放課後になって、デンジが帰り支度をしていると、またさっきの男子が声をかける。
「デンジ、ほんとに来ないか? ひとり足りなくてさ」
「わりぃ、今日ぐらいは夜いっしょにいてやんねーと」
「妹だっけ?」
デンジに両親がいないことを思い出したらしく、男子は、ま、しょうがないなというように両肩を上げた。
「わかった。妹の相手してやれよ」
「あー。ま、悪魔がもし出るかもしんねえんなら、気を付けな」
今さらデビルハンターごっこなんてやってられねえよな、と思いながら、デンジは手を上げ、ふと動きがとまる。
「・・・ひとり足んねえって、どーいうことだ?」
「女子といっしょに行くんだけど、肝試しだから男女ペアで入っていくんだ。
女子が、思ったより集まってさ、女ひとりあまっちゃってて」
「女子?? ペアで??」
「ああ、でも、デンジは無理なら仕方ない」
「・・・クラスのやつらがさ」
「ん?」
「もし悪魔に襲われたら」
「デンジ?」
「あぶねえよな。命があぶねえんなら、助けねえとな!」
「いや、悪魔っていうのは、うわさだし、ほんとの目的は女子と肝試しだし」
「だよな! クラスのやつがアブねえ目にあいそうなら、いっしょにいないとな!!」
「デンジ、何だよ急にやる気になって…」
集合場所と集まる時刻を聞いて、さっさと家に帰って着替えて炒飯とスープとレンチンした唐揚げをナユタと食べると、出かける準備をする。
ナユタが、玄関に向かうデンジに、
「今日もアルバイトあるのー?」
「今日はちがう、正義の味方の日だ。悪魔が出るかもしんねーから、オレがついててやらねえとな」
「…ふーん」
「風呂入ったら、歯アみがいておとなしく寝ろよー」
ナユタに黙って見送られながら、外に出るとすっかり日が暮れている。
集合場所のコンビニに行くと、クラスメートの男子と女子が7人来ていた。
女子がデンジを見て、
「あ、デンジも行くの??」
聞いてなかったっていうふうに声を上げる。
「わりぃかよ」
「いーやー。良かったねユカあ、ひとりだけあぶれなくて」
そう言われて、はやしたてられた、おとなしそうな短めの髪の子が、うつむいている。
いかにもまわりのともだちが行くから無理やり連れてこられたような感じ。
みんなでワイワイ学校を目指しながら、最後尾に下を向いてついてゆくその子に、デンジは何となく横に並んだ。
「なんていうか、オレたちがペアくむ感じ?」
「…」
「悪かったな、オレみたいなんで」
「…ううん…」
「ま、悪魔が出たら守ってやっからよ」
いろいろ話しているうちに、だんだん打ち解けてくれたようで、
「デンジ君、妹さんの勉強みてあげているの? やさしいね」
「あー。わかんねーとことか教えてもらってる」
「デンジ君が教えてもらってるの!? デンジ君の妹さんって、もしかして天才?」
「まぁな」
「あ、でも、妹さん小学生? じゃあ天童?」
「俺の妹はそんな歌手みたいなもんじゃねえよ…。算数とか、国語とか、かんぺきに理解してくっから、その日習ったことを教えてもらってる」
「小学校の勉強教えてもらってるの!?」
「まあ、なんつーか。きそってたいせつだろ? オレ、きそがかんぺきじゃねーからな」
「アハハ、基礎は、大事だよね!」
ユカと呼ばれている子が笑っているのを見て、デンジは、来て良かったかもな、と思った。
壊れてて誰でも学校に入れる柵が、見えてきた。
柵の穴の向こうは、闇が口を開けて待っているよう見えた。