オレの召喚したブラック・マジシャン・ガールが知らないうちに他の男子に好き放題されていた話 作:田中白赤
店でジュースを補給してからもオレたちのデュエルは続いた。
公園でのデュエルは、結局オレの負けだった。
だが、いつもみたいに一方的にやられたわけじゃない。マナのアドバイスのおかげで、カード同士の連携が少しだけ噛み合い、なぜか心ここにあらずといった感じのタカシのライフポイントを半分まで削ることができた。
次はタカシの調子がいい日に戦いたいもんだぜ!
デュエルを終えると、タカシは「兄貴に呼ばれちまったから」と先に帰っていった。
タカシのにーちゃん、なんかこえーんだよなあ……。どこで会っても違う女の人連れてるし、クラスの女子にも憧れてるヤツがいるって言うし。
それに、帰る直前にタカシのやつがフトイと話していたのはなんだったんだろ。
なんか「マナさんに余計なこと教えるな」とかなんとか……。聞き間違いかなあ……?
残されたオレとマナ、そしてフトイの三人は、スーパーで買ったジュースを飲みながらベンチで休んでいた。
マナはヤケにいい飲みっぷりだが、喉でもかわいてたのかな?
スーパーで買い物する途中、フトイのやつもどっかに電話してたし、今日の友人らは嫌に浮き足立ってる。やっぱりブラック・マジシャン・ガールのカードのせいなんかね。
「いやあ、今日の遊取殿は一味違いましたな。やはりデッキに芯が通ると、戦い方も変わるものでござる」
フトイが眼鏡を押し上げながら、感心したように言った。
オレの隣に座っているマナは、自分のことのように嬉しそうに微笑んでいる。
立ち上がったマナが、新しいジュースを一本オレに取ってくれる。
「ゆとらさんのカードたち、今日はとても喜んでいましたよ。みんなで力を合わせる楽しさが分かったみたいです」
「まあ、お前がいてくれたおかげだけどな」
オレが照れ隠しにジュースをあおったとき、ふと初夏の生温かい風が公園を吹き抜けた。
風はマナの金色の巻き毛を揺らし、そして、彼女の短いスカートの裾をふわりと持ち上げた。真横でスカートが翻るのを、オレは気まずけに見る。
ほんの一瞬のことだった。
だが、マナの正面に陣取って座っていたフトイの動きが、ピタリと止まった。
一瞬フトイが演技する時の癖が出たが、どうかしたんかな。
「……遊取殿」
フトイの声が、異常に低く、そして震えていた。
彼が持っていた缶ジュースが、カタカタと鳴っている。
「どうした、フトイ。急に怖い顔して」
「……見間違いでなければ。いや、拙者の動体視力はカードチェック中に見える一瞬のカードの表面の傷を見逃さないレベルでござるから、決して見間違いではないはず」
「だから、何を言ってるんだよ」
「マナ殿……その、下着を、おぱんつを着けておられないのでは?」
フトイの指摘に、オレは思わずむせ返った。
ゲホゲホと咳き込むオレの背中を、マナが「大丈夫ですか?」と心配そうにさすってくれる。その無邪気な優しさが、今は逆に恐ろしい。
「し、下着って……フトイ、お前、何見てんだよ!」
「いや、風が吹いたから自然と目に入っただけでござる! 拙者にはなんの瑕疵もござらん! しかし、これは由々しき事態ですぞ! いくら精霊とはいえ、年頃の女の子がノーパンで外を歩き回るなど、日本の治安と男の理性が崩壊しますな!」
「ノーパンって言うな!」
オレが顔を真っ赤にしてフトイに怒鳴ると、マナは不思議そうに小首を傾げた。
大きな緑の瞳が、ぱちぱちと瞬きをする。
「したぎ、ですか? それは、服の下に着る布のことですよね。知識としては知っていますが、わたしはカードの精霊なので、イラストに描かれている服しか着ていないんです」
マナは悪びれる様子もなく、あっさりと事実を認めた。
胸元が大きく開いた青とピンクの服の下には、素肌しかない。
スカートの下の、本来ならショーツに覆われているはずの柔らかな秘所も、完全に無防備な状態だったということだ。
オレは頭を抱えた。
「……遊取殿、ここは拙者に任せてくだされ」
キリッと。
フトイが急に頼もしい顔つきになった。
う、うさんくせえ……。
「拙者の親戚が、駅前のショッピングモールで大きめの服屋を営んでおります。そこなら、マナ殿にぴったりの下着が見つかるはずでござる。さあ、急ぎましょうぞ!」
タカシに強引に背中を押され、オレたちは駅前のモールへと向かうことになった。
歩くこと少し。
ショッピングモールの二階、奥まった場所にあるその店は、女性向けの衣料品を幅広く扱っていた。
フトイは店番をしていた中年の女性に軽く挨拶を済ませると、オレとマナを一番奥のインナーコーナーへと案内した。
中年女性の意味ありげな表情が、やけに気になった。
「ここから先は、男が入ると不審者扱いされる危険地帯でござる。拙者は外側で待機しておりますゆえ、遊取殿、マナ殿をしっかりエスコートしてくだされ」
言うが早いか、フトイはさっさと逃げるように下着売り場から姿を消してしまった。
残されたオレは、四方八方を色とりどりの女性用下着に囲まれ、どうしていいか分からずに立ち尽くしていた。
ピンク、水色、黒、白。レースがふんだんにあしらわれたものから、つるつるとした手触りのものまで、見たこともない布の塊が所狭しと並んでいる。
落ち着かない。場違い感が半端じゃない。
「わあ……すごいですね」
一方で、マナは目を輝かせていた。
並べられたブラジャーやショーツを珍しそうに眺め、指先でそっとレースの感触を確かめている。
「これが、下着……。人間の女の人は、いつもこんなに綺麗で可愛いものを服の下に隠しているんですね」
「あ、ああ……そうだな。だからマナも、何か選んでみろよ。とりあえず、普通っぽいやつをさ」
オレは気恥ずかしくて、マナから少し距離を取った。
下着の陳列棚の裏側に半分身を隠すようにして、彼女の様子をこっそりとうかがう。
マナは真剣な顔つきで、淡いピンク色のブラジャーとショーツのセットを手に取った。
そして、自分の体にあてがうようにして、鏡の前に立つ。
「ゆとらさん、これ、どうですか?」
マナが無邪気にオレを呼んだ。
振り返ったオレは、その光景に言葉を失った。
マナの着ている精霊の服は、とにかく露出が多い。胸元は谷間がはっきりと見えるほど深く開いている。
彼女はその胸元の開いた服の上から、ピンク色のブラジャーをあてがっていた。
小さな手で胸のふくらみを寄せるように押さえたため、服の隙間から、透き通るような白い肌と、柔らかな谷間がくっきりと浮かび上がっていた。
少し身を乗り出すような姿勢になると、服の奥にあるはずの、大きな乳房の全てが見えそうになる。
「サイズとか、よく分からないんですけど……わたしの胸、これくらいで収まるでしょうか?」
マナは純粋な疑問として尋ねてくるが、オレの心臓は早鐘のように打ち鳴らされていた。
男のオレに、女の子の胸のサイズなんて分かるはずがない。
でも、彼女の柔らかそうな膨らみを見ていると、どうしてもいやらしい想像が頭を埋め尽くしてしまう。
「い、いいんじゃないか? それくらいで……」
「そうですか? じゃあ、下の方も合わせてみますね」
マナは次に、セットのショーツを手に取った。
そして、短いスカートの裾をめくり上げ、その上からショーツをあてがおうとした。
「ちょ、ちょっと待て! ここでめくるな!」
オレは慌ててマナのそばに駆け寄り、彼女の手を押さえた。
どうにか目を逸らすことが出来たが、めくれ上がったスカートの下には本当に何もないように見えた。
滑らかな太ももの内側から、足の付け根へと続く白い肌。そして、その奥にある、秘密の場所がオレに全て晒されそうになったのだ。
頭の奥が真っ白になるような衝撃だった。
「どうしたんですか、ゆとらさん? 顔が赤いですよ」
マナはきょとんとした顔で、至近距離からオレを見つめてきた。
彼女から、今朝のシャワーの後に嗅いだような、汗の混じった甘くていい匂いが漂ってくる。
肌の温もりまで伝わってきそうな距離だ。
「ここ、店の中だから! 誰か来るかもしれないし、そんな無防備にスカートめくったらダメだろ!」
「でも、サイズが合うか確かめないと」
「目分量でいける! マナのスタイルなら、それくらいでぴったりだ! わかんないなら、他の分かる人に聞いてくれ!!」
(お、遊取殿からいいセリフが出たでござる)
半ばパニックになりながらそう言うと、マナは素直に「わかりました」と頷いた。
彼女には、自分の行動が男をどれだけ刺激するのかという自覚が一切ない。
だからこそ、その無防備さがたまらなく色っぽく見えてしまうのだ。
下着の小さな布きれを手にしたまま、不思議そうに首を傾げる仕草。
ふとした瞬間に胸元から覗く、たわわな果実のような柔らかさ。
そして、あのスカートの下に、今は何も身に着けていないという圧倒的な事実。
オレのズボンの中は、とっくに限界を迎えていた。
これ以上マナのそばにいると、理性が吹き飛んでしまいそうだ。
「オ、オレ、ちょっと離れてるから。他にもいくつか見繕って、決まったらレジに持ってこいよ。金はとーちゃんから貰ってる生活費の中からオレが払うから」
早口でそれだけ言うと、オレは逃げるように下着コーナーから少し離れた婦人服売り場の陰へと退避した。
荒くなった息を整えながら、壁にもたれかかる。
隙間からこっそり覗くと、マナはとても楽しそうに下着を選んでいた。
純白のレースや、少し大人っぽい黒のショーツを手に取り、体に当ててはニコニコと笑っている。
彼女のあの白い肌に、あの小さな布切れが直接触れるのだと想像するだけで、下腹部の熱がさらに高まっていく。
精霊という存在が、これほどまでに生々しく、性的な魅力に溢れているなんて思ってもみなかった。
婦人服売り場の陰で、下半身の熱を持て余していたオレの肩を、不意に誰かがポンと叩いた。
ビクッとして振り返ると、そこにはフトイの姿があった。
「遊取殿、女性の服選びは長いもの。特に、初めて自身の内側を着飾るマナ殿は凄まじい長さになるでござろう」
「なんか女性に慣れてそうなセリフだな」
「いや、店員殿の受け入りでござる。拙者も生粋のチェリーボーイでござるゆえ」
「本気で聞いて損したぜ」
マナの下着選びはまだ続きそうだ。
まだまだ夕方までは時間があるけど、マナの様子を見続けているのは変態っぽくてイヤだなあ……。
「なら遊取殿。実はこの店の奥にデュエルスペースがあるでござる。同じく女性の服選び待ちで暇を持て余したデュエリストが数多くいるので、そこでデュエルして時間を潰すのはどうですかな?」
「良いこと聞いたぜ、マナが声をかけて来るまでそっちでデュエルだ! 行こうぜ、フトイ!」
「おお、共に行くでござるよ、遊取殿」
走り出すオレの後ろで、フトイが足を止める。オレはそのことに気付かずに、この下着売り場という苦手空間から走って逃げ出すことに必死だった。
「…………すまんでござるな、遊取殿。これは拙者の欲望。光り輝くマナ殿は美しすぎるゆえ、拙者の手には届かんでござる。彼女を我が手に収めるには、汚濁に塗れてもらう必要があるんですな」
デュエルで負け続けていた冴えないオレの日常は、マナが現れてから完全に狂ってしまった。
だけど、この新しい日常が、今はどうしようもなく心地よかった。
「なに、拙者もマナ殿を直接見ることは避けるでござる。遊取殿にフェアではないですからな。好いた女子の諸肌を見て触れられぬこの焦燥、まずは拙者が先に承るでござる」
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