シスターはショタコンサキュバス 作:おねショタの波動
7
夜明け前の礼拝堂は、冷たい静寂に支配されていた。
祭壇の前に膝をつき、ユルヴィは深く首を垂れていた。祈りのために組まれた両手は白く血の気を失うほどにきつく握り締められ、彼女の広い背中を小さな蝙蝠の翼ごと小刻みに震わせている。
昨夜の熱が引いた冷え切った肉体に、激しい自己嫌悪が押し寄せていた。
ユウから絞り取った極上の精気の余韻は、未だに彼女の下腹部を甘く痺れさせている。そして、扉の隙間からこちらを覗き見ていたレオンに向けた、あの捕食者としての生々しい視線。
理性を保ち、聖職者として子供たちを導くという誓いは、夜の闇に紛れていとも容易く崩れ去ってしまった。自分は結局のところ、欲に溺れ、幼い命を貪るだけの魔物から一歩も進み出ていないのではないか。
聖女の皮を被りながら、その内側では未熟な少年の匂いに狂喜し、彼らを精神的にも肉体的にも自らの檻に閉じ込めようとしている。それはかつて、闇夜に紛れて男たちの精気を啜り尽くしていた夢魔の所業と何ら変わらない。
懺悔の言葉が、音にならない息となって唇から漏れる。
ユルヴィが信仰する神の教義において、性的な交わりや姦淫そのものを直接的に戒める厳しい法は存在しない。命の営みを肯定し、豊穣と繁栄を重んじるその寛容な教えがあったからこそ、魔物であり、淫蕩を種族の業とするサキュバスの彼女であっても、特例として神籍を得ることができたのだ。
しかし、神が罰しないとしても、彼女自身の罪悪感が消えるわけではない。
礼拝堂の静まり返った空気が、ユルヴィの孤独を浮き彫りにする。
敬虔な人間の信徒であれば、深い祈りの果てに神の声を直接聞くことがあるという。お告げを受け、託宣を賜り、時に奇跡の光に包まれて病を癒やす者さえいる。
だが、ユルヴィの耳に神の声が届いたことは一度もなかった。
どれほど涙を流し、血を吐くような悔恨を訴えても、沈黙が返ってくるだけだ。人間の信奉する神は、魔物である自分には言葉を与えてはくれない。その断絶を理解しながらも、彼女は祈るしかなかった。いつか、人と共に生きていける日が来ると信じて。
サキュバスという種族は、本質的に孤独に耐えられない生き物だ。
誰かの体温に触れ、他者の生命力を分け与えられなければ、肉体よりも先に精神が崩壊してしまう。とりわけユルヴィは、その依存の対象が「未成熟な人間の雄」という極めて狭く、そして罪深い領域に偏っている。
幼い少年の無垢な魂の側にいなければ、彼女は己の輪郭さえ保てなくなるのだ。
孤児院で子供たちの世話を焼くのは、善意や慈悲などという美しいものではない。自分が生きていくために、彼らの存在が必要不可欠だからだ。
シスターとしての祈りは、その醜い寄生関係を少しでも神に許してもらうための、見え透いた免罪符に過ぎなかった。
深く溜息をつき、ユルヴィはうつむいていた顔をゆっくりと上げた。
ステンドグラス越しに、朝の微かな光が差し込み始めている。
その時、彼女の視線が不自然なものに引き寄せられた。
祭壇のすぐ下、彼女が膝をつく石造りの床に、一冊の古い経典が落ちていたのだ。
昨夜の掃除の時には、あんなものは無かったはずだ。誰かが置き忘れたのか、それとも風で書見台から滑り落ちたのか。
ユルヴィは不思議に思いながら、冷たい床に手をつき、その分厚い書物を拾い上げようとした。
経典は革の表紙が開いた状態で裏返っており、特定のページが露わになっていた。
拾い上げる動作の途中で、そこに記された古い文字がユルヴィの金色の瞳に飛び込んでくる。
ハドアス神の教えを記した一節。
それは、これまで彼女が何度も目にしてきたはずの文言だったが、今の極限まで張り詰めた精神状態において、その文字はまるで自ら光を放っているかのように強烈な引力を持っていた。
『創造主の御手より放たれし命は、その形に沿って歩むことこそが理である。獣は野を駆け、鳥は空を舞い、生まれ持った業を全うする。そこに善悪の天秤はなく、ただ生命の流転があるのみ』
生まれたものは、生まれたように生きるのが自然である。
その一文が、ユルヴィの脳髄を雷のように貫いた。
彼女は震える両手で経典を胸に抱き寄せ、その言葉の意味を自らの内に反芻した。
己の形に沿って歩むこと。生まれ持った業を全うすること。
それはつまり。魔物である自分であれば、精気を求めて喘ぐこと。
サキュバスとして、若い雄を誘惑し、その魂を愛でること。
未熟な少年たちを自らの豊満な肉体で狂わせ、取り込み、永遠に庇護下へ置こうとするこの抑えきれない渇望。
これらすべては、忌むべき罪などではなかったのだ。
自分がサキュバスという形で生じた以上、その本能に従って生きることこそが、神の理にかなう行為なのだ。無理に人間の道徳に当てはめ、聖女の真似事をして本性を抑え込むことこそが、神の意志に反する傲慢だったのではないか。
静かな礼拝堂に、ポツリ、ポツリと水滴の落ちる音が響いた。
ユルヴィの両目から、大粒の涙が溢れ出していたのだ。
これまで一度も声を聞かせてくれなかった神が、ついに自分を認めてくれた。
直接の言葉ではなく、この開かれた経典という形で、奇跡のようにお告げを与えてくれたのだ。
人間と同じように、魔物である自分にも救いの手が差し伸べられた。
それは自己嫌悪と孤独が生み出した、都合の良い解釈に過ぎない。
しかし、理性の防波堤が崩れ去ろうとしていた彼女にとって、その言葉は絶対的な真実として疑う余地のないものとなった。
罪悪感という名の枷が、音を立てて砕け散る。
「……ああ、神よ。寛大なる我が主よ」
ユルヴィは経典を顔に押し当て、嗚咽を漏らしながら泣き崩れた。
悲しみの涙ではない。魂の底から湧き上がる、歓喜と安堵の涙だ。
もう、我慢しなくていい。
隠れてコソコソと精気を啜る必要もない。レオンのあの反抗的な瞳を、ユウのあの従順な欲情を、もっと堂々と、もっと深く味わい尽くしても良いのだ。
それが、自分に与えられた「生まれ持った業」なのだから。
ステンドグラスから差し込む朝日が、彼女の白銀の髪を神々しく照らし出していた。
8
免罪符を手にしたユルヴィの足取りは、羽が生えたように軽かった。彼女は祭壇の前から立ち上がると、迷うことなく回廊を抜け、厨房へと向かった。
朝の支度で火の番をしているはずの少年を、自らの渇望を満たすための生贄として迎えるために。
厨房の扉を開けると、そこには予想通り、竈の前で薪の束を抱えたユウの姿があった。
昨夜の情事の記憶がまだ生々しく残っているのだろう。彼はユルヴィの姿を認めるなり、ビクリと肩を震わせて視線を泳がせた。
ユルヴィは音もなく彼に近づき、背後からその細い身体を包み込むように抱きしめた。
布越しに伝わる柔肉が、ユウの背中に押し潰されて形を変える。
ユウは短い悲鳴のような声を上げ、手から薪を落としそうになった。
「ユ、ユルヴィ姉……っ? ここ、厨房だよ、誰か来たら……」
「誰も来ませんよ。……それに、神様は私たちをお許しになったのです」
ユルヴィの声は熱を帯び、甘く蕩けていた。
彼女はユウの耳介をそっと甘噛みし、そのまま彼の腕を引いて厨房の奥にある貯蔵庫へと歩き出した。
抵抗する間も与えず、重い木製の扉を閉めて閂をかける。
窓のない貯蔵庫は薄暗く、干し肉や香辛料の匂いが立ち込めていた。しかし、今のユルヴィから放たれる濃厚なサキュバスの体臭は、それらの匂いを一瞬で塗り潰してしまった。
「待って、ユルヴィ姉、様子がおかしいよ。どうしたの……?」
戸惑い、後ずさろうとするユウの肩を掴み、ユルヴィは彼を木箱の上に強引に座らせた。
そして自らの修道服の襟元に手をかけ、一気に脱ぎ捨てる。
留め具が弾け飛び、暗がりに白磁のような二つの巨大な肉の塊がこぼれ落ちる。
昨夜と違い、今の彼女には少しの理性も残っていなかった。神の意志という妄想に背中を押された魔物は、ただひたすらに目の前の生命力を貪ることしか考えていない。
「さあ、ユウくん。あなたの熱で、私を満たして……♡」
有無を言わさず、ユルヴィはユウのズボンを引き下ろした。
まだ朝の冷気に晒されていた未成熟な分身が、強烈な視覚刺激と麝香の香りによって、意思を持つかのように急激に反り上がり始める。
ユルヴィは自らの豊かな胸を下から両手で掬い上げると、その深く暗い肉の峡谷へ、ユウの猛りを根元まで挟み込んだ。
「ああっ……! ひゃ、あ……っ!」
ユウの口から、情けない悲鳴が漏れる。
ユルヴィは腰を屈め、胸の肉を擦り合わせるように激しく動かし始めた。
ちゅぷ、ぐちゅり。粘着質な水音が、静かな貯蔵庫に反響する。
ゆっくりと焦らすような昨夜の奉仕とは違う。今の彼女の動きは、獲物の血肉を削り取る捕食者のそれだった。
圧倒的な質量と熱、そして絶え間ない摩擦が、ユウの許容量を瞬く間に限界へと引き上げる。
「だめ、ユルヴィ姉、早すぎる、もう、出ちゃう、あああっ!」
開始から数分も経たないうちに、ユウは身をよじって絶頂を迎えた。
胸の奥深くで熱い脈動が弾け、濃密な生命の雫が放出される。
ユルヴィは目を細めてその熱を味わい、こぼれ落ちそうになる白濁を巧みに胸の谷間に留めた。
通常であれば、これで終わりのはずだった。
しかし、彼女の動きは止まらない。
「ふふ……♡ まだまだ、出せますね♡ あなたの昂りは、こんなものではないはずです♡」
射精を終えて敏感になりすぎているユウの陰茎を、ユルヴィは容赦なく胸の肉で締め上げ、再び激しく擦り上げた。
「ひっ、あ、まってユルヴィ姉! やめて、もう出ないから……っ!」
「いいえ、出ますよ♡ 私の奥で、全部搾り出して……っ♡」
悲痛な叫びを無視して、魔の奉仕は続く。
サキュバスの魔力が込められた肉の壁は、人間の理屈など通用しない快楽を強制的に引き出す。萎えかけたはずのユウの分身は、無理やり血液を集められ、再び硬く怒張させられていた。
二度目、三度目と、虚ろな射精が繰り返される。
放たれる液体は次第に透明に近づき、ただの粘液へと変わっていく。
ユウの瞳から焦点が失われ、白目を剥いて首をガクンと後ろに反らせた。過剰な吸精によって生命力そのものを削り取られ、彼の肉体は危険域へと突入していた。呼吸は浅く途切れ途切れになっている。
それでもユルヴィの渇きは癒えない。彼女は涎を垂らし、狂ったように胸を揺らし続けていた。
その時だった。
ガタッ、と。
貯蔵庫の扉の向こう側で、何かがぶつかる音がした。
ユルヴィの動きがピタリと止まる。
鋭い聴覚が、扉の隙間から漏れてくる荒い息遣いと、衣擦れの音を捉えていた。
気配を探るまでもない。いまのユルヴィには確信があった。レオンだ。
彼は昨日と同じように、この異様な光景に引き寄せられ、扉の隙間から中を覗き見ていたのだ。
そして、恐怖と嫌悪を抱きながらも、サキュバスの放つ強烈な魔性にあてられ、無意識のうちに己の股間をまさぐっていた。
ユルヴィの金色の瞳が、獲物を見つけた猛禽類のように細められた。
彼女は意識を失いかけているユウを突き放すと、はだけた胸もそのままに、貯蔵庫の扉へと歩み寄った。
閂を外し、一気に扉を引き開ける。
「うわあっ!?」
扉に寄りかかっていたレオンが、バランスを崩して床に転がり込んだ。
彼のズボンの前は無残に開かれており、握りしめられていた未熟なイチモツが空気に晒されている。
しまった、という絶望の色がレオンの顔に浮かんだ。
「覗き見なんて、いけませんね。……でも、あなたも私を求めてくれたのですね」
ユルヴィは冷たい石の床に這いつくばるレオンの首根っこを掴み、軽々と貯蔵庫の中へ引き摺り込んだ。
足で扉を蹴り閉める。再び密室となった空間で、レオンは恐怖に顔を引き攣らせて後退りした。
「くるな、バケモノ! 触るなっ!」
「どうして拒むのですか? 私の姿を見て、あなたもこんなに熱くなっているのに」
ユウから搾り取った白濁でべっとりと汚れた巨大な胸を揺らしながら、ユルヴィは四つん這いでレオンに迫る。
壁に背中を打ち付けたレオンの股間に、彼女は迷うことなく手を伸ばした。
「やめろぉっ!」
レオンの悲鳴にも似た叫びと共に、彼の拳がユルヴィの頬を思い切り殴りつけた。
乾いた音が響き、ユルヴィの顔が横に弾かれる。
子供の拳とはいえ、生存本能から繰り出された一撃は思いのほか重かった。
「狂ってる……アンタ、頭がおかしいぞ! そいつを見てみろ、死にかけてるじゃねぇか!」
レオンは震える指で、部屋の隅に転がっているユウを指差した。
その言葉に、ユルヴィの動きがピタリと止まる。
ゆっくりと視線を巡らせた先。
木箱の陰で、ユウは白目を剥き、口から泡を吹いて痙攣していた。
ズボンはずり下がったままで呼吸は虫の息になっており、今にも生命の灯火が消えようとしていた。
それは、どう見ても愛や導きの結果などではない。
欲に目が眩んだ化け物が、無力な子供を食い散らかした残骸だった。
ユルヴィの頭の中で、パチン、と何かが弾ける音がした。
神の許し。教えの拡大解釈。それらを正当化していた狂信の魔法が、脆くも崩れ去っていく。
私は、何をしているのだろう。
ただ愛しているだけなのに。ただ、彼らと共に在りたいと願っただけなのに。
どうしてこんな、惨たらしい真似を。
「ああ……あぁっ……」
正気を取り戻したユルヴィの喉から、絶望の呻き声が漏れた。
彼女は弾かれたようにユウの元へ駆け寄り、その冷え切った身体を抱き起した。
自らの行いの恐ろしさに震えながら、彼女は必死に治癒の魔術を紡ぎ始める。
掌から淡い緑色の光が放たれ、ユウの衰弱した肉体を包み込んでいく。奪い取った生命力を、自らの魔力に変換して無理やり送り返す。それはサキュバスにとって身を削る行為だったが、今の彼女に躊躇いはなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさいユウくん。私が愚かでした。どうか、目を開けて……っ」
大粒の涙が、ユルヴィの頬を伝ってユウの青ざめた顔に落ちる。
白濁で汚れた胸を隠すことも忘れ、ただひたすらに謝罪の言葉を繰り返しながら光を注ぎ続ける彼女の姿は、ひどく滑稽で、哀れだった。
レオンは壁に張り付いたまま、その異様な光景をただ立ち尽くして見ていることしかできなかった。
先ほどまで獲物を貪る悪魔のような顔をしていた女が、今は子供のように泣きじゃくりながら必死に命を救おうとしている。
狂気と後悔の狭間で引き裂かれている彼女の姿は、レオンの知る大人のどの悪意よりも複雑で、理解の範疇を超えていた。
薄暗い貯蔵庫の中で、緑色の治癒の光だけが明滅を繰り返している。
誰も言葉を発しない。ただ、ユルヴィの咽び泣く声と、少しずつ安定を取り戻していくユウの微かな寝息だけが、冷たい空気に溶けていった。