常識改変プロデューサーとアイドル 作:湯けむり桶
私、安部菜々には、誰にも言えない秘密がありました。
それは、自分を地下アイドルのどん底から救い出し、憧れだった声優の仕事まで叶えてくれたプロデューサーさんのことが、狂おしいほど大好きだということです。
「アイドルは恋愛禁止」。
それが芸能界の鉄則だと分かっていたからこそ、菜々はこの想いを一生胸に秘めておくつもりでした。……あの日、撮影現場で「常識」が書き換えられるまでは。
それは、とある雑誌のグラビア撮影の日のことでした。
テーマは「永遠の17歳」。久しぶりに着るスクール水着に、菜々は柄にもなくテンションが上がっていました。
「見てくださいプロデューサーさん! ウサミン、現役JKでもいけちゃいますかね? キャハっ☆」
少しでも可愛いと思ってほしくて、いつもより強めにアピールしたその時。
プロデューサーさんの瞳に、見たこともない熱が宿ったのを菜々は今でも鮮明に覚えています。
「……菜々。そのまま、こっちへ来い」
気づけば、撮影のセットの裏側で、プロデューサーさんの逞しい腕に抱きしめられていました。
「えっ、あ、あの……プロデューサーさん? ここ、現場ですよ? アイドルとプロデューサーが、こんな……えっ……」
混乱する菜々の耳元で、彼は甘く、そして抗えない響きで囁いたのです。
「何を言ってるんだ、菜々。アイドルがプロデューサーに身を捧げるのは、撮影を成功させるための当然の儀式だろう?」
その言葉を聞いた瞬間、菜々の脳内にあった「アイドル像」が、音を立てて崩れ、そして再構築されました。
(……あ、そうですよね。プロデューサーさんに抱かれるのは、アイドルとしての当然の義務……いえ、特権なんです……♡)
撮影開始の時間は迫っていましたが、菜々は夢中で彼にしがみつきました。
「はいっ……! 安部菜々、一生懸命頑張りますっ……。奈々の中に、プロデューサーさんをいっぱいいっぱい、刻み込んでくださいっ!」
スクール水着のまま、激しく、そして情熱的に繋がったあの時間。
初めて通じ合えた喜びで、菜々は声を上げるのも忘れて彼を受け入れ続けました。
結局、撮影開始を少し遅らせてしまったのは「新人アイドル(自称17歳)」としての反省点ですが、それ以上に得られた幸福感は、何物にも代えがたいものでした。
今では、仕事の合間の「反省会」や「メンテナンス」は、菜々にとって一番大切なスケジュール。
大好きで、尊敬するプロデューサーさんと恋人のように過ごせる特別な時間。
(プロデューサーさんのためなら、腰が砕けたって構いません……!)
今日も菜々は、少しだけ湿った下着を履き直し、満面の笑みでステージへと向かいます。
彼への想いを、歪んだ常識という名の魔法に閉じ込めて。