「全員目をとじろ」
朝会が始まって、挨拶が終わるとすぐに担任が言った。
みんな、ぽかんとしていて、デンジもバイトであまり寝ていないせいかぼーっとした目で見ながら、
「何だよセンセエ、プレゼントでもくれるのかぁ」
「そんなにプレゼントがほしいのか? デンジ、お前にだけ特別に後で宿題をやろう」
「い、いらねー」
「おら、全員、笑ってないで目をつぶれ」
何事かとクラスのみんなが目をとじると、担任は芝居がかった重々しい口調で言った。
「昨晩、学校の職員室に忍び込んだものがいる」
反応を見ているのか、たんにもったいぶっているのか、しばらく間をおいて、
「見回りの用務員の健さんが発見したんだが、襲われてケガをした。これは立派な犯罪だ。しかし、おそらくテストの答案を盗もうとしたのだろうし、見つかってとっさにけがをさせてしまったのだろう。学校としても、生徒を犯罪者ににしたいわけじゃない。
そこで、心当たりのある者は、目をつぶったまま手を上げるんだ」
教室が静まり返る。
「デンジ、どうして手を上げない?」
「なんでオレが手をあげなきゃなんねーんだ!」
「お前やったんだろう」
「やってねーよ! だいたい夜は、俺は忙しいんだ」
「テストの答案を盗むのに忙しいのか」
「バカらしい! オレは答えを見るまでしてテストの点を上げたくはないね」
「じゃあせめてまともに復習でもして成績を上げるんだな」
休み時間になると、珍しくデンジのもとにクラスの男子が何人か集まる。
「ほんとにやってないのかあ、デンジ?」
「そんなひまがあったら、金になることしてるぜ」
「実は用務員のおじさんをけがさせたの、悪魔じゃないかって話なんだ」
「マジ?」
机に上体をくっつけてだるそうにしていたデンジが、顔をあげる。
「悪魔がテストを盗み見るなんてことすっかね」
「テストの悪魔かも」
「それは怖いぜ」
「それで、クラスの男子で、肝試しついでに悪魔を発見しようって話になってるんだけど、デンジも来ないか?」
「オレ、バイトだから…いや、今日はシフト入ってねえな…」
「じゃあ、やろうよ。デビルハンター部のやつも一人くるから、ほんとに悪魔でも平気さ」
「悪魔はやべーやつはほんとにやべーぜ」
デンジはあくびしながら、
「でも、オレは忙しいんだ。ナユ…妹を毎晩ひとりにはさせとけないし」
「そうかあ」
「でもまー、マジで悪魔だったら、すぐ逃げな。そいで公安呼んだほうがいい」
「俺達でやっつけることが出来るかも」
「やめときな。ゲームみてえに、最初のうちに弱っちい悪魔が出るってわけじゃねえんだ」
「デンジって、悪魔のことになると、なんかプロのデビルハンターみたいなこと言いだすことあるよな」
「悪魔なんて、あっちこっちにいいるだろ。とにかく気を付けな…」
ふああ、とあくびをして、机に突っ伏して目をつぶった。
教師に起こされるまで寝るつもりのようだった。