しとしとと雨が降っている。喧嘩から戦争まで、火種の絶えないキヴォトスを優しく包み込むような雨音が、シャーレ執務室の窓を鳴らしていた。
「雨は明日まで降るそうですよ」
ぽつりと。夜の気配の垂れこめ始めた空を眺めながらノアが零した。その手には終業後のリラックスタイムにと、手ずから淹れたコーヒーを三つ乗せたトレイ。くゆる湯気と芳醇な香りが静かに部屋に満ちていく。
「はい、どうぞ」
゛ありがとう、ノア゛
「ユウカちゃんも」
「ありがとう、んー……! ……ふう。もう、先生ったら、放っておくとすぐ仕事を貯めるんですから……」
゛ごめんね。今日は二人が来てくれて助かったよ゛
椅子に座ったままでユウカが目一杯伸びをする。その動作はブレザーを脱いだシャツ一枚の向こう、豊かに成長した膨らみの存在を存分に強調していた。柳が風にたわむような柔らかな仕草で薄いシャツの生地が押し出され、黒いブラジャーの模様が透けて見えている。ともすれば角度によっては、シャツの隙間から胸の谷間が覗けてしまうのだった。
無防備とも、はしたないとも言える姿。ノアも先生も特段口を挟みはしなかった。ただ先生はユウカにちらちらと視線を向けて、そのラッキースケベを目にしようとはしていたが。
そしてその好色な目線は、二人を横から眺めているノアにはバレバレであった。
「……ふー。ああ、ノアのおかげでなんとか定時で終わらせられたわね……」
「どういたしまして。……ふふ」
「な、なによ」
「いいえ? なんでもありませんよ?」
「絶対何かある時の笑い方じゃない……」
にこにこと、笑顔の下に何やら含むもののあるような笑い方だ。それはユウカにとっては見慣れた表情で、大抵こうしてノアが笑っている時はとんでもない爆弾を放り込まれると経験則から知っている。少し甘めのコーヒーを飲みながらも身構えるには十分だった。
「いえいえ。休日朝早くに突然電話で呼び出されて手伝いをお願いされたことを恨んで……なんて、いませんよ?」
「そ、それは悪かったってばぁ!」
「冗談です。相変わらずユウカちゃんはわかりやすいんですから」
ノアにからかわれ、ユウカが慌てるのもむべなるかな。今日は土曜日、本来であれば多忙を極めるシャーレと言えどもこうしてオフィスを開けているはずがないのだ。……もっとも先生は休日返上上等とばかりに生徒の元へあちこち駆けつけているため、その意識は薄いようだが。
それでも休日に突然積み重なった業務を手伝って欲しい、などと呼び出されるのはノアにとって初めてのケースだった。それもなんだかんだ文句を言いながら先生の世話を焼かずにはいられないこの友人がである。常であれば、彼女一人でどうにかするだろうに。
(わたしを呼んでまで急ぐのは……理由があるんでしょうね)
何か隠し事がある。そうノアが確信を抱くのは難しいことではなかった。
「うふふ」
゛ノア。今日のお礼に何か欲しいものはある?゛
「あら、お礼なんていりませんよ? わたしがユウカちゃんと先生を手伝いたくてしたことですから」
゛それでもだよ。もちろんユウカにも……本来私がちゃんとしていれば、こうはならなかったのだから゛
「あらあら……」
そういうことであれば、とノアが目を細める。踏み込むかどうか悩ましかったけれど、お礼というなら遠慮なく。
「先生、わたし知りたいことがあるんです」
゛何かな゛
「ユウカちゃんと付き合い始めたのですか?」
「ぶっ、んぐ……!? の、ノアぁ!?」
ユウカが驚いて口に含んだコーヒーを吹き散らしかけ、乙女の尊厳にかけてなんとか飲み込む。顔は可愛らしいほどに真っ赤だった。
「ここ最近ユウカちゃんはとても可愛いんです。身だしなみを気にする仕草が一日におよそ十回増えて、何かと理由をつけてセミナーの業務終了後に出歩くようになりました。それはきっと先生と何かいいことがあったのだろうなあ、と思っていたのですが……」
「そ、そんなこと……ないわよ」
「ユウカちゃんはこのように恥ずかしがり屋さんですからね……そういえば今日も、わたしはユウカちゃんに呼び出されて来たわけですが、それはつまりユウカちゃんと先生が朝から二人きりで会っていたというわけで……はて、ユウカちゃんがずっと先生の業務を手伝っていたのなら、こんなに溜まっていることはないでしょうから、二人が出会っていたのは業務外の用件ということに……あらあら、一体何をしていたのでしょうね?」
「う、うぐぅ……」
「それともわたしには教えていただけませんか?」
教えられない。それもそれで一つの答えではある。その時点でほとんど自白しているに等しいけれど。
けれどできることなら、きっぱりと事実を突きつけてほしかった。二人の口からそうなのだと言われれば、自分の中に秘めた気持ちにも諦めがつくというものだ。かつて濡れた窓に指で書いた言葉、『君は誰を一番愛するのか』。その問いを思う理由は、言うまでもないのだから。
(雨は好きですが……もしかしたら、今日は悲しい雨かもしれませんね)
そう言えばあの時もこんな静かな雨の日だった。あれは今でも心躍る優しい一幕であるけれど……もしかしたら、今日は忘れられない悲恋の雨になるかもしれない。そんなことを思う。
「べ、別にノアが想像しているようなのじゃなくて……」
「あら、じゃあなんなのでしょうか?」
「それ、は……」
゛付き合ってはいないよ。ただ私のお願いを聞いてもらっているんだ゛
歯切れの悪いユウカを先生が遮った。
「お願い、ですか?」
繰り返すと、先生が深呼吸を一つ。覚悟を決めるようなその動作に、ノアも自然と身構えていた。
そして。
゛いわゆる、性欲解消をしてもらっていて……゛
「な、なななな先生!? 言うんですか!? 言っちゃうんですか!?」
゛言わないと不誠実かなと゛
「言うのもわたしに不誠実ですよ!? デリカシーとプライバシー! ないんですか!?」
「あらあら……」
親友に情事を暴露された羞恥に顔を染め、ユウカは先生の胸倉をつかんで揺さぶっている。手加減する余裕もないのか、放っておけば先生の首が取り返しのつかないことになってしまいそうな勢いだった。
゛だ、って、二人の間に、変な誤解は生みたく……あ、まって、これ本当に首が、イっちゃう……!゛
「それはそうですが、だからと言ってもっと言い方とか、心構えとかぁっ!」
「ユウカちゃん落ち着いて、それ以上は駄目ですよ。先生が逝っちゃいますから」
「あっ……ご、ごめんなさい」
゛お、おおう……私も、ごめんね゛
二人して謝る気まずい空間。その合間にノアは先生の背後に回っていた。それから左右に頭を傾けて違和感がないかを確かめている先生の頭を……「ということは、です」その胸の中に抱え込んだ。
「付き合ってはいないけれど性行為に付き合っている……いわゆる、セフレというものでしょうか」
゛お? ……そうなる、のかな?゛
なるほど、ならばまだやりようがあると、ノアは一層強く腕に力を込めた。むにゅりと、先生の後頭部がユウカのそれよりも幾分豊かな感触に包まれる。ユウカよりも女性らしさを備えているその双丘は、ノアにとって密かな自慢だった。
「の、ノアぁ!?」
「なんでしょうユウカちゃん」
「な、なんでしょうって、何をしてるのよ!?」
「先生の首が楽になるよう支えているだけですが……」
「もっとやりようがあるでしょう!?」
やんやとユウカが叫んでいる。顔はさっきと同じく赤いけれど、今は羞恥以外の感情も見え隠れしていた。
「何がいけないんですか? ユウカちゃんは付き合っているわけではないんですよね?」
「それはっ! そう、だけど……」
「でしたら、いいじゃありませんか。それに……先生?」
するすると背を屈め、ノアが先生に囁いた。彼女の長い白髪が垂れて、先生の耳を心地よくくすぐる。思わず肩を震わせてしまうくらいにこそばゆいのに、ノアの声音はそんなことを忘れさせるほどに艶めいていた。
「性欲の解消であれば、一人よりも二人……どうでしょうか、わたしも一緒にいただくというのは」
仲間外れにされるのは寂しいですから、と。ぽつりと零された言葉と、既に興奮しつつある下半身に従って先生は頷いていた。
■
「その……これは流石にちょっと想定外と言いますか……」
タイツを脱ぎ、休憩室のベッドで四つん這いの姿を晒す。先生との初めての性行為にまず要求されたのは、ノアの想像を逸した行動だった。
゛ごめんね、私の性癖がちょっと特殊で……゛
浣腸用のシリンジを構えた先生が、ノアの素足を眺めながら申し訳なさそうな声で言う。声ばかりは落ち込んだトーンなのに、その視線は温度を感じられそうなほどに熱い。少しめくり上げればショーツが見えてしまう、プリーツのスカートと太ももの際どい境目をまんじりと見られているのがはっきりとわかって、ノアは顔から火が出てしまうのではないかと思えた。
「うう……だから言いたくなかったのにぃ……。でも、飛び込んできたのはノアなんだからね……!」
「ごめんなさい、ユウカちゃん。まさかお、お尻の穴のほうだとは思ってなくて……」
「ほうって、お尻じゃないほうだとは思ってたってこと!?」
「はい」
「ちょっと!」
「だって最近のユウカちゃん、とても幸せそうでしたから」
「ぐぐ……!」
゛もう一度確認するけど、本当にいいの?゛
後ろの穴を用いた特殊な行為だと思っていなかったのだから、今ならまだ止められる。そんな気遣いにノアは首を横に振った。
「大丈夫です。遠慮は……どうかしないでください」
正直、肛門を用いた行為をすると聞いて一瞬耳を疑いはした。けれどここで引きさがっては乙女の名折れというものだ。
゛わかった。じゃあ、いくね゛
「どうぞ」
先生がスカートを持ち上げれば、肉付きのよい尻と楚々とした色気を匂わせる白いレースのショーツが露わになる。突き出された臀部にごつごつとした大きな手が触れ、感触を味わうようにそっと揉みこまれた。
「あっ……」
びくりと震えた桃尻の輪郭をなぞるように先生は指を這わせる。たっぷり詰まった肉の柔らかさときめ細かな肌の手触りを楽しんでいると、悩まし気に腰が揺れるのが愛らしい。それからショーツの縁に手を掛けると、するするとそれを下ろしてしまった。
「ノアのお尻、綺麗ね……」
「……あ、あまり見られると、恥ずかしい……」
ノアの窄まりは思わずユウカも見入ってしまうほどに美しい桜色だった。それが触れられるのを待ちわびているかのように口を開けては閉じてを繰り返している。またショーツと彼女が使われるのだろうと思っていた女性器の間には一本銀の糸が伸びていて、彼女の興奮のほどを表していた。
゛いれるよ゛
「はい……んっ……!」
差し込まれたシリンジの先端から、温かい浣腸液がノアの中に流れ込んでくる。出すための器官に異物が浸透してくる不思議な感覚に、ノアは背中を丸めて身悶えていた。
「はっ、ああ……こ、これは……!」
「変な感じでしょう? でもこれをしないと色々困るから……」
「それは、わかるのですが……あっ、お腹が、変な感じに……!」
腹部に張りを感じるほどに液体を詰め込まれると、ノアの声が徐々に切迫し始めた。漏らしてしまわないよう力んでいるために、太ももには筋が浮き出ている。普段余裕の姿勢を崩さないノアの始めて見せる姿に、ユウカも息を呑んだ。
゛うん、これで入ったよ゛
「せ、せんせい……どうか、トイレに行かせてください……!」
ぐるぐるとお腹が強烈な排泄感を訴えている。脂汗を滲ませながら願ったノアに、先生はこともなげに告げた。
゛トイレなら、あそこだよ゛
「あ、ああ……」
示された場所は隣の部屋。距離の上では大したことはない。しかし現状で、決壊をこらえながらとなると、果てしなく遠い……。
「大丈夫よ、ノア。わたしが支えてあげるから」
「ありがとう、ユウカちゃん……」
それでもなんとか立ち上がると、ノアはユウカに支えられてトイレの中へ消えていった。
■
それから二度ほど同じことを繰り返して。トイレから出てきたノアは少し据わった目をしていた。尊厳という大事なものを少し失ってしまったがために、輝きの失せた目。ノアを出迎えた先生がその様子の変化に違和感を感じた瞬間、その胸元にノアがとんと頭を預けてきた。
゛おお……?゛
「先生、これは高くつきますよ……」
受けとめようとした先生は、しかしノアに肩を押されたことで勢いそのままベッドに押し倒される。柔らかな感触に受けとめられたものの、ノアに上から覆いかぶさられて逃げようがなくなってしまった。
至近距離で見つめ合う。彼女の長い髪がカーテンのように垂れ、外の情報を遮っている。一瞬先生はユウカに助けを求めるべきか悩んだ。
それはノアの目にどこか恐ろしさを感じたからだ。これは例えるならそう、捕食……それも追い詰められた獣によるそれだと。
「キス、したんですか?」
捕食者から静かに言葉が落とされる。
゛え?゛
「ユウカちゃんとはキス、したんですか?」
゛して、ないけど……゛
キスをしないというのが、この行為が性欲解消のためであると言い張れるよう、先生の引いた一線だった。
「でしたら……」
頬に濡れた感触。あー! と、ユウカが叫んでいた。
「ふふ、わたしは別にユウカちゃんから先生を奪いたいわけではないのですが……でも、これくらいならいいですよね?」
悪戯めいた笑みを浮かべると、ノアの顔がおもむろに離れていった。
「の、ノア! いま、ききき、キス!?」
「さてどうでしょう? キスと言えば、キスかもしれませんね?」
「ず、ずるい! わたしも!」
今度はユウカの顔が至近距離に迫ってくる。その勢いは先生の想像以上のもので、弁明をする暇もなく先生は唇を塞がれた。
「あいだぁっ!」
゛いたいっ!?゛
「あらあらユウカちゃん。それは怪我しちゃいますよ?」
頭蓋の中に衝突音が響くような、もはや頭突きと言ってもいい口づけだった。興奮よりも痛みが勝る。唇を押さえて悶えるユウカにノアが何事かを囁くと、彼女は遅れて頬を染め、それから何をしたかを思い出して先生の胸に倒れ込んだ。
「だ、騙された……! もうお嫁にいけない……」
「あら、先生にそうして貰えばいいじゃないですか」
゛ノア!?゛
「冗談です。あるいは、わたしを貰ってもいいんですよ?」
「ノーア゛ぁー……!」
「あらまあ、ユウカちゃんに怒られちゃいそうです」
どうやらネタ晴らしをしたらしい。はたしてこれがユウカを炊きつけるための行為なのか、それとも別の意図を含んでいるのかはわからない。ただノアは調子を取り戻したように見えた。
何はともあれ、と言ってノアがユウカごと先生を抱きしめる。先生は二人分の柔らかさと温度で感覚を埋め尽くされ、もはやそれ以外のことを考えられないような状態だった。胸板で潰れたユウカのおっぱい、目前に見える恥じらいの顔、二人の匂いが混ざり合っているというのに不快感はなく、むしろ脳が蕩けてしまいそうなほどに甘い。
これが味わえるのだから、二人の重みなど何も苦ではないと思えた。
「先生……固くなってる……」
当然のごとく固くなった肉棒は、ちょうどユウカのお腹を押し上げていたのだからばれないはずもない。ユウカは情欲を目に灯すと半身をずらし、先生のズボンのベルト、それからチャックを下ろし、いきりたったそれを露わにした。
勢いよく飛び出したそれが、ぺちりとユウカの太ももを叩いてこぎみよい音を鳴らす。その姿を一目見ようと、ノアが、続いてユウカが身体を先生の上からどかした。
「あ、あらぁ……」
「ふふ、ノア。いずれはこれがあなたのお尻に入るんだからね……あむ」
驚嘆と、羞恥。今度はノアが顔を赤くする番だった。それは明らかに初めて勃起した男性器を見る反応で、恥じらいながらも肉棒から目を離せないでいる。
あれだけユウカをからかうような素振りをしていたのに、いざとなれば初心なのがまたいい。そしてこの長さ、太さに至るまで彼女は忘れられないのだろう……と先生が妙な感慨を抱いている間に、ユウカは目の前の獲物を、ノアに見せつけるように咥えこんでいた。
「ちゅ、ちゅる、ちゅう……じゅっ、ちゅ」
゛うあ……!゛
わざとらしく音を立てながらの奉仕は、ユウカがこれまで先生の性欲解消に付き合ってきただけあって手慣れたものだった。竿を一気に包み込むと、唾液をまぶしながら亀頭をちろちろと刺激する。そうしながらも、妖しく目線を流して先生の反応を窺っているのだ。その仕草に、七割勃ちほどだった肉竿が一気に硬度を増す。
「これが、フェラチオというものですか……すごい、厭らしい音……」
「
゛いいよ、ユウカ。気持ちいい……゛
想像以上に生々しい行為の情景に、ノアは生唾を飲む。目の前にいる女の子は、本当に自分が知る親友とは思えないほどの色香を放って先生を誘惑している。下品な音をその口で奏でながら、まぐわうための準備を進めている……。
「知りませんでした、こんな……こんな……」
こんな、未知の世界だったなんて。生徒として居るべきでない夜の世界、そのはずだ。だというのにノアは連ねられた文字から思い描くだけでは知りえなかった興奮を覚えてしまっていた。とく、とく、とお腹の奥で生まれた熱が血流に乗って全身へ運ばれる不思議な感覚に、どうしてか心が躍っている。ノアは二人のまぐわいに、一瞬で当てられてしまったのだった。
(やっぱり、ずるい……)
羨ましい、ユウカが自分だけこんなことを知っていたことも、自分にそれを隠していたことも。
「ほら、ノア、こっちに来て」
「は、はい……」
「あなたも舐めて。こう、キャンディを舐めるみたいに……」
ユウカに誘われて先生のペニスに顔を近づけると、これまでに嗅いだことのない濃厚な匂いがむわりとノアの鼻孔を満たした。いい匂いではない。けれど癖になってしまいそうな、雄の匂い。それに釣られて、おそるおそるとノアは亀頭に舌を這わせる。
「ちゅる……ちゅ、れる……」
(変な味……でも、嫌いじゃありません……)
゛ノア……゛
ユウカと違って、たどたどしい初心(うぶ)な奉仕だ。味や感触を覚えることへ夢中になっているようで、快感を目的としないそれは奉仕とすら呼べないかもしれない。だが刺激こそ物足りなくとも、その初々しい様が先生の心をくすぐるのだった。
「違うわよ、ノア。こんな感じで……ちゅるる、ちゅむ、ちゅう……」
「こう、でしょうか……ちゅ、ちゅう、ちゅるりゅ……すごく熱くて、固いですね……」
ユウカが同じ肉棒を使って手本を見せる。それを見ながらノアが真似するものだから、先生からすると二人が肉竿の上でキスをしているようにも見えていた。実際に二人は時折動きを見誤って、亀頭の上で互いの唇を触れ合わせるのだ。その度に二人の目線があって、不思議な間を置いてから一層熱心に舌を動かし始める。そこに険悪な色合いは微塵もない。
「ちゅる、ちゅう、ちゅ、ちゅ……せんせい、きもちいいですか……?」
「じゅる、じゅう、じゅちゅ……じゅむ、っじゅ……ふふ、びくびくさせちゃってる……」
゛ああ。二人とも、上手だ……!゛
亀頭を二つの舌が、艶めかしく舐(ねぶ)る。ぬらりと温かい唾液をまぶしながら、一方は恥じらいながらも啄むように、もう一方は亀頭だけでなく竿に至るまで敏感な部分を的確に責めてくる。二匹の別々の生き物が、思い思いに口を、舌を躍らせている。
まるで小鳥と蛇が同じ飴を狙っているようだ。先生がそんなことを思っている間に、限界は早くも近付いていた。
「せんせい、そろそろ限界なんでしょう? ちゅる、ちゅむ……ノア、さきっぽを食べたげて」
「はむ、わ、
言われるがままに上から亀頭をその口で包み込んだノアは、これから何が起きるのかをあまりわかっていなかったのだろう。知識としては知っていても、経験としてはなかった。だからその状態で喋ってしまったのだが……。
そのちろちろとした舌の動きが一線を越えさせた。
゛っ射精(で)る!゛
「ん、ん゛むうう゛っ!?」
一発目の射精。それがノアの無防備な口の中を突き上げた。喉まで届く精液の奔流に思わずえづき、口の端から白濁が零れていく。それでも彼女なりの意地か、ノアは口を離すことだけはしなかった。
「んぐっ、ふう……っ!」
そうしてどくどくと後から撃ちだされたものを受けとめ切ると、ようやくノアは精液を漏らさないよう、甘く食(は)みながら唇を離した。初めに零れた分は名残惜し気にユウカが舐めとっている。竿はぬらりと背徳的に光を反射しながらも、綺麗なものだった。
「ほら、ノア。あーんして、あーん」
「あ、あーん……」
若干躊躇いがちに開かれたノアの口内、すっかり上気したその頬の内側は大量の白濁でべっとりと汚されている。その横ではユウカがわずかな量を舌の上に載せて、見せつけていた。
「ちゅるり……」
「ん、っんく……」
そしてユウカは舌先でそれを味わうように転がしてから。ノアは苦みと粘つきに目を瞑りながら、同時に飲み込んだ。
「こ、これは……結構苦いのですね……」
「慣れればなんともないわよ。それで先生? 二人に舐められた感想はどう?」
゛これは、いい……言葉にならないくらいだ……゛
「だそうよ、良かったわねノア」
「あら、では次もまた、期待大ですね」
゛気が早いね……゛
次回も二人で。この状況でもそんな意図を仄(ほの)めかせるのは、彼女の癖だろうか。しかし次を思うにはまだ早いというものだ。なにせこれは前戯に過ぎないのだから。
゛じゃあ次は私の番だね、ノア゛
「は、はい」
゛また、さっきみたいに゛
先生にとって今日の本番はノアの開発だ。今射精を済ませたばかりなのにとノアは思ったけれど、たった一発で解消できるような性欲ならばそもそもユウカに手を出してなどいない。
ノアはぎこちない動きで、再び四つん這いの恥ずかしい姿勢になった。だがその股は何かを隠すように閉じられている。
゛足、ちゃんと開いて゛
「い、いえ、その……お尻の穴を触るだけであれば、足はこのままでもいいような……」
゛だめ゛
「で、ですが」
゛だめだよ゛
「うう……」
先程は開いていたというのに、なぜかノアは躊躇う。そのまどろっこしさに、ユウカがノアの足に手を掛けた。
「ああもう! 覚悟を決めなさいってば!」
「ひあっ!?」
「って、あら……?」
露わになったのは、太ももに筋が出来るほど愛液を滴らせているノアの秘唇だった。これを隠そうとして、彼女は足を頑なに閉じようとしていたのだ。
゛ノア、すごい濡れてるね゛
「あ、ああ……」
゛まだ触ってないのに゛
「だ、だって仕方がないじゃないですか。先生のお、おちんちん……を触ってたら、これがわたしの中に入るのかと、想像してしまって……」
おもちゃとは比較にならない立派さで、想像していた以上に熱く固い。そんなものが自分の身体の内に入って来た時の激感を、ノアは思い浮かべずにはいられなかった。
(待ち遠しいと思うのは、はしたないでしょうか)
たとえそれが排泄孔からもたらされるものであっても、ユウカを変えた快楽を自分も知りたい。ノアは浅ましさを自覚しつつも、内心で期待している。
゛今日は挿入れないよ゛
「……あら?」
「ちゃんと馴染ませてからじゃないと怪我するのよ。わたしのときだって、初めは失敗してちょっと痛かったんだから……」
゛あのときはごめんね゛
「本当ですよ。先生はせっかちなんですから、まったく」
(それはちょっと残念なような)
期待を裏切られた、と思ったのも束の間のこと。先生が小指でノアの愛液を掬い上げた感触に、あっ、と小さく息が漏れた。
゛じゃあまずは小指から行くよ゛
「は、はい……んふ、うぅ……っ!」
ぬるぅ……と。ノアのアナルは思いのほかあっさりと侵入者を受け入れた。愛液の助けを借りて先生の小指がノアの肛門へ押し入り、そのまま入り口をわずかに広げる。小さいながらも、確かに芯のあるそれが挿入される感覚は、ノアにとって未知のものだった。
「はっ、あっ……んあっ……」
゛大丈夫? 痛くない?゛
「は、い。だいじょうぶ、です……!」
それほど気持ち悪いものではなかった。少なくとも浣腸ほどの違和感はなく、無機質な冷たさではなく人肌の温かさの分、不思議な安心感がある。それはどんな形であれ、先生にそういう目的で触れられているからか。
「あっ、う、んうくぅ……」
ぬぷぬぷと先生は小指を軽く折り曲げたり、出し入れしたりして入り口付近の具合を確かめている。その動作一つ一つに背徳的な興奮が掻き立てられては、身体の芯を駆け抜けていく。
「はあ、ああ……んっ! ふう、うう……!」
「……へえ、ノアってこういう声も出すのね」
「あっ、ユウカ、ちゃん……! あの、あまり聞かないで……あふぅ……!」
「……先生、手伝うわ」
「ユウカちゃん……?」
鼻にかかった甘い声を親友に聞かれている。そのことを思い出したところで頼みは聞いてもらえず、羞恥心が増すだけだった。それどころか不穏な響きすらある言葉。真意はすぐに明らかになった。
「んひゃあっ!? あっ、ゆうか、ちゃ、んふっ!?」
「れる、ちゅう……」
ユウカがノアの身体の下に潜り込むと、クリトリスを舐め始めたのだ。先生の無骨な指の固さと違って、繊細で温かい舌にざらりと敏感な突起を責められ、ノアの背中が不意に弧を描く。すると先生の指に肛門を抉られて、また別の快感に襲われる。
上にも下にも逃げ場がない。
「やっ、あんっ! ゆうかちゃ、やめて、ください……!」
「ちゅ、るぅ……なんというか、普段余裕な顔を崩さない子が追い詰められる声って、ぞくぞくするのね……」
「ユウカちゃん!? あっ、ふああ……っ」
親友が自分をきっかけに新たな扉を開きつつあることに驚いている間にも、責めは止まない。あふれ出す愛液で顔が濡れるのもいとわずにユウカはノアの秘豆を弄び、先生の小指は橋頭保を築き上げていく。彼女の泰然とした態度は既に崩れ去って見る影もなく、枕に突っ伏して必死に顔を隠そうとするような有様だった。
゛次はこれを使おうか゛
そう言うと先生は指を抜き去り、傍らに用意していたおもちゃに手を伸ばした。
「んあっ……! これ、って……」
゛アナルビーズだよ゛
「いや、これが本当に入るんですか……?」
「安心しなさい。初心者サイズだから」
彼が手に取ったのは、その親指程の太さの球が七つ連なったアナルビーズ。そこにローションがとろりと垂らされていく様を見て、ノアは小さく肩を震わせた。
(小指でも、太く感じるくらいだったのに……)
あれが、入るのだろうか。入ったとして、どんな感覚をもたらすのだろうか。そうささやかな恐怖を抱いているうちに、それは入り口に当てられ、そしてゆっくりと押し込まれ始める。
「ああっ、はうぅ……っ!? あっ、うあ……!」
「力抜いたほうがいいわよ」
「ぬくと、いわれても……おっ、ふあ……!」
めりめりと、明確に肛肉を広げられている。小指のように穴の中に入り込むのではなく、穴以上の大きさのものが無理やりに腸内で居場所を得ようとしているのだ。反射的にノアは肛肉を締め付けるけれど、ノアが傷つかない程度に先生が圧力を掛けていて、ローションが滑るせいで球は徐々に進んできた。
やがて一番太い部分に差し掛かり、そこが膨らんだアナルをゆっくりと通り抜け……ちゅぽんと音を立てて飲み込まれる。その瞬間、ノアはパズルのピースが一つはめられたような、小さな快感を覚えていた。
「あふうっ!? んっ、うう……! な、なかにはいって……」
゛まだ六個あるからね゛
「は、はは……」
ノアはこの時点でもうお腹いっぱいだと言いたかった。物理的な意味ではなく、精神的な意味でだ。二人の関係を問いただすところまでは計画通りだったのに、それ以降の展開はあまりにも衝撃的過ぎた。
(いえ、これ自体はまんざらでもないのですけれど……)
先生と肉体関係まで進めたことは問題ではない。多少方向が逸れていても、許容できる範囲だ。だが一番問題なのは……。
「わたし、おかしくなってしまうのでは……?」
今、ピースが一つはめられた。そこには確かに知らない快楽の予感があって、それだけでも頭の片隅がショートしてしまいそうなのだ。
もしこのパズルが完成してしまったら、自分は今日までの自分ではいられないかもしれない。
「そうよ。さっさとこちら側へいらっしゃい、ノア。……首を突っ込んできたのはあなたなんだからね」
゛今突っ込んでいるのはどちらかというと私……゛
「なにか?」
゛イエナニモ゛
「ほら、先生はさっさと手を動かして! 早くノアを引きずり込むの!」
゛ハイ!゛
そんな不安も、ユウカにあっさりと一蹴されてしまった。色々と暴露されたせいでやけくそになっているのか容赦がない。
「ユウカちゃん、流石に無茶苦茶ではっ、あくふぅっ!? ひや、それ、だめっ……!」
「黙って。じゅ、じゅぅ……今更おじけづくなんて、許さないんだから……」
「べつにおじけづいたわけじゃ、あっ、んんあああっ……!」
抗議を遮るように、二つ目の球が押し込まれていく。一つ目の球で慣れた分、その侵入はスムーズだった。ちゅるりとゼリーのように吸い込まれる。
「あっ、ふっ、うう……ッ! に、にこめ……」
「まだあるのよ」
「はっ、んんんくうううぅ……っ!」
三つ、四つ。腸内の球が増える度にノアの背中の震えは大きくなった。
腸内に居座る異物感。脳は確かに違和感を訴えかけているのに、腸壁は抱きしめるようにきつく吸い付いて、その感覚を鮮明に伝えてくる。それも普通であれば異物が触れているはずのない奥の方がだ。未開の地はどんどん開拓されて、ノアに存在を主張してくる。
(きもち、いい……っ)
同時にクリトリスを刺激されているせいで、快感がどちらからもたらされているものなのかノアにはもうわからなかった。あるいは両方から快感を得ているのかもしれない。
「んああはあ゛……っ! おくまで、きてます……!」
五つ、六つ。ただ確信を持って言えるのは。
(もう、イってしまいそう……!)
絶頂が近づいているということ。それだけは間違いのないことだった。
「はっ、はっ、はあっ……んふっ、うう……!」
……七つ。全ての球が埋まったとき、ノアの全身は汗まみれになっていた。息は荒く、視線はどこかぼやけている。
「ノア、イっちゃいそう?」
「イっちゃっ……! ユウカちゃん、なにを……」
「もういいわよ、そんな純情ぶらなくても」
「いえ、これはじゅんじょうぶって、ではなくておどろいたと、ふっ、いいますか……んっ」
「ふーん。……まあいっか。イけばわかるわ」
ねえ知ってる? そう言いながらユウカはビーズの底部にあるリングに指を入れた。
「これ、抜く時がいっちばん気持ちいいんだからね?」
「……え? ま、まさか……」
ユウカは何も言わずに笑った。笑って、一気に指を引いた。
七つの球がぬぽぽぽおっ、と間抜けた音を奏でながら飛び出していく。
「んっ、おおおお゛あああっ!? はっ、あお゛ぉお……!」
快楽に濁った、獣じみた声。内臓を一息に引っこ抜かれるような凄まじい衝撃に、ノアは束の間正気を失っていた。
そしてその感覚は紛れもなく。
(わたし、いま、イって……!?)
絶頂だった。肛門から異物が飛び出す原始的な快感で、自分は達したのだ。そう自覚したのは、十秒ほど経って余韻が多少抜けてから。
「ああ、ううはああ……! はっ、はっ、あっくう……」
信じられない心地で懸命に呼吸へと意識を向ける。そうでなくては、余韻にまた意識を焼かれてしまいそうだったから。まだ開発を始めたばかりだというのにすっかり目覚めてしまったノアのアナルは、大きすぎる快楽をもたらしていたのだった。
「うわ、抜いた後ってこんな風になるのね」
「はうっ! ユウカちゃ、いまはさわらないで……!」
火山の噴火口のようにめくれ上がった肛肉をユウカが指でほじくる。そうされると新しい刺激が送られてまた余韻が長引いてしまうのだった。指の擦れる菊輪の感覚、閉じようとする動きで流入する冷たい空気の感覚。
それら一つ一つが、消えようのない記憶としてノアの脳に焼き付けられていく。
「ふーん……ま、いいわ。ノアは一旦休憩として……先生? そろそろ我慢できないんじゃない?」
゛そうだね゛
ぬぽおっ! とユウカが指を抜き放った衝撃にノアは耐えきれず、横向きにベッドへと崩れ落ちていた。それを心配するでもなく、ユウカはその傍らにノアと同じように四つん這いになると、先生を誘って淫らに尻を振る。
(ユウカちゃん、ひどい……)
ノアがまだ同じようにはなれないのをわかっていて、見せつけようとしている。優越感を瞳に光らせて、一番は自分だとわからせにきている。
先生に愛されるとはこういうことだと、記憶させようとしている。
「せんせい、はやく……」
甘えるような声音だ。既にユウカのアナルは準備万端で、先生のペニスが来るのを今か今かとその口をひくひくと蠢かせて待ち受けていた。その艶美さに先生が耐えきれず亀頭を手早く宛がうと、それはにゅくく……と自ら獲物に吸い付き、取り込み始めるのだった。
「あっ、ふう……! せんせいの、あついぃ……!」
゛ユウカ……! こんな風になって、悪い子だ……!゛
「だって、せんせいがいっぱい、おしえるからっ……! おしりのあなが、きもちいいとこだってっ、あっ、んああっ、やっ、ああっ!」
一度奥まで腰を突き入れると、先生はそのまま抽送を開始した。ノアに対して気遣ったような一幕すらない。ノアはそこに、二人が何度もそうして身体を重ねてきたことを理解せずにはいられなかった。
「はっ、あっ、ああっ、やあっ、はあ、きもち、いいです! おく、もっと、ついて、くださ、いひぃっ!?」
゛ユウカはここが好きだもんね゛
「あはあっ、は、いっ! そこ、せぼねのうらがわっ、すき、いいっ、ですぅっ! あ、あああ……っ!」
「ユウカちゃん……」
今ノアの目の前にいるのは、知らない男と女のように思えた。二人ともよく知っているはずなのに。顔も性格も、忘れたことなどないはずなのに。
(これが、男女の行為……)
肉づいた尻に筋肉質な腰を打ち付ける甲高い音。言葉の形を成していない喘ぎ声。飛び散る汗に、鼻の奥にこびりついてしまいそうな性臭。
……牝と雄。人間から理性を剥いだ時に見える、獣の姿。
「あくっ、ふうあ、んああっ! ひあっ、ああ、せんせい、はげしい、ですっ!」
゛ユウカの反応がいつもよりいいからね! ノアに見られて、興奮してるんでしょ!゛
「ああ、そんな、いわないでくださ、いぃ……っ!」
(わたしに見られて、興奮?)
それは本当なのだろうかと、ユウカの様子を窺う。てっきりいつもこのように激しい行為をしているのだと思ったのだけれど。
゛いつもしないような、厭らしい動きして! 挿入(い)れる前からこんなびちょびちょに濡らして!゛
「ああ、やだやだ、いわないで! せんせい、いわないでぇっ!」
゛いいや、言うね! ユウカは変態だから、その方が興奮するんでしょ!゛
「へ、へんたいって……っ! ぜんぶ、せんせいのせい、ですっ! あっ、やあ、ぐりぐりしないでぇ……!」
゛そう、私がユウカを育てた。だから見ておくんだよ、ノア。ノアもいずれこんな風になるんだ゛
じっと見てみると、確かにさっきまでユウカが見せていた娼婦のような妖しい姿は仮初だと気付いた。ノアと同じように、触れられてはいなかったはずなのに愛液がベッドを汚すほどに溢れている。呼吸に余裕などなくて、不意に視線が合うと恥ずかしそうに顔を背ける。
「やだ、みないで、のあ、みないでぇ……!」
(ああ、よかった。わたしの知ってるユウカちゃんです)
頭を振って駄々をこねる姿が愛らしくて、たまらず笑みが零れた。それを見てユウカがまた怒る。
「せんせいの、ばかっ、なんでいうんですかぁっ! あっ、やあっ! ばか、ばか、ばかぁ……!」
゛でも締め付けが良くなったよ゛
「でりかしーなし! ばかっ、へんたいぃっ!」
゛ごめんね、嫌いになった?゛
「なるわけ、ないじゃないですか……あっ、そこ、いい、すきぃ……!」
(この好きは先生に対してですね)
一度見方が変われば何と言う事はない。愛情の伝え方が不器用なこの親友が、不器用に先生と関係を持っているだけ。
……今回自分が入ったことで、ちょっとねじ曲がってしまったようだけれど。
「はっ、あ、んああっ……! あお゛っ、だ、だめ、もう……!」
゛私もだよ、ユウカ……!゛
激しい分、終わりが来るのもまた早い。先生はラストスパートとばかりに抽送の速度を速めていった。
生々しい肉の音に、粘ついた液体のかき混ぜられる音。二人の荒々しい呼吸音が、しばらくは耳から離れてくれそうにない。
「あ、ああああ゛っ、はああー……! んっ、くふううぅー……っ!」
射精の音は聞こえない。しかしそのタイミングに合わせて二人の身体が脈打つものだから、自然と脳裏にその音が思い描かれる。そうして何度もびくびくと身体を震わせた後に先生がゆっくりと肉棒を引き抜くと、支えを失ったユウカはベッドの上にくずおれた。
「はあー、はあー、ああ……」
まるで生きた屍。いえこの場合はイった屍? などとくだらないことを思うだけの余裕がノアには戻ってきていた。体力は払底しているけれど、頭はちゃんと回っている。
「ユウカちゃん」
「……なによ」
自分はユウカと先生の間に割り込む悪女のような真似をした。そのことに彼女は怒っているのかと思ったけれど、別段そうでもなかったらしい。ユウカもまた悪女のように先生は自分のものだと見せつけようとしてあっさりと失敗し、むしろ興奮しているとばらされて……。二人して失敗したけれど、結果はいい方に転がっている。
どうやら今日の出来事は、誰にも悪いものをもたらさなかったらしい。
「大好きですよ」
「……! あ、そ、そう? ふーん……わ、わたしも……」
「ふふ」
゛3P、百合……はっ!゛
今日の雨も、さっきの情景も。また一つ忘れられないものが増えましたね。そうノアはユウカと手を繋ぎながら思った。