深海棲艦の侵攻から七年が経過した某月X日、A島南凡そ二五〇海里 人類側の制海権が及ぶ末端の地点に於いて、哨戒中の水偵が敵新型艦艇と思慮される艦影を発見。
報告された艦影は、小型艦と思慮され、背部に円形を丸く並べたような艤装を有し、シマウマのような白黒模様の布を纏った姿であった。
Y日 敵新型艦艇の捜索のため、駆逐艦「初雪」「磯波」がA島南海域に進出。敵新型艦艇の捜索及び威力偵察を目的とした出撃であった。
「初雪ちゃん、何か見える?」
「見えないけど…電探には感がある…海防艦クラスの小型艦みたい」
「補助艦かなぁ…魚雷艇とかだと嫌だなぁ…」
海域は大荒れで、視界はかなり制限されていた。強風でセーラー服の裾とスカートがバタバタとはためき、白い腹部とへそがチラチラと見えていた。
「磯波ちゃん!一〇時!」
初雪が指した左正面に突然黒い艦影が出現した。初雪が視認すると同時に敵艦艇の後方の海上に雷が落ち、そのシルエットが浮かび上がった。
「あの艦影!報告にあったのだよ!」磯波が叫ぶ。
「取ぃ舵! 第五戦ぉ速!」初雪が指示し、敵艦と反航しつつ、周囲を旋回するコースを取る。
今回の任務は戦闘ではなく偵察である。敵は単艦だが、能力が不明な以上無用な接近は避けたい。
敵の深海棲艦は小型艦であり、体格は暁型と同程度でかなり幼いものと推測された。頭部には二本の短いツノが生えているように見えた。
敵艦がにわかに初雪と磯波の方向に、左手を向けた。「!?」二人が反応する間もなく指先から閃光が発っせられ、二人に命中した。
「ひゃん!」「被弾した!大丈夫?」
損傷を確認すると、二人とも制服の腹部の部分と、スカートの上部が焼け焦げ無くなっていた。
「!? お腹の部分がなくなってる…」初夢が互いの状態を確認した直後、突然二人は身動き出来なくなってしまった。
「…ぐぐっ」「な、なにこれ!?」
どうやら何者に背後から羽交い締めに遭っているようである。
一歩も動けなくなった二人に敵の新型艦が迫ってきた。
「ワーイ、オヘソダァ」
「おへそ?」「何言ってんだろ…この子」
「オネェチャンタチのオヘソ、同型艦ダカラ同ジ形ダネ。ジャア髪の長イオネェチャンカラ、イタダキマース」
そう言って彼女は、初雪の丸く深いへそに青白い指を入れた。
「きゃあ。な…なんかおへそが変な感じ…」
「オネェチャンノオヘソニ特殊ナ振動ヲ送ッテイルノ。コレデ、オネェチャンのオヘソ取チャウヨ」
深海棲艦の言った通り、初雪のへそはフチが腹部から飛び出し始めた。まるで腹から肌色の筒が飛び出したようである。
「えぇぇ…何これ…?やめてよぉ」初雪が懇願するが深海棲艦は「ヤーダ。オネエチャンノオヘソ食ベチャウノ」そう言って腹から指を離した。
「ホラ、オネェチャンノオヘソ」彼女の指に丸く小さい肌色の塊があった。「わたしのおへそ!?…やだ、返してぇ…」
「ダーメ」と言って初雪のへそを口に入れ、食べてしまった。
「は、初雪ちゃん!大丈夫!?」
「わ…わたしのおへそがぁ…」
自分のへそを取られてしまった初雪は泣き出した。
「ジャア、次ハ三ツ編ミのオネェチャン!」
「や、やだぁ…来ないでぇ…」
深海棲艦は構わず磯波のへそに顔を寄せ「オネェチャンノオヘソ、アサイネ」と言った。
「やだぁ、あんまり見ないで下さい…」
「ジャア、コウシチャウネ」と言うと、磯波のへその両側を、指でぐいと押込んだ。
にゅるん
磯波のへその底が盛り上がり、へその入り口とほぼ同じ高さとなった。
深海棲艦は盛り上がったへその底を摘むと、思いっきり手前に引っ張った
「い、痛い…やめて、お願い」涙を滲ませながら、磯波が懇願した。
「ヤメナイ、オネェチャンのオヘソモ頂クノ」
そういうと、飛び出したへそがブチリと千切れてしまった。
「痛ぁい!お、おへそがぁ…」
深海棲艦は、磯波のへそも食べてしまった。
「オヘソ、フタツモトレタシ、オ臍探信儀機モチャント動作シタネ。ジャア、艦娘サンタチ、オヘソ取ラレナイヨウニ頑張ッテネ」
そう言って新型の深海棲艦は南方へ離脱して行った。
二人が動けなかったのは、死角から浮上した敵潜水艦に拘束されていたためであった。
「敵が行ったみたい…」「おへそ…なくなっちゃった…」
初雪と磯波は損傷が軽微だったため、Z日未明に泊地に帰還した。
しかし、二人の腹部からは、不思議な現象でへそが失われていた。ドッグ入りで艦娘の怪我は治癒したが、へそは修復されず、平坦な腹部に変わってしまった。
検証の結果、確認された深海棲艦はへそを出している艦娘を察知し、艦娘のへそを永久に失わさせる、工作艦だと推測された。腹部やへそを露出させた艦娘は多数存在するが、へそを失うと彼女らの士気が低下するのは目に見えている。
軍令部は危険を承知でへそ出しの艦娘で構成された、特務艦隊でこの深海棲艦の駆逐を目論んだ。
しかし、艦隊は強力な敵艦隊に返り討ちに遭い、この工作艦により全員へそを失う結果となってしまったのだった。