」
゛ショーツも、ここまで濡れてたら、洗っても匂いが取れないかもね。ナギサの、えっちな匂い゛
「あ、んっ、ああ゛……っ! だめ、イ、く、イキ、ます……っ!」
ナギサは言葉責めだけで軽くイってしまった。腰を浮かせようとして、支える足が先生に取られているせいで媚びるように情けなく尻を振って終わる。
゛もしかして、言葉だけでイっちゃった?゛
「は、いっ、あっ、まだ、イって……っ!」
゛そうなんだ。やっぱり変態だね。トリニティで一番偉くて、清楚に振舞っているのに……私に囁かれるだけでイって、こんないやらしくお尻を振るなんて゛
「あ、は、はっ、フーうぅっ! ハッ、ハッ、あ、あくぅ……!」
先生の言葉に自分の淫らな姿を想像してしまう。誰かに自分の痴態が見られる恐ろしい状況、そこから訪れる破滅……それら全てが、熱い血流を全身に送る。背徳感と罪悪感、快楽と羞恥とがぐちゃぐちゃに入り混じって、一体どれを感じているのかすらわからないままで甘イキをする。
どれほど口で否定しても、変態としか言いようがないとナギサにも分かっていた。先生にそう罵られることも、何故か気持ちよくて仕方がなかった。
゛うわ、すごいよナギサ。ショーツを取ったら栓を抜いたみたいに零れてきた゛
「あ、やあ……! いわ、ないで、いわないで、ください……!」
゛言って欲しいんでしょう?゛
「いわ、ないでぇ……!」
抗議を示すようにぽす、ぽすとベッドをお尻で叩いているというのに、先生はナギサの両足を抱えたままショーツを抜き取ってしまった。守るものの無くなった秘所が冷たい空気に晒されて、ひどく心細い感覚に襲われる。その周囲はべっちゃりと、濡れていない所を探すのが難しいほどに濡れていた。
゛……これでばれなかったの、奇跡だなあ゛
むわりと舞った雌の香り。意識が眩むほどの濃密なフェロモンに、もう先生は我慢することなど出来なかった。
矢も楯もたまらず、ディルドを引っこ抜く。
「あおお゛ーっ!?」
苛烈な快楽にナギサの声はあられもなく濁っていた。潰れたカエルのように無様な格好で、獣性を滲ませた嬌声をあげながら、びくびくと痙攣して快楽を味わう。純白の制服に似つかわしくない淫靡さであった。
けれどそれは先生の陰茎が苛立つばかりだった。元の形を忘れてぽっかり開いたままのアナルに、その怒りを突き立てる。
「お゛っ、ああ゛っ! あづいの、はい、って……! これ、これ、せんせいの、です……!」
゛よくわかったね゛
「いっぱい、いれられました、からっ……! んあ゛っ、ああ゛っ!? うごき、はじめて……え゛っ!」
とちゅ、とちゅっ! と軽めのピストンの度に、打ち付けられた腰に愛液が纏わりついて、すぐに離れる厭らしい音が響く。
「あっ、あっ、ああ……! あつ、い、せんせいの、あつくて、すき、です……っ!」
゛いつもより吸い付いてくる……!? えっちな道具いれて、みんなにばれるかもしれないっていうのに、興奮しすぎじゃないかな!゛
ナギサの腸は先生との行為を重ねるうちにすっかり形を覚えてしまって、先生の肉竿全体にぴとりと吸い付くようになっていた。しかし今日はその力が格別に強くディープキスのように絡みつくものだから、一往復するのも一苦労なほどに大きな快感をもたらすのだった。
それも白昼の羞恥プレイが原因だと思えば、ナギサの変態性は想像以上に凄まじい。
「あ、んッ! はっ、はっ、は、い……イ゛っ! ばれるかもって、すごい、どきどきしてるのに……せんせいが、いけないんです。となりで、あんなめでわたしを、みてるから……ぁっ!」
゛へえ、私のせいなんだ?゛
「あ、や、ちが、そうじゃ、なく、てェッ!? あっ、ア゛ッおお゛ッ!? だめ、だめ、おく、ぐりぐりされるの、だめ、や、イキ、ます……イク、イク……!」
いくらその通りであっても、自らの性癖を主のせいにするなど分を弁えない行為である。罰されるべき不敬である。
それをわからせるために先生はナギサの身体をさらに持ち上げ、腰までもを浮き上がらせてしまうと、上から杭を撃ち込むように性器を突きこんだ。
スカートが重力に引かれて垂れ落ち、淫靡に彩られた臀部も、すらりとスタイルよくくびれた腰つきも全て生の肌を晒す。それを恥ずかしがる余裕はナギサにはない。正確には、それに意識を向ける余裕がないほどに快楽が大きかったのだ。
「あ、おお゛ー……っ!? あ、イって、イって、ますから! イって、るのに、ぐりぐり、やめてくださ、ああ~ッ!?」
亀頭が子宮の裏側を刺激し、ぐりぐりと腸の深い所を圧迫してくる。それがたまらなく気持ちよく、ナギサは足を突っ張って喘ぐ。
(この、姿勢っ、先生の重みが全部かかって、深くまで来る……っ!)
゛私のせい?゛
「わ、わたしの、せい、ですっ! せんせいじゃ、なくて、わたしが、あ、ああー……! はっ、ふ、フー、っく~ふう゛っ!? だから、おしおき、してくださいっ! もっと、もっと、わたしを、せんせいのものに、して、くだ、ああーっ!?」
゛大人を誘惑する悪い言葉を覚えて、イケない子だ!゛
「は、いっ! だから、だから……! あ、お゛っ、おお゛おおお~ッ!?」
どちゅん! と突き刺された肉槍から、罰を与えるかのように熱い白濁が撃ちだされる。
「こ、れっ、イ、ぐーッ! ……ッうぅ!?」
イク端から脈動と共に送り込まれる熱。深く、イク。何度も、何度も。身体は痙攣が止まず、噴き出た愛液がナギサの顔を汚す。柔らかな尻が力んでくぼみ、その度に菊肉は先生の肉竿の根元を噛み締める。そうしてまた、熱が注がれる。
これを見て、彼女がトリニティで最も尊いとされる人間だなどと誰が思うだろうか。快楽を覚えてしまった淫靡な天使がそこに一人、いるだけである。
「はっ、はっ……ハー……ぁぁ……~っ゛!」
ナギサが絶頂から戻ってきても、両足はまだ先生に浮かされたままだった。彼女に被虐を覚えさせた肉棒は、未だに固く、焼けそうなほどに熱い。余韻で締め付ける度に菊輪がその固さに押し退けられて、びぐぅっと下腹が震える。
何よりも、先生の目。鋭くナギサの視線を、心を、身体を捕らえて離さないぎらぎらとした目が、ナギサを背徳的な悦びで満たしていく。ぞくぞくと甘い痺れが身体を駆け巡る。
「あ、アア゛っ!? また、うごい、てぇ……!?」
゛ナギサ、ここなら大きな声を出してもばれないから……いっぱい、お仕置きしてあげるね゛
「う、あ、はぁー……ああ! は、い。はいっ! いくら、でも、すきに、してください……!」
こうしてナギサは、今夜も全てを先生に差し出して二人の世界に溺れていく。トリニティの片隅で誰にも知られることなく、密かに、甘やかに。