俺以外の男子が滅んだら、逆レイプやおねだりエッチの毎日が始まった 作:荒井アライ
ある日、世界を驚愕するウイルスが発見された。そのウイルスは瞬く間に世界中に広がり、多くの死者を出した。
一ヵ月もしないうちに、全ての男がこの世界から消えたのだ。そう、俺一人を除いて。
「日野ちん、見てみなされ。今日も早乙女氏はハーレム状態ですぞ」
「そうだな。あんなフィクションみたいな両手に華って本当にあるんだな」
日野ちんこと、俺、日野明(ひのあきら)は同じオタク仲間の太田太郎と共に教室でお昼ご飯を食べていた。
高校生になって一ヵ月が経って、クラスのカーストやグループが形成されていき、俺は見事にクラスの下位カーストであるオタクグループの一員となっていた。
自分の見た目はそこまで悪いわけではないと思っているのだが、俺のグループには女子が一人もいない。つまり、そういうことなのだろう。
いつもは丸底眼鏡の太田と、長身で声が小さい田中と一緒にオタク談義をして青春を過ごしているのだ。
青春に女子がいないのはどうなのか? そんなのいるにこしたことはない。それでも、欲しくても手に入らないというのが世の中なのである。
それに引き換え……。
「早乙女氏、また告られたらしいですぞ。それも、今度は女子中学生から! 許せまじき事態」
「まぁ、俺らが許さなくても勝手にモテるんだろな。あれ? 俺は大学生のお姉さんから告られたって聞いたけど?」
「それは、二日前のことですな。JCは今日の朝らしいですぞ」
「まじかよ。それでいて、クラスでは学校一の美女二人に言い寄られてんのかよ」
俺たちの視線の先には、早乙女王子(さおとめおうじ)君というイケメン過ぎるクラスメイトがいた。
身長は180センチを超えており、若手俳優やアイドル顔負けの甘いマスク。サッカー部のエースで、学力は学年トップクラス。誰に対しても優しいこともあり、学校のみんなから愛されるイケメン君なのである。
「勝ち組の遺伝子臭が凄いですな。子宮が疼くとは、早乙女氏のために生まれた言葉としか思えませぬ」
「いや、その言葉一般的じゃないからな」
太田のギリギリ発言を聞き流しながらも、確かにその言葉は早乙女のための言葉みたいだった。
右には学園でトップクラスに可愛いと言われている阿澄春香(あすみはるか)、左には同じくトップクラスと名高い小倉楓(おぐらかえで)を携えていた。
阿澄はクラスのみんなのヒロインだ。腰まである黄金色をした髪に、翡翠色をした瞳。可愛い系の容姿に、豊満な乳房をという二つの武器を兼ね備えている。男がこぞって惚れるような存在。明るくて優しいことから、一回話しかけられでもしたら、ずっと阿澄のことを気にしいてしまうことだろう。
対して、小倉は綺麗系の顔立ちをしている。黒髪のボブショートに黒水晶のような瞳。凛とした佇まいが絵になる女の子で、控えめな胸元にすらりと伸びた手足。クール系でありながら、早乙女と話しているときは結構可愛い顔もしたりする。そんなギャップが光り輝いた瞬間を目撃してしまうと、きっと小倉から目を離せなくなってしまう。
そんな二人の美女と一緒にお昼ご飯を食べる、そんなプレミアチケットを早乙女は持っているのだ。
「羨ましいよなー」
「まぁ、NTRだと割り切れば悪くない光景ではありますな」
「そんなふうに興奮できるのは少し羨ましいな」
「しかし、早乙女氏は生まれながらの勝ち組でしょうな。顔面と身長と頭の出来と運動神経を最高基準で揃えているって、我らに勝ち目なさ過ぎません? 生まれた瞬間、最強種族なんですが?」
「馬鹿野郎、あんな奴とまともに戦っちゃダメなんだよ。俺たちはもっと身分にあった相手をだなーー」
「このクラス、ほとんど早乙女氏に惚れてるのでは?」
「……それは言わないお約束だろ」
事実、このクラスにいる女子のほとんどの奴が早乙女のことを好きだと思う。早乙女のことを好きにならないのは、遺伝子的におかしいレベルなのだ。これも仕方がないこと。
「早乙女氏とかになると、女子から逆レイプとかされたりするんでしょうかな?」
「あるわけないだろ。でも、逆レイプかぁ……羨ましいなぁ」
そんな馬鹿みたいなことを言いながらお昼ご飯を食べて、俺たちは何事もなかったかのように午後の授業を受けたのだった。
「お兄ちゃん、大丈夫?!」
「おわっ、な、何がだ? 頭がか?」
そしてある日の朝、俺は妹の唯に布団を揺らされて起こされた。
目を覚ますとそこにはツインテール姿の妹がいた。我が家の妹はツンデレ妹ではなく、ブラコン妹としてすくすくと育ち、今でも俺を慕ってくれている可愛らしい妹だ。
唯は親が取り違えでもしたのかというほどに整った顔立ちをしている。茶髪のツインテールに、琥珀色をした瞳。庇護欲をそそられる顔をしているのに、なぜか少しのばぶみを感じさせるような母性がある。中学生特有の成長期ならではの胸のふくらみは日を追うごとに大きくなっていくので、お兄ちゃんは妹の成長が楽しみなのであった。
「違うよ! 今さら頭のことは言わないって! 顔色は……うん、大丈夫みたいだね。それよりも、ニュース! 今世界が大変なことになってるの!」
「ニュース? 世界?」
俺は唯に強引に手を引かれて、リビングに下りていった。すると、テレビには災害でも起きているかのような緊急感溢れる赤字で、次のような文字が表示されていた。
『研究所からウイルスが流出。男性の遺伝子を壊して死に追いやるウイルスか?』
「え、なにこれ? 怖すぎんだろ」
「昨日の深夜からウイルスが爆発的に広がって、日本でもほとんどの男性が病院に運ばれたんだって。お兄ちゃん、そんな悠長にしてる場合じゃないでしょ?!」
「え、あ、おう」
俺は唯に涙目で肩を揺らしていた。
確かに、まるで他人事みたいにニュースを観ているが、俺は男なわけで、これから病院に運ばれる可能性だってあるわけだ。
それだというのに、心は異常なくらいに落ち着いていた。それもそのはずだ。
「いや、だって、どこも悪い所ないぞ? 頭も痛くないし、熱っぽくもないし」
「本当? 無理してない?」
「あ、ああ。……いつも通りすぎる」
唯は俺の体に何も起きていないことを喜んでいたが、あまりにも何もなさすぎたので、ニュースの方を疑うようになっていた。
しかし、俺たちはこのニュースを受け止めなければならなくなったのだ。
一ヵ月後、俺以外の男がこの世界からいなくなった。