シスターはショタコンサキュバス 作:おねショタの波動
9
修道院の古びた時計の針が、重々しい音を立てて時を刻んでいる。
ユウが倒れてから丸一日が経過していた。
この一日、レオンの置かれた状況は劇的に変化していた。彼は本意ではないながらも、孤児院の子供たちの先頭に立ち、彼らの生活を無理やり回す羽目になっていたのだ。あの女、ユルヴィを刺激しないために。
ユルヴィはユウを自室のベッドに運び込み、そこから一歩も出てこなかった。看病に徹していると言えば聞こえはいいが、レオンからすれば、あの狂ったバケモノが再び表に出てくること自体が恐怖でしかない。
もし何も知らない幼い子供たちが、普段通りに甘えようとあの部屋の扉を開けてしまったらどうなるか。昨日までの仮面が完全に剥がれ落ちていたあの女が、手近な子供に牙を剥く可能性は十分に考えられた。そのままの勢いで部屋の外に出てくれば、今度こそ身の破滅だ。
それを防ぐためには、子供たちをユルヴィから遠ざけ、その意識を別のものに向けさせるしかない。レオンは自分の身を守るという極めて利己的な生存戦略のために、慣れない薪割りを引き受け、竈に火をくべ、粗末なパンを切り分けた。
「ねえ、レオンお兄ちゃん。ユルヴィお姉ちゃんはどうしたの?」
裾を引っ張る幼い少女の問いかけに、レオンは舌打ちを噛み殺しながら乱暴に頭を撫でた。
「あのバカが風邪引いて倒れたから、看病してんだよ。邪魔したらお前も病気がうつるぞ。ほら、パン食え」
ぶっきらぼうに押し付けた黒パンを、少女は不満そうにしながらも齧り始める。
どうせなら、あの女の正体を全員にぶちまけてやりたいという衝動はあった。あいつはバケモノで、男の精を啜る悪魔だと。
しかしレオンの勘が、それは悪手だと警告していた。もし事実を暴き、教会内がパニックに陥れば、あの女は窮鼠となって開き直るかもしれない。制御を失ったバケモノの暴走に巻き込まれれば、やはり自分などひとたまりもない。
自分に害を及ぼさないためには、あの女が部屋に引きこもってくれている今の膠着状態を維持するのが最善だった。
一方、薄暗い部屋の中では、重たい沈黙が支配していた。
ユルヴィはベッドの傍らに椅子を引き寄せ、眠り続けるユウの冷え切った手を両手で包み込んでいた。
本能に身を任せ、生命の限界まで精気を搾り取った直後。彼女の治癒魔術によってユウの命は辛うじて繋ぎ止められた。呼吸は落ち着き、肌にも僅かながら赤みが戻りつつある。
だが、その回復は彼女の罪を軽くするものではない。
私は自らの欲望を満たすために、最も守るべき無垢な魂を喰い破ろうとしたのだ。
自己嫌悪という名の毒が、ユルヴィの胸の奥を焼く。
祈りの言葉など、もう紡ぐ資格もない。ただ静かに、彼の寝顔を見つめながら己の醜い業を呪い続けていた。
やがて、ユウの瞼が微かに震え、ゆっくりと開かれた。
焦点の定まらない瞳が何度か瞬きを繰り返し、やがてベッドの傍らに座るユルヴィの姿を捉える。
「……ユルヴィ、姉……」
かすれた声だった。
ユルヴィは弾かれたように身を乗り出し、彼の冷たい頬に自らの熱い額を押し当てた。
「ユウくん……ああ、よかった。目が覚めたのですね」
安堵の涙がシーツに染みを作る。
しかし、次にユウの口から紡がれた言葉が、彼女の心をより深く抉った。
「泣かないで……僕なら、大丈夫だよ」
ユウは弱々しく微笑み、ユルヴィの銀糸のような髪にそっと触れた。
自分を死の淵まで追いやった加害者に対して、彼は一切の恨み言を口にせず、ただ気遣うように笑いかけている。
その優しさが、ユルヴィには恐ろしかった。
彼は本当に、自分自身の意志で笑っているのだろうか。
サキュバスには強力な魅了の能力がある。度重なる接触と、直接的な精気の搾取。その過程で、ユウはすでにユルヴィという存在に完全に依存するように作り替えられてしまっているのではないか。
彼が向けてくる親愛も、許しも、すべては自分が彼に刻み込んだ呪いの結果に過ぎないのではないか。
真実を知る術はない。だからこそ、その笑顔は彼女の胸に突き刺さる鋭利な刃となった。
「……謝って済むことではありません。私は、あなたを殺しかけました」
ユルヴィはゆっくりと身体を離し、努めて冷徹な声を作った。既に決めていた事を言葉にする。
「私は、ここを去ります。……あなたたちを導くどころか、自分の欲望すら制御できない魔物が、この神聖な場所に居座ることは許されません」
その言葉を聞いた瞬間、ユウの顔から血の気が引いた。
彼は衰弱した身体に鞭を打つようにしてベッドから跳ね起き、ユルヴィの豊かな胸元にしがみついた。
「だめだ! いなくならないで!」
必死の形相だった。細い腕が、ユルヴィの背中を痛いほどに締め付ける。
「僕が弱いからいけないんだ。もっと頑張るから、もっといっぱい……だから、置いていかないでよ……っ」
「違います、ユウくん。あなたが悪いのではありません」
ユルヴィは彼の肩を掴み、優しく、しかし確固たる意志を持って引き剥がそうとした。
しかし、ユウは泣き叫びながら首を横に振る。
「嫌だ! ユルヴィ姉がいなくなるくらいなら、死んだほうがマシだ!」
「……聞きなさい」
ユルヴィは悲痛な面持ちで、彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「私はサキュバスとして生まれました。人間の精気を吸い、命を削り取ることでしか生きていけない業を背負っているのです。今回のように、理性を失ってあなたを傷つけることが、必ずまた起きます。私は奪い、搾取することしかできない生き物なのです」
それは人間と魔物の間にある、決して越えられない絶対的な壁だ。共に在れば、必ず一方が食い殺される。ユルヴィは己の理性ででそれを崩そうとしたものの、無駄な努力であると思い知った。
しかし、ユウは怯むことなく、信じられない言葉を口にした。
「じゃあ……えっちなことが必要なら、僕がするから」
「……え?」
ユルヴィは一瞬、彼の言っている意味が理解できず、呆気にとられた。
「ユルヴィ姉が生きるのに僕の精液が必要なら、僕があげるよ。僕からしてあげる。……だから、いなくならないで」
搾取するしかないと絶望していた魔物に対して、食われる側の人間が自ら進んで糧を差し出すと宣言したのだ。
奪われるのではなく、与える。その予想外の提案に、ユルヴィの思考は停止した。
無垢で、哀れで、そして恐ろしいほどの執念。
彼を見つめるユルヴィの脳裏に、遠い過去の記憶が不意にフラッシュバックした。
かつて、人間との融和を夢見た、高潔な吸血鬼の同胞がいた。
彼はある街の人間の代表者と契約を結んだ。人間側から定期的に少量の血の提供を受ける代わりに、その力で街を外敵から庇護するという、一見すると理想的な共存関係だった。
最初は上手くいっていた。魔物は飢えから解放され、人間は安全を手に入れた。
しかし、瓦解の種は人間側の底なしの欲望の中に潜んでいた。
ある時、人間たちは近衛として選ばれた吸血鬼の眷属に、ある恩恵があることに気づいた。眷属化すれば絶対の服従を強いられる代わりに、人間とは比べ物にならない長い寿命と強靭な肉体が手に入る。
その力は、本来なら人間に掲げられる餌として機能するものだ。比類なき力を見せびらかしつつ、忠誠心で縛り付けるという魔物の所業。
だが友好的な吸血鬼ならばあるいは、と。人間の中から誰かが囁いた。
街の防衛力を高めるという大義名分のもと、人間たちは吸血鬼に自らの眷属化を申し出た。善意を信じた吸血鬼は、疑うことなく彼らに血を与え、眷属へと変えた。
永遠に近い寿命と力を手に入れた人間たちは、忠誠心を植え付けられても尚狡猾だった。命令を従わせる相手が命じられなくなれば、一切のリスクを負うことなくリターンの実を得られる。彼らは徒党を組み、守護者であったはずの吸血鬼を不意打ちで拘束したのだ。
暗い地下室の奥深くで、手足を切断され、頭部を切開されたまま磔にされた同胞の姿を、ユルヴィは今でも鮮明に思い出すことができる。
死ぬことも、再生して逃げ出すことも許されない。人間たちは彼を、ただ己の寿命を延ばすための血を生産する都合の良い装置として扱い、文字通り骨の髄までしゃぶり尽くしたのだ。
最終的にその街は、力に溺れた眷属同士の殺し合いによって滅び去った。あの底冷えするような人間の業の深さは、ユルヴィや他の魔物にも消えない恐怖を刻み込んでいた。
人間との『取引』は、いつか破滅を齎す。善意による提供などという甘い言葉の裏には、魔物を支配し、利用し尽くそうとする底なしの強欲が隠されている。
今、目の前で必死に訴えかけるユウの姿に、かつての人間たちの影が重なる。
今は純粋な愛情からの言葉かもしれない。だが、これが何年、何十年と続けばどうなる。成長し、力をつけた彼が、いつか自分を縛り付け、ただ快楽を搾り出すための肉便器として地下室に監禁しないと誰が断言できるだろうか。
恐ろしい。人間の愛情が、執着が恐ろしい。
しかし。ユルヴィは、ユウの震える身体を見た。自分を繋ぎ止めようと必死にもがく、未熟な少年。
その真摯な熱量に触れ、彼女の奥底で燻っていたサキュバスとしての本能が、わずかに形を変えて疼き始めた。
この幼い雄が、私の底なしの飢えを満たしきれると考えるのなら。一度だけ、チャンスを与えてみよう。
好きにやらせてみて、そして絶望させてやればいい。
人間の脆弱な肉体では、業を背負ったサキュバスの身体を満足させることなど到底不可能だと思い知らされれば、彼も諦めがつくはずだ。自ら身を引くか、あるいは自分の無力さに絶望して逃げ出すだろう。
それが、互いにとって一番残酷で、一番確実な別れの儀式となる。
「……分かりました」
ユルヴィは静かに息を吐き出し、張り詰めていた表情を緩めた。そして驚いて顔を上げるユウの頬を両手で包み込み、その蒼白な唇に自らの唇を重ねた。
微かな水音を立てて唇を離すと、ユルヴィは魅惑的な笑みを浮かべた。
「じゃあ、試してみましょうか」
彼女はユウを抱き寄せ、その細い背中に腕を回した。
胸の奥で、冷たい計算と、抑えきれない好奇心が入り混じる。
10
部屋の空気は、甘く熱を帯びた色に塗り替えられていた。
分厚いカーテンが引かれた空間で、布の擦れる微かな音が響く。互いの衣服が床に脱ぎ捨てられ、冷え切っていたはずのシーツは、二人の体温によって急速に温められていった。
ユルヴィは粗末なベッドの上に仰向けに横たわっていた。その豊かな腹部の上に、ユウが跨っている。
これまでの営みにおいては、常にユルヴィが上からユウを支配し、圧倒的な質量の肉の波で彼を飲み込んできた。しかし今は、その位置関係が逆転している。
ユウから見下ろされるという未知の状況。ユルヴィの背中の蝙蝠の翼はコンパクトに折り畳まれ、山羊の角は枕に深く沈み込んでいた。
仰向けになったことで、彼女の巨大な乳房は重力に従って左右へと大きく流れ落ちている。しかし、それは決して見苦しく崩れているわけではない。むしろ、横に広がったことでその途方もない容積が際立ち、肌の艶めかしさが薄暗い部屋の中でも発光しているかのようにユウの目を惹きつけていた。
頂の赤黒い果実は、夜の冷気と本能的な期待によって、すでに硬く尖り始めている。
ユウは息を呑んだ。
神聖なるシスターの仮面を脱ぎ捨てた、本物の魔物の肉体。幾度となくその谷間に埋もれてきたはずなのに、こうして真正面から、自らの意志で見下ろすのは初めてだった。
緊張に身を強張らせる少年の腹部には、衰弱していたことが嘘のように、再び熱を集めて反り上がった分身が天を突いている。
「さあ……好きにしていいですよ」
ユルヴィは金色の瞳を細め、慈愛と誘惑の入り混じった笑みを浮かべた。
どうぞ、無力な人間の足掻きを見せてごらんなさい。内心では冷酷な計算を走らせながら、彼女は両腕を投げ出し、完全なる無防備を装った。
ユウは無言のまま、真剣な面持ちでコクンと頷いた。
彼は震える手を伸ばし、おずおずと、左右に広がったユルヴィの胸の輪郭をなぞり始めた。
指先が触れるたび、ユルヴィの肌が微かに粟立つ。搾取する側であった時には意識もしなかった、与えられる側としての純粋な触覚。
ユウの両手が、巨大な肉の塊を下から掬い上げるように包み込んだ。
そして、力を込めて中央へと寄せ集める。
「んっ……」
ユルヴィの唇から、吐息が漏れた。自らの腕で寄せるのとは違う、他者の力によって形作られる谷間。
ユウは自らの分身をその深い肉の峡谷へとあてがい、ゆっくりと、しかし確かな意志を持って腰を下ろした。
むちゅり、と。極上の柔肉が、未成熟な猛りを左右から完全に包み込む。
ユウはそのまま前傾姿勢になり、両腕でユルヴィの巨大な乳房ごと彼女の身体を抱きしめるような体勢をとった。
そして、不器用に腰を動かし始める。
ユウの細い腰が打ち付けられるたび、ユルヴィの胸肉が波打ち、湿り気を帯びた淫らな音が部屋に響き渡る。
決して洗練されているとは言えない、さかった犬のようにへこへことしたピストン運動。それは、サキュバスの高度な奉仕とは比べ物にならないほど稚拙なものだった。
ユルヴィは少年を見つめながら、その必死な動きに愛おしさを覚えていた。
可愛い子。自分の命を削ってまで、私を繋ぎ止めようと必死に腰を振っている。
しかし、同時に冷めた思考も働いていた。
サキュバスの渇きは底なしの暗黒だ。人間の少年が一生懸命に腰を振ったところで、所詮は水滴で砂漠を潤そうとするようなもの。この程度で、私の飢えが満たされるはずがない。
そう、確信していた。
しかし。
ぱちゅん♡ ぱちゅん♡
何度も腰が打ち付けられ、胸の奥で彼の熱が擦れ上がるたび。
ユルヴィの腹の底に、今まで経験したことのない奇妙な感覚が広がり始めていた。
吸精を行っているわけではない。彼が自ら動き、自らの意志で熱を押し付けてきているだけだ。
なのに、なぜ。
子宮の奥がジンジンと痺れ、背中の翼の先が無意識のうちにシーツを掻き毟っている。
物理的な快感ではない。もっと精神的な、魂の根源を直接揺さぶられるような強烈な充足感。
彼が腰を振るたびに、私を生かそうとする切実な祈りが、熱となって流れ込んでくる。
言い表せない想いが、ユルヴィの胸の中で濁流のように膨れ上がっていく。
「あ、あっ……ユルヴィ姉、僕……っ!」
ユウの呼吸が急激に荒くなった。経験不足の彼にペース配分などというものは存在しない。ただ己の感情と欲動のままに突き進むだけだ。
開始から幾ばくも経たないうちに、彼の身体が限界を迎える。
ドクン、と胸の谷間で爆発が起きる。
深い肉の峡谷を勢いよく突き抜け、白濁した生命の奔流が一直線に飛び出した。
ピュッ、ピュッと飛沫を上げ、それは仰向けになっているユルヴィの口元にもべっとりと降り注いだ。
ハァ、ハァと荒い息を吐きながら、ユウがユルヴィの胸に突っ伏す。
限界まで搾り取られていというのに、サキュバスとの常軌を逸した交わりのせいか、放出された精液の量は大人の男のそれを遥かに凌駕していた。
とはいえ、サキュバスの底なしの飢えを満たすには、絶対量が足りないはずだった。
ユルヴィはゆっくりと舌を伸ばし、自らの口元に付着した熱い白濁を舐め取った。
「──ッ!?」
脳髄に、雷が落ちた。全身の細胞が歓喜に震え、視界が真っ白に明滅する。
美味しい。
いや、味覚などという表面的な器官で感じ取れるものではない。
舌に乗せたほんの一滴の雫が体内を駆け巡り、サキュバスとしての枯渇した本能の底の底まで満たしてしまうような満足感。かつて味わってきた、快楽に溺れるだけの精気とは全く違う。
私を繋ぎ止めたい。私を生かしたい。その純粋な愛情という精神が精液に乗り移ったかのように、サキュバスとしての本能を揺るがしていた。
こんなことがあり得るのか。たった一人の人間の、それも未成熟な少年の愛が、飢えを凌駕するというのか。
驚愕と歓喜で身を震わせるユルヴィの感情に、ユウは全く気づいていなかった。
「まだ……これじゃ、足りないよね……」
胸に突っ伏したまま、ユウが呟く。ユルヴィが見下ろすと、彼はまだ半勃ちの状態であるにもかかわらず、再び無理やり腰を動かし始めていた。
「もっと、頑張るから。もっといっぱい出して、ユルヴィ姉を満足させないと……」
己の限界を超え、擦り切れるような痛みに耐えながら、彼は再びヘコヘコと腰を振り始める。
その不器用な動き一つ一つが、今度は明確な熱の塊となってユルヴィの性癖を直撃した。
彼が腰を押し当てるたび、愛されているという実感が、サキュバスの空虚な器を満たしていく。
快感が、波となって押し寄せる。
これまで搾取することでしか得られなかった偽りの充足とは違う。他者から無条件で与えられ、馬乗りになって奉仕されることで満たされていくという、全く未知の至福。
愛されている。化け物である私を、この子は命を懸けて繋ぎ止めようとしてくれている。
ユルヴィは堪えきれず、自らの両腕を自身の胸にあてがおうとした。
これ以上、彼だけに無理をさせるわけにはいかない。私からも彼を愛し、極上の快楽で包み込んであげなければ。
彼女は両腕に力を込め、自らの巨大な胸肉をさらにギュッと寄せて、彼の分身を魔力で優しく慰撫しようとした。
しかし。
「だめだよ、ユルヴィ姉」
ユウの手が、ユルヴィの腕をそっと押し留めた。
汗に濡れた前髪の奥で、彼の瞳が強い意志を持って光っている。
「ユルヴィ姉はやっちゃダメ。……僕が、頑張らないと意味がないんだ。僕から、ユルヴィ姉にあげなきゃ」
弱々しい少年の言葉には、男としての矜持が込められているようだった。
魔物に縋り付く弱者ではなく、愛する女を満たそうとする雄としての宣言。
その健気で、あまりにも愛らしい姿に、ユルヴィの胸の中にあったはずの計算や、捕食者としての傲慢さは、跡形もなく消え去った。
「……っ、ああ、ユウくん……なんて、なんて愛おしい……」
ユルヴィは両手を放り出し、ただシーツを強く握りしめてその身を委ねた。
完全に恋に落ちた乙女の顔で、彼女は少年の必死な奉仕を受け入れる。
ぱちゅん♡ ぱちゅん♡ と鳴る乳との交わりの音が、今は神聖な賛美歌のように響く。
やがて、ユウの身体が再び大きく跳ねた。限界を絞り出すような二度目の絶頂。
今度は谷間を抜けることなく、ユルヴィの胸の奥深くに乳内射精していた。
ユルヴィは首をすくめ、胸を押し上げる。自らの胸の中にある白濁を、長い舌を伸ばして一滴残らず絡め取り飲み込んだ。
「んんっ……んくっ……♡」
喉を鳴らして飲み込むたび、身体の奥底から甘い魔力が満ち溢れていく。
二度目の射精を終え、ユウはついに力尽きたようにユルヴィの胸の上に倒れ込んだ。
肩で激しく息をし、全身が小刻みに震えている。
それでも彼は、休むことなく三度目のために腰を動かそうと身をよじった。
「……ユウくん♡ ……少し、休憩しましょうか♡」
ユルヴィは微かに笑い、自らの胸の上でもがく少年の頭を優しく撫でた。
これ以上の無理は、本当に彼の命を削ってしまう。十分すぎるほどに、彼の愛は伝わったのだから。
休むことを提案されたユウは、不満げにしながらも、抗う気力もなくコクンと頷いた。
ユルヴィは彼の身体を優しく抱き直し、その顔を自らの巨大な乳房の頂へと誘導した。ユウの唇に既に固くなっている乳首が触れる。
「さあ、お口を開けて。……たくさん頑張ってくれたご褒美です」
ユウが促されるままにその頂を含み、赤子のように吸い付いた。
その瞬間。
「んっ……♡」
ユウの口内に、甘く温かい液体がじんわりと滲み出した。
サキュバスは、対象の欲求やプレイの性質に合わせて、自らの肉体をある程度変貌させることができる。処女膜の再生や、体臭の操作、そして母乳の分泌もその一つだ。
通常、それらの肉体変化には少なくない魔力を消費する。しかし今のユルヴィにとって、ユウの愛に満ちた精液から得た莫大な魔力量に比べれば、母乳を出すための消費など無に等しかった。
ちゅむ、ちゅぷ、と、ユウは夢中になってユルヴィの乳首に吸い付き、甘露のような母乳を喉に流し込む。
先ほどまでの疲労が、その魔力を帯びた液体によって急速に癒されていくのが分かった。
ユルヴィは我が子を慈しむように彼の髪を梳きながら、深い安らぎの中で目を閉じた。
もう、疑う必要はない。彼が真に愛を向け、自らの命を厭わず与えてくれた熱が証明してくれた。彼の愛があれば、私は永遠に満たされ続けることができる。
たった一度の射精であっても、十分すぎるほどに潤されたのだ。彼を搾取し、壊してしまうかもしれないという恐怖は消え去った。
私が彼を守り、彼が私を満たす。これは寄生でも搾取でもない、真の共生なのだ。
もう絶対に、この子の傍から離れない。見下ろす立場から、見上げ、与えられる立場へ。それでもいい。それが良い。孤独を生き抜いてきた魔物の魂は、一人の少年の手によって、完全に絡め取られてしまった。
捕食者としての歪んだ愛情は、いつの間にか、ただ一人の男にすべてを捧げる乙女のような純粋な恋心へと変貌を遂げていた。
それでも。
彼女の口元に、悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
これがまだ、私が彼を見定めるための「お試し」であるということにしておこう。
そうすれば、彼が私の気を引くために、必死になって愛を注ごうと足掻く愛らしい姿を、もう少しだけ見ていられるのだから。
「ふふっ……いっぱい飲んで、また元気に腰を振ってくださいね、ユウくん♡」
部屋のベッドの上で、甘い時間が流れていく。
甘えるように腰を揺するユウを、ユルヴィはまた優しく抱き締めた。