ふたりの牢獄人生 作:水瓜
橙色の灯油ランプの光が照らすベッドで、俺は夜のひと時を過ごしていた。
目の前にはうつ伏せから膝を立てた状態で、俺に向けて突き出されているココの臀部がある。
揺れる光に照らされる尻の割れ目では、唇のようにぽってりと膨らんだ肛門と古い火傷や切り傷が目立つ陰部が露出していた。
恥部を隠すように黄金色の毛が肛門から割れ目までを包んでいて、俺はその毛の一本を指で摘み少しずつ引いていく。
毛の根元の皮膚がつんと張り詰めていき、やがて毛穴から陰毛が引きずりだされると同時に肛門が微かに収縮した。
この狭い地下牢での娯楽と言えば、非常に限られている。
高い金を出して本や古新聞を購入して読むか、ちょっとした美食を楽しむか。
それ以外では、同じ部屋に住むもう一人との交流くらいしかない。
これが俺と同じような生まれの人間なら、雑談を交わしたりボードゲームをしたりも出来るのだが、俺とココでは共通の話題や趣味などは殆どない。
結果として、暇な時間の殆どはココと互いの肉体に没頭するしかなかった。
今しているのは、最近始めたココの脱毛だ。
世の中には体毛を完全に除去した女が好きな男も居るが、俺は性的には特に拘りは無い。
彼女はこれまで特に毛を剃ったりしたことは無く、腋下や股に豊かな茂みを湛えているが、愛撫している時など肌触りが良くて好ましいくらいだった。
ただ肛門近くの毛に関しては汚れも付着しやすいし蒸れて臭いの原因にもなるので、こうして一本一本抜かせて貰っていた。
これは勿論ココと本当の意味での主従となり、遠慮が無くなったから出来る事で以前ならば尻の毛を抜く等とは絶対に言えなかっただろう。
――まあ、理由については挿れる時に亀頭が毛に擦れて痛いからと誤魔化しているが。
流石に偶に尻が臭うから毛を抜かせてくれと言ったら、彼女を深く傷つける事になる。
ココは俺が何をしても何を言っても不機嫌な素振りなど見せないが、全く傷ついていない訳では無いようで、一度傷心するとかなり後を引く。
あれは二週間程前だったか……、その日は珍しく深酒をしてしまった俺は、ココをベッドに押し倒して甘い言葉を囁きながら身体中をまさぐっていった。
だがココの気分も盛り上がり、いよいよ本番を始めるという段階で、本格的に酒の酔いが回ってきた俺は性欲よりも眠気が勝り、気分じゃなくなったとだけ言って一人で寝てしまった。
その時の事をココは、俺が彼女の身体の傷を見て冷めてしまったのだと勘違いしたらしく、その影響は翌日から現れた。
次の日に迷宮から帰り夜伽を始めようとすると、ココは丸い穴が開いた麻布を持ってきてからベッドに股を広げて横たわり、下半身に布を被せた。
そして女性器だけを麻布の穴から出した状態で上半身にも掛け布を被り、自分の身体の中で陰裂だけが露出されている状態になってからこう言ってきた。
「昨夜は私のボロボロの身体で不快にさせてしまって御免なさい。 これからは私に気を遣って撫でてくれたりはしなくて良いので、どうか穴だけでも使ってください。 灯りを消して、お貴族様の令嬢の顔でも思い浮かべれば、私みたいなゴミクズの穴でも使えない事は無いと思うので……」
――あの時は大変だった。
ココが傷ついた場合、俺に怒りをぶつけるような事は絶対にしないが、その分自分自身を侮辱してこちらが痛々しく感じる程に遜ってくる。
伽の時だけでなく、普段の生活までも麻袋を頭から被って過ごそうとするし、自虐を辞めさせて普段通りの生活に戻すまでには数日間掛かった。
しかし、恐らく彼女は俺に罪悪感を抱かせたくてこういう事をしている訳では無い。
そういう、あてつけのような事をする女では無い事はこれまでの付き合いで分かっている。
ココは……、あくまで推測だが俺に自分が無価値だという事を否定して欲しいのではないだろうか。
それはそれで、別の面倒さがあるが奴隷とは言え女と付き合っていく以上は避けられない事だろう。
彼女の負担を考えて、一度にあまり多くの毛は抜かないようにしていたが、それでも三日前から始めた時よりは大分すっきりとした。
数十本の毛を抜いたし、今日はもうこの辺りで辞めておく事にする。
作業を終えた後も俺はココに腰を突き出す姿勢を取らせたまま、暫く尻を撫でていた。
尻肉には煙草で付けられた火傷痕が点々としていて少し痛々しいが、それでも肉が付き始めて丸みを帯びてきた尻には独特の色気がある。
盛り上がった肛門の周囲を触ると意外に柔らかく、押すと指が沈みこんだ。
ココの身体が僅かに緊張するのを感じながら、両方の指を大陰唇に掛けて後ろから割り開いていくと、桃色の秘肉が露わになると共に酸味のある匂いが鼻に届く。
ココは俺と暮らすようになってから念入りに秘所の手入れをしているらしく、交わった次の日も前日の精液の残りが出て来た事は無いし、不快な臭いをさせている事も無い。
今も秘所から微かに香る、フレッシュチーズのような甘酸っぱい匂いはココの新鮮な体臭なのだろう。
その芳香を嗅いでいる内に、俺の男根は痛い程に勃起してズボンを突き上げてくる。
ココの膣穴を指でなぞると水音と共に指先に粘液が付着して、お互いにそろそろ頃合いかと悟った。
四つん這いの姿勢を辞めさせると俺は彼女に、お前の前穴を使うので準備をしろと告げる。
閨事の最中に掛ける言葉としては冷淡すぎると前までの俺なら思っただろうが、今の関係ではこれで十分に互いの意思が伝わる。
ココはベッドに仰向けになって、両足を開いてから自らの指で陰唇を割り開く。
小陰唇が黒く縁取られた桃色の花弁のように左右へと開花した。
「ご主人様、私の臭いのキツイ肉穴で宜しければ、どうぞお使いください」
「――ああ」
最近分かった事だがココにはある種の被虐癖があり、主従関係の明確化という目的もあるのかも知れないが、ことある毎に自虐的な言葉を口にしてくる。
だが難しいのは、この場合の彼女は本気で拒絶されたり否定される事を望んでいる訳では無いという事だ。
今の『臭いのキツイ肉穴』という表現も、俺が普段から彼女の淫香を癖になるとか興奮する等と伝えており、不快には思われていないと確信しているからだろう。
ここで本当に臭いから洗ってきてくれ等と言えば、恐らく当分は本気で落ち込んでしまう。
出会ってからまだ三か月程しか経っていないが、狭い部屋で密接に関わりながら暮らしている内に彼女の望みもある程度理解出来るようになってきた。
――考えてみれば立場的には俺が上の筈だが、実際はココに主導権を握られている事の方が多い気がする。
俺はベッドに肘をついて、ココの太腿に手を添えて女性器の前に顔を持っていく。
そしてわざと音を立てて鼻から深呼吸をしてやった。
「やぁん……、そんな所を嗅いじゃ駄目ですよ。 汚いです……」
「そんな事は無い。 フレッシュチーズのような良い匂いだ。 それに汁の味も……、ん、甘い?」
「それは……、ほとの中に砂糖を少し入れておきました。 あの、ご主人様が何時も舐めて下さるので少しでも美味しくしておこうと思って……」
「へえ……、流石はココ、良い心掛けだな。 じゅるっ……、甘くて蕩けそうな程美味いな。 果物の汁などを垂らしておくのも面白そうだ。 ――そうだ、これから俺が命じた時はお前の肉穴を味わえるように調理しておけ」
「は、はい! 私のあそこ、ちゃんと料理しますっ!」
俺の言葉にココの淫靡な貝肉は嬉しそうに蠢き、穴からまた新しい汁がとろりと溢れ出る。
舐めとった汁は舌に纏わりつき、砂糖の甘さを伝えてきた。
「そう言えば、料理には名前が必要だろう? この料理は何という名前なんだ?」
ちょっとした悪戯心でそう水を向けてみると、ココは少し考えた後で両手で陰唇を限界まで広げて膣穴を露出させる。
それは、まるで給仕が皿を覆っていたクローシュを取り除けるような所作にも見えた。
「私のチーズ臭いあそこ……、いえ、おまんこを砂糖で甘く味付けした一品、おまんこチーズのデザート仕立てでございます。 どうぞお召し上がりくださいませ」
「……では頂こうか」
そう言うと俺はまた、砂糖の溶けた女花の蜜を啜っていく。
こんな破廉恥な事は、外では貴族としての体面もあり絶対に出来なかっただろうが、地下牢ではこれが日常だ。
――この薄暗い牢獄の中で、俺は彼女とどこまで堕ちてしまうのだろうか。
それを考えると恐怖と共に、どこまでも甘美な期待も覚えてしまった。