「この中に生娘はいるか?」
職員室の壁に並ばせられて、かたまっている生徒たちに、大きな顔の悪魔が言った。
豚のような鼻、ギョロギョロした目、これはこうもりの悪魔だと、デビルハンター部員のあんなは思った。
「おれはいま、生娘を食いたい気分なのだ」
全員食べるつもりなのだったが、一斉に逃げ出されると少々面倒なのと、自分なりの食の嗜好を持っていた。
「わたし、処女じゃない!」
「あたしも!」
すぐに女子ふたりが声を上げた。
あんなもとっさにウソをつけばいいのに、躊躇してしまった。
「わたしも非処女、です」
「ム? 」
目が動いて、闇に浮かぶ大きな顔があんなのほうを向く。
「はじめに警棒を振り回してきた女…返答が少し遅かったな。おまえ、怪しいぞ」
ぎくりとする。
「そこのオトコ、その女が生娘かどうか確かめろ」
「えっ?!」
確かめるって…男子はあんなのほうを見て、ちらっと、スカートに目を向ける。
「あんなさん、ごめん…」
「い、いや…」
近づく男子から顔をそむけていたが、
すぐに、何か思いついてポケットからハンカチを出した。
「これで、目隠しして!」
「そんなことしたらバレるよ…」
「いいから、目隠しして」
男子が渋々ハンカチで目隠しをしようとすると、こうもりの悪魔が
「オイ、人間は目を塞いだら物が見えなくなるのだろう??」
「このひと、心眼使えるから」
「何ッ、心眼」
「目隠ししたほうが、より見えやすいの」
「ム…人間も侮れんな…」
「ね、見えるでしょ??」
「まっくらだよ」
「み え る で しょ!」
「いたたた、見えます見えます」
あんなはスカートを上げる。
「見て…」
見える訳ないだろ、と心の中で不平を言ってから男子は
「非処女だ」
と、うその宣言をする。
その様子を見ていたこうもりの悪魔が
「オイ、見当違いの方向を向いているぞ」
と、男子があんなの股間から30度右にズレた所を向いているのを指摘した。
あわててあんなは、
「こ、このひとは頭の第3の目で見てるから」
「何ッ、第3の目」
あんなは声を潜めて、
「もう、こっちへ顔むけて」
「はい…」
「もうちょっと頭上げて」
男子は、目隠しがずれてきているのに気づく。
あんなは、男の子が急にペンライトの光を的確に当ててきたので
ハッとして男子の顔をよく見ると、
「キャー!」
蹴り飛ばす。
「何をやっているのだ!」
こうもりの悪魔は、
「いい加減にしろ。手っ取り速い方法を試させてやる。その女が最初に振り回してきたその警棒、それを女に突っこめ。生娘なら血が出るだろう」
「ええ…」
完全にハンカチが目からずれている男子が身をおこして、毛むくじゃら、人間の腕のような太さの指先の爪がさした、床に転がっている警棒を見る。
「そ、それは」
「やらないなら、おまえを食う」
「ヒッ、ひい!」
男子は、落ちていた警棒を取り上げ、あんなのほうを見た。
「や、やめて」
「ごめんなさい、あんなさん」
「いや…!」
「早くしろ。あまりじらされると、ここのいる者の誰か、食ってしまうぞ」
非情な宣告だった。