FEエンゲージ イルシオンの希望【R-18版】 作:あじさいファン
第1部第11章-13「希望・その13」における情事。久々となる、本物の交わり。
ロビュスト砦での激戦を乗り越え、これまでに何があったのか、互いに報告し合った少年とオルテンシア。
再会の喜びと温かな空気に包まれていた二人だったが、少年が「異形と化したクレマチス辺境伯を討伐する」と表明したことで、状況は一変する。
オルテンシアは、そんな危険な行為へ身を投じようとする少年を、必死に
かつて、自分がオルテンシアの出征を止めようとした時には、まるで耳を貸さなかったくせに、と、少年も彼女の態度へ怒りを募らせ、二人は激しい口論となる。
その最中、オルテンシアは何かを思いついたように、ふと真顔になった。
砦に地下室があると知った彼女は、姉の近衛であるゼルコバへ命じて少年を拘束させ、そのまま彼を地下室へ連れていく。
「親睦を深めるだけ」
彼女は、そう言っていたが……。
*****
「では……オルテンシア様と少年。ごゆっくり『お楽しみ』ください」
ゼルコバの冷淡な声音を最後に、隠し部屋の扉が閉ざされた。
重い音が石壁に響き、大広間へと通じていた人の気配が完全に断ち切られる。
石造りの閉鎖空間に残されたのは、二人きりの濃密な静寂だった。
恋人として肌を重ねるときならば、幾度となく共有してきたはずの状況だ。互いの呼吸も、体温も、触れ方の癖さえ、もう知らないものではない。
それなのに、今だけはまるで違って感じられた。
死線を共に潜り抜け、生きているという実感を熱く噛み締めた直後であること。
これからの進路を巡って意見を激しく衝突させ、つい先ほどまで大声で言い争うほどの痴話喧嘩へ発展していたこと。
そして何より――ゼルコバの手によって、少年の身動きが完全に封じられていることだった。
両手を頭上へ強制されたまま、地下室の片隅に置かれた小さな木の机へ、頑丈な布で縛りつけられている。細い両腕には、わずかな自由すら残されていない。どれほど手先の器用さに定評があろうとも、肝心の手首そのものを固定されてしまえば宝の持ち腐れだった。
「この戦いが終わったら、あたしね。彼氏くんとやりたいこと、いっぱいあったのよ」
オルテンシアが口を開く。
怒っているようにも聞こえるのに、その声にはどこか甘ったるい響きが混ざっていた。
「時間がないから、その一部だけになるけど……いっぱいイジメてあげるから、覚悟しなさい」
「……何をされても、僕はクレマチス辺境伯との戦いを断念しませんよ。これからのイルシオンには必要な一戦です」
「いつまでそう言っていられるのかしら?」
くすり、と彼女が笑う。
「第二王女に歯向かった罪は重いわよー。二度と無茶な真似できないように、たっぷりお仕置きしてあげるんだからね」
舌戦はなおも続いていた。けれど、先ほど大広間で交わされたそれとは明らかに違う。互いの言葉から、もう刺々しい棘は失われていた。
相手が自分を嫌っていないと知っている。それどころか、どうしようもなく想い合っていることまで知っている。だからこそ許される、恋人同士の甘い挑発へと変わっていた。
先ほどオルテンシアがアンナという幼い少女から譲り受け、くすぶらせていたアロマの甘い香りが、密室の空気を重く満たしている。
その芳香のせいなのか。それとも、死闘と口論を経てもなお鎮まらない感情の昂ぶりによるものなのか。少年の頭の芯はくらくらと痺れ、まともな思考を維持することさえ難しくなっていた。
それはオルテンシアも同じらしい。頬は紅潮し、瞳は熱に潤んでいる。はあ、はあと荒い呼吸を繰り返しながら、艶やかな表情で少年を見下ろしていた。
彼女に対する底なしの恋慕を自覚している。けれど今、その情愛はもはや理性で押さえ込めるほど穏やかなものではなかった。
生きている。彼女も。自分も。そして、こうしてまた互いを求めることができる。その事実だけで胸の奥が焼けるほど熱くなる。
「あたし……ほんとに、もう我慢できないんだからね……」
震えるような細い声。
そこへ淫靡な笑みを混ぜながら、オルテンシアは自らのドレスへと手を掛けた。ゆっくりと布地を剥ぎ取っていく。
その姿を眺めながら、少年の脳裏には場違いなほど懐かしい記憶が蘇った。
彼女が学園に入学するよりも昔。まだ自分が侍従隊の一員として、彼女の着付けを手伝っていた頃のことだ。当時は、一人で衣服を着脱することすらままならなかった少女。そんな彼女が今は、自らの意志で悠々とドレスを脱ぎ去っていく。
第二王女として成長した姿に感慨を覚える場面としては、あまりにも状況が異常だったが、それでも少年は一瞬だけそんなことを思った。
豪奢なドレスが床へ滑り落ちる。残されたのは、愛らしいピンクのランジェリーだけだった。絢爛な衣装を失ったことで、かえって彼女自身の存在感だけが鮮明になる。その背徳的なコントラストを眺めながら、少年はどこか現実感のない頭でぼんやりと息を呑んだ。
やがて、オルテンシアの指先が胸元を覆う布を押し下げる。
見慣れているはずだった。幾度となく触れ、抱き締めてきた身体のはずなのに。それでも、柔らかな膨らみが露わになった瞬間、少年の喉はひどく乾いた。
ごくり、と音を立てて唾を飲み込む。
彼女自身の意志で、こちらが目を逸らせないと知ったうえで、見せつけるように晒されている。その事実が、見慣れたはずの肌をまるで初めて目にするもののように変えていた。
今の少年に、一瞬たりとも目を離すことなどできなかった。
しかし、彼女は、全裸にはならなかった。下半身の布地は残したまま、あられもない上体で横たわる少年へ歩み寄り、その胸元を彼の顔へ押し付ける。
「ね……優しく舐めてよ。一ヶ月前、そうしてくれたみたいに。あ、でも吸うのは、いいって言うまで禁止よ」
下は脱がないのだろうか。そんな疑問が一瞬だけ頭をもたげる。
けれど、聞き出すのは野暮というものだった。そもそも、霞がかったような今の頭ではまともな思考など回らない。
目の前に差し出された、愛する第二王女の身体。それを味わうこと以外、何も考えられなくなっていた。
吸い付くことを禁じられているのなら、許された範囲で従うしかない。少年は恐る恐る舌を伸ばし、当たるか当たらないかというほどの距離から、何度も優しく触れていった。
「あぅ……ふ、うぁぁん……」
零れた声に、少年の胸が震える。
かつて、飽きることなく身体を重ねていた頃、何度も耳にした声だった。
今年に入ってから行われた直前二回とは違う。自分を愛し、求め、身を委ねてくれていた頃のオルテンシアの声。
そのことに気づいた瞬間、胸の奥に込み上げてきたのは欲情だけではなかった。
嬉しかった。愛したオルテンシア様が、自分の知っている彼女が、ようやく戻ってきてくれのだと。
「やっぱりオモチャと全然違うよぉ……彼氏くんっ、大好き……♡」
吐息混じりに囁かれる愛の言葉。
少年は、それにひどく弱かった。それだけで身体が反応する。まるで直接愛撫でもされたかのような感覚が、背筋を駆け抜けた。
張り詰めたズボンへ目を落としたオルテンシアは、嬉しそうに微笑む。そのまま手を伸ばし、少年の下半身を覆っていた衣服を手際よく脱がせていった。
前二回では行われなかったことだった。けれど、その手つきに迷いはない。忘れてしまったわけではなかったのだ。
オルテンシアは、天を突くように怒張した彼氏くんのペニスを見下ろした。
震え方と、すでに垂れている我慢汁。そこから察するものは十分にあっただろう。それでも彼女は楽しげな笑みを絶やさず、訊ねてきた。
「あの後、一人でした?」
「……出来るわけないじゃないですか」
「そうよねー。おかげでパンパンだわ」
満足そうに頷く。
「ちょっと可愛がったら、すぐ出しちゃいそう。でも、せっかくのお仕置きにもったいないわよ」
そう言って、オルテンシアはそそり立つものの根元へ人差し指をちょん、と当てた。
いよいよ『いじめ』が始まる。そう察した少年は、無意識にごくりと息を呑む。
愛する第二王女が嬉々としてこちらを弄ぶときは、決まって、可愛く快楽を求める姿を強要される。
射精を禁じられたまま奉仕させられた日を皮切りに、オルテンシアばかりが一方的に快楽を享受し、自分は悶々とさせられることも少なくなかった。
長らく封印されたと思っていた、二人だけの遊び。それがこうして復活した。感慨深い。けれど同時に、久しぶりすぎて身体が耐えられるのかという不安もあった。
「……禁止」
オルテンシアが、ぼそりと呟いた。
どうやら何らかの魔法を使ったらしい。しかし彼女の身体と頭が視界を遮っているため、少年には下半身で何が起きたのか分からない。
異変は、すぐに現れた。
「っ……!」
股間に妙な痛みが走る。
それと同時に、何かに強く押さえつけられていくような感覚。やがて圧迫そのものは一定のところで止まったようだったが、じんじんと疼く痛みまで消えたわけではない。
「いっ……オルテンシア様。痛いですっ。何をしたんですか」
「えへへー、気になる?」
悪戯を成功させた子供のような顔で、オルテンシアが笑った。
「じゃーん。これ見てよ♡」
彼女が少し身体をずらす。
ようやく自分の下半身が視界へ入った瞬間、少年は目を疑った。
淡いピンク色の光を放つ、小さな檻のようなもの。それが自身のペニスを覆い尽くしている。
大きくなったときの四分の一――いや、五分の一ほどまで縮められている。中では本来の大きさへ戻ろうとするかのように暴れているが、魔法の檻に阻まれ、叶わない。それが、この痛みの正体なのだろう。
しかも、ぎちぎちに詰まっている様子は肉眼でも分かるほどだった。肉が檻から少しはみ出し、そこが余計な痛みを生んでいる。
その一方で、先端部分だけにはわずかな穴が開けられており、そこから我慢汁がぽた、ぽたと落ちていた。
「これね」
オルテンシアは得意げに胸を張る。
「あたしが学園の先生や同級生の目を盗んで覚えた、
「……は?」
絶句する少年。
「まだ理論を全部読み込めてないから、時間制限はあるけど。今するお仕置きにはピッタリよね」
「ちょっ……オルテンシア様! 学園で何てことしていたんですか! 早く解除してください、痛いですっ!」
少年の呆れ混じりの正論は、今のオルテンシアにはまるで届かなかった。何とか外そうと身を捩る。しかし完全に身体へフィットしているうえ、そもそも魔力によって作られたものだ。
取り外し方など分かるはずもない。オルテンシア自身の意思で解除してもらうほかない。その事実を悟り、少年は顔を青ざめさせた。
そんな様子を楽しそうに眺めながら、オルテンシアは艶やかな笑みを浮かべる。そして彼の
「もちろん、いつもはちゃんと戦うための魔法を覚えるのに一生懸命だったわよ?」
オルテンシアの指先が動く。
「あっ、そんなっ、だめっ、こちょこちょしないでっ。い、いたいっ、痛いですよぅ」
「でもね」
まるで聞いていない。
「彼氏くんを支配する女の子として、それ以外の必要な知識もコッソリ学ぶのが、イルシオンの王女として大切じゃないかしらー? って……話、聞いてるー?」
聞いてはいる。しかし、痛みとも快楽とも判別しがたい妙な刺激に、身体が勝手に捩れてしまうのだ。
――今の話、アイビー王女殿下が耳にしたら卒倒するだろうな。
股間の痛みに抗いながら、少年はそんなことをぼんやり考えた。
ともあれ、魔道研究の最中にひっそり身につけた『彼氏くんいじめ用の魔法』。それこそが、今回のお仕置きであるらしい。まずは勃起することすら禁止する。そういうことなのだ。
しかし、少年にはひとつ疑問があった。オルテンシアは最終的には、自らの膣内へ子種を吐き出されることに無上の喜びを感じていたはずだ。それなのに、性行為そのものを妨げるような真似をして、いったい何をしようというのか。
――いや。
その瞬間、思い出す。彼女は焦らすことも、同じくらい好きだったのだと。
「彼氏くんを泣かせて、ペラルゴのところに行くの、諦めてもらうのよ」
オルテンシアは楽しそうに言う。
「生半可なお仕置きじゃ、キツさを感じないでしょ?」
「あっ、ああっ、あっ……!」
陰嚢全体を包み込むように、優しく、さわさわと撫でられる。それだけのことが、今の少年には拷問に等しかった。
先走りが垂れる。オルテンシアはそれを指先ですくい取ると、わざと見せつけるように舐めた。
「味、濃いわね」
「あ、あぅ……」
「好きよ、彼氏くんのこれ」
その言葉に、また身体が震える。
「あー、今の声いいわ。可愛すぎてメロメロになりそう」
くすくすと笑ってから、オルテンシアは付け足す。
「なんて。あたし、元々、彼氏くんにはメロメロだけど」
そして、とびきり甘い笑顔で宣告した。
「もーっとキツく、イジメてあげるわね」
もうすでに、勃起すらできなくて十分にきつい。そんな反論を口にする暇すら与えず、彼女は脇に置かれていた道具袋へ手を伸ばした。
ペガサスへ括り付けられていたはずのものだ。いつの間に持ち込んでいたのだろう。そこから取り出されたのは、奇妙な代物だった。男性の象徴を模した、オブジェのようなもの。
そして、なぜか少年には妙な既視感があった。
「さっき見て、よく分かったわ」
オルテンシアはそれを眺めながら呟く。
「ちょっと竿の部分、再現が甘かったわね。あとでじっくり観察して、作り直さなきゃ」
「はぁっ……はぁっ……なんですか、それ……」
「ええとね……」
一拍だけ間を置いて、彼女は囁くように答えた。
「オ・モ・チャ♡」
オルテンシアが説明するには、それは
彼女自身の魔力と意志へ紐付いた擬似射精機能まで備えており、その飛び散り方すら本物の少年を参考にしているのだと、制作者本人は誇らしげに鼻を鳴らしていた。
神聖だという学舎で、第二王女ともあろう人物がいったい、何をしているのか。
あまりの衝撃に、少年は白目を剥きそうになる。むしろ呆れすぎたことで、一瞬だけ理性が戻りかけたほどだった。
「それくらい、彼氏くんが大好きってことよ」
けれど。そう続けた彼女の声は、少しだけ違っていた。
「疼くたび、学園の寮でも使って、ソラネルでも使ったわ」
そして、ほんの少しだけ不安そうに笑う。
「……軽蔑する?」
「オルテンシア様ぁ……」
胸を締め付けられる。離れている間も、それほどまでに自分を想っていてくれたのか、と。その結果として選んだ手段が淫猥だったことなど、少年にはもはや些細な問題だった。
吹き飛びかけていた理性は、今度こそ完全に消え失せた。残されたのは愛しさと、彼女へのどうしようもない恋慕。そして貞操帯に押さえつけられ続ける、股間の鈍い痛みだけだった。
「これを……こう、して」
オルテンシアは
陰嚢を再現した部分の裏側は吸盤状になっているらしく、固く平らな場所へ張り付きやすい。加えて、オルテンシア自身の魔力にもよく馴染むよう作られているらしかった。
偽物が、天井を仰ぐように立つ。本物のほうは魔法で快楽を得ることすら封じられ、大きくなることも許されていない。
その対比だけで、少年は嫌な予感を覚えた。頭の回転が早く、察しがいいことを、これほど恨めしく思ったことはない。愛する彼女が、今からどんな形で自分への『お仕置き』を敢行しようとしているのか、理解してしまった。
「そ、そんなっ、殺生なっ、オルテンシア様!」
「えへへ……」
狼狽する少年を見て、オルテンシアは心底嬉しそうに笑った。
「今からいーっぱい、えっち、しましょ。彼氏くん♡」
甘く囁く。
「今から第二王女のナカに招待してあげるわ、ねっ」