二人が結ばれた日の翌日の朝。トウヤはリューネの胸に包まれながら眠っていた。
「トウヤ、起きてください。朝ですよ」
「ん……んぅ……」
リューネの呼びかけにトウヤは目覚めたがまだ眠いのか未だに彼女に抱き着いたまま甘えるように豊満な胸に頬ずりする。
リューネはその様子を愛おしそうに見ながらトウヤを抱きしめ、彼の頭を優しく撫でる。
「ふふ、甘えん坊さんですね。でも起きないと朝食に遅れますからこのくらいで」
「……うん」
トウヤは名残惜しそうに彼女から離れて起き上がる。そんな様子にリューネは微笑みながら彼の耳元に囁く。
「……今夜もいっぱい甘えても良いですから楽しみにしてください」
「!……う、うん!」
「じゃあ先にお風呂にしましょう。汗でベタベタです」
二人は手を繋いで再び風呂場に向かう。その時トウヤは昨日の行為で他の皆に聞こえてたのではと気が付きリューネにそのことを聞くが大丈夫との事。
彼女曰く、各々の部屋に防音の結界が張られているため外に漏れることはないらしい。
これを聞いてトウヤは「魔法って便利だなぁ」と思いながら風呂場に入った。
―――
風呂で汗を落とした二人はリビングに向かうとソファに座ったエイダが居た。彼女は二人に気づくとニヤニヤと笑い出した。
「な、何ですか?エイダさん……」
「ふふふ、どうやら昨日は【お楽しみ】だったみたいね?」
彼女の意味深な笑みと言葉にに二人は完全にバレていると理解した。ガチガチに硬直した二人を見てエイダは意地悪な笑みを浮かべる。
「あら?私は淫魔族よ?一目見ればあなた達がヤったかどうかなんてまる分かりよ?」
そう言って、エイダはリューネの元に行くと何かを唱えながら腹部に触れた。
「あ、あの、エイダさん?何を……」
「ん?ちょっと軽い診察をね……あら?」
リューネのお腹に手を当てていたエイダは何かを見つけると更にニヤニヤと笑い出す。
「あらあら、まさか昨日で?やるじゃないトウヤ君」
「え?え?な、何ですか?」
「あの、いい加減教えてくれませんか?」
突然褒められて戸惑うトウヤを置いてついにしびれを切らしたリューネが問い詰める。
粗方診察を終えたエイダは二人に診察内容を告げた。
「おめでとう、リューネ。貴女のお腹に二つの命が宿っているわ」
「「……ふぇ?」」
「まだ最初期の段階だからしばらくは大丈夫だろうけど、無理をするのは控えなさい。良いわね?」
「あ、あの。エイダさん……それって……」
「あら、伝わらなかったかしら?今、リューネのお腹に二人の赤ちゃんが出来てるわよ?しかも双子」
その言葉をようやく認識したリューネは激しくなる鼓動を抑えながら腹部を両手でさする。
「……そうなんですか……私のお腹に……トウヤとの赤ちゃんが……」
「リューネさん」
あの時に願ったものが叶えられた事実にリューネは嬉し涙を流す。それを見たトウヤは彼女に寄り添うとそのお腹に手を添える。
掌にはまだ何の感触も伝わってこない。しかし現実として、彼女の胎内では新たな命がすくすくと育っている。その事実にトウヤは不思議な気分になった。そしてある不安が湧いた。
「僕。……ちゃんと父親が出来ますかね?」
「大丈夫ですよ」
僅かに不安げな表情を浮かべるトウヤをリューネは優しく抱きしめる。
「この子たちが生まれたら、みんなで一緒に育てれば良いんです。分からないことがあれば皆で考えればいいんです。だから何も心配する必要はありません」
「リューネの言う通り。現に私達はそうやって色んな苦難を乗り越えてきたんだから」
「そっか……そうですよね」
二人の頼もしい言葉に、トウヤに燻っていた不安が無くなっていく。
その後、三人は起床した他メンバーにリューネがトウヤの子を妊娠したことを知らせた。
他メンバーは驚きながらもおめでとう!と祝福する。その後メンバーから「子供の名前は?」「子供用の服を用意しなきゃ!」「男の子かな?女の子かな?」などとちょっとしたお祭り騒ぎになった
因みにホークスは二人に祝福しながらも「お前が原因なんだろ?」とエイダにジト目で睨んでいた。
―――
ようやく落ち着いた【青薔薇の戦乙女】のメンバーとトウヤは一緒にエルンが用意した朝食に舌鼓していた。
「トウヤ君、美味しいですかぁ?」
「は、はい!とっても美味しいです」
「それは良かったですぅ。まだまだ沢山ありますからいっぱい食べてくださいねぇ」
そう言ってエルンはトウヤの前に大きなオムレツを置く、ぱっと見2~3人分はありそうなそのボリュームにトウヤは顔をひきつらせた。
「皆、今日はどう行動する?」
ホークスはナイフとホークを使って厚切りのベーコンを一口サイズに切りながらメンバーに聞く。メンバーの答えはダンジョン探索、素材採取、討伐任務など様々だ。
「私はトウヤを冒険者ギルドに連れていきます」
「ん?……ああ、ステータス登録か……」
「ステータス登録?」
初めて聞く単語にトウヤは首を傾げているとエイダが説明する。
「ステータス登録はギルドに自分の個人情報を登録する事よ。簡単に言うと自分の身分証明書を作るの」
そう言ってエイダは懐から一枚のカードを取り出す。
「これはステータスプレートって言って、これに自分の血を垂らせば個人情報が登録されるの」
「少年は今、戸籍が無い状態だからな。出来るだけ早く作った方がいいだろう」
二人の説明にトウヤは「確かに」と納得する。
「ああ、それとギルド長からトウヤを連れてきて欲しいって指示も来ています」
「そういえば、それがあったな。少年に何の用なんだ?」
「さぁ?」
リューネとホークスはトウヤに用があるといったギルド長の事を考える。
「……お姉ちゃん、私も付いて行って良い?」
ここで焼けたトーストにイチゴジャムをたっぷりと付けていたノアが二人に同行を求めた。
「ノア?別に良いですけど、珍しいですね?今日は何もなかったはずですけど?」
「……トウヤに興味がある」
「トウヤに?」
ノアの言葉にリューネは本当に珍しいと思った。
普段他人に興味なく、親しい人としか行動しないノアが関わってまだ一ヶ月しか経っていないトウヤに興味を示しているのはかなり珍しい事だった。
「お前凄いな。ノアがお前にあそこまで興味を引くなんて」
「そうですわね。心なしか興味津々って雰囲気が出てますわ」
「僕の時は一年掛ったのに……」
「え?え?え?」
弱冠一名ショックを受けていたが、とにかく食事を済ませたメンバーとトウヤは各々やるべきことを行うために【フローラ・ガーデン】を出た。
―――
【貿易国 アンブレラ】ギルド本部に到着した三人は早速ギルド長室にいるイズモに会いに行った。
「やあ、リューネ君にノア君。そして久しぶりだね。トウヤ君」
イズモは爽やかな笑みを浮かべて挨拶をする。大量の書類を高速で捌きながら。
「あのイズモさん。トウヤに用があるって何ですか?」
「ああ、単刀直入に言うとトウヤ君に冒険者になってもらいたいなって思ってね」
ポンポンと色んな書類にハンコを押すイズモはド直球でとんでもないことを言った。
「ぼ、冒険者って本気ですか!?トウヤはまだ子供なんですよ!?たしかギルドの規定では15歳からでしたよね!?」
「うんそうだけどね。ちょっと、この子に関する事でヤバイことが起きててさ」
かきかきと羽ペンで書類にサインを書きながら説明する。
「まあ、簡単に説明するとね。一ヶ月前の闇組織がやらかした時があったよね?
その件を西大陸の大国【軍事国 アヴァロン】の馬鹿共が知ってお怒りだよ。「我らの神聖な勇者召喚の秘術を何穢してくれてんだゴラァ!!」とね。
で、何とか怒りを抑えてもらったら連中、トウヤを寄越せって言ってきたんだよ」
「「「え!?」」」
突然もたらされた情報にトウヤ達は驚く中、イズモはさらに続ける。
「連中は「模倣品で呼ばれたとは言え他の勇者と同じ異世界人、ならば彼を次代の勇者として我々が預かる!」って御大層な戯言を垂れ流してね。
そんなゴミ共の頭の中はトウヤ君を処分するかあるいは研究材料にして自国の戦力を強化するつもりなの見え見えだった。
流石にそれは認めないって却下したんだけど連中諦めていなくてね。秘密裏に確保しようと動いているんだ」
話の途中でアヴァロンの連中の事を思い出したのかイズモは頭を押さえながら話す。
「今はギルドが保護する事で何とか抑えられているけど、いずれあの害虫共に対処できなくなる時が来る。君達【青薔薇の戦乙女】がいくら強くても守り切れなくなる時が来る。
それを防ぐためには、危険でも彼自身が自衛できるように強くならなければならない」
イズモはそう言ってコトリとペンを置くと手を組みながらトウヤを見つめる。
「君はどうしたい?このまま敵に怯えながら静かに暮らすか、危険でも己の道を切り開いて進むか、どっちを選ぶ?」
「……」
長い沈黙の中、トウヤは今までの人生を振り返っていた。苦しい事、痛い事、悲しい事が山の様にあるがそれだけじゃない。
それはとても小さいが自分にとって無くしたくない一番大事なものだった。
「……やります、冒険者に」
トウヤはイズモの目を真っ直ぐ見つめ返して冒険者になる事を答えた。
「よろしい。では早速ステータス登録と冒険者登録をしようか。ついてきたまえ」
イズモは三人を連れて部屋から出ると森人族の受付嬢に話しかけた。
「アリシア、ちょっといいかな」
「あら、ギルド長どうかし――リューネさんにノアさん。本日はどのようなご用件で?それにそちらの方は?」
アリシアと呼ばれる森人族の女性は柔和な笑みを浮かべながらもどこか困惑した様子だった。
「この子のステータス登録と冒険者登録をしにね」
そう言ってイズモはトウヤに指さす。アリシアはトウヤを一瞬固まったが再起動してギルド長に詰めかかる。
「っちょ!?ギルド長本気ですか!?ステータス登録はまだしも冒険者登録って、死にに行かせる様なものですよ!?」
「確かにそうだがこの子に事情があってね。特例として私が認めた」
「いや、何やってんですかギルド長!?それでもこの子には早すぎますよ!?」
ギルド長の決定でも受け入れられないとばかりにギルド長に撤回させようと説得するアリシア。思惑はどうあれ、こんな幼い少年を荒くれ者の巣窟に放り込んだら叩き潰されるのが目に見えてるからだ。
今回ばかりはアリシアはギルド長の決定に歯向かった。
「やれやれ、相変わらず頑固だなぁ。少し落ち着いて話を「おい!!何の騒ぎだ!!?」……ん?」
ここで騒ぎを聞きつけたギルドの教官シュランが二人の会話に割り込んだ。イズモはシュランを見てある事を思いつく。
「ちょうどいい所に来たね。シュラン君!ちょっとこの子と模擬戦してくれないかい?」
イズモは今度はシュランにトウヤと模擬戦をするよう提案する。
「何言ってるんですかあんたはーーーー!?」
遂にアリシアはギルド長にため口で突っ込んだ。急に模擬戦をしろと命令されたシュランは目を点にしていた。
「あの……話が見えてこないのですが?」
「良いから良いから!とりあえず武器を持って広場に行って!こっちも直ぐに準備するから。行くよトウヤ君」
「え?」
そう言ってイズモはトウヤの首根っこを掴んで、武器屋の方に連行していった。
「……大変なことになったね」
「そうですね……」
蚊帳の外にされたリューネとノアはイズモに連行されるトウヤに心の中で合唱をしていた。
―――
カンカンと鉄を打つ音が響く中、イズモはひたすら鉄を打ち続ける鉱人族の男に話しかける。
「やあ、ダイン。ちょっといいかい?」
「……なんだ?ギルド長直々とは珍しいな?武器の発注か?」
「いや、この子に防具と武器を見繕って欲しいのさ」
「ああ?」
ダインと呼ばれた鉱人族の男は、イズモが連れてきたトウヤを見る。
「……おめえ、この小僧をどうする気だ?」
「ちょっとある事情で、冒険者になることが決まったんだけどアリシアが拒否してね。彼女を納得させるためにシュラン君と模擬戦することが決まった」
「…………」
イズモの説明でダインはしばし考えこんだがやがてはぁっとため息を吐く。
「お前さんが直々に来るってことは、その小僧訳ありなんだろ?まあ俺は鍛冶師だ、武具を買い取ってくれるんなら誰であろうと文句はねぇ……」
「済まないな。今度良い酒を持ってくるよ」
「はは!それは楽しみだな。で、小僧。お前はどんなものが欲しい?」
ダインの質問にトウヤは直ぐに答える。
「軽くて動きやすい物が良いです」
「はいよ」
ダインはトウヤの要望に合うものをいくつか取り出して並べる。
「合いそうなのは、これくらいだな」
「……これを」
トウヤはいくつかの防具を見比べた後、最も軽かった白い軽装鎧を選ぶ。
「次は武器だな。好きな方を選べ」
「……これとこれを」
数ある武器の中で小剣と小盾を選んだ。
「……珍しいな。普通の奴なら攻撃力が高い大剣や魔法の武器なんかを選ぶんだがなぁ」
「こっちの方が使いやすいです」
「まあ、自分が使いやすい装備を選ぶのも冒険者の基本だわな」
トウヤは自身が選んだ装備を身に着けると、冒険者らしくなった自分の姿にちょっと感動しながらも自分は無一文だと気づいた。
「あの、お金って……」
「大丈夫だよ。君の装備は私が払うさ」
「え?でも……」
「人の好意をありがたく受け取れ小僧」
お金のことで遠慮するトウヤにダインは背中をバシッと叩いた。あまりの痛さにトウヤは背中をさする。
そうしてイズモとトウヤは武器屋を後にした。
―――
「おい、何の集まりだ?」
「何でも、【青薔薇の戦乙女】が連れてきた子供とシュランさんが模擬戦するってよ」
「はあ!?何でそんなことになってんだ?」
「原因はアリシアとギルド長が揉めた結果らしいぜ?」
一方ギルドの大広場では大勢の野次馬で溢れていた。当事者であるリューネとノアは未だ頭を抱えるアリシアをテーブルの席で慰めていた。
「うぅ~、ギルド長は何を考えてるんですか!よりによってあんな小さな子にシュランさんと模擬戦させるなんてぇ」
「えっと、あの人も考えがあるんですよ?」
「……うん、全部トウヤのためにやったこと」
「……どういうことですか?」
リューネとノアはトウヤの経歴と冒険者に入る事になった理由を話した。アリシアはトウヤの壮絶な過去を知って絶句したが次の理由について知ったときは。
「そういうことなら事前に教えてくださいよおおおおおおおおおおおお!!!」
力の限りに両手で台パンしながら魂からの咆哮を上げた。
「おい!ギルド長が来たぞ!」
「誰かを連れているな」
「なんか、小さすぎじゃないか?」
「どう見てもガキにしか見えないんだけど……」
野次馬の声に三人は急いで広場の最前列に向かうと、巨大な両手斧を携えたシュランと軽装鎧に身を包み、右手に小剣、左手に小盾を手に持つトウヤの姿だった。
「なんかすまんな、ギルド長の無茶ぶりに付き合わせられて」
「いえ、こちらこそ……」
「これは模擬戦だが、戦う以上は怪我を負わせてしまうかもしれん。手加減はするが気を付けてくれ」
「ありがとうございます」
そう言ってお互い獲物を構え、合図が来るまで待つ。イズモは二人が準備が出来たことを確認すると開始の合図を送る。
「これより、トウヤとシュランの模擬戦を開始する!両者全力を尽くすように。始め!」
模擬戦が開始された瞬間、トウヤは駆け出す。圧倒的なスピードで一気に近づき。対してシュランはその巨大な両手斧を掲げて、迎撃する構えを取る。
「チェアッ!!」
間合いに入ったトウヤを迎撃するためにシュランは両手斧を振り下ろすがトウヤは紙一重で回避、そのまま彼の左腕に飛び乗ると小剣を頸動脈を狙って突きを放つ。
「っ!?」
それを察知したシュランはすぐさま左腕を振ってトウヤを振るい落とし、落ちたトウヤを左足で踏みつけようとするがトウヤは転がることで回避、そのまま地をけって距離を取る。
「はああああ!!」
シュランは雄たけびを上げながら走り、再びトウヤに両手斧を振り下ろす。それに対してトウヤは今度は左によけながらシュランの右膝の関節部分を切りつけるがシュランは直ぐに右足を動かして足の装甲で防ぐ。
そしてまたトウヤは距離を取り、シュランが追いかける。この攻防を何度も何度も繰り返す。
懐に入る、相手の意表を突く、敵の攻撃を盾で受け流しながら剣を突き立てる、時には盾で殴る等々。トウヤは闇組織の戦闘訓練で得た敵を殺す技を駆使してシュランに噛みつく。
(搦手を使いながら急所を的確に狙ってくる。相手との駆け引きのタイミングも完璧。まるで暗殺者と対峙しているみたいだ。情報では知っていたが一体あの闇組織はこの子にどんな訓練を……)
シュランはこの戦いで子供だからと侮っていた自分を恥じると同時に闇組織がトウヤに行った所業に怒りが湧いていた。
トウヤの事情を知らない観戦者たちは目の前の光景に戸惑っていた。
「な、何だよ?あの子供は……」
「あのシュランさんの猛攻を凌いでいる……」
「お前、あれが出来るか?」
「無理無理!?一瞬でやられちゃうよ!?」
周囲がどよめく。当然だ、小さな子供が高ランクの冒険者であるシュランと対等に渡り合っているのだから。
「トウヤってこんなに強かったんですか……」
「……凄い」
「あのシュランさんが攻めきれないなんて……」
リューネ、ノア、アリシアの三人もトウヤの強さに言葉を失っていた。
どれくらいの攻防が続いたのだろうか、お互いに有効な攻撃が入らないまま時間が過ぎていく。
「「はあ、はあ、はあ」」
そして体力の限界を迎えて両者膝を着くのを確認したイズモはこれ以上は無理と判断して試合終了を伝える。
「両者!戦闘続行は不可能と判断!よって引き分けとする!」
その宣言に周囲は大きな歓声を上げた。誰もがシュランの勝ちを確信していた中で引き分けに持ち込んだトウヤに喝采を送る。
「トウヤ!」
周囲の野次馬の中からリューネがトウヤに駆け寄り、遅れてノアとアリシアが駆け込んでくる。
「リューネさん」
「怪我はありませんか?」
「大丈夫です。シュランさんが手加減してくれたので」
「良かったです……」
「んむ!?」
リューネはトウヤにどこにも怪我を負っていないことに安心すると強く抱きしめた。
その際トウヤの顔がリューネの爆乳に埋もれるのを見た野次馬達はトウヤに対して嫉妬の炎を燃え上がらせた。
「ははは!!いやはやここまでとは予想外だった!!」
体力を回復したシュランは痛快っと言った様子で歩み寄る。
「っぷはぁ!シュランさん……」
「俺もまだまだだな。君に一撃も入れられなかった……」
「それは僕もですよ」
「そうでもないよ?」
いつの間にかこちらに来ていたイズモはリューネに抱きしめられているトウヤの頭を撫でる。
「シュラン君は数少ない最高ランクの冒険者だ。そんな彼と引き分けた君は現時点で大抵の冒険者を返り討ちにできる強さを示したんだ。これは誇っていい事だよ」
「……イズモさん」
「さて、アリシア君。これで文句はないだろう?」
イズモは気まずそうにしているアリシアにトウヤの冒険者登録の是非を問う。
アリシアはうんうんと悩んだ後、諦めたように肩を落とす。
「……分かりました。トウヤさんの冒険者登録を認めます」
「良し!じゃあ、早速手続きと行こうか!」
そう言ってイズモはトウヤ達を連れて未だいる野次馬達を散らしながら向かった。
―――
そして一同はまずステータス登録を行った。
「はい、これがステータスプレートですよ」
「……これが」
「これに自分の血を垂らせば登録が完了する。やってみると良い」
トウヤは手渡された針で人差し指を傷つけ、そこから出た血をステータスプレートに垂らす。
するとステータスプレートが突如光り、収まると文字が浮かび上がった。
―――
名前 トウヤ
LV 65
種族 強化人間(異世界人)
年齢 12歳
身長 152㎝
職業 ソウルブレイダー
称号 【誘拐された異世界人】
―――
その内容を見てこの場の全員が困惑していた。
「これは……」
「LVが年齢の割に高すぎますよ?」
「……この種族の強化人間が不穏」
「この職業のソウルブレイダー、職業図鑑でも見たことがありませんよ」
「詳しく見て見るか……トウヤ君、私が言う通りに操作してくれ」
「は、はい……」
トウヤはイズモの言う通りに操作すると説明文が表示された。
―――
種族 強化人間(異世界人)
説明
人工的に強化改造を受けた人族の亜種。
保有スキル
【フィジカルブースター】
肉体を強化するスキル。
全身に施された魔界製の魔術刻印に魔力を流すことで発動可能。
魔力の消費量に応じて強化時間が変わるが、その分肉体に負荷がかかり最悪命を落とす。
【リジェネレイト】
肉体を修復するスキル
損傷時、魔力を使用することで修復する。
【アクセルブレイン】
思考能力を加速させるスキル
発動時、思考を百倍に加速させることが可能だが脳に負担が掛かるためリミッターが掛けられている。
―――
職業 ソウルブレイダー
説明
所有者が転移時に抱いていた強い思いや願いが職業という形に変化した物。
自身や他人の心そのものを武器の形に具現化させる能力を持ち、副産物として他人の感情を感じ取ることができる
戦闘スキル
【心装具現】
自身や他人の心そのものを【心装】と呼ばれる武器の形に具現化させるスキル
所有者が心の底から信頼できる者にのみ使用できる。
対象者 青薔薇の戦乙女のメンバー
【深怨罪華】
所有者が溜め込んだ負の感情を攻撃に転用するスキル。
所有者が悪意と理不尽に晒されるほど攻撃力が上昇する。
他者の【心装】使用中は使用不可。
パッシブスキル
【エンゲージリンク】
他者との絆で能力値が上昇するスキル
所有者が心を通わせた者との絆が強いほど、人数が多いほど、全ての能力を強化する。
対象者 リューネ
【心想信理】
他者の感情を感じ取る索敵型スキル
―――
「「「……」」」
見たことも聞いたことも無いスキルの説明文に言葉を失っていた。
「いやはや、ここまでとは思わなかったよ。まあこれで登録は完了だ。次は冒険者登録だね」
比較的驚きが少なかったイズモは苦笑いしながらもパンパンと手を叩きながら固まっていた三人を再起動させた後、冒険者登録を行った。
「この魔道具の上にステータスプレートを乗せれば登録されます。置いてください」
「はい」
アリシアに促されてステータスプレートを置くと再び発光、プレートに新たに書き込まれていく
―――
名前 トウヤ
LV 65
種族 強化人間(異世界人)
年齢 12歳
身長 152㎝
職業 ソウルブレイダー
称号 【誘拐された異世界人】
冒険者ランク G
―――
「これで君は正式に冒険者になった。頑張ってくれ」
「やりましたね!トウヤ」
「……おめでとう」
「まだ不安がありますが、頑張ってください」
「はい!」
その後、アリシアから冒険者に関する説明と注意事項を軽く受けた後、三人は【フローラ・ガーデン】に帰った。
同じく、各々の依頼を終えて戻ってきたメンバーに今回の出来事を話した結果、西大陸のやらかしに全員頭を抱えていた。
特にホークスなんかは酷く、「また厄介事か……」と呟いていた。