FEエンゲージ イルシオンの希望【R-18版】 作:あじさいファン
「え……え、え?」
何をされようとしているのか、その意味を理解した瞬間、少年の身体がびくりと強張った。
男の処女を、奪う。
かつての旅路で得た知識により、男娼という存在を知っている少年が、その言葉の意味を知らないはずもない。
つまり、男性の肛門を使って性交を行うということだ。けれど、行為の主体が女性である場合など、聞いたこともなかった。
──オルテンシア様に、自分が、まるで女の子のように犯される。
そんな光景が脳裏に浮かんだ瞬間、恐怖と、それとはまるで相反する妙な興奮が同時に胸の奥へ湧き上がった。
「文献で読んだのよ」
そんな少年の動揺などお構いなしに、オルテンシアは楽しそうに説明を始める。
「女の子が男の子のお尻を、オモチャとか使ってえっちしてあげるの。ペギングって言うらしいわ」
そして、少しだけ照れたように笑った。
「初めて読んだときね、彼氏くんとやりたいって思ったの」
「そ、そんなことを……」
絶句する少年へ、オルテンシアはゆっくりと近づいてくる。そのまま彼の胸元辺りまで進むと、静かに腰を下ろして跨った。
「まずは準備よね」
オルテンシアのヴァギナへ設置された偽物のペニスが、ちょうど少年の口元へ触れている。先ほどまで彼女自身の中にあったもの。その表面は、未だ濡れていた。
「ね、彼氏くん」
オルテンシアが、甘く囁く。
「舐めて。あたしが、彼氏くんのおちんちんをいつもそうしてるみたいに。ね?」
オモチャとはいえ、形は明らかに男性器。しかも、自分自身のものを模した代物だ。それを口へ含むという行為には、さすがに抵抗を覚えずにはいられない。
そのはずだったが、表面にはオルテンシアの膣内から分泌された蜜が、ぬらぬらと光っている。それを見るだけで、舐め取りたいという欲望が頭をもたげる。
それでもなお、わずかに残った忌避感のほうが勝っていた。
「……王女命令♡」
そんな迷いを見透かしたように。オルテンシアは、ひどく甘く、優しい声で囁いた。
王女命令。そう言われてしまえば、王家へ仕える者が拒絶できるはずもない。ましてや少年は、彼女の侍従でもある。
命令である以上、従わなければならない。そう自分へ言い聞かせるようにして、少年は意を決した。
偽物の亀頭を、そっと口へ含む。歯を当てないようにするだけでも精一杯だった。仰向けの状態であるため、姿勢そのものが苦しい。思うように口を動かすこともできない。
「ふわぁんっ!?」
オルテンシアが突然、大きな声を上げた。
「っ!?」
驚いたのは少年のほうだった。
「あっ、こ……これね」
頬を真っ赤に染めながら、オルテンシアが説明する。
「あ、あたしのクリトリスと……感覚をリンクしてるの。彼氏くんの舌と口……きもち、よくってっ……」
どうやら魔法によって、神経そのものまで接続しているらしい。
貞操帯。
擬似射精機能を備えた性玩具。
そして、今度は感覚の共有。
王立イルシオン学園では本当に何を学んでいるのか。性技ばかり研究していたのではないかと思わせるような痴態の数々だった。
けれど。それらすべてが、『ずっと一緒にいる』という、かつて交わした、口約束を信じてくれた末のものなのだ。離れている時間も彼女はずっと、自分のことを考えていた。そう思うと、呆れるより先に、愛しさで胸が締めつけられた。
ならば。今、口に含んでいるこれも愛する恋人の一部だ。彼女の陰核が大きくなったもの、そう考えれば不思議なほど抵抗感は薄れていった。
「はむっ……んっ……んんっ……」
息苦しさを覚えながら少年は、オルテンシアから生えている偽物を、優しく口の中で転がしていく。
ちゅっ。ちゅっ。乳飲子のように吸いつきながら、自分の舌によって、愛する恋人が快感へ震える様を見上げていた。
オルテンシアは膣内への刺激を何より好む。先ほどもそうだったように、気の済むまで何度も中で絶頂したがるほどだ。
とはいえ、それ以外の性感帯が鈍いわけではない。むしろ逆だった。乳首も、クリトリスも、どこも例外なく弱い。
寝室で身体を重ねた際、クリトリスを覆う皮を優しく剥き、親指と人差し指で数度擦っただけで大袈裟と思えるほどの声を上げ、潮を吹いたことさえある。
だからこそ、今も……。
「あっ……あぁっ……!」
少年が擬似ペニスを口で扱っている間、オルテンシアは身体を大きくのけぞらせ、声を上げ続けていた。
そして、陰嚢を再現した部分から、温かな液体が少年の胸元へ飛び散っている。さらりとした感触、潮を吹いているのだろう。
彼女がそういう体質であると知ってからは、顔面騎乗の状態でクリトリスを刺激し、そのまま飲まされることも何度かあった。
一滴も漏らさず口で受け止める。そして、オルテンシアから命じられるまでは、すぐに飲み込まず、しばらく味わってから飲み干す。いつしか、少年自身も、こんな行為を好きになっていた。今はそれができないことが、ほんの少しだけ残念に思えた。
「は……あッ!? あっ、彼氏くん!」
オルテンシアの身体が大きく震える。
「あ、あた、し……! クリ、クリイキしちゃ、しちゃう!」
言葉が崩れる。
「しちゃいます! イぎまずッ、あッ、ごめ、ごめんなさ──ああああーっ!!」
激しい喘ぎと、なぜか混じる謝罪の言葉。
その直後。
「んーーッ!?」
少年の口の中へ、液体が吐き出された。味はない。ただ、妙に生温かかった。
「絶対吐き出さないで! 王女命令よ!」
オルテンシアが叫ぶ。
条件反射で吐き出そうとしたことを、絶頂の余韻に浸りながらも、しっかり見抜かれていた。
擬似ペニスはまだ、口に突っ込まれたままだ。仮に吐き出そうとしても、そもそも、まともに抵抗できる状況ではなかった。
「ん……っ」
観念する。少年は目をぎゅっと閉じた。
そして、口内へ吐き出され続ける液体を喉を鳴らしながら飲み込んでいく。
こく。こく。
オルテンシアがフェラチオによって自分を射精させたとき、必ずそうするように、最後に残ったものまで吸い上げるよう、音を立てて吸い込んだ。
味も匂いもない。けれど、独特の粘つきがあり、喉へまとわりつく感触だけは妙に生々しい。
オルテンシアは、自分のものならば苦味も匂いも、すべて含めて愛してくれていた。そう思うと、改めて胸の奥に愛しさが込み上げてくる。
倒錯した二人だけの儀式。何度も絶頂を重ねたオルテンシアの幸福感は、すでに最高潮へ達していた。
「あは……」
満足そうな笑み。
「彼氏くんが、あたしのフェラチオを愛してくれる理由、ちょっと分かった気がするわ。城に帰ったら、こういうプレイも、絶対しましょ」
ようやくディルドが口から抜かれる。それから、オルテンシアは少年の頬へ手を伸ばし、優しく撫でた。
褒めてもらえた、そんな感覚だった。それが嬉しかった。愛する彼女が喜んでくれるのならこんな遊びだって何度でもしてあげたい。そう思えた。
──そのとき。
ぱりん。
股間から、そんな小さな音が聞こえた。
魔法が解けたのだと、すぐに分かった。今までペニスを押さえつけていた圧迫感が、一気に消え去る。
ようやく、本来あるべき大きさへ。何にも邪魔されることなく、自由に勃起できる。その解放感だけで少年は思わず息を吐いた。
「わあ」
オルテンシアが振り返る。その表情が、ぱっと輝いた。
「彼氏くん、さっきより大きくなってるわよ」
恍惚とした声。
けれど、少年には別の不安があった。
また、あの貞操帯をかけられるのではないか。そう思うだけで気が気ではない。
「えへへー」
そんな恐怖も知らず──あるいは、知っているからこそ──オルテンシアは、まるで新しい玩具を見つけた子供のように嬉しそうだった。
少年の脚の間へ移動し、こちらと目を合わせたまま、そっと勃起したペニスへ頬を擦り寄せる。
「っ……!」
ただ、それだけ。ほんのわずかな刺激。
それなのに雷に打たれたような快感が、一気に身体を突き抜けた。
「あたしの彼氏くん……」
オルテンシアは、とろけたような表情で呟く。
「あたしだけが好きにできる、可愛いおちんちん♡」
そう言うと、今度はオルテンシアのほうから、少年のペニスを遠慮なく口へ含んだ。
「っ……ぁ!」
亀頭がすべて狭い口内へ収まる。唇が竿を這いながら、じゅる、じゅると淫らな水音を立て、ゆっくり、ゆっくりと、扱き始める。
「ふわぁっ……ぁっ、やぁっ!」
一気に限界が近づいた。
「オルテンシア様、だめです!」
脚がばたばたと暴れる。
「すぐイきます! もう限界だったんですッ!」
それでも、オルテンシアは止めない。暴れる脚を全身で押さえ込む。泣き言など聞かなかったことにして、そのまま吸い続けた。
しかも、次なる行為の準備まで、同時に始めている。愛液に濡れた指。その細く、しなやかな人差し指が少年の肛門へ触れた。
「ひっ……」
くり。くり。さわ。さわ。
優しく、品定めでもするように刺激してくる。
つぷ。つぷ。
少しずつ。肛門の内側へ入り込んでいく。
「ぁっ……! あっ……!」
ぞくぞくする。未知の感触。少年は、こういう刺激にひどく弱かった。自分でも驚くほどの声が小刻みに喉から漏れ続ける。
そして。射精感が、一気に膨れ上がる。
「だ、め!」
もう耐えられない。
「オルテンシア様、オルテンシア様! イきま──」
「ん……ぷはぁっ!」
その瞬間、口が離れた。
「ダメはこっちのセリフよ!」
「……え」
あと一歩。本当に、あと一秒すら必要なかった。
それさえあれば、何もかも吐き出してしまえたはずなのに。その直前、梯子を外された。
「……っ」
全身が震える。
「ぐすっ……ぐすっ、ぐすっ……」
涙が溢れた。
もう、なりふりなど構っていられない。
「うええええええん!!」
大声で泣き始める。
「オルテンシア様が、またいじめるー!!」
「ふふっ」
「出させてよう! つらいよう!」
ぼろぼろと涙を零しながら訴える。
「もどかしいよおー!!」
以前、射精禁止の遊びをしたときも、そうだった。少年は限界まで追い込まれると、羞恥も体面も何もかも忘れて子供のように泣き叫んでしまう。
そのときはオルテンシアの寝室だった。さすがに外へ聞かれるのを恐れた彼女が、慌てて口を塞いだものだったが、今回は違う。誰にも聞かれない地下室だ。
だから、オルテンシアはニヤニヤしながら、泣きじゃくる少年を眺めている。そして、慰めるように、その太腿をさわさわと撫でた。
「おー、よしよし」
完全に子供をあやす口調だった。
「つらいわねー。いっぱい泣いてるわねー。でも我慢よ」
先走りに濡れた亀頭へ、ちゅっ、と、軽く口づける。
「ね、彼氏くんの、可愛いおちんちん♡」
「……ぁぅ」
そして。笑顔で地獄の宣告が成された。
「えいっ、勃起禁止♡」
「ひっ……!」
再び、オルテンシアの魔法が少年のペニスを包んでいく。
淡い光、そして締めつけ。先ほどよりも、さらに小さく、平たく。強く押さえ込まれていく。
「いっ……!」
それでも、身体は勃起しようと必死だった。
痛い。じんじんと。苦しいほどに。しかし、その痛みの奥になぜか妙な快感まで混じっている。
オルテンシアに自分の身体を好き勝手にされている。その状況そのものが、どこかどうしようもなく、少年を昂ぶらせていた。
「さあ、待たせたわね」
オルテンシアが楽しそうに笑う。
「彼氏くんの処女、貰うわ♡」
その言葉だけで、少年の身体が強張る。
「いや……」
反射的に声が出た。
「いや、やだっ!」
今までの涙とは違う。そこには、はっきりと恐怖も混じっていた。
「怖い! 怖いよぉ!」
必死に身体を捩る。
「お尻、絶対だめになる! やめて、オルテンシア様!」
すると。オルテンシアは一度、動きを止めた。
「んー」
考えるように首を傾げる。
「じゃあ、ペラルゴと戦うの、やめる?」
「……」
少年は黙った。
怖い。本当に怖い。
それでも、答えは変わらなかった。
「それは……出来ません……」
肛門を犯されることへの恐怖。それよりも、これからのイルシオンへ残される憂いをなくしたいという気持ちのほうが強かった。
そんな彼氏くんの頑固さ、そして、精神の強さにオルテンシアは呆れ、同時に少しだけ感服していた。
だからこそ、何としても止めなければならない。数ヶ月前、自分が彼によって止められたように。
「じゃあ、諦めて、処女をあたしに捧げなさい」
オルテンシアは静かに言う。
「っ……」
「大丈夫よ」
今度の声には、少しだけ優しさが混じっていた。
「魔法で痛みは和らげてあげるから」
そして自信たっぷりに笑う。
「あたし、回復なら誰よりも才能があるのよ」
オルテンシアは擬似ペニスを少年の肛門へ押し当てた。
ぐり。ぐり。優しくほぐすように。先ほど指を入れた際、擬似射精機能へ使われる液体も、すでに中へ注入してある。出し入れそのものは問題なく行えるはずだった。
「……っ」
少年の身体は震えている。
もちろん、恐怖はある。だが、その瞳に浮かんでいるものは恐怖だけではなかった。
未知の感覚へのほんのわずかな期待。
それをオルテンシアは見逃さなかった。もし本当に怯えているだけなら違う方法でお仕置きをするつもりだった。しかし、今の彼の目を見てしまえば、もはや止まれなかった。
「……入れるわね」
オルテンシアは優しく、それでいて逃がさない声で囁いた。
「一緒に気持ちよくなりましょ♡」