木枯らしが寒々しくシャーレの窓を叩く。どんよりと曇った秋の口、ミヨは一人窓際で物憂げに外の景色を眺めていた。
「先生……」
この部屋に居るべき人。自分と一緒にいて欲しい人。しかしその人は今、デカグラマトンという機械生物の調査をするために遠くへ出張中の身だ。普通の電波が届かないほど、遠く。先生が言うには距離というよりも、その機械生物によって電波が妨害されるというらしい。
まあ理屈はなんだって関係ないのだ。
ただ先生と話せない、触れ合えない。それだけで心にぽっかりと穴が空いてしまっているような気分になる。先生がここを離れてからたった一週間しか経っていないのに。
「うう……いつの間にわたしはここまでわがままになっていたのでしょう……」
毎日触れ合っていたい。抱きしめられて、甘く優しくキスをして。出来るならば、おはようとおやすみのときは必ず。それから先生がその気になった時には、お尻や胸にそっと伸びてきた手に自分への情欲を感じ取って、受け入れるように自分も両腕で抱きしめ返して……先生と際限なく愛を交わしていたい。そんな欲望は、先生と離れれば離れるほど募っていく。何をしていても気付けば先生のことばかり考えていて、フユやリツに不思議がられたのも一度や二度ではない。
先生と付き合わなければ、こんなベタな恋に溺れる女の子になんてなることもなかったのに。
「先生が、悪いんですよ……」
そう、先生のせいだ。人の心を盗んでおきながら、仕事で忙しい先生のせい。無論その仕事がキヴォトスにとって一大事で、先生が大切にする生徒全員のためだとはわかってはいるけれど。だからと言って、自分を愛して欲しいという願望が消えてなくなるわけではない。
だがその我慢も今日で一旦は終わるようだった。
小雨に濡れ始めた窓を指でなぞる。どうやら先生は雨が本格的に降り始める前にここへ帰って来られたらしい。シャーレの入り口で立ち止まっているのは、荷物が多いからか、それとも見送ってくれた生徒と話し込んでいるからだろうか。どうであれ、今からコーヒーを淹れ始めればちょうどいい頃合いになるだろう。
何故わかるのか? わかるからとしか言いようがない。ミヨからすれば相手の居場所がリアルタイムでわからないなど、愛が足りていないというものだ。
お湯が沸くのを待ちながら、ミヨは窓に映る自分の姿を見て身だしなみを整えていた。先生に見られないからと手を抜いたつもりはないが、それでも気になるものは気になるのだ。
ほんのりと赤い頬、手で触れるとやけに熱い。乾いている気がして唇にリップを足した。
そうしてそわそわと待っているうちに、部屋の扉が開いた。
゛ただいま、ミヨ゛
「お帰りなさい先生。荷物、お預かりしますね」
極地に向かっていた先生のキャリーケースはやたらと大きい。それを受け取ると、片付けるでもなく部屋の隅に押しやる。
「コートもお預かりしますね」
゛ありがとう゛
「いえいえ」
先生の熱がこもった外套を受け取り、こっそりと匂いを嗅ぐ。当然洗われているはずもないそれは、すっと脳を満たす大好きな香りを濃密に纏っていた。
「……ふう」
゛……? ミヨ?゛
「な、なんでもありませんよ!? それよりお外は寒かったでしょう! コーヒーの用意が出来てます!」
゛う、うん……それじゃあいただこうかな゛
「すぐにお持ちしますね!」
ぱたぱたとキッチンに走り去るミヨ。その手にはまだしっかりとコートが握られていた。
■
゛……ふう。コーヒーが身に沁みる……゛
「だいぶ寒い所に行っておられたのですね」
゛とても……寒かった……゛
ソファに座る先生の隣で、そっと肩を寄せて座る。そんな何気ないことでさえ、幾年ぶりのようにミヨには感じられた。
「先生の手、こんなにかじかんで……」
熱いコーヒーカップで暖を取る先生の手を、ミヨは自らの手で包み込んだ。自分よりも一回り大きくて、とても全ては覆えないけれど。冷えたその手を温めたかったのだ。
゛ミヨ……゛
「久しぶりの、先生の手……少し荒れてますね……」
゛ああ、空気が乾いてたから……ミヨ?゛
手の甲から指の間へ。ごく自然な動作で嫋やかな指が滑り込んでいく。先生はミヨの目を見た。上目遣いに自身を見上げるその目は、この二人きりの雰囲気に酔ってとろりと垂れていた。だというのにそこに浮かんでいるのは不満の色。はー……と深く絞られた息に首が湿っぽくくすぐられ、思わずぞくりと震える。
「先生……先生……ようやく……」
゛ミヨ……!゛
「ああ、身体が冷えてますね……わたしの身体で、温めないと……」
ミヨが先生の腕を胸で挟み、身体をじれったく擦りつける。獣のマーキングに似たその行為が何を求めているのかは明らかだった。火傷を覚悟で先生がコーヒーを飲み干して机に置くと、途端にどさりと押し倒される。
先生の腹の上に跨ったミヨの顔は、天井の照明が作る影の中にある。情欲に濡れたその瞳もそう。彼女はとても軽いのに、先生はどうしてか飢えた肉食獣にのしかかられて動けない。そんな状況を幻視した。
「先生、わたしを一週間も置いて行くなんて、酷いです……ちゅう……」
ミヨの唇が先生を貪る。先生はそれを静かに抱きしめることで応えた。
「ぢゅっちゅっ、ちゅる、んっ、はっ、ちゅう、じゅっ、んる……あむ、ぶじゅ、れる、ちゅる……!」
離れていた時間を埋めあわせようとするように、ミヨの舌は激しく動いていた。まだ残るコーヒーの味を舐めとる。大人の苦さ、そんな味も悪くない。先生の舌もミヨに負けじと絡みついてくるものだから、それ以上に幸せで仕方がなかった。
「はふっ、んうっ……ぢゅっちゅる、んぢゅ、あむ……!」
互いが欲しいという二人の気持ちが、言葉もなく口の中で混ざり合う。ミヨは自分のYシャツのボタンを開けていくと、先生の股間がびくりと脈立つのを感じた。所々を透けさせて色気を押し出した濃紺色の下着は、今の体勢では先生からはよく見えないはずだ。しかしむにゅりと潰れるほど押し付けているせいか、お尻を押し上げるそれは既に固く、腰を揺らしてみると更にびくびくと震える。
「ちゅる……ふー……ふふっ。先生も一週間ぶり……ですよね? 他の女性に手を出したりなんて……」
゛してないよ。この一週間はずっと我慢してたから゛
「わたしもずっと先生が欲しかったんです。一週間も我慢し続けて、もう限界で……ひゃっ……!?」
ミヨが先生のズボンとパンツを跨ったまま器用に脱がせると、ぺちん! と小気味良い音を立てて、先生の肉棒がミヨの尻肉を叩いた。その固さに小さな悲鳴が零れる。ミヨが知っているそれよりも、熱く勃起しているのは間違いなかった。
「わ……わあ……こ、こんなに固く……すごい、です……」
ミヨはブレザーの内ポケットから取り出したローションを手に乗せ、先生のペニスを優しく扱いてぬるぬるにしていく。
゛うあ……ッ゛
「ふふ、まだローションをつけただけなのにこんなにぴくぴくさせちゃって……駄目ですよ? まだ、射精したら」
゛ミヨ……!? なんて準備のよさだ……!゛
「先生のせいですよ? そりゃあ仕方がなかったのかもしれませんけれど……一週間も彼女をほったらかしにして、連絡もしないで。わたしのお尻をえっちな穴に変えたのは先生なのに。他の女性と……旅行なんて」
゛旅行ではないよ!?゛
「ええ、仕事だとはわかってます。わかってますけれど……知ってますか? 浮気の言い訳に最も使われるのも、仕事だそうですよ?」
平坦な調子の声で詰めながら、にゅる、にゅる、と手は気持ちいい所を温めていく。そうしてたっぷりと濡れた亀頭に、ミヨのアナルが宛がわれた。
「先生が浮気しないように、わたしは先生の形をもっと覚えないと、ぉっ……!?」
゛くっ……!?゛
ミヨが一息に腰を沈める。ぬぷんっ! と重量物を水に沈めるのに似た重い音がして、ミヨのアナルは奥まで貫かれていた。
「あっ……はっ、はーああぁ……っ♡! おく、いつもよりふかい、ぃ……!」
゛だ、大丈夫? 一気に行っちゃったけど゛
「だいじょうぶ、です……。いっぱいぬったので……っ! ふふ、せんせい、せんせい……!」
゛うあっ……!? 腰を揺らして……!?゛
「おとこのひとは、こうして……っねもとのぶぶんをぐりぐりされると、きもちいいんですよね……んぅっ!」
゛ああ……!゛
ペニスを軸としてミヨの腰が前後左右に動く。菊口で強く肉茎の根元を咥えこまれながら、レバーのように倒されるのだから先生にはたまらなかった。
あまり激しい動きではない。だがいつもと違う快感があって、確実に射精へと誘ってくる動きだった。
「せんせいが、いっしゅうかんもいなかったから……いろいろよしゅうして、シナリオもかいて……ですから、きょうはいっぱい、その……いただき、ますね?」
゛ミヨ……!゛
控えめな捕食宣言とともにミヨはゆっくりと腰を持ち上げ、そしてまたじゅぷんっ! と勢いよく動かし始めた。激しい摩擦に先生の肉棒へと更に熱く血流が滾る。一週間溜め込んでいた精子を吐き出す準備は既に整いつつあった。
「はっ、はーっあっ、んあっ、く、ふうっ……! あっ、ああ、せんせいの、おちんちん、ひさしぶりで、きついぃ、ですっ……! んはあ゛っ!?」
゛ミヨ、私からも動いた方が゛
「いいえ、だいじょうぶ、ですっ。せんせいは、よこになったままで……っ! きっと、おつかれでしょうから……あ、ん、んあはあ……!」
肉茎をきつく締め付けたままでの上下動。根元からカリ首に至るまで、にゅるる……と動くアナルが貪欲に精子を搾り取ろうとする。ミヨの身体が跳ねる度に、開け放たれたシャツの合間から覗く大人びた色のブラジャーもまた肉感的に跳ね、先生の視線を惹きつけて離さない。一方でじゅぶ、じゅぶっ! と盛んに水音の鳴る結合部は、スカートに覆い隠されて見えないというのが 余計に淫らな気配を醸し出していた。
そんなミヨのアナルによる奉仕。長く耐えられるはずもなかった。
゛ミヨ、もう射精る……!゛
「は、い……! せんせいの、くださいっ……! たくさん、わたしのなかをみたして……!」
゛くっ……゛
締め付けが一際強くなるのと、白濁が吐き出されるのは同時だった。
「ん、ああはああ゛……っ!? あつ、いです……! んひっ、ああう、きゅう……! はあ、はー……っ! すごくどろどろしてて、おもいのが、なかにいっぱい、はいってきてぇ……!」
肉竿が脈うつたびにミヨの肩が小さく震える。その顔が俯いているのは、久方ぶりに自らの身体を満たした快楽にぼうっと感じ入っているからだった。
手で触れるよりもなお熱い、身体の内側で感じる熱。好きな人が自分の身体に抱いてくれた情欲の熱量。それがお尻の奥、誰にも触れられることのない場所に流れ込んでくる。インモラルな行為だ。本来使うべきではない穴で、本来赤ちゃんを作り出すための子種を受けとめて、それで互いに満たされている。
インモラルで、非合理なはずなのに、どうしようもなく幸せだった。
「はー、ハーっ……んっ! ふっあ、んふ、せんせい、もっと、もっと……!」
深く、深く媚熱を帯びた息を吐いて、ミヨは再び腰を動かし始めた。瞳には溢れて止まらない愛情と、独占欲と、快楽とが入り混じった妖しいぎらつきがある。もっと欲しい、まだ欲しいと言う強欲な彼女の口は小さく開いたままで息をしていて、つうと涎が少し零れていた。
゛ミヨ、そんなに足りないの?゛
「んっ、ああっいっ、ひう……! は、い……! だって、いっしゅうかんもあえなくて、ずっとせつなくて……。わたしはまいにちだってせんせいにつかわれたいのに……そんなの、いっかいでたりるわけ、ないじゃないですか……! せんせいだって、だしたのに、まだまだこんなにげんきなのに……はっ、ふーうう……っ!」
想いの募るままに言葉を紡ぐ。そうしている間にもミヨは動きを止めず、先生の欲望の証をねだっていた。それどころか先生のシャツのボタンを一つ一つ外し、さらけ出された胸板に握りこんだ手を置いて、一層情熱を煽ってくる。
「せんせいが、いいんです……。どれだけせんせいをおもいえがいて、もじをかきつらねても、なぐさめてみても……んあっ、ぜんぜんっ、たりないんです……っ! だからもっともっと、おかしくなっちゃうくらいに……んひぃっ!?」
赤裸々な告白に、とうとう音もなく先生の理性の糸は切れた。ミヨのお尻に両手を添え、自分の思うが儘に彼女の身体を動かしては腰を突き上げる。奉仕を受けるのではなく、自ら快楽を貪るために彼女を使う。
「んあっ、ひっ、あっ、ふああっ……! や、せんせい、きゅうにはげし……っ!」
゛もっとっていったのはミヨの方だよ゛
「は、いっ! せんせい、んっ、あっああ、くひぃっ! きもち、いっです! んあっ! これ、すきぃっ……!」
先生が気持ちよくなるためのそのペースは、今のミヨにとってあまりにも激しすぎた。流し込まれる快楽の量にたまらずミヨは先生の胸に縋りつく。それにすら構わず、先生は抽送を繰り返した。胸を濡らす彼女の唾液も、腸液と攪拌されてぐちゅぐちゅといやらしい水音を奏でる精子も、むしろ劣情を掻き立てる燃料でしかなかった。
「はうっ、きゅ、うう~っ……! せんせい、あ、んふああっ! だめ、だめだめ、イって、イってます、から……!」
゛じゃあもっといっぱい気持ちよくしてあげようね゛
「はっあっひっ、んいいィ……!? ああ、だめ、イきながら、おく、とんとんってやさしくされるの、おなか、じんわりとけちゃいそうで、す……んぅ!」
駄目だと言いながらも、ミヨのアナルはきつく食いついて離すつもりがないようだった。いつの間にか両手で先生を抱きしめていて、足以外はいわゆるだいしゅきホールドと呼ばれる姿勢だ。動きにくい分内圧は強く、先生の肉棒にぬるりとミヨの腸壁が絡みついて一挙一動に快感を与えてくる。
゛ミヨ、また奥に出すよ!゛
「はい、はい! おくにください……! わたしのなか、せんせいでどろどろに、とかして、ください……んっふううぅ゛!?」
二度目の射精は、じっとりと脳に染みこんでくる甘い囁きに誘われて。衰えなど知らぬとばかりに勢いよく叩きつけられる大量の白濁に、ミヨの瞼の裏でちかちかと星が瞬いていた。
(きもちよすぎて、おかしくなります……!)
疲労感と多幸感で、ふわふわと空に浮いているようだった。まだほんの少しだけ物足りなさはあるけれど、それでも十分幸せで……足りない分はまた明日、体力が回復してからでもいい。先生も抜かずに二発も出したのだから、これで今日は打ち止めのはず。そんな風にミヨは思った。
(このまま先生の腕の中で眠ってしまえたら、きっと幸せです……)
「はーっ……はー……っ! せんせいがおなかのおくに、いっぱい……」
゛それはちょっと怖いような……゛
絶頂に酩酊したミヨの頭は、ふと些細な悪戯を閃いていて。
「……せんせいがひとり、せんせいがふたり、せんせいがさんにん……」
゛私は羊かな?゛
「さんにんのせんせいが、わたしのくちと、おしりのあなと、それから、その……お、おまんこにおちんちんをいれてきて……」
゛ストップストップ! とんでもないお話が出来上がろうとしてない!?゛
「……ふふ。わたしとしては、それもわるくないかな、なんておもいますけど」
゛まず私は分身出来ないよ……?゛
「ならよかったです。先生は目を離すとすぐ他の女性に狙われるので……三人もいたら、二人はちゃんと捕まえておかないといけませんから」
゛捕まえる……?゛
「はい。悪いことをして罰が当たらないように、ちゃんと見張ってあげるんです」
捕まえて見張る。先生はその詳細をこれ以上聞かないことにした。分身出来ない以上聞いても意味がないし、聞いたところで余計に背筋が寒くなるだけだと思ったからだ。
あまりの仕事の多さに分身出来ればと思ったことはあるが……もしかするとそれは余計に仕事の火種を増やすだけなのかもしれない。
「あんっ……」
先生はミヨのシャツに手を入れ、背中のしっとりと汗ばんだ肌が指先に吸い付いてくるのを楽しみながらブラジャーを外す。糖度の高い甘い声に、少し萎れかけていたペニスが苛立った。
゛ミヨ、お風呂に入ろうか゛
「……わかりました。では先生がお先に……」
゛いいや? 一緒に入るんだよ?゛
「……え?」
゛まだまだミヨも足りないでしょう?゛
「あ、あはは……」
すっかりピロートークの気分でいたミヨは、欲求不満を抱え続けていたのは自分だけではないと、そこでようやく気付いたのだった。
■
いかにキヴォトスの科学が発展していようとも、無から急にお湯は生まれない。ボタンを押してから湯船に十分なお湯が溜まるまでは時間が掛かるものだ。
それでも少し待てばいいだけなのだ。ほんの数分、それだけ待てば。だというのにそれすらもせず、二人は既に風呂場にいた。湯船はまだほとんど空だ。
゛ミヨって着やせするのかな。意外とおっぱい大きいよね゛
「あ、あの……せんせい……これす、すごく、はずかしい、です……! せめて背中から、とか……」
゛ミヨの美しさを正面から楽しみたいんだ゛
「あうう……!」
ミヨを風呂椅子に座らせ、正面から向き合うという状況。勿論二人とも生まれたままの姿だから、互いの全てが見えていると言ってもいい。ミヨは羞恥心のあまり、背中を丸めて身体を隠していた。
(先生とシてる最中なら気にならないのに、こうして向き合うと恥ずかしくて死んじゃいそう……!)
熱情の勢いを借りなければ、視線を合わせることすら恥じらってしまう。そんな奥手な自分に対して、肢体の全てを網膜へ刻みつけんばかりに先生の視線がじっとりと絡みつく。恥ずかしいのにやめてくれない先生は酷い。鬼畜、変態だ。
けれど嫌な気分はなくて、ミヨの心臓はもう爆発してしまいそうなほどどきどきしてしまっていた。
゛ミヨは可愛いね。自分から来るときはとんでもないパワーで突き進んでくるのに、逆に押されると別人みたいに弱くなる゛
「それは……その……ぐいぐいこられると、どうしていいかわからないというか……わたしなんかがって……わたし、すみっこのほうがお似合いですし……」
゛すみっこ? いつも結構大胆に密輸しているような……゛
「そんなことは……あっ! んいっ、せなか、てが、やらし……っ!」
゛背中からって言ったからね゛
先生はミヨが隠している身体ごと抱きすくめ、背中に回した手をさわさわと蠢かせてその瑞々しい肌触りを楽しみ始めた。筋肉質な胸板に顔が埋もれる。くゆる汗の匂いに呼吸が深くなる。それだけでもたまらないのに、先生はボディソープを手に取るとそれをミヨの身体に塗(まぶ)しはじめた。
「あ、えうっ……!? せんせい、なにをっ!?」
゛ここには身体を洗いに来たんだよ? ちゃんと洗って、汗を流さないと゛
「じぶんで、あらえますからぁっ!」
゛嫌だ。私が洗いたい゛
「そんなぁ……んぃあぁっ!?」
肩甲骨のくぼみをそっとひっかくように。そこから脇へと滑り込んでミヨの弱いところをくすぐりながら、ガードの緩んだおっぱいを下から掬い上げる。
「んぅ……っあ、ああ……はっ、はーっ……ぁ! ふっ、んいうぅ……!」
むにゅ、むにゅと感触を優しく味わうその手つきにミヨはすっかり絆(ほだ)されて、顔を反らしたまま両手を下げ、胸を差し出してしまっていた。綺麗なお椀型の胸に指が沈み込むたびに唇がわななき、押し殺した息が漏れる。乳輪をくるくると指で擦られると、びくりと腰が震えた。ぬるぬるとした泡のせいで、余計にいやらしい行為に感じられてたまらなかった。
「ふー、ふーうう……んっ! あっ、うう、や、おなか、ああ、ああ゛……!」
それから先生は突き出された乳首には触れないままで、指を下へと滑らせていく。柔らかなお腹の平野を手のひらで撫で、へその下のあたりには特に念入りに泡を擦り込んだ。際どくて、燃えるように熱を持っている部分。そこを先生に握られてしまったようで、バチバチとミヨの脳裏に火花が散った。
太ももに指が触れる。ふくらはぎをほぐしていく。
そして、それからは。
゛ミヨ、立って゛
「ふー、フー……は、い……」
促されるままにふらりと立ち上がると、先生にそのまま壁へと押し付けられた。
(あ、これ……壁ドンですね……)
先生にいつかされてみたいことのランキング五位には入っていたそれが、今実現している。ミヨにそのことへの感慨はあまりなかった。それは冷静さゆえではなく、先生に身体中を愛撫されて頭が蕩け切っていたせいでそれどころではなくなっていたからだった。
そのまま頭一つ上にあった先生の顔が近付いて唇を塞がれる。お風呂が沸いたことを報せる音楽など、何の妨げにもならなかった。
「ちゅ、んむっふっあむっじゅる……れう、あふ、んふうっ!?」
そうしてキスに溺れているうちに先生の手はミヨの尻たぶを割り開いていて、ぬるりと穴に指が二本滑り込んでくる。ボディソープと先刻射精されたばかりの精子の助けで、一瞬も止まることなく根元まで埋まった。反射的にきゅっと締まったアナルの中で、先生はぐにぐにと指を曲げて好き放題に暴れる。
「んん、んんむう゛っ!? んはっ、あむ゛うふっ!?」
行為の後でまだ敏感な腸内だ。そこをかき混ぜられてミヨは簡単に達してしまった。しかしその嬌声は先生が強引に続けたキスで、くぐもった悲鳴に変えられる。
キスで息を奪われながらのアナル絶頂はあまりにも甘美だった。酸欠と多幸感で自然と身体の力が抜け、崩れ落ちていく。腰は完全に砕けてしまっていた。
先生はそんなふにゃふにゃになったミヨの片膝に腕を通して持ち上げると、快感にひくつく菊花へ亀頭を宛がった。そのままふと手の力を緩めたせいで……。
ミヨは自らの重みを支えきれず、肉槍に沈んでいく。
「んっ゛むうううっ!? んぷっ、ひっあ、あはあ!? せん、せいぃ……これ、これぇ、だめ、だめです……! はっ、はっ、くひう……!?」
騎乗位とはまた違う角度で刺さる肉棒に、尾てい骨の裏側がぞくりと粟立つ。片足を持ち上げられてほとんど先生に身体を預けている状態での挿入は、体重を結合部だけで支えているようなものだった。
そんな状態から始まる抽送はどれほど強い快感をもたらすことか。
「ひっあっあっんあっ! あっお゛っんっ! や、これ、ふかい、です……ああっ! へんなこえ、でちゃいますっ!」
゛いいよ。一週間聞けなかった分、いっぱい声を聞かせて゛
「あっ、ああっやあ……! ん゛っ、ああっ、やだ、ちから、はいらなっ、んっ! こし、とんとんされて、こわれちゃう、んぉ゛う……あむっ!」
゛!?゛
腹の奥底から漏れだす濁った声を隠そうとして、ミヨは先生の肩に唇をつける。それだけでは足りずに、甘く噛みついてすらいた。
甘噛みとはいえ元がヘイローを持った生徒の力で行われるのだから痛みは相応のもの。しかし先生はそれをこらえ、意識から押しやるかのように荒々しくピストンを続けた。その快感で余計に強くミヨに噛みつかれるという幸せでもあり、痛くもある無限ループ。
「んっ、んんむぅっ! んふああ゛っ!? ぉ゛っだめ、イク、イ゛っああ゛……イっちゃいます……!」
先に音を上げたのはミヨの方だった。懸命に抑えようとしていたマグマが限界を超えて噴火し、あられもない声として飛び出していく。
「んあ゛っ、ああ゛……っ! イって、イってますから、せんせい、せんせい……!」
゛私ももうすぐだから゛
「すこしくらい、やすませてくれても……あふああっ!? あ、やあ……また、イってぇ……!?」
゛ミヨ゛
「んっ……ひゃ、い……!」
゛私だって溜まってたんだからね。そこに誘ってきたのはミヨなんだから……私が満足するまで、付き合ってもらうよ゛
「あっ……! は、ひ。せんせいが、まんぞくするまで……!」
それは裏を返せば、まだまだ終わらせるつもりがないということ。先生と裸で抱き合って、繋がり合って、欲望をぶつけ合うこの時間は、まだ。
まだ、終わらない。
(ああ、それはなんて、しあわせでしょう……)
゛っ締め付け、強……っ!゛
それまで先生の形のままに広がっていた菊門が、心と同調して幸福を咀嚼する。三度目の射精はその締め付けに負けてのことだった。
「あっ、フーッ……~! せんせいのせいし、わたしのなかでとろけて……っ!」
心が満たされて絶頂に達する。性感帯への刺激によるものではない快感は、身体が溶けて先生と一体化していくかのようだった。
「せんせい、せんせい、せんせい……!」
胸に溢れて止まらない想念のままに、ミヨは先生を呼ぶ。
肩についた赤い小さな歯型も、自分の体内でどろりとした存在感を主張する精子も。
満足するまで求めてくれる情欲も。
(全部、わたしの物です。全部全部、わたしが先生を独り占めしている証……!)
全てがこれからのハッピーエンドに繋がる、隠しようのない伏線なのだ。
「ふふ。ときよとまれ、なんて……」
゛ゲーテ?゛
「はい」
゛……ミヨは今、幸せ?゛
「はい、とても。まあそれもありますけど……」
(今時が止まったなら、ずっと先生を誰にも盗られずに済みますから)
ミヨがファウストであるならば、本当に今このまま時が止まって死んでしまってもいいくらいに幸せだった。それで先生の一生消えない傷になれるなら、それはそれでもいいと思うほどに。
けれど理想を追いかけたファウストは、ミヨよりも先生に似ているに違いない。
――先生が、ファウストであるならば。
その魂は最期に、悪魔ではなく死後も彼を想い続けた妻のもとに召し上げられるのだ。
(死してなお傍に……ロマンチックで、素敵ですよね)
自分と先生もそうありたいと、願いを掛けて。
「あるいは、こうでしょうか」
わたし、今なら死んでもいいです。ミヨはそう言って、妖しく笑った。