「デンジ、食堂行こうぜ」
「オレ、いいや…」
「今日食べない日かあ」
声をかけてきた男子が行ってしまって、デンジは、でも腹減ったなってべたっと机に顔を付けていると、お腹から雷雲が来た時みたいに音がする。
斜め後ろの男子が、
「デンジ何か食えよ。こっちが食いづらくなる」
パンを食べながら言う。
そっちのほうをじーっと見るデンジに、
「やらないぞ!」
と、隠すようにする。
デンジのお腹がまた鳴った。
「ほんと食べにくいな…」
「すこーしくれりゃあ、気兼ねなく食べれるよーになるぜ」
「マジでなんか家から食うもん持って来いよ」
「んー」
「デンジ君」
机にくっつけていた頬を左から右に変え、声のほうを見ると、
髪の短めの女子。ちょっとくっきりした濃い眉、くりくりした大き目の瞳。
この前の夜、ペアになった子だ。
「持ってきたお弁当食べきれないから、食べてくれない…?」
「え、マジ? いいの」
がばっと体が起きる。
「うん」
にこっとして、半分以上残っている弁当を置くと、ちょっと黙って立っていたが、
「日曜、よろしくね…」
「日曜?」
「…映画」
「映画…ッ」
オーナーは、娘の名前はユカリだと言っていた。
このおとなしそうなクラスメートの子は、ユカって呼ばれてる。
「あー!」
オーナーの娘、同じクラスだったのか!
ユカリは自分の席に戻った。
「ちょっとあのふたり、あやしくない?」
「肝試しで一緒になって、仲良くなったんじゃないの」
もしゃもしゃ食べるデンジを見ながら、女子がささやき合って笑い声を洩らす。
「あー、うまかった」
ぜんぶ食ってしまってから、
「弁当箱、洗ってくっか」
洗って返すために、横がまるいブルーの弁当箱を持って廊下に出る。
担任が交通事故を起こして入院したとかで5時間目にやるはずだったホームルームは自習になるって話だった。
弁当箱を洗いながら、しっかし、ぐうぜんってあるもんだなぁと思った。
オーナーは、娘が俺を気に入ったとか言ってたっけ。
ん。ムスメが、オレを 気ニイッタ?
「ええー!? あの子、オレのこと気に入ってるのぉ!?」
洗う手がとまって、蛇口から注ぐ水がデンジの手を濡らし続ける。
あの子、オレのこと、気に入ってる?
気に入ってるって、好きってことだよな?
好きってことは、もしかして、
せ、セックスできる!?
映画見て、つきあって、それからなんやかんやで…セックス!!
頭の中で、裸のユカリが、成長途中の胸をかくし、もう片方の手で、おへその下を隠しているのが浮かぶ。
でも、あの子、ペニーって聞くだけで真っ赤になる子なんだなあ。
そんな子と、はたしてセックスに突き進むことなんてできるのか?
「けどオレを気に入ってくれているんだよな」
なら、出来るじゃねーか、セックス。
あーでも、ちょっとしたことで嫌いになられると、セックスできねーよな…。
「それは、気を付けねーと!」
デビルハンターの頃より頭を回転させている気がする。
なにせちんちん電車で赤くなる子だ、ほんもののちんちんなんて見ちまったら、死んじまうかもしんねえ。どーすりゃいいんだ。
「いっそ目隠しさせたりしてな」
ナイスアイデアに、ブルーの弁当箱片手にこぶしを握り締めた。
「それなら気絶しねーだろ」