※この作品はR-18です。

異世界ハーレムダンジョン生活   作:BLUE@

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執筆途中だったのですが書いてるうちに一万文字超えてしまい。これ以上長くするのはあれかなと思って切りの良い所で分けました。



四話

晴れて冒険者となったトウヤは早速依頼を受ける為にギルドに向かった。最初はリューネも一緒に行こうとしていたがホークスに過保護だと止められた上、チームに少し大きな依頼があったので別れた。

 

ギルドに着くと早速、昨日知り合った受付嬢のアリシアの所に向かう。

 

「こんにちは、アリシアさん」

「こんにちはトウヤさん。依頼を探しに来たのですか?」

「はい」

「依頼ボードはこちらです。Gランク冒険者が受けられる依頼は、1番左のG、Fランク依頼しか受けられませんので、ご注意くださいね」

「分かりました」

 

依頼ボードに向かったトウヤはまずはGランクの依頼から見る。

 

Gランク冒険者の数が少ない上に早朝ということもあり、ボードの前には誰も居なかった。

 

「薬草採取、農園の手伝い、キノコ採取、道路のゴミ拾い……」

 

次に、Fランクの依頼を見て見る。

 

「ゴブリン5匹の討伐、ブラウンボア狩り、ブラッドラビット5匹討伐、害虫駆除……」

 

Gランクと大差ないが現在のランクではこれくらいしか受けられない。トウヤは依頼書を見比べた結果、まずはお試しと薬草採取を選んだ。

 

「これにします」

「はい、こちらの依頼ですね?確認しました。薬草の形などは分かりますか?分からないのであれば資料がありますが」

「お願いします」

「分かりました。少しお待ちを」

 

アリシアは後ろにある本棚から植物図鑑を取り出すと、今回採取する薬草の写真を見せながら説明する。

 

「―以上がこの薬草の説明です。分かりましたか?」

「大丈夫です」

「そうですか。依頼を規定数達成できればFランクへランクアップされるので頑張ってください」

「分かりました」

 

アリシアからの説明を受けたトウヤは早速、目標の薬草を探しに森に入ると運が良いのか目標の薬草を次々と見つけ、あっという間に規定数まで集めた。

 

「も、もう集めたんですか!?」

 

短時間で薬草を持って帰ったトウヤに驚きながらもテキパキと精査して報酬を渡した。

 

この世界に来て初めて稼いだお金に少し緊張しながら受け取ったトウヤは時間を見ながら体力的にまだいけると判断して次の依頼を受ける。

 

「え?もう次の依頼ですか?良いですけど、大丈夫なんですか?」

「大丈夫です」

 

そう言ってトウヤはFランクの依頼、ブラッドラビットの5匹討伐を受けた。

 

ブラッドラビット、別名【紅蹴兎】は体毛が血の様に赤い兎で非常に好戦的。たかが兎と舐めた初心者冒険者達をその強靭な足から繰り出される蹴りで沈めてきた。

この兎を狩れなければ冒険者の才能は無しと言われるほどで一種の登竜門となっている。討伐証明部位は耳。

 

そんな危険な兎をトウヤは持ち前の身体能力と反射神経ですれ違いざまに小剣で頸動脈を切り裂き、失血死させる。血でさらに真っ赤になったブラッドラビットの耳を見たアリシアは軽く引き攣らせていた。

 

そして最後に受けたのがブラウンボア狩り。

ブラウンボアはその名の通り何処にでもいる茶色いイノシシで主に食用として重宝されている。

トウヤは同行した猟師に見守られながら目の前に迫りくるブラウンボアに飛び乗ると小剣を脳天に突き刺し、一撃で仕留めた。

 

そんな感じでトウヤはG一つ、F二つの依頼を一日で熟した。

 

「す、凄いですねトウヤさん。たった一日で三つもこなすなんて……」

 

アリシアは戸惑いながらもトウヤにブラウンボア狩りの報酬金を手渡す。報酬金を懐に仕舞ったトウヤは外の景色が夕方になった所を見て今日はこれ以上の依頼を受けるのは無理と判断する。

 

「今日はここまでにします」

「はい、お疲れ様です」

「お疲れ様です」

 

ギルドから出たトウヤは今日稼いだ報酬金を大事に抱えながら拠点に帰った。

 

拠点に帰ったトウヤは早速メンバー全員に今日の事を話す。メンバーは最低ランクとはいえ冒険者になったばかりのトウヤが一日で三件も熟した事実に驚いていた。

 

 

―――

 

 

翌日、トウヤは少し遅くギルドに着いた後今日はどの依頼を受けようか迷っていた。

 

(公衆トイレの掃除、貴族の庭の草むしり、荷運びか……討伐系が一番やり易いんだけどなぁ)

 

今日は少し遅めに来ていたので依頼内容は雑用ばかりで討伐系が一つも無かった。

 

(まあ、こういう日はあるよね)

 

遅く来た自分が悪いと反省しながら比較的マシそうな貴族の庭の草むしりの依頼書に手を伸ばす。

 

「そこの君!」

 

突然後ろから声を掛けられ、振り返ると男2女2で構成された冒険者チームが居た。

 

「……何ですか?」

「突然話しかけてすまない!俺はリク、冒険者チーム【光の方舟】のリーダーをやっているんだ」

「……トウヤです」

 

リクと名乗った人族の片手剣使いの男にトウヤは名乗りながらも彼らを注意深く観察する。彼らの装備は統一性が無く、一部の装備が足りなかったり、安物だったりのを見ると自分と同じ駆け出しの様だ。

 

「……その、リクさんが僕に何の用ですか?」

 

彼らに悪意は一切感じなかったが、それでも念のために警戒する。

 

「俺達と一緒に依頼をやらないか?」

 

リクはゴブリン討伐の依頼書を見せてきた。内容を見るに森にすみ着いたゴブリンを10体討伐するものらしい。

 

「……何故、僕に声を?」

「俺達は新しい仲間を探していてね。君が依頼ボードの前で悩んでいるのを見て、今いるメンバーと相談して君を誘ったんだ。うちのチームに入ってくれないかなって」

「すみません、貴方のチームには入れません」

 

どうやらリク達はトウヤを自分達の仲間に引き入れたいようだがトウヤは青薔薇の戦乙女に保護されている身、故にその申し出を断る。

 

「そんな!?一緒にやろうぜ!」

「そうよ!一緒に冒険しましょうよ!」

「えっと……二人とも、落ち着こう?」

 

諦めきれないのかツンツン頭の猿人族の男槍使いに、闇人族の女魔術師がトウヤに詰め寄る。その中で気弱そうな人族の女治癒師が二人を宥める。

 

そんな中リクはある提案を思いついた。

 

「じゃあ、今回の依頼だけチームを組むのはどうだろうか?それで入るか否かを考えて欲しいんだ」

 

その提案にトウヤは少し考えるが三人の期待のこもった眼差しに断り難くなった。

 

「……分かりました、今回だけ受けます。入るかどうかは依頼が終わった後に決めます」

 

トウヤの受け入れに三人はやったぁ!と互いにハイタッチをすると自己紹介を始めた。

 

「俺は猿人族のエンジ!職業はランサー、よろしくな!」

「私は闇人族のユハナ。職業はウィザード、よろしく!」

「わ、私は人族のリーア……。職業はヒーラー……です」

「改めて俺はリク。リーアと同じ人族で職業はファイター。よろしく!」

「トウヤです。人族で職業はソウルブレイダー。よろしくお願いします」

 

こうしてトウヤは彼等【光の方舟】に臨時で加入し、早速とばかりにゴブリン討伐に出発した。

 

その道中、メンバーはトウヤに質問攻めをしていた。

 

「トウヤ君の年齢12歳!?リーアより三つ年下じゃない!?」

「しかも冒険者登録したのが俺達より一日前とは……」

「背が小せぇなと思ったが、まじで子供じゃねえか」

「確か冒険者になれるのって15歳からだよね?」

 

メンバーはトウヤの年齢に驚きながらも更に質問をする。

 

「なあ。トウヤの職業のソウルブレイダーってどんな職業なんだ?」

「聞いたことが無い職業ね?どんなことが出来るの?」

「ふ、二人とも!人の職業を聞くのマナー違反だよ!」

「そうだぞ二人とも」

 

トウヤの職業を問い詰めるエンジとユハナにリーアとリクは咎めるが二人は「だってぇ!」と子供の様に文句を垂れる。

 

「ごめんなトウヤ君、二人に悪気はないんだ」

「……いえ、大丈夫です」

 

二人の遠慮のなさにリクは謝るが反省の色が無いエンジはトウヤの武器について話しかけた。

 

「それにしてもお前、装備は立派なのに武器だけショボいな。そんなんで戦えるのか?」

「確かに普通の人はもっと攻撃力が高い武器を選ぶわよね……」

「別にこれで十分です」

 

明らかに貧弱な武器をこれで良いと答えるトウヤに二人はいやいやと答える。

 

「いやいや、そんな弱っちい武器じゃ戦闘でぽっきり折れちまうぞ!?」

「そうね。もし巨大な魔物の攻撃を受ければ一発で粉々になるわよ……」

 

二人はもう少し装備を考えた方がいいとトウヤに提案するが次に言ったトウヤの言葉に勢いを失う。

 

「……何故、敵の攻撃をわざわざ受けないといけないんですか?」

 

その言葉はとても冷ややかだった。

 

「え?そりゃあ、自分の身を守る為に……」

「身を守る為にわざわざ危険な敵の真正面に立つんですか?」

 

その言葉は機械の様に感情は無かった。

 

「でも貴方の武器じゃ攻撃が通らないし……」

「自分の攻撃を通すためにわざわざ硬い所を攻撃するんですか?」

 

その言葉は鋭利な刃物の様だった。

 

「砕けるなら受けなければいい、自分の身を守るなら攻撃が届かない所に逃げればいい、攻撃が通らないなら通る所に攻撃すればいい」

「「「「……」」」」

「それなら受ける必要はありません、硬さは必要ありません、威力は必要ありません」

 

感情無くただただ話すトウヤを見て光の方舟のメンバーは言葉を失っていた。

 

「どんな生き物も首を切れば死にます。その辺の木の棒でも死にます、なんなら素手でも死にます、それくらい生き物は脆い」

 

異質だった。異常だった。非常識だった。理解の範囲から外れたトウヤの価値観に【光の方舟】のメンバーは戸惑う。

 

そしてふいにトウヤがメンバーに振り返る。その表情を見たメンバーは言葉で表現できない恐怖を襲った。

 

「殺すなら脆い部分だけを狙えばいい」

 

その目は光を宿していなかった。何処までも暗い、深淵の様な瞳。

 

「殺すなら強い武器は必要ない」

 

その口は歪んでいた。口元まで裂けた様はまるで三日月の様に。

 

「殺すなら力押しになる必要はない」

 

その顔は笑っていた。何もかも失って壊れてしまった狂気を孕んだ笑顔だった。

 

「これなら、効率的に敵を殺せますよ。人も、魔物も、全部」

 

そのトウヤの体から赤みがかったどす黒いオーラがにじみ出ていた。まるでこの世の全てに呪いを振り撒く様に。

 

 

―――

 

 

その後、トウヤと光の方舟の間に重い雰囲気を漂わせながら目標のゴブリンと接敵したが、どのメンバーも先ほどのトウヤとの問答のせいで動きがぎこちなかった。

 

更にはトウヤが先ほどの問答が嘘ではない事を証明するかのようにゴブリン達を葬り。それが更にトウヤとメンバーの間に深い溝を作っていた。

 

「……これで終わりですか。案外大したことはありませんね?」

「……」

「リクさん?」

「っ!?え、あ、そ……そうだな……終わりか……」

 

何処か複雑な表情を浮かべていたリクはリーダーの意地なのか何とかトウヤと話す。他のメンバーはちらちらとトウヤを見ていたが恐怖が勝っているのか近づこうとしなかった。

 

だが、リクは意を決してトウヤにあることを聞いた。

 

「……なあ、トウヤ君……聞いても良いか?」

「何ですか?」

「……君に一体……何があったんだい?」

「……何故、そんなことを聞くんですか?」

 

リクの問にトウヤは討伐証明となるゴブリンの耳を切り取りながら逆に問いかける。

 

「その……知りたいんだ……君がどうしてそうなったのかを……」

「お断りします」

「……どうしてもかい?」

「逆に聞きますけど、貴方は会ったばかりの他人に自分の過去を話せるんですか?」

 

取り付く島もないトウヤの態度にリクは悲しそうな表情をするがそれでもあきらめきれないのかトウヤに頭を下げた。

 

「……頼む、どうしても知りたいんだ。勿論他の人には話さない。だから……」

「…………はぁ」

 

先の問答で恐怖を経験してもなお、歩み寄ろうとする彼にトウヤはため息を吐く。

 

「良い話ではありませんよ」

 

トウヤは【光の方舟】に自分が異世界人と闇組織の事を伏せて話した。悪意と理不尽に晒されてきた己の過去を。

 

【光の方舟】のメンバーはトウヤが受けた仕打ちに絶句していた。

 

「と、トウヤ君……その「……慰めるな」……え?」

 

その中で、治癒師のリーアはトウヤに何か言葉を掛けようとするが彼女が抱いたの同情の感情を察知したトウヤはそれを拒絶する。

 

「誰かに傷つけられた事が無い貴女が僕を慰めるな。僕が話したのは聞かれたから答えたのであって同情して欲しいなんて思っていない。貴女が何を言うつもりかは知りませんがそんな薄っぺらい思いと言葉で誰かを救えると思うな」

 

突如口調が荒くなったトウヤにリーアは何も言えなくなった。

 

「これで僕の話は終わりです。ギルドに戻りましょうーっ!?」

 

話を終えたトウヤはギルドに戻る為に立ち上がった瞬間、突如飛来した弓矢がトウヤと【光の方舟】との間に突き刺さった。

 

この場に居る全員が飛来してきた方向を見ると、十を超える多数のゴブリンが襲い掛かってきた。

 

「ゴブリン!?一体どこから!?」

「おいおい、何だよこの数!?」

「逃げますよ!」

「あ、トウヤ!」

 

トウヤはこの数を相手に【光の方舟】を守りながら戦うのは無理と判断し、彼等と一緒に逃げながら都市に向かう。ゴブリン達は弓矢を放ちながら、トウヤ達を追い駆ける。

 

「きゃっ!?」

 

飛来する矢を何とか避けながら走る中、リーアが足を引っかけて転んでしまう。ゴブリンはそれを見逃さずリーアに鉈を振り下ろす。

 

「リーア!?」

 

仲間達の声と自身に迫る鉈にリーアは思わず目を瞑ったその時。

 

―――ガキン!

 

突然響いた金属音にリーアは恐る恐る目を開くとそこには左の小盾で鉈を受け止めるトウヤの姿だった。

 

「「「トウヤ!?」」」

「っし!」

 

トウヤはゴブリンの首に剣で刺し殺すと眼前のゴブリンの集団を見据える。

 

「……追いつかれましたか」

 

トウヤは襲い来るゴブリンに対処しながら後ろいるリクに声を掛ける。

 

「リクさん!ここは僕が食い止めますから、リーアさんを連れて皆で都市に逃げてください!」

「な!?この数を一人で、そんなの無茶だ!」

「そうだぜ!俺達も一緒に戦う!」

「そ、そうよ!放って置けないわ!」

 

一人でゴブリンの群れを抑えると言い出すトウヤにメンバーは一緒に戦おうとする。

 

「貴方達がギルドへ行って異常を伝えてください!そうすれば応援を頼めます!」

「それでも、君を一人にするなんて……」

 

ギルドへ応援を頼んでいるのに自分を置いては行けないと言い出す【光の方舟】にトウヤは切れた。

 

「……邪魔なんですよ」

「「「「……え?」」」」

「聞こえなかったんですか?邪魔と言ったんですよ!」

「「「「っ!?」」」」

「此処で貴方達が残っても無駄死にするだけです!貴方達がギルドに応援を要請した方が被害は最小限に抑えられるんです!だから早くいってください!」

 

そう言ってトウヤはゴブリンを切り続ける。

 

「……行きましょう」

 

メンバーが戸惑う中ユハナがトウヤの提案に乗る事を決める。

 

「っ!?ユハナ、本気なのか!?」

「ええ、トウヤが言ってることは間違っていないから」

「それじゃあトウヤさんが……」

 

エイジとリーアは未だ踏ん切りが付かないのかちらちらとゴブリンの群れと戦うトウヤを見る。そんな中で俯いていたリクは顔を上げて。

 

「行こう。皆……」

 

トウヤの提案に乗ることを決めた。

 

「此処に居てもトウヤの邪魔になるだけだ。なら一秒でも早くギルドに知らせた方がいい」

「っ!くそ!」

 

リクの言葉で二人は自分達の無能ぶりに悔しがりながらも従った。

 

そして四人はギルドに異常を知らせる為に都市へ走り出した。

 

(やっと行きましたか……)

 

光の方舟がギルドに向かって走り出したのを確認したトウヤは襲い来るゴブリンを切り捨てる。

 

後はギルドの応援が来るまで持ちこたえるだけ。そう思った時、闇組織に囚われていた頃を思い出した。

 

(そういえば初めて相手にしたのはゴブリンでしたね)

 

当時は恐怖で逃げ回り、殺した時は不快感で吐いた。それを数十回繰り返してようやく慣れた。実験が進む度に徐々に強い魔物が追加されていった。それと比べれば楽な方ではある。

 

(何も全てを相手にする必要はない。応援が来るまで耐えるだけ……ただそれだけです)

 

トウヤは自身に襲い来るゴブリンを迎撃する形で応戦する。振り下ろされる鉈を最小限の動きで回避し、飛来する矢は盾で防ぎ、通常より大柄なホブゴブリンが振るう棍棒を盾を横に殴って軌道を逸らす。

 

(……流石に多いですね)

 

斬っても斬っても減らないゴブリンに辟易しながらもそれでも冷静に対処する。ゴブリン達を統率しているゴブリンリーダーを殺すことで指揮系統を乱し、襲い来るホブゴブリンの首を切り裂いて失血死させ、遠くに居たゴブリンシャーマンとゴブリンアーチャーには落ちていたゴブリンの武器を拾って投げつけて殺す。

 

そうしてゴブリンとの戦闘を開始して一時間が経過した。辺りはゴブリンの死体で埋め尽くされ、周囲には血の匂いが漂っていたがトウヤは未だにゴブリンと戦っていた。

 

「これ……さっきより増えてませんか?」

 

パッと見100体はいるような錯覚をし始めたがトウヤは気を取り直して剣を構える。その時、森の奥から更に巨大なゴブリンが三体出てきた。

 

「「「がああああああ!!」」」

 

ゴブリンチャンピオンと呼ばれる巨大なゴブリンはそれぞれ地にした両手斧、棘付き鉄球、棍棒を掲げて雄たけびを上げる。それに付き従うようにゴブリン達が集まっていく。

 

「……」

 

トウヤは自分が持っている小剣を確認するが全体的に刃こぼれしていて切れ味は無いに等しい。突き刺せば行けるかもしれないがどうしたって隙を晒す。そこまで考えてトウヤはこの状況を打開できるある方法を思いつく。

 

「……やってみますか」

 

トウヤは剣を収めると胸に手をやり、目を閉じると自身の職業ソウルブレイダーのスキル【心装具現】を発動させる。

 

脳裏を過るのはかつての自分、人の悪意と理不尽を受けていた頃の自分。

 

それを思い描いた時、トウヤの心からどす黒い闇が噴き出す。怒り、悲しみ、憎しみ、苦しみ、痛み、妬み、恨み、殺意などの負の感情が嵐の様に吹き荒れる。

 

「くぅ!……ぐぅ……」

 

吹き荒れる感情の暴風雨にトウヤは苦悶の声を上げるが自分を救ってくれた青薔薇の戦乙女のメンバーとの思い出を支えにして耐える。

 

そしてそれらの感情が一つに収束し、トウヤの手に一つの小剣が生まれた。

 

光を通さない黒い刀身、血管の様に張り巡らされた赤いライン、飾りは無くただ殺すことのみに特化したデザイン。

 

トウヤが小剣を手にした瞬間、ゴブリン達は数歩後ずさった。本能で感じたのだ。トウヤが持つ黒い剣から漏れ出る異質な力を。

 

「ふむ……」

 

感触を確かめるように数回軽く振るう。

 

(凄く手に馴染む、重さも丁度よく、切れ味も鋭そうだ……良いですね)

 

新たな得物の確認を終えたトウヤはゴブリン達に向き合う。ゴブリン達は怖気づくがゴブリンチャンピオンの号令によって一斉に襲い掛かる。

 

対してトウヤは一歩も動かず、黒い小剣を真上に掲げると刀身からどす黒いオーラが渦巻きながら噴き出す。

 

「【深怨罪華】」

 

トウヤは黒い小剣を勢いよく振り下ろした瞬間、黒いオーラは巨大な衝撃波となって地面を削りながら目の前のゴブリン達を磨り潰し、チャンピオンの元に着くとそこから紅黒い華が咲いてチャンピオンを周囲のゴブリンごと粉砕した。

 

「……え?」

 

トウヤは間抜けな顔を晒しながら目の前の大破壊を見ていた。半分は削れれば良いなと思っていたところにまさかの一撃。予想外の威力に自分がやったとはいえ軽くドン引きしていた。

 

「……これは町中やダンジョン内では使わない方がいいですね。被害が大きすぎる」

 

トウヤは【深怨罪華】を緊急時以外で使わない様にしようと心に決めながら周囲を見渡す。そこにあるのは削れた地面と多数のゴブリンの磨り潰した死体のみ。

 

「……これ、なんて説明しよう……」

 

トウヤはこれから来るギルドの冒険者達にどう説明したらいいか悩んでいると遠くから複数の人の足音が聞こえ始めた。

 

「いた!まだ生きてる!」

「良かった!」

「お~い!助けをーって、何だこりゃ!?」

「え?え?ここの地形こんなに抉れてたっけ!?」

「これ、ゴブリンか?どうやったらここまで原型が無くなるんだ……」

「うぇ、気持ち悪い……」

 

光の方舟を含めた冒険者の集団は目の前の惨状に驚愕していた。それを見たトウヤは全員が納得できる説明を考えながら天を仰いだ。

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