トウヤは体全体が何か暖かく柔らかい物に包まれているのを感じた。まるで温かいお湯に浸かっているいるようなとても心地良い感触。
その微睡みの中でトウヤは無意識に手を動かす。
「……ぅん……」
ムニュムニュと手のひら全体を包み込む弾力がありながら指がどこまでも沈んでいくような極上な感触。
「ぁ……んぁ……ふぁ……」
生まれて初めて経験するその感触にトウヤは夢中にそれをモニュモニュと揉みしだきながら撫でまわす。
そして触っている内に柔らかいそれの中にあるコリコリとした少し固いものを摘まんだ。
「あん!」
「!?」
突然響いた甲高い声にトウヤは完全に意識を覚醒し目を開くと。
視界いっぱいに広がる肌色の大山の先端を揉みしだく己の手が見えた。
「……え?」
この状況にトウヤは固まった。混乱の中で上から視線を感じ、恐る恐る上を向くと。
「……」
昨日、自分に手差し伸べてくれた竜人族の女性リューネが顔を真っ赤に染めながら見つめていた
「「……」」
「「…………」」
「「………………」」
沈黙の時間が続く、二人はお互い見つめ合いながら硬直していた。その時。
「すまない、失礼する。リューネ、ギルドから招集が掛けられ……て……」
タイミング悪く、ホークスが二人の病室に入ってきた。
―――
「全く!二人とも此処は病院なんだぞ!もう少し節度というかなぁ!―――」
あの後、ホークスは二人を正座させ鬼の形相で説教を始めた。二人も端から見れば病室でヤッたと勘違いさせる行動をした自覚はあったので大人しく説教を受け入れていた。
「(常識についての説明)!!」
「えーと、ホークスさん?二人も反省していることですし。そのくらいにしては?貴女も今後の予定とかあるでしょう?」
「っと、そうでしたね。すみません」
ヒートアップしすぎてついには説教を通り越して人としての常識を説明し始めたホークスをこれは不味いと判断した医者が止める。
医者の言葉でようやく冷静になったホークスに二人はホッとする。
「……あのリューネさん、この人は?」
「彼女は鳥人族のホークスさん。私の仲間の一人ですよ」
「ホークスだ。狙撃手を担当している。よろしくな少年」
「と、トウヤです」
ホークスは先ほどとは真逆の凛々しい笑みを浮かべながら手を差し出す。トウヤも恐る恐るとだが握手をする。
「それでホークスさん。ギルドからの招集とは?」
「ああ、昨日私たちが捜索していた闇組織の事でな」
「分かりました。スペンサーさん、トウヤの事をお願いします」
「ああ、気を付けてね」
リューネは手早く装備を身に着けるとスペンサーと呼んだ医者にトウヤを任せて病室から出る。
「……気を付けて、リューネさん」
病室を出るとき、トウヤはリューネの無事を祈った。その祈りを聞いたリューネは。
「大丈夫です。必ず戻りますから待ってて下さいね」
優しい笑みを浮かべながら病院を後にする。移動中、リューネはホークスから説明を受ける。
「ギルドは今日、件の闇組織を国の騎士団と協力して殲滅することが決定した」
「騎士団と?それはまた規模が大きくなりましたね」
「そうでもないさ。連中はあまりにもやり過ぎた」
勇者召喚の模倣、異世界人の拉致、非合法な実験と計画等々。全て上げればキリがない。
ホークスの言う通り連中はやり過ぎた。
「今後、少年の様な被害者を出さないためにも奴らを徹底的に叩き潰す」
「そうですね。トウヤのためにも。彼らを倒しましょう」
二人は強い決意を抱きながらギルドに入る。既に多数の冒険者チームが居り、これから行われる大規模討伐に向けて準備を進めていた。
「おい、あれって【青薔薇の戦乙女】の……」
「【守護竜姫】のリューネと【天空の狙撃姫】のホークスだ……」
「彼女達も今回の討伐に?」
冒険者たちの注目に晒されながら人混みの間を進む。
「あ!リューネにホークス!こっちよ!」
「あぁ、やっときましたねぇ」
「……おはようお姉ちゃん、ホークス」
テーブルで四人の異種族と会話しているエイダ、エルン、ノアの三人をを見つけて合流した。
「やっと来たか。遅刻だぞ二人とも?」
二人がテーブルに着くとクナイを手入れしていた忍び装束の人狼族の女性が話しかける。
「まあまあ、少しくらい良いじゃん大目に見てあげなよ~」
「お前は楽観的過ぎるぞ」
大きなリュックを背負った猫人族の女性が人狼族の女性を宥めるが逆に注意される。
「珍しいね?君達が一番遅く来るなんて」
「そうですわね。何かありましたか?」
刀を携えた人族の女性と紅いドレスを纏った吸血鬼族の女性はいつもは早い二人が遅く来たことに疑問を感じていた。
「おはようございます。ツクヨさん、アイラさん、カムイさん、カミラさん。実はですね……」
リューネはそんな四人に挨拶を交わしながら事の経緯を説明した。四人の反応はそれぞれだった。
「子供を引き取るとかまじかお前、俺達は冒険者だぞ?誰が世話すんだよ?」
ツクヨと呼ばれた人狼族の女性は難色を示す。
「私は良いよ?リューネが決めたことなら」
アイラと呼ばれた猫人族の女性は潔く受け入れ。
「わたくしも構いませんわ。それに男性が一人でもいればカムイも少しは気持ちが楽になれるでしょうし」
カミラと呼ばれた吸血鬼族の女性は人族の女性をチラ見しながらコロコロとほほ笑む。
「な!?た、確かに僕は元男だけど……それとこれとは関係ないんじゃないかな!?それにその子、孤児院に預けた方が良いって絶対」
カムイと呼ばれた人族の女性はカミラにからかわれながらも否定的な意見をだす。
だがリューネは否定的な意見を出す二人に対して。
「すみません、勝手に決めてしまって。でも、放って置けなかったんです……」
そう言って頭を下げるリューネにツクヨとカムイは仕方ないとばかりにため息を吐く。
「リューネが決めちまったんならしょうがねえな。ちゃんと面倒を見ろよ?」
「全く、うちのリーダーは一度決めたら梃子でも動かないんだから……分かったよ。そこまで言うなら僕は何も言わないよ」
「ありがとうございます。ツクヨさん、カムイさん」
リューネはメンバー全員がトウヤの受け入れを認められてとても安堵していた。
「全員!!!!!!ちゅうも――――――――――く!!!!!!!!」
突如ギルド内に超特大の声が響いた。尋常じゃない声音が衝撃波となって近くにいた冒険者が吹っ飛ばされ、近い所から順にギルドの窓ガラスがひび割れた。
爆音が収まると比較的軽微な者が発生源の方を見る。そこにはこの状況を作り出した張本人の大柄な体躯を誇る鬼人族の男が仁王立ちしていた。
「これより!!イズモギルド長からアークレイ大森林に潜む闇組織討伐任務の概要を説明する!!全員!!しっかりと聞くように!!」
「いやシュラン君。君が発した爆音のせいで半分くらい再起不能になったんだけど?」
シュランと呼ばれた鬼人族の男性に妖狐族の女性ギルド長イズモが突っ込む。
「うぅ……耳が痛い……」
「シュラン教官……全力出しすぎ……」
「一番遠くに居てもこのダメージ……やばすぎる……」
「あ~、とりあえず被害が軽微なヒーラーは重傷者に回復魔法掛けてあげて?全員が回復したら話すから」
こんな惨状が引き起こされてなおギルド長はのんびりと指示を出す。色々とゆるゆるな人だった。
「み、皆さん。大丈夫ですか?」
「ああ、……何とか」
「……びっくりした」
「うみゅう……」
「ええ、大丈夫よ……」
「耳が、耳が~!」
「……あの糞鬼教官め……俺達に危害を加えてどうすんだ……」
「まだ、耳がキーンってしますわ……」
「僕もだ……」
【青薔薇の戦乙女】も被害甚大だった。
その後、全員がある程度回復するのに数分かかった。
「え~、ちょっと遅れたけど、説明するわね」
まだダメージが残っている冒険者達にイズモは軽く説明する。
組織の全容、警備網、地形、位置など色々と説明するが。
「―――とまぁ、こんな感じで包囲した後、突入して情報とかを入手しつつ色々ぶっ壊しなさい」
なんとまあ大雑把である。
「これで説明は終わり。ああ、質問は受け付けないよ。私は残ってる書類を片付けないといけないから。それじゃ」
そう言ってイズモは手をひらひらと振りながら執務室に戻った。
「そういう訳で、作戦決行は今夜だ!!それまでに準備を済ませること!!良いな!!」
「「「「はい!!」」」」
「では、解散!!」
―――
時が流れて夜、アークレイ大森林に潜む闇組織の拠点はギルドと騎士団の混成討伐隊の襲撃を受けた。
「こんな時に襲撃だと!?警備兵は何をしていた!」
「こちらB地区!現在冒険者に襲撃され……ぎゃああああああ!?」
「おい、D小隊!応答しろ!D小隊!」
突然の襲撃に組織は大混乱。どんどん組織の仲間が討ち獲られていく。
「くそ!あと少しって時に!」
「局長!どうすれば……」
「……やむをえん。おい!【アマルガム】を投入しろ!」
局長と呼ばれた男の命令に研究員は息を吞む。
「こ、此処でですか!?まだ最終調整も住んでないのに……」
「ここで使わなきゃ、俺達がやられる!兵器はまた作ればいい、やれ!」
「は、はい!」
局長に叱責された研究員は震える手でスイッチを押した。その時、とある区画で稼働していた一基のカプセルの扉が開いた。
―――
「おりゃあああ!」
「ぎゃああああ!?」
何かが動き出したころ。突入した三人の冒険者達は順調に制圧していった。
「ふう、これで20か、どんだけ広いんだ?」
「でも思ったより大したことないですね」
「さっさと終わらせて酒でも飲もうぜ!」
彼等は雑談をしながら残りの構成員を探していると突然目の前の扉が開いた。
「あ?何だこいつ?」
「子供?」
「真っ白だな。亜人族か?でもあんな人種居たか?」
扉の先に居たのは真っ白い服を着ていて、更に異様に長い髪も肌も爪も全てが真っ白な少年だった。
「……なんなんだ一体」
「なんか不気味ですよ……」
「……行くぞ」
「え!?行くんですか!?」
「こいつが此処が何か知っているかもしれねえだろ?」
「……まあ、確かに」
「ええぇ。やめた方がいいですよ」
彼らは少年から漂う雰囲気を不気味に思いながらも近づいてみる。少年は微動だにせずただ俯いたまま立ち続けていた。
冒険者の一人が話しかけた瞬間、突然視界が空中に飛んだ。
「「「……え?」」」
意味が分からなかった。理解できなかった。空中でくるくると回る三人が最後に見たのは。
首が無く、血が噴水の様に噴き出してる三人の体とどこから取り出したのか右手に剣を持った少年の姿だった。
――――
時間は少し経って【青薔薇の戦乙女】の面々も順調に構成員を討伐しながら進んでいた。
「……かなり奥に進みましたね」
「そうだな。だが油断はするなよ?アイラ、ツクヨどうだ?」
「う~ん……罠らしい罠は無いね。ただの通路だよ」
「こっちもだな。全然気配がねぇ」
アイラとツクヨは周囲を調べてみるが特に罠と思われるものは無かった。
「なんか敵が見なくなりましたねぇ。もっと奥にいるんでしょうかぁ」
「可能性はあるわね。この施設無駄に広いし……」
「情報がない以上、分かれるのは危険ですわね」
「そうだね、これだけの規模だと奴らが他の兵器を隠し持っているはずだ」
彼女たちは周囲を警戒しながら進むと異常に広い区画に出た。
「……何もないね」
「ああ、四方に扉があるだけだな」
彼女たちは慎重に進む。その時。
「ぎゃああああ!?」
「うわああああ!?」
「く、くるな、くるーがぼぉ!?」
突然、目の前の三つの扉から悲鳴が響いた。何事かと身構えていると中央の扉から一人の冒険者が必死な様子で走ってきた。
「っ!?大丈夫ですか!?」
「はあはあはあ、あ!?【青薔薇の戦乙女】!?よ、よかった。たすがっ!?」
突然冒険者の胸から剣の様なものが飛び出した。
「「「!?」」」
突然の事に驚く【青薔薇の戦乙女】達。剣は息追い良く冒険者を真っ二つに斬り裂き、持ち主の姿を現す。
「……え?」
持ち主の顔が見えた瞬間、リューネは一瞬思考が止まった。
「トウヤ?」
あまりにも似ていたのだ。先日彼女が保護した少年に。
―――
「あははははははは!!?」
同時刻、施設最深部の指令室で局長はモニターに映る自分の作品の活躍に狂喜乱舞していた。
「凄い、凄いじゃないか!!?たった1体で!たった数分で!敵戦力を3割も削るとは!!これが完成すれば更なる利益が手に入れられる!!」
彼は笑いながら手元の資料を見る。それにはこう書かれていた。
試作量産型生体魔導兵器【アマルガム】
異世界人をベースにした試作型生体魔導兵器【アンリマユ】のデータを元に更なる改良を加えた生物兵器。
低コストと高性能を両立させるため異世界人の遺伝子をベースに遺伝子操作を施した後、それを元に製造したホムンクルスをベースにしている。
長時間の連続戦闘を実現するために北大陸で新たに開発された超小型魔導機関を心臓部に搭載。
作戦を円滑に行わせるために脳内に魔導式制御デバイスを搭載。
―――
アマルガムと対峙した【青薔薇の戦乙女】は苦戦を強いられていた。
「おりゃおりゃおりゃぁ!」
「そこ!」
縦横無尽にヘヴィアックスとハンマーを振り回すエルンの攻撃と狙いすまして放たれるホークスの矢を紙一重で躱し。
「せやっ!」
「はぁ!!」
カイムの神速の居合を弾き。そのすきを突いたリューネの攻撃を最小限の動きで回避。
「ライトニング!」
「シャインクルス!」
エイダとノアの魔法が吹き荒れる中、尋常じゃない速さで駆け抜ける。
「食らいなさい!」
「はあ!」
カミラの操る血とツクヨの鎖が動きを止めようと迫るが逆に足場にして縦横無尽に駆け回る
「くっそ!ぴょんぴょん、ぴょんぴょん飛び回りやがって!兎人族かこいつ!?」
「わたくしの操血を足場にするなんて……」
「うぇ~ん。ぜんぜん当たりませんよぉ~」
「僕の居合をこんな簡単に……」
「速すぎて魔法が当たらないわ」
「……同じく」
「どうする?リューネ」
「そうですね」
リューネは注意深くアマルガムの様子を見る。あれだけ動いていたのに息切れ一つもしていなかった。
「ね、ねえ」
此処で物陰に隠れていたチームの中で非戦闘職のアイラが呼びかける。
「どうしかしましたか?アイラさん」
「さっき気づいたんだけど……あの子から変な音がするの」
「変な音?」
「うん、生き物の音じゃないんだよね。何というか……何かの機械みたいな」
何ともあいまいな表現にメンバーは首を捻っていたが、ただ一人エイダは何かに気づいた。
「……もしかして、超小型魔導機関?」
「何か知ってるんですか?エイダさん」
「北の大陸で製造されている魔導機関を手のひらサイズまで小型化した物よ。みんなと会う以前、北大陸で過ごしてた時に知ったの。でもその時はまだ実用段階に至っていなかったはずよ。……でももしそうなら……」
「えっと、どうしたの?」
「アイラ、その音がする場所、分かる?」
「え?場所?心臓のあたりかな……」
エイダはしばらく思案すると「これならいけるかしら……」と呟く。
「何か思いつきましたか?」
「ええ、かなり難易度が高いし危険だけど……」
エイダは先ほど思いついた策を伝える。それは味方にも危険が及ぶ策だった。
「……やりましょう」
リューネは覚悟を決めてその策を採用する。
「……良いのね?」
「はい、それ以外に方法が無いなら」
その言葉にメンバーも覚悟が決まったのか頷き。真っ直ぐアマルガムを見据える。
「……行きます!」
その掛け声とともに【青薔薇の戦乙女】達は走り出し。同時にアマルガムも走り出す。
「っ!」
「っく!」
アマルガムは神速の刺突を放つがリューネは盾を構えて受け止める。
「はあ!」
「とりゃあ!」
「ジャッジメント!」
その左右からカイムとエルンが武器を振り下ろし、その上からノアの聖魔法が襲い掛かるがアマルガムは驚異的な反射神経と運動神経でリューネの盾を足場にして後ろへ跳躍。
「テンペスト!」
直後エイダが放った風属性の魔法で高く打ち上げられる。
「食らいなさい!」
「おらぁ!」
そこに鋭い槍に変化させたカミラの血とツクヨのクナイが襲い掛かるがアマルガムは体を捻って弾き飛ばす。
「……そこ!」
その直後に放たれたホークスの弓矢が迎撃で無防備となったアマルガムの心臓部を正確に射抜き、中にある魔導機関を破壊した。
「やった!」
アイラの声が響く中、落ちてゆくアマルガム。誰もが勝利を確信した。
心臓部を破壊されたアマルガムが突如大勢を立て直し、床に着地した瞬間アイラに向かったのを見るまでは。
「「「!?」」」
彼女達はアマルガムの予想外の行動に反応できず。アイラに接近を許してしまう。
彼女たちは最後まで気づけなかったが心臓の超小型魔導機関はあくまで戦闘を長く続けるための補助装置。本命はアマルガムの脳内にある魔導式制御デバイスであり、それが生きている限り制限がかかるが戦闘が可能だった。
アマルガムはアイラの心臓めがけて剣を突き出す。対してアイラは自身に迫る凶刃に反応できず、周囲がスローモーションになったかのようにゆっくりと進む剣を見ていた。
彼女達の誰もが目の前の仲間が敵の凶刃に倒れる姿を幻視したその時。
一発の銃声が響き、アイラに迫っていた剣が粉々に砕かれた。
突然の事に彼女達は銃声した方向を見ると、多種多様の銃を装備した人族の男性の冒険者が居た。
「……間に合ったか」
男はそう言うと使っていたスナイパーライフルをしまい、代わりにアサルトライフルを装備した。
「猫人族の女!そこから離れろ!」
「は、はい!?」
アイラは直ぐに離れると男はアマルガムに向けて銃を乱射する。
アマルガムは体を穴だらけにされながらも標的を男に変え、折れた剣で男に斬りかかる。
「吹っ飛べ」
その瞬間、男は左手でショットガンを撃ってアマルガムを吹っ飛ばす。全身から夥しい量の血を流すがそれでもアマルガムは死ななかった。
「不死身か?こいつは。……だったら」
男は起き上がろうとするアマルガムを足で抑えながら懐からリボルバー拳銃を取り出すと眉間に狙いを定めて弾丸を撃ち込んだ。
撃ち込まれた弾丸は脳内にある魔導制御デバイスを破壊、ようやくアマルガムは生命活動を停止させた
死んだことを確認した男は拳銃をしまうと困惑している【青薔薇の戦乙女】に話しかける。
「悪かったな。獲物を横取りしてしまって」
「い、いえ。仲間を助けてくれてありがとうございます」
「そういってくれるならよかったよ。俺は冒険者のレイブンだ。基本ソロで活動している。あの【青薔薇の戦乙女】と話せるとはラッキーだな」
「【青薔薇の戦乙女】リーダーのリューネです。先ほどはありがとうございます、仲間を助けていただいて」
冒険者レイブンは握手をと手袋を外して差し出すとリューネもそれに応じて握手する。
「あ、あの!」
互いの握手が終わる途端、アイラは緊張した様子でレイブンに話しかける。
「ありがとうございます。助けてくれて」
「ああ、君が無事で良かったよ。怪我はないかい?」
「は、はい!ありません!」
「ははは、元気な子だね。……っとこんなところで雑談してる場合じゃないな。俺は左から来たから中央の区画を探索する。そちらは?」
「そうですね私達は右を探索してみます。」
そう言ってレイブンは探索を続ける為に手袋を嵌めると中央の扉に向かう。
「ま、待ってください!」
「?何だい?」
アイラの呼びかけにレイブンは立ち止まって彼女を見る
「あの、その、また会えますか?」
何やら緊張した様子で聞いてきた彼女にレイブンは彼女の前に立つ。
「そうだな。縁があればまた会えるさ」
そう言って彼は再び左の手袋を外して彼女の前に差し出す。そこで彼女は見た。彼の左手薬指に嵌められた銀色の指輪を。
「……ぁ」
「ん?どうしたんだい?」
「え?い、いえ!何でもありません!……その、また縁があれば……」
「ああ、縁があれば」
レイブンはアイラと握手をすると、今度こそ探索に戻った。扉に向かう彼の背をアイラは少し悲しそうな表情で見ていた。
「「「……」」」
そんなアイラの心情を察してか彼女たちは話しかけず彼女の心の整理が終わるまで見守る。
しばらくするとアイラは両手で両頬を強く叩くと振り返り。
「待たせてごめん!行こう!」
どう見ても空元気だが、誰も指摘せず右の扉に向かった。
それ以降、特にアクシデントは無く。あっさりと局長を捕まえた。
周囲に罵詈雑言を吐き散らしながら騎士団に護送される局長はひどく哀れだった。