※この作品はR-18です。

チェンソーマン バイト編   作:衣畑みなと

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純情な症状

「ええー! ソーセージぜんぶ食ったのぉ!?」

食卓でデンジが声を上げる。

「たべた!」

朝からハルマキをバリバリ食べながらナユタが答える。

「ピザを手作りして食べ放題する予定だったんだぜ…」

ケチャップ、チーズ、メリケン粉…。

トッピングがひとつ減るとさみしくなる。

「しょうがねえ、高かったけど、また買ってくっか」

「サラミはもういい!」

「んなこと言っても、ピザにはサラミじゃねーの?」

「サラミ、もういい!」

ナユタが思い出して、うぇえという顔をする。

サラミソーセージまるごと一本食べたら、そうなるかもしれない。

「じゃあ、ふつーのハムでも使うかぁ…そのほうが安く済むしな」

「うん! ふつーのハムがいい!」

「ピザに、ロースハムかぁ…」

つぶやきながら、卓に置いたチケット2枚を見る。

ナユタがサラダをサリサリ噛みながら、

「なにそれ!映画の券?」

「あー。」

デンジは昨晩の事務所でオーナーに渡されたことを思い出した。

オーナーに、映画の券を二枚手に入れたんだが、デンジ君にあげよう、と言われて、

「映画ッスか…」

と差し出されるままに受け取って

「2枚、くれるんッスね」

なんの映画だろうとみていると、オーナーが咳払いして、

「うちの娘と行って欲しいんだ」

「娘さんと?」

「そう。その映画にね。うちの娘は引っ込み思案なんだが、私の見たところ、どうやらデンジ君を気に入ったみたいなんで、君が一緒に映画に行ってくれたら、喜ぶと思うんだ」

「娘さんが…オレを??」

「私に会いに来たとき、デンジ君を見ていたらしくってね」

うーん、オーナーの娘さんが来たことあったっけか??

心当たりないな…。

「デンジ君なら、安心して娘を任せられる」

うなづくオーナーに、

「だけど、オレ、娘さんのこと、全然知らなくって」

「頼むよ。うちの娘は内気で、男の子とデートしたこともない。一度でいいから…」

「はあ」

まあ、オーナーさんには世話になってるし、映画の券はもらえるし、一度きりなら、いいか…。

それに、娘さんつーのに、興味がなくもないし。

「ちなみに、娘さん、どんな子なんです」

「恥ずかしがり屋でねえ、すごく純情なんだ。たとえば、イギリスに旅行に行った時、向こうのお金はペニーとポンドと言うんだが、ペニーと聞くたび赤くなっていたくらいだ」

「はあ?」

「ちんちん電車に初めて乗る時も、真っ赤になって待っていたからね。来たのが普通の路面電車だったから、おどろいていたよ」

いや、ちんちんな電車がくるほうがおどろくだろ?

「乗り込む前も顔をうつ向けていたけど、いざ乗ってみると乗客もみんな普通なんで、拍子抜けしたような感じだったな」

ちんちん電車だからって、客がちんちん出してるわけないだろ…。

「もしかしてその子…おもしろい子ですね」

オレもおもしろいって言われたことあるけど、その子もそうとうだぜ。

「いや、ごく普通の子だよ、親のひいき目かもしれんが、可愛い。ただ、すごく純情でね…」

純情な子が、ちんちんな電車が来ると思ったり、客がちんちん出してるとか思わねーんじゃねえか…むしろちんちんのことばっか考えてるじゃねーか。

 

「映画いく! いきたい!」

ナユタの声で、はっと朝の食卓に意識が戻された。

「こりゃだめだ。しごとのえんちょーみてえなもんだからな」

「うそ! 映画見に行く仕事あるの? やりたい!」

「そんな仕事ねーけどよ。これは、別の人と行かなきゃなんねーの」

「ずるい!!」

「…やっぱ、映画好きか? 前は、たくさん映画つれてってもらったからなあ、つぎは、ナユタをいやっていうくらい映画みにつれてってやるよ」

「やくそくだぞ!」

「あー。つれてくよ。10本くらい、かな…」

「べつに、そんなにみなくってもいいかな」

「へー。そうなのか」

やっぱ、マキマさんとは違うのかな。

「たいせつな1本みつけたから」

「今、なんてった?」

ナユタはにたーとわらった。

「学校、行く!」

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