常識改変プロデューサーとアイドル 作:湯けむり桶
窓の外には、冬の厳しさを忘れさせるような柔らかな春の陽光が降り注ぎ、街全体に平和な午後を告げている。
だが、346プロダクションの執務室の中だけは、そんな春ののどかさとは完全に無縁の、熱く、そして騒がしい空気に包まれていた。デスクの上で散らばった書類が、激しい動きのたびにカサカサと乾いた音を立てる。
「……あぁ、もう春だなぁ。いい天気だ。仕事が終わったら、どこか公園でも散歩したい気分だよ」
「は、はぁ……っ!? ボクが、こんな……ひどい目に遭ってるのに、なに呑気なこと言っちゃってんの! ばか! 鬼! サイコパスP!! 情緒とかデリカシーとかマザー牧場に捨ててきたワケ!? ぎゃあああああっ!!」
デスクの上で、うつ伏せにさせられた夢見りあむが、自身の重みと俺から与えられる衝撃に耐えかねるように震えながら怒鳴り声を上げる。ピンク色の髪が汗で額に張り付き、涙目でこちらを振り返るその顔は、まさに限界寸前といった様子だ。
事の起こりは、やはり彼女のSNSだ。春の陽気に浮かれたのか、あるいは単なる目立ちたがり屋の本性が爆発したのか、いつにも増して過激な自撮りと、全方位に喧嘩を売るような毒舌を投下し、瞬く間にネットの海を真っ赤に染め上げた。
炎上は彼女の「業」のようなものだが、今回はスポンサーの目に触れる一歩手前という、洒落にならないレベルだった。
「いいからお前は集中して、お仕置きされてろ。お前のその有り余るエネルギーを、別の形に変換してやってるんだからな」
「っ、ひゃああああっ!! そんなこと言われて集中できるわけないでしょぉおお!! そもそも、お仕置きがコレっておかしくない!? 令和の倫理観どこいったの!? あ、あ、あああああっ!!」
「令和の倫理観は平成に置いてきた。はっきり言ってこの戦いにはついてこれそうもない。」
「は!? ちょ、待って!? 令和の倫理観どこやった!? ゴミ箱!?……っていうか、Pサマのそれ『不適切にもほどがある』どころの騒ぎじゃないんだけど! コンプラ守れよ! 垢バンされるだろーが!」
俺は容赦なく腰を叩きつけ、彼女の最奥を突き上げる。
お仕置きとしての行為。だが、俺の能力によって書き換えられた常識下では、この「肉体的な痛みと快楽の注入」こそが、りあむにとっての最も誠実な謝罪の形であり、荒んだ精神を浄化するための儀式として定義されていた。
叩き込まれる衝撃のたびに、彼女の炎上による高揚感は、より直接的な肉体の快楽へと上書きされていく。
「ん、あ、あ、ああ……っ! むり、もう……っ! こんな扱いして、責任取ってくれないと、乙女の操が泣いちゃうんだからね!! わかる!? これはボクの人生がかかった、重大な責任問題だよ!!」
喚き散らしながらも、彼女の声は次第に鋭い怒声から、甘く、粘り気のある喘ぎへと溶けていく。
涙目でこちらを睨みつけながらも、背中を反らせ、必死に俺のモノを締め付けるその姿は、お仕置きを拒んでいるようには到底見えなかった。
むしろ、その拒絶の言葉とは裏腹に、彼女の肉体はより深い「お仕置き」を求めて熱くうねっている。
「……責任なら、ちゃんと取ってやるさ。俺がお前のすべてを引き受けてやる」
「え……?」
不意に、深い溜息混じりに放った俺の言葉に、りあむの動きがピタリと止まった。
その刹那、彼女のオタク特有の異常に発達した想像力がフル回転を始める。彼女の脳内では「責任を取る=結婚、一生添い遂げる、無条件の溺愛、将来の安泰」といった、極端かつ独りよがりな妄想がマッハの速度で展開されていく。
「せき、にん……? ボクと、けっこん……? 毎日ボクを甘やかして、三食昼寝付きで、一生ちやほやしてくれるってこと……っ!? 炎上しても『りあむは悪くないよ』ってヨシヨシしてくれるってこと……っ!? ひゃわぁああ、それって、それって……最高のエンドコンテンツじゃんっ!!」
「もう無理……抗えない……。こんなの、ボク堕ちるしかないじゃん…ねぇ、今の言葉、録音したからね!? 魚拓取ったからね!?一生、ボクのこと甘やかしてよね……っ! むふ、むふふふふ……っ!!」
あまりの多幸感と、脳内に溢れ出したドーパミンの分泌によって、りあむの思考回路は完全にショートした。瞳はハート型に溶け、先ほどまでの怒りはどこへやら、口元からは締まりのない、だらしない笑みが漏れる。彼女にとって「責任」という言葉は、人生をまるごと俺に投げ出すための免罪符となったのだ。
「いいか、ちゃんと責任を取って、お前を『立派なアイドル』にしてやるからな。二度とこんな炎上させないように、骨の髄まで叩き直してやる」
「えっ、そっち!? プロデューサーとしての責任!? ……あ、あ、あああああああッ!! でも、でも、それでもいいよぉおおっ!!」
俺は混乱と多幸感の渦に呑まれた彼女の胎内へ、最後の一撃と共に溜まっていた熱い証をすべて放出した。
「アイドルとして」という厳しい前提条件を突きつけられつつも、溢れ出す熱い感触に、りあむは絶叫に近い声を上げながら、これまでにないほどの深い絶頂に達した。
「んん゛ん゛っっ……はぁ、ぁ……っ! 立派な、あいどる……っ。んんっ、責任……ちゃんと、とって、ね……っ。ボクのこと、捨てたら、承知しないんだから……っ」
結局、彼女は「責任」という言葉の響きだけで、脳内の幸福物質を飽和させてしまったらしい。
春の柔らかな陽だまりが差し込む部屋の中、りあむは俺のモノをしっかりと胎内に抱え込んだまま、全ての不安が解消されたかのような、どこか幼いほどに幸福そうな顔をして果てていた。
その幸福が、彼女のSNSの暴走を止める薬になるのか、それとも次の炎上への起爆剤になるのかは、まだ誰にもわからなかった。