あんなは興奮していた。
デビルハンター部では雑用ばかりだった。校外活動で悪魔を倒すのに立ち会ったことはあるけど、悪魔を倒したことのない自分が、頼りにされている。
穴があいた柵から校内に入ると、自然にみんなが自分を見て指示を待っていた。
「…昨夜の職員室でケガした用務員さんは、犯人にすごい力で跳ね飛ばされたって言ってる。悪魔だっていう可能性は否定できない。みんな、十分注意して」
「犯人、今日も来るかな?」
「来てるさ。そこに」
男子のひとりがデンジを指さす。
「えー、オレえ??」
「デンジ君、おっきな声出さないで」
「図星だろ」
「おまえらまでオレを疑ってんのかよ?」
すると、デンジとペアにされたユカが、見かねたのか、デンジを擁護した。
「デンジ君って、犯人じゃないと思う。だって、いつも赤点だから。答案を盗み見ているんだったら、成績いいでしょう?」
「そうか、デンジ、疑ってすまなかった」
「そうだなぁ、いつも赤点のデンジが、そんなことしてるわけないよな」
「わかってくれたか…。だてに赤点じゃねえってことを」
「クラスでも点数の低さでは折り紙付きのデンジが、答案盗み見てるわけないもんな」
「デンジ、ごめんね。わたしたち、たんに頭が悪いからってテストを盗みに入るって思いこんでた。でも、デンジの赤点は圧倒的だってこと、忘れてたわ」
「オイオイ、ほめても何にもでねえぜ」
「…じゃあ、5分おきにスタートしましょう。メールで配布したルートで、2人で職員室まで行って帰ってくる。ルート通りに進めば、はちあわせることはないから。ライトはできるだけ使わないこと。じゃあ、わたしたちが最初に行くね」
あんなはみんなにうなづいて、ペアの男子と闇に浮かぶ校舎の影へ歩きはじめる。
「もし悪魔が出たら、でっけえ声出しな。チェンソーマンが助けてくれるかもな」
「学校に都合よくチェンソーマンが来るわけないだろ」
5分、10分と立って、ほかのペアも次々と出発し、最後にデンジとユカが残された。
月明かりの下、ユカが黙り込んで、うつむいている。
「そろそろ5分だな。オレたちも行こうぜ」
デンジは、目の前の子が微かにふるえているのを見た。
「…怖いのか?」
しばらくして、ユカがうなづく。
デンジが手をのばして、細い指を握った。
少女はびっくりして、腰を引くようにする。
声も出せないで、デンジを見る。
デンジは、
「怖いんなら…」
あたりまえのことのように言った。
「手ぇ握るもんだろ」