なんだか、いつも目をとじているようにデンジには見える女の人は、ここ一週間だけでも悪魔に会っている、と言った。
たとえば病院の駐車場でうずくまっている男性に心配して声をかけると魔人だったり、病院の屋上に人が立っているのを見て何か様子がおかしいと思っていたら悪魔に変化したり、とどめで昨日、車で寂しい林道を通っていたらそれこそ悪魔がいたので、横をすり抜けて危ないところだったと、デンジに話した。
「うらやましいぜ。オレって、悪魔が出たって聞いてから駆け付けっからなぁ…」
「うらやましくはないでしょう。悪魔なんて会わないに越したことはないわ」
「まー、ふつうの人間だったら、そうなんだろうな」
「変わってるわね。あなた」
「しかも、騒ぎになる悪魔って、暴れたり人を殺したりしたからだし、そーいうやつは、オレがさがしてるやつじゃないんだ、たぶん」
言ってから、いや、あいつなら暴れたり、もしかすっと人を殺したりするかもしれねえな、と考えた。
んなことしたら公安とかデビルハンターに狙われるから、そーなる前に見つけねえとな、と思った。
「いったいどんな悪魔? あなたがさがしているのは」
女性は、デンジの表情や口ぶりから、本当に探している悪魔がいることと、大切だと思っているんだなと感じた。
「もし見つけたら、教えてあげようか」
「マジかよ! たのむ…おねがいします」
「まあ、そんな都合よくいかないでしょうけど」
と、電話番号をさらさらとメモする。
「でも、そんなに毎日毎日悪魔と病院で会うわけじゃないわよ。今日だって、悪魔にはまだあってないもの」
「いーや、オレは信じるね。おねえさんは、悪魔に会ってる」
「好きであってるわけじゃないのよ。はい、これ。わたしの名前と、電話ね」
メモをデンジに渡してくれた。
「かけて、いーの?」
「電話番号渡しといて、かけちゃダメってわけないでしょう? 私仕事中だから、これで行くわね」
「待って」
病院に入りかけた女の人を呼び止める。
「オレ、デンジ!」
「デンジくん、了解」
ひとりになると、デンジはメモを握った。
「なんか、いい匂いするぜぇ」
嗅いでみる。
すっかり怪我した近藤の見舞いのことを忘れているようだった。
「デンジ、今日も寄り道してる!」
部屋の中で、犬に囲まれたナユタが憤慨していた。
冷蔵庫を開けて、サラミソーセージを手づかみする。
ソーセージを縛っている紐をかんで無理やりに解くと、がぶりと食べた。
「ぐれてやるー!」
サラミソーセージをがつがつしていると、胸焼けしそうになった。