※この作品はR-18です。

トロフィーゲーマー~女性しかゲームをやらない世界で~   作:ユルイ島

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最古参ガチ恋レイヤーと推し対象の宴

 ツキナミ……凛たちと直接会うようになったのは理壱が配信を始めてからまだそこまで月日が経っていない頃で、未だ両親が日本にいて、パソコンを買う前のこと。

 

 凛が布教したという友人たち四人の固定リスナーがいて、視聴者数がゼロではなく、この配信者は誰かが観ているのだとい事実は通りすがりのリスナーにとってある程度のクオリティというか、安心感というものを担保してくれたようで、アプリユーザーの規模感もあるが少しずつ固定客を掴んでいった。人は人が集まっている場所に集まるとはよく言ったものだと理壱は振り返って思う。

 

 

 

 ともあれ、そうしてリスナーを増やしていくと何も好意的な人間だけが寄ってくるわけもなく、理壱……あとらすへのアンチも僅かながら生まれていった。

 

 

 

 配信自体は男女問わず行われているわけで、男性もゲームこそやらないが雑談配信やスポーツ、演奏などを扱う者は当然の如くいたし、そういった「一般的」な配信を見る男性視聴者も無論いた。それたの極普通の男性視聴者が、人数が集まっているからとたまたま開いたあとらすの配信を見てどう思うか。中には「男がゲームなんてやってるんじゃねえ」といったこの世界において至極当然な反発を覚えてもおかしくないし、気持ち悪いものを見たと嫌悪感を示すものもいる。あるいは「女に阿おもねってまで見てもらいたいか」といったやっかみのような感情を抱くものが出てくるのも不思議ではなかった。

 

 

 

 女性視聴者も全員が全員あとらすを肯定するわけではなかった。極少数ではあるが声が好みではない、ゲームへの取り組み方が気に入らない、顔出し配信者じゃない時点で論外など、倦厭する点があれば叩く切っ掛けになる。また、ビジネスでやっていると見なす者もいた。

 

 

 

 ある日SNSの通知に来たDMを当時中学生であった理壱が開いて、人格否定の文字がつらつらと並べ立てられていたのを見たとき、心臓がきゅっと締まり、嫌な汗をかいたことを覚えていた。中身は前世と今世足せばいいオッサンなのではあるが、幾つであろうと人から悪意を向けられて気にせずにいられるほど精神が擦り切れていなかった。

 

 

 

 少なからずこのままリスナーが増えていけばこういった言葉を投げ掛けられることもあるだろうと予想は立てていたが、いつなんどき送られてくるのかなど理壱の都合に関係はなく、四六時中心構えをして備えていろなんて無茶な話で。初めて会敵したアンチからのメールは理壱の心に小さくない棘を残していた。

 

 

 

 しかして理壱からすれば誰に言うこともなく。当然周囲の友人知人や親などには己が配信者をやっているなどと明かすつもりはなく、たとえゲームではない一般的な配信者と騙っても万が一そこからの身バレを考慮して言うつもりはなかったし、配信でリスナーに向けて話すのも基本的にポジティブなことを発信していかなければ燃えると理解していた理壱は数週間の間一切触れずにいた。

 

 

 

 ……のだが、ある日ぽろりと自らの心の弱さの発露か、アンチからDMが来たと配信に乗せてしまった。その結果訪れたのは、それに便乗してメールを送りつけてくる少数のアンチと、励ましのメールを山ほど送ってくるファンが生まれたことだった。

 

 

 

 ファンからすればアンチの行動は度し難いものであった。特に最古参であるツキナミ……凛とその友人たちはそのクソみたいな何の役にも立たない人を傷つけるだけのメールでもしもあとらすが配信活動を辞めてしまったらどうなる。私たちの怒りは下手をすれば死者を出すぞと本気で考えた。

 

 

 

 この時本当にあとらすが配信を辞めていたら凛たちはどんな手を使ってでもメールを送ったアンチを特定し、殺しに掛かっていた未来が存在する。

 

 

 

 とにかくファンからすればあとらすを慰めたい、慰めねばならない、出来ればよしよししてあげたいと躍起になっていた。その結果怒涛のファンメール攻勢であり、強火ファン勢、中でも初手自身のレイヤーアカウントを開示していた凛は動画つきのメールであとらすへのラブコールをするのに一切の抵抗がなかった。

 

 

 

 あとらすくん、好きだよ、愛してる。私たちがついているよ。声が好きだよ。配信内容が好きだよ。笑っている声で心が温かくなるよ。疲れてるなら癒してあげたいな。好みのキャラのコスプレ作ったんだよ、見せてあげたいな。この間の配信でコメント読んでくれて嬉しかった。難しいところで口数少なくなってゲームに本気になってるあとらすくんが好き。台詞読み上げてるときにちょっと恥ずかしくなってるあとらすくんラブ。辛いことあったら言ってね、お姉さんに甘えてくれるなら嬉しいな。

 

 

 

 このような内容の動画を、素面のまま、動画で実際に発言しているのを送りつけている。凛のツラとスタイルが良いのと、理壱が気にしないタイプであったから上手くいったが、色々とギリギリなムーブだった。ひょっとしたらアンチよりもこちらに恐怖を覚えて活動を辞めていた可能性もなくはない。

 

 

 

 しかし異性からここまで直球に愛を訴えかけられた経験のない理壱はこの言葉に思わず釣られて、一通の返信を返した。

 

 

 

 ──甘えてもいいんですか?

 

 

 

 この一文から、理壱と凛、そしてその友人たち葉村瑠璃、鍵野杏、明日樹紗江との今に至る関係性が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 話は戻り金曜夜二十一時二十分。配信を終え、凛たちにコンタクトを取った理壱は適当にささっと着替えをして実家を出た。一応都内にあるとはいえ、比較的郊外であり更に閑静な住宅街にある阿東家を出れば、この時間帯でも静かなもので、理壱は家に鍵を掛けてからゆっくりと春先のほの暖かい宵闇の中を歩き始める。

 

 

 

 家から最寄の駅まで徒歩十一分。そこから電車にのって凛の家まで一時間と少し。そして更に五分ほど歩く道のりだ。凛の家に着く頃には二十三時に近くなっている。終電はまだあるのだが、それを考えてこの時間に理壱が家を出るわけもない。無論「泊まり」だ。

 

 持ち物は鍵と財布とスマホだけと近所のコンビニに行くような気軽さだが構わない。着替えだとか歯ブラシだとかは凛の家……に限らず、彼女たちの家にそれぞれ置いてある。

 

 都心方面に向かう電車は流石にがら空きで、悠々と座席に座ることが出来る。スマホの画面を眺めながら時間を潰せば片道一時間もあっという間に過ぎていく。目的地にて降車して駅を出て、通いなれた道を行けば凛が住まうマンションにすぐ着いた。理壱はエントランスインターホンを鳴らして、応答を……待つ間もなく、即座に返事が返ってきた。

 

 

 

「はいはーい」

 

 

 

「瑠璃さん? 理壱です」

 

 

 

 応答の声で誰が出たのか一度で分かる。浮ついた声に家主ではないはずの瑠璃が「今開けるね」とマンションのオートロックドアを開ける。開かれたドアを進み、階段を上がる。凛の部屋のインターホンに指を掛けて、さあ鳴らそうとした瞬間に扉が開かれて、凛と瑠璃が出迎えた。

 

 

 

「寒くなかった? 入って入って」

 

 

 

 そう言いながら理壱の右腕に絡み付く凛と左手を握る瑠璃に誘われるままに部屋の中に入っていく。短い廊下を抜けてリビングダイニングに入れば絨毯の上に敷いたクッションに座る杏と紗江がこちらを向く。

 

 

 

「……ん、来たんだ、理壱」

 

 

 

「理壱くん、お疲れ様」

 

 

 

 座ったまま缶チューハイで口元を隠しながら、真顔を保とうと努力するも表情筋がほころんでいるのを隠せない杏と、すかさず立ち上がり理壱が羽織っていたジャケットを甲斐甲斐しく脱がせる紗江。凛は絡めていた腕を外し冷蔵庫からドリンクを数本取り出して、瑠璃はそのまま理壱をエスコートしてつまみが広がっている座卓の前に座らせる。

 

 

 

「理壱くん何飲む?」

 

 

 

 炭酸と緑茶、乳製品飲料のペットボトルを差し出してくる凛から理壱は炭酸を受け取って、両脇に座る杏と紗江がぴとりと身体を寄せてくるのをそのまま逆らわずにみを任せる。

 

 

 

 二人の使っている香水とシャンプーやトリートメントの甘い香り、それに僅かに入り混じる女性の臭いが鼻腔を刺激する。元々体温が高い紗江とアルコールによって代謝が上がっている杏の熱がじわりと伝わってくる。

 

 

 

「どうする? ゲームでもする?」

 

 

 

 理壱の後ろから凛が抱き着けば、背中にむにゅりと弾力のある双丘が潰れる感触がする。

 

 

 

「理壱くんはさっきまでゲーム配信してたからゆっくりしたいのかな?」

 

 

 

 凛と杏の間を縫い耳元に顔を寄せて瑠璃が囁く。理壱の耳をくすぐる呼気にぞわぞわと身が震える。

 

 

 

「あんたらさあ……情緒がってもんがないよ情緒ってもんが。そんなすぐサカってどうするのさ」

 

 

 

 くぴくぴと缶チューハイを口に運びながら杏が理壱の右腕にべたりと張り尽きながら言う。「説得力ゥ」と瑠璃がからかった。

 

 

 

「みんなは何かしたいことないの?」

 

 

 

 理壱が苦笑しながら尋ねると、全員が異口同音に告げる。

 

 

 

「学生プレイ」

 

 

 

「しょっちゅうやってない?」

 

 

 

 

 

 

 

 凛を筆頭に彼女たちの家にはそれぞれ理壱の下着と寝巻き、簡単に外に出られるようにメンズのジャージかスウェット、またシャンプーリンスコンディショナー、歯ブラシとコップなど生活用品などがデフォルトで備え付けられており、理壱は身一つでいつでも彼女たちの家に転がりこむことが出来る。

 

 

 

 同時に彼女たちコスプレイヤーの家には個人的に「楽しむ」時に使う用の基本的な各種コスプレセットが置かれている。その一覧はメイド服、スクール水着、ブルマ、セーラー服、ナース服などの日頃コスプレイヤーが着るようなキャラクター物ではなく、特に男性に対して人気のある記号的なもの。中でも彼女たちはセーラー服を着て学生プレイをするのを特に好んでいる。

 

 

 

 彼女たちからしたら学生時代に男子とゲームの話をして青春を過ごすというのは叶えようがなく、しかし誰もが一度は思い浮かべた夢の光景であり、二十歳を超えて、ともすれば口さがない者から「きっつ」と後ろ指を指されるようなセーラー服姿での学生プレイは何度やっても飽きることはなかった。

 

 

 

 ベッドルームに引っ込んだ凛たちが私服からオーソドックスな白のワイシャツと紺のスカートのセーラー服に着替えて居間で待つ理壱の前に姿を現す。理壱からすればキツさよりもシンプルにそそるだけの姿。あるいはキツいからこそそそるのだと訴えかける人もいるかもしれないが、彼女たちがその域にたどり着くには後十年ほど必要になりそうだった。

 

 

 

 発育のいい大人びたギャルのような様相の凛。張り出したワイシャツ胸部が情欲を掻き立てる。長めのネイルや強めのアクセサリをつければオタクに優しいギャルが簡単に出来上がり。

 

 

 

 スカートから伸びたすらりとした脚がまぶしいクール系の瑠璃はともすれば男性よりも同性からの支持が高そうな女子生徒。メイクを決めればいわゆる王子様、ヅカ系に変わるだろう。

 

 

 

 むちむちとした太ももとスカートとワイシャツを押し上げる胸と尻。男好きする身体をしながら重めの色合いの黒髪で目線を隠してみれば、獣欲をぶつけたくなる陰キャ学生といった雰囲気の紗江。

 

 

 

 そして最後の四人目。すとんと真っ直ぐに落ちた胸元。小さい身体をセーラー服に身を包めば、他の三人と違って女子高生というよりも進学したばかりの中学生に見えてくる杏。

 

 

 

「おまたせ、じゃあ理壱くんもぬぎぬぎしようね」

 

 

 

 後ろ手に持っていた男子学生服をじゃーんと見せてくる凛の声に応じて、他の三人の目が光り理壱をソファに押し倒し、服を剥ぐために手を伸ばしていった。

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