ふたりの牢獄人生 作:水瓜
自分の腹の内を曝け出した事で、ココとの間に流れていた気まずい雰囲気も霧散した。
と言うより実際の所、全て俺が一人で勝手に思い悩んでいただけなのだろう。
ココを失うという恐怖に直面し、自分の中で彼女の存在がどれ程大きくなっているか自覚して。
それが切っ掛けで、彼女を奴隷として扱ったままで本当に良いのかと迷う事になったのだが、そう考えた根底には俺が心の中で抱いていた罪悪感があったと思う。
あくまで奴隷として扱われる事を強く望んだのはココだが、俺もそれに合わせて主人として振る舞いつつ楽しんでもいた。
本当はココは心の奥底では奴隷として扱われる事に苦痛を感じていて、俺は凄惨な過去のせいで卑屈になっている彼女の弱みを利用しているだけなのでは無いかという疑念が常に頭の片隅にあったのだ。
ただ……、その疑いはココにとっては見当違いの杞憂だったらしい。
ココは初めから奴隷として仕える事を一貫して望んでいて、俺が思うような内心の怨みなど抱えていなかったのだと思う。
その境遇からか、個人の性格の為かは分からないが、彼女は本心から支配される事を望んでいる。
彼女にしてみれば命を懸けてまで自分を助けようとした主人が、病が治った途端に何かを憂鬱に思い悩み自分にも素っ気無くなったのだ。
訳が分からないという心境だっただろう。
だからこれは二人の問題などではなく、最初から俺だけの問題だった。
俺が持っていた罪悪感は裏を返せば、一人の人間を支配し隷属させる事が本当に許されるのかという迷い。
主人として奴隷を支配する快楽を享受しておきながらも、俺は彼女の望みに合わせて振る舞っているだけだという卑怯な言い訳を心のどこかに置いていた。
しかし俺はもう、自分の本心から目を背けるのは辞めた。
俺はココを隷属させる事に深い喜悦を見出す主人で、これからも彼女を支配し続ける。
誰からも許されなくても、俺がそうしたいのだから。
この開き直りこそ、今までの俺に足りなかったものなのだろう。
―――さて、そうして俺とココの主従の生活は、俺が主人と言う立場を完全に受け入れた事で円滑に回り始めた訳だが、人間関係以外にも大きな問題が顕在化しつつあった。
それは食事問題である。
ココが発現した固有魔法の影響と思われるが、それにより俺の身体はココが産出した体液や子宮で作られる卵以外の飲食物は受け付けなくなっている。
それ故にこの一か月間、俺の食生活はココの母乳と卵、そして尿のみという非常に変わり映えのしないものになっていた。
普通の料理ですら一か月も食べ続ければ確実に飽きるのに、俺が食しているのは変わり映えのしない味の母乳と卵だけ。 栄養補給の為に必要だとは分かっているが流石に限界に近付きつつある。
食生活の改善に全く希望が無い訳では無く、既に手は打っているのだが、一朝一夕で結果が出る物でも無いだろうし望み通りに事が運ぶ保証もない。
それまでは、何とか工夫しながら今の食生活を続けていくしかないのだ。
迷宮から帰った夕方、俺は居室で椅子に座りながら一糸纏わぬ姿となり床に座っているココを見下ろしていた。
地下牢の床は絨毯も敷かれておらず、コンクリートをタイルで覆っているだけで座り心地は非常に悪い筈だが彼女は不満一つ顔に出さず両膝を床に着けている。
季節はもう冬であり、地下深くにあるこの部屋にも換気口を通して寒々しい空気が降りてきている。
普通に服を着ている俺ですら肌寒く思うこの部屋で、ココの身体を覆う物は股と腋の部分の金色の茂みだけだった。
「今日も何も変化は無かったか?」
「は、はい……。 ま、まともな食べ物も出せない駄目な家畜で申し訳ありません。 折角ご主人様から魔石を頂いたのに」
悲痛な表情で謝罪した後、冷たい石の床に額を着けながら這いつくばったココの頭に、俺は足裏を載せる。
勿論、怪我をしないように羽根で触れるような力加減でだ。
「ふん……、大飯喰らいめ、まるで豚だな。 仕方ない、今日もお前の不味い乳と卵で我慢してやる。 ほら、何時ものように子宮を出せ、豚女」
「ぶ、ぶひぃ、役立たずの豚の子袋を出しますぅ……、ふんっ――、んんっ!」
いきむと同時にココの膣から管状に変形した子宮の一部が姿を露わし、二十サント程飛び出た後に自重によって、でろりと床に向けて垂れた。
膣内の奥深くに一日中引きこもっていた子宮の管は、ランプの光の下で見れば分泌物が発酵した白い恥垢が所々にへばり付いていて酸味のある匂いを周囲に発散している。
子宮口に当たる管の先端の穴は周囲が括約筋で盛り上がっており、中に空気でも入っているのか筋肉の輪の収縮に合わせてプクプクと鳴っている。
男の我慢汁のように、先端の穴から溢れた粘液が床へと一筋の糸となって垂れた。
ココの後ろに座り込み、ぬらぬらと濡れた光を帯びる肉の管を掴むと敏感な粘膜への刺激により尻が震える。
先端の穴の周囲をなぞる様に撫でてやると、それを喜ぶように中からまた新たな粘液が吐き出された。
変異により本来なら体内の臓器である筈の子宮の一部が体外へ引き摺り出されているのだ。
彼女にしてみれば剥き出しの内臓を露わにしているのと同じだが、俺にそれを掴まれても刺激に反応はするが恐怖や不安を抱く様子は一切見えない。
その盲目的な信頼に背中がぞくぞくするような快感を覚えた。
手の中に収めた管を揉むと、子宮口が強制的に開閉させられ、内部に水が詰まった笛を吹くような間の抜けた音が周囲に響いた。
ぶぴっ、ぼぼっ、ぶっ……、ぷぴー。
その滑稽な音が愉快で、何度も握ったり離したりを繰り返して肉の管楽器を奏でる。
音が鳴る度にココが僅かに身じろぎをし、子宮口からは粘液の飛沫が飛んだ。
もっと遊びたい気持ちはあるが羞恥を煽るのもやり過ぎは不味いし、この辺にしておく。
「ココ、産んで良いぞ」
「は、はい……」
その合図でココが腹に力を入れていき、暫くすると管の中を何かが移動する感触が手に伝わり、先端部から黄色い内容物が詰まった卵が子宮口を押し広げて排出された。
粘液に覆われた小さい楕円形の卵を、俺は粘液と共に口に入れて嚙み潰す。
皿に出して提供させる際は、ココは卵に付着した体液は綺麗に掃除してくれているので、僅かな塩気が混じるこの味は少し新鮮だ。
ちなみに掃除する方法は卵を傷つける恐れのある布の拭き取りでも、俺が不快に感じる味が混じってしまう水洗いでもなく、ココが自分の舌で一つ一つ己の粘液を舐めとってくれている。
その後も次々に卵が吐き出され、俺はそれを直ぐに口に入れていく。
飽き飽きしている筈の味ではあるが、ココを家畜扱いして卵を出させるという背徳感もあり、特に苦痛なく食べられた。
――この一連のやり取りは、夕食時に偶に行っている一種の寸劇だ。
俺はココの本当の主人になると心に決めたが、かと言ってモノのように雑に扱ったりするつもりは無く、寧ろその日の彼女の体調や精神状態にかなり配慮している。
このココを家畜として扱う演技も苦痛になりつつある食事を何とか楽しむ為に行っている工夫であり、本気で彼女が傷つきそうな罵倒は避けている。
今回、思いついても言わなかったものだと『カス塗れの汚い子宮だな』、『身体の中からミミズが飛び出たみたいで気持ち悪いぞ』などがあった。
食事の楽しさというものは料理の美味しさだけではなく、共に食卓を囲む人や演出で大きく変化する。
同じような寸劇は既に何度かやっており、昨日は母乳と子宮卵を売り物にしている勝気な女商人という設定だったか。
あれも悪くは無かったが、今日の方が興奮は上だった。 やはり俺は嗜虐的に振る舞う方が好みらしい。
しかし魔石を食べさせている効果は未だに出ないか。
変異薬を飲み固有魔法を身に着けた人間である魔人は、魔物を倒した際に落とす魔石を食べる事で固有魔法が強化されるという。
ココの固有魔法が、自分の肉体で
魔石を食べさせることによる固有魔法の強化は以前から思いついていたが、ココとの関係に関する悩みもあり実行に移してはいなかった。
しかしその問題は解決したし、ココ自身も俺が自分が生み出す母乳と卵に飽き始めている事を気にしていたので固有魔法の強化に取り掛かったという訳だ。
魔石は石と名前に付くだけあり噛み砕く事など出来ない固い物質だが、魔人の唾液には魔石を少しずつ溶かす酵素が含まれているらしく、ココも小さな魔石を数分で飴玉のように溶かし切ってしまった。
味は少し、塩気があったらしい。
しかし魔人の固有魔法については千差万別であり、図鑑でも一般論的な事しか触れられていない。
魔石による成長に関しても個人差は大きく、しかも成長には他の条件も存在する可能性が高い事が示唆されていた。
余り期待せずに、気長に待つくらいが丁度良いだろう。
食後はベッドに股を広げて座り、床に座らせたココに口で男根をしゃぶらせながらパイプにハーブ煙草を詰めて煙を味わう。
この喫煙の習慣は最近始めたものだ。
味覚が変化した事で水を含むあらゆる飲食物を受け付けなくなった俺だが、台所で薪から出る煙が口に入った時に、煙の味は味覚が変わる前と同様に感じる事に気が付いた。
それから物は試しと軍に居た頃に愛用していたハーブ煙草――、普通の煙草の代わりにブレンドしたハーブを袋詰めした物と安いパイプを購入した。
王国の男子には喫煙者が多く、当然軍人も殆どが煙草を嗜む。
俺も付き合いで一緒にパイプをふかす事もあったのだが、その時も普通の煙草では無くハーブを吸っていた。
と言うのも、俺の父親が健康増進に熱心な人で幼い頃から煙草の害や依存性について教え込まれていたので、煙草への忌避感が身体に染みついているのだ。
ハーブ煙草には依存性は無く、香りと仄かな風味を楽むだけの安全な嗜好品だが、それ故に熱心な愛好家になる程の魅力も無いので地下牢に来てからは煙が籠る事を嫌って吸っていなかった。
しかしパイプから伝わる煙が舌に記憶にある物と同じ仄かな甘味を伝えた時、ハーブ煙草は俺の無くてはならない嗜好品になり、今では一日に何度も味わうようになっている。
橙色の灯が照らす薄暗い部屋の中に吐き出される煙と、ココが俺のものを舐る音だけが充満していく。
性的な奉仕をさせている最中だというのに、俺達の間にはあまり淫靡な空気は無く、時折交わす会話も迷宮での話や新聞から仕入れた外の世界のニュース等だ。
ココと出会ってから、まだ半年しか経っていないが彼女と身体を重ねた数は数えきれない。
性行為が日常化しすぎて、最近は普通のマッサージのような感覚で気軽に奉仕を受けていた。
「なあ、ココ。 お前の食生活の事だが流石に質素過ぎないか? 俺は気にしないから、もっと旨い物を食えよ」
「ぢゅるっ……、それは出来ません。 ご主人様に不味いお食事しか用意出来ない駄目な奴隷が、主人より良い物を食べる訳にはいきませんから」
「夕食の時に言った事か? あれはお芝居で本音じゃない。 食事についてはお前が悪い訳じゃないよ」
「……でも、申し訳ないですから。 折角、魔石を食べさせて頂いているのに何も変わりが無いですし」
「まあ駄目なら駄目で別に良いくらいの気楽な試みだから、お前が気に病む必要はないぞ」
変異後のココの食事と言えば、購入出来る中で一番安い粉っぽく質の悪いパンを細かく千切って皿に入れ、鍋で煮た豆を煮汁と共に掛けただけの料理とも言えないものだ。
豆は滋養が豊富なので栄養は摂取出来ているのだろうが、家畜の餌のようなそれを四つん這いで食べている姿を見ると哀れになってくる。
これまでは俺の食事を半分程残して与えていたので俺とココで食べる食材自体にはあまり差は無かった筈だが、俺が普通の食事が出来なくなって以来、彼女はずっとこんな食事をしていた。
「……ありがとうございます。 でも私がしたくてしてる事ですから。 れろぉ、ちゅ――、あっ、おちんぽの先から蜜が出てきましたよ。 この蜜が私の一番好きなおやつなんです」
爪の無い柔らかな指先が男根を根本から扱きあげ、先端から溢れ出た先走り汁を彼女は本当に美味しそうに舐めとっていく。
まあ同じような発言は俺もココの愛液を対象に言った事はあるのだが、自分で言うのは良くても相手から言われるとかなり恥ずかしい。
気の利いた返答も浮かばず、無言でココの艶やかな金色の髪を撫でてやった。
「私もご主人様の出す物だけで生きていければ良いのにって思うんです。 そうしたらご主人様も迷宮なんて危ない所に行かずに済みますし、一日中ベッドの中でお互いを食べ合って生きられますよね。 一生、抱き合って一つの生き物みたいに暮らすなんて憧れませんか?」
「……まあ、そうだな」
幾ら何でも、そんな自由の無い生活は御免だったが目を輝かせながら語るココに水を差す事は出来ずに合わせてしまう。 これは冗談ではなく本気で言っていると、期間こそ短いが濃密な付き合いをしてきた者として理解出来た。
変異薬を飲むように説得する際に俺からの愛の告白を受け、その後の一時的に気まずくなった期間を乗り越えてからと言うもの、彼女の愛情表現は時にこちらがたじろぐ程に強烈な物になった。
普段の言動にも俺から愛されているという確信が表れていて、好意を何の覆いも着けずに真っ直ぐにぶつけてくる。
その純粋な愛情は嬉しくもあるが、時に重たく感じる時もあった。
別にココに負の感情を抱く訳では無いが、やはり男として自由な時間は欲しい。
「でも実際はお金を稼ぐ為に昼間は離れ離れにならなきゃいけないんですよね。 ――ご主人様、私も迷宮に言ったら駄目ですか? 近くに居れば、部屋に戻らなくてもお乳も卵も食べて頂けますし」
「駄目に決まってるだろ、危険すぎる。 俺の魔力が供給されているから魔力強化くらいは使えるだろうが、迷宮はそれだけで生き延びれるような甘い場所じゃない」
「むう、じゃあ仕方ないですが……。 私も一緒に行ければ、何時だってお腹を満たせますし、安全地帯でご奉仕だって出来るのに……」
「別に戻ってから、ゆっくりすれば良いだろ。 ほら、手が止まってるぞ」
「あっ、申し訳ありません。 おちんぽ萎んじゃった……。 はぷっ、れる――」
こんな事を考えてはココに悪いが……、彼女の固有魔法が戦闘向きじゃなくて良かった。
もしそうなら確実に迷宮に付いてくる事を望んでいただろう。
単に危険な事もあるが地下牢でこれだけ密接に過ごしているのだから、迷宮探索は俺一人の時間にしておきたい。
如何に好きでも四六時中一緒では、俺も精神的に追い詰められてしまったかも知れない。
愛し合う関係になれば常に共に居なければならない訳でも無いし、俺にとっては今くらいの生活が丁度良い。
俺は熱心に奉仕を続けるココの頭を撫でながら、ハーブ煙草の甘ったるい煙を口内でくゆらせた。