※この作品はR-18です。

チェンソーマン バイト編   作:衣畑みなと

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クルマにサワデー

「デンジ、おまえ車の免許取らないの?」

洗車機のスイッチを押して立っていると、バイトの先輩が声をかけてきた。

「クルマ、っスか?」

「ここでずっと働き続けるにしてもどっかに勤めるにしても、免許あったら便利だぜ」

「今んとこ、考えてないッス」

「いい車乗ってたら女にモテるぜ」

「マジッスか…」

「さっき入ってきたスカイライン、カッコイイだろう。あれ見て、どう思った」

「うーん。クルマだなって感じッスね」

「それだけか?」

「ちょっとさわがしい、かな」

うるさいのは頭に響くチェンソーの音だけで十分だ。

「おまえほんとに車に興味ないんだな。まあ、そのうちはまるかもしれん」

「でも、クルマ、高いし」

「そりゃGTRは無理だろうが、ローン組みゃいいし、中古だってある。車があれば、彼女とか送り迎えできるぞ。なにより行動する範囲が広くなるな」

「行動範囲かー…」

それはありかもしんねーな。

オレのさがしている悪魔は東京に現れるかわかんねーし。

…そうだ、休憩になったらあの女の人に電話してみっかな。

とか考えてると先輩が、

「バイト上がったら飲みに行くか?」

「オレ、あしたガッコだし。だいたい、未成年にそうそう酒飲ませていいのかよ」

「今日は何軒も回らねえよ。それにおごるぞ?」

「おごりッスか! いきましょう!」

「ちゃっかりしたやつだな」

ボスンボスンいいながらボロい車が入ってきて停まると

「おーい、ガソリンと洗車たのむ」

どっかで聞いたことがある気がする声だ。

見ると担任だった。

「やべっ」

キャップを目深にかぶった。

学校にはバイトのこと話してねーんだ…。

「おい、聞こえてるのか?」

担任が近づいてきたので、ウォーターガンで水を噴射した。

「うおっ! あぶない! びびしょ濡れになるるだろうが!!」

わめく担任に、顔が見えないよう少し下を向いて、

「サービスッス」

「なんのサービスだ!? …中で、コーヒー飲ませてもらうから、ガソリンと洗車たのむぞ。人じゃなくて車をしっかり洗ってくれ。あ、ガソリンは満タンじゃなくていいから。」

担任は言いながら本日コーティング値引きデーのノボリを見て、

「今日は奮発してワックスがけしてもらおう。おれの愛車ピッカピカにしてくれよ」

「はい」

タイヤのホイールを洗剤でごしごししてから、水を噴射する。

まー、サービスしてエンジンルームも洗っとくか。

ボンネットを開けて、ふだんはやらないところまで水をぶっかけた。

香りビーズどこだっけ…。

ちょうど切れてて、ストックがどこかわからなかったので、トイレに行ってサワデーを取って来ると、液体をクルマの灰皿に流し込んだ。

手洗いすんで、洗車機にいれて乾かすと、ワックスがけだ。

ポリッシャーで窓までびっしり塗っておいた。

「終わったか?」

タダなのをいいことに何杯もコーヒーを飲んでから、担任が戻ってくる。

「終わったッス」

キャップのつばで目とか隠しながら、返事した。

オレのことには気付かずに、

「おー、窓までまるで虹がかかっているようだな、OKOK」

上機嫌で車に乗ると、変なエンジン音立てて発車する。

「ふう」

キャップを元に戻した。

なんとかなった。

さ、電話すっかなと思ってると工廠から先輩が顔を出して、デンジ、オーナーが事務所に呼んでいるぞって声をかけられた。

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