「赤い角がある悪魔? 見たこと、あるかも」
病院の駐車場で知り合った女性の言葉に、デンジは飛びついた。
「場所、くわしく教えてくれよ!」
電話の向こうの女の人、葉山サキ。
サキさんによると、その悪魔を見たのは山梨で、実家への帰り道の村で会ったそうだ。
「そこ、明日ガッコ休んでいく」
「それはだめ」
「えー、じゃあ、土曜に行ってみる」
「次の土曜って高校は登校日じゃないの?」
「半ドンだよ」
「昼から電車で往復なんて大変な所よ。日曜にしたら?」
「日曜はデートがあるからなぁ」
「彼女いるの? だったら…土曜連れて行ってあげようか」
「マジ?!」
連れて行ってもらうことにした。
スーパーの駐車場で待ち合わせる。
「お邪魔しますー」
遠慮なく助手席に腰かけると、
女の人は車を発射させた。
「その赤い角の悪魔がデンジ君の友達なの?」
「うん。そーだよ。間違いねえ」
「ごめんね、角が赤かったかどうかは、ちょっと疑問なのよ」
「ああ、そうかあ。まあ、角があるってだけで、ちっとは可能性があるな」
「で、意外とデンジ君彼女いたりするのね」
「初めてのデートなんだ」
「ええ、こんなことしてていいの?」
「デートも大事だけど、こっちも大事だからな」
「ふーん」
ハンドルを握る女の人、葉山サキ、サキさんって呼んでる。
サキさんは、目を閉じて運転してるんじゃねーかなって思うが、生まれつきの顔らしく、言うと失礼ねって言われる。
横顔、きれいだ。睫毛が長い。
「そうだ、映画行くんだけど、映画見に行った後とか、どうすりゃいいのかな」
「時間帯にもよるけど。どこかで遊んだり、お店を回ったり、食事するんじゃない? こう言っては何だけど、デンジ君美術館とか行くタイプじゃないような気がするな。その子がどんな子か知らないし、門限とかもあるか分からないけれど」
「食事した後、エッチとかしていいのかな」
「初デートでエッチする気なの??」
「しないの?」
「普通はしないでしょ。あきれた。普段からイチャイチャしてるとかなら分からないけど」
「イチャイチャはしてねーな。ただ、ここんとこ毎日弁当いっしょに食ってる」
いっしょに食っているってゆーか、弁当をもらっているっていうか。
「イチャイチャしてるんじゃない」
「してねーよ…だいたい、ペニスって聞いただけで顔を真っ赤にする子だぜ」
「普通するでしょ。私は何となくデンジ君の事分かってるからいいけど、女の人のクルマでそんな事言ったら下ろされるわよ。デンジ君、女の子にペニスって言うの?」
「あ、ちがう、ペニーだ」
「何の話してるの」
「とにかく、ペニーって聞くと赤くなる…なんて言ってたかなぁ、あ、そう、純情な子、なんだ」
「純情な子なら、なおさらいきなりセックスしようとしたらだめでしょ」
「いきなりなんかしねーよ。ええと、まず、キスするんだろ、それから」
「別に決まりなんてないけど」
「とにかくオレ、嫌がることはしないし。キスするのがいやそうなら、しないし」
「デンジ君そういうこと分かる? そうね、相手の女の子の気持ちが大切だから。楽しそうかなとか、つまらなそうにしてないかとか、疲れてないかとか、とにかく気を使いなさい。好きな子が相手なら、当たり前だけどね」
「うん…」
こりゃあ目隠しさせたらセックスできるかもしれねえなんて考えてたなんていえねーな。
車が走っているまわりが、けっこう山に囲まれてきた。