常識改変プロデューサーとアイドル 作:湯けむり桶
少し長めのオフとなった昼下がり、事務所のソファーでは、安部菜々と諸星きらりが1冊の旅行雑誌を挟んで賑やかにページをめくっていた。
「わあ☆ 菜々ちゃん見て見てぇ! この海、すっごくきらきらで、はぴはぴ〜☆って感じだにぃ!」
「本当ですねぇ! 砂浜も真っ白で……ああっ、見ているだけでウサミン星に負けないくらいのエネルギーが湧いてきますっ! ああ〜、プロデューサーさん! ナナ、なんだか沖縄に行きたくなってきちゃいましたぁ!」
ソファーの対面に座り、書類に目を通していたプロデューサーは、顔を上げてフッと笑った。
「沖縄か。少し遠出にはなるが、今までスケジュールが詰まっていたんだ。リフレッシュには悪くない選択肢だな」
「ホント!?Pちゃん、きらりたちを沖縄に連れてってくれるの!?」
きらりが大きな体を弾ませて喜ぶと、雑誌のページをさらにペラペラとめくり、あるページで指を止めた。
「じゃあじゃあ! きらり、沖縄の『漫湖(まんこ)』へ行きたいにぃ!」
「おっ、漫湖ですか! いいですねぇ、あそこは野鳥観察も盛んで、本当に良い所なんですよ!」
菜々が我が意を得たりとばかりに身を乗り出す。ラムサール条約にも登録されている広大な干潟の魅力を語る彼女は、まさに知識豊富なウサミンそのものだ。
「へぇ〜☆ 菜々ちゃんは漫湖イった事あるんだぁ?」
きらりが純粋な好奇心に目を輝かせて尋ねると、菜々は胸を張って笑顔で答えた。
「勿論、いっぱいありますよ! 地理的にも世界的(国際的)に保護対象に指定されていますし、実際に現地にイくと、あの豊かな自然に包まれて、漫湖がとっても気持ち良いんです♡」
悪気も他意も一切ない、大自然の癒やしスポットとしての純粋な感想。
しかし、そのあまりにストレートなフレーズの連続に、プロデューサーの背中に一瞬、ドッと妙な汗が流れた。事務所の静かな空間に響くその響きは、大人の常識というフィルターを通すと、どうしても少々のスリルを伴ってしまう。
「にぃふぇーでーびる☆ 菜々ちゃんがそこまで言うなら、きらりも絶対に漫湖イきたいにぃ……!」
そう言うと、きらりはソファーから身を乗り出し、潤んだ瞳でプロデューサーをじっと見つめてきた。
「ねぇ、Pちゃん? きらりも……漫湖イって、いっぱいはぴはぴしてきてもいーい?」
二人の純粋無垢な視線がプロデューサーに突き刺さる。
プロデューサーはゴホンと一つ大きめの咳払いをして、乱れそうになる呼吸を整えながら、引きつり気味の笑顔を浮かべて力強く頷いた。
「よし……! わかった。沖縄の自然を学ぶのも、アイドルとしての良い経験だ。ラムサール条約の干潟(ひがた)で、存分に野鳥観察をしてこよう!」
「やったぁぁぁ!Pちゃん大好きぃ☆」
プロデューサーのOKが出るやいなや、きらりは長い手足をいっぱいに伸ばして、文字通りプロデューサーに飛びついた。
すっぽりと包み込まれるような圧倒的なホールド感の中、きらりはその大きな体をぎゅーっと押し付け、嬉しそうに声を弾ませる。
「えへへ☆Pちゃんといっぱい、いっぱーーい漫湖で楽しんじゃうんだにぃ……☆」
心なしか、きらりの頬は興奮でぽっとピンク色に染まっている。プロデューサーと一緒に行く初めての大自然のスポット、そして新しい体験への期待感で、彼女の胸ははぴはぴな妄想でいっぱいのようだ。
そんな熱烈な抱擁の輪に、菜々もまた「ああっ、ずるいですきらりちゃん! 菜々も菜々も〜!」と、ウサミンパワー全開で参戦してきた。きらりとプロデューサーの塊に、横からぎゅっと抱きつく。
「プロデューサーさん! ナナのは……ゴホン、私『の知っているもの』は綺麗ですけど、漫湖はマングローブの林も大きな目玉なんですよ☆」
至近距離から見上げてくる菜々の瞳は、心なしかいつもより潤んでいて、プロデューサーへのアピールにも熱がこもっている。
「それに、漫湖は那覇のメインストリート、国際通りからだって車ですぐイけますから! ナナも、きらりちゃんも、プロデューサーさんと一緒なら、漫湖はすぐイけますよぉ♡」
「すぐイけちゃうにぃ!? 漫湖すっごい近くて便利なんだにぃ☆」
「そうなんです! だから……プロデューサーさん、三人で一緒に漫湖イきましょうね♡ 最高の思い出にするんですから!」
きらりのダイナミックな抱擁と、菜々の熱を帯びた密着。
二人のアイドルからの「一緒に漫湖へイこう」という純粋かつストレートな熱弁(と、どうしても脳内変換されてしまうワードの破壊力)に挟まれ、プロデューサーの理性は文字通り限界寸前だった。
「お、おう……! 国際通りからのアクセスも抜群なんだな……よし、マングローブの観察もしっかりスケジュールに組み込んでおこう。二人とも、ひとまず落ち着いてくれ……っ!」
事務所のソファーの真ん中で、プロデューサーは熱い熱気に包まれながら、沖縄の広大な干潟へと思いを馳せるのだった。
「そうそう、プロデューサーさん、きらりちゃん。漫湖は湿地ですから、イったら足元がぐちょぐちょになっちゃいます♡ だから、お洋服や足元はしっかり注意しておかないと大変なことになるんですよ?」
菜々はいたずらっぽく微笑みながら、干潟特有の泥層や水分の多さについてプロデューサーに注意を促した。その口から当たり前のように飛び出す「ぐちょぐちょ」というフレーズに、プロデューサーは思わずゴクリと息をのむ。
それを聞いたきらりは、人差し指を顎に当てて、頬をさらに赤らめながら「はう〜☆」と声を漏らした。
「漫湖イったらぐちょぐちょになっちゃうんだぁ……。それなら、靴にゴムカバーとか付けておくと良いのかにぃ♡ ぬるぬるして滑っちゃったら危ないもんねぃ?」
「そうですねぇ♡ 撥水加工のカバーとか、いっそのことゴム長靴なんかがあると、どれだけ奥までイっても安心かもしれないですね!」
二人の会話はどこまでも真面目な湿地対策なのだが、プロデューサーの脳内では「ゴム」「ぐちょぐちょ」「奥までイく」という単語が最悪のシナジーを生み出し、もはや心臓の鼓動がバックバクに跳ね上がっていた。
「じゃあじゃあ、漫湖でぐちゃぐちゃに濡れても良い様に、着替えとかタオルもいっぱい準備しとかないと駄目なんだにぃ☆」
きらりが嬉しそうに、アクティビティの準備について声を弾ませる。
そんなプロデューサーの動揺を察してか知らずか、菜々はきらりの腕からするりと抜け出すと、プロデューサーのすぐ真横へと移動してきた。そして、吐息が届きそうなほどの至近距離で、彼の耳元にそっと唇を寄せる。
「……ね? プロデューサーさん。漫湖イくのって、事前の準備も、入ってからも、結構たいへんなんですよ♡」
ウサミン星人(永遠の17歳)のちょっぴり大人な吐息混じりの囁きが、プロデューサーの耳腔をダイレクトに刺激した。
「う、うむ……! 確かに、干潟のフィールドワークは事前の装備(ゴム長靴)と、濡れたあとのケア(着替え)が最重要だからな……! よし、事務所の経費で頑丈なロングタイプの長靴を人数分、手配しておく……!」
限界ギリギリの理性を総動員し、プロデューサーは引きつった笑顔のまま、手元のメモ帳に「ゴム長靴(ロング)」と力強い筆圧で書き留めるのだった。
「あ、そういえばぁ……」
ふと何かを思い出したように、きらりが人差し指を頬に当てて首を傾げた。
「漫湖って、においはどうなのかなぁ? やっぱり、ちょっと臭ったりするのかにぃ?」
干潟といえば泥や生き物の匂いがつきもの。素朴なきらりの疑問に、菜々はプロデューサーをじっと見つめながら、少しトーンを落とした声で答えた。
「そうですねぇ、漫湖はちょっと臭うかもしれないですねぇ。決してフルーティーな匂いじゃなくて……ちょっと生臭いですねえ♡」
「生臭いんだぁ……☆」
「ええ。でもそれは、たくさんの生き物が生きている証拠なんです。……あの、プロデューサーさんは、漫湖の臭いって大丈夫ですか?」
上目遣いで、試すように、かつ甘えるように聞いてくる菜々。その潤んだ瞳と「漫湖の臭い」というストレートな響きに、プロデューサーは喉の渇きを覚えながらも、大人のポーカーフェイスを維持してさりげなく答えた。
「まあ……そんなに気にしないかな。自然のものだし、それも含めてのフィールドワークだからな」
その答えを聞いて、きらりがパッと表情を輝かせた。
「うっきゃー☆Pちゃんは漫湖臭いの大丈夫なんだぁ♡ よかったぁ、きらり安心しちゃったにぃ☆」
「ふふ、そうですよ。漫湖が臭いのは普通のことですから♡」
菜々はプロデューサーの頼もしい言葉に満足したように深く頷くと、さらに距離を詰め、プロデューサーの腕に己の胸元を押し付けるようにして、熱い眼差しを投げかけてきた。
「勿論、ナナだって……相手の……その、お口とか、体臭とか、少しくらい臭くたって平気です♡ ねっ、プロデューサーさん♡」
一瞬、「相手の……」の後に何が続くのかと最悪の想像をしてしまったプロデューサーだったが、菜々の熱を帯びた視線と、密着する体温のせいで、もう言葉が出ない。
「あ、ああ……。お互い、多少の泥の臭いや汗の匂いは気にせず、全力で沖縄を楽しもうな……!」
プロデューサーの限界を察しているのかいないのか、菜々は満足そうに微笑み、きらりは「うんっ☆」と元気よく返事をするのだった。
「ふふっ……なんだかプロデューサーさんと漫湖へイくお話をしてたら、それだけで軽くイった感じがしちゃいますねえ♡」
菜々はプロデューサーの腕にさらにぎゅっと寄り添い、体温を伝えるように密着しながら、うっとりとした吐息を漏らした。すでに頭の中は完全に沖縄の青い空と、緑豊かなマングローブの景色で満たされているようだ。
「きらりもぉ、漫湖イくの楽しみで胸がドキドキするにぃ……♡」
きらりも負けじと、プロデューサーの反対側の肩にその豊かなプロポーションを預け、期待に胸を弾ませながら体重をかけてくる。
左右から伝わる二人のアイドルの柔らかいぬくもりと、どこまでも直球で脳を揺さぶってくる「漫湖イく」のフレーズ。プロデューサーは完全に思考が麻痺しかけていたが、ここまで来たら腹をくくるしかないと、遠い目をしながら優しく答えた。
「ああ……本当に、楽しみだな……」
「プロデューサーさんに誘われて漫湖イくの、本当に良いですねぇ……♡」
菜々が再び耳元に唇を寄せ、甘く、熱い吐息とともに囁く。プロデューサーのプロデュースで憧れの地に赴く喜びが、彼女を最高にハッピーな気持ちにさせている。
「きらりも、早くPちゃんと漫湖でぐちゃぐちゃ(泥だらけ)になりたいにぃ……♡」
きらりは頬をすっかり赤く染め、まだ見ぬ沖縄の大自然でのハプニングや、泥遊びの楽しさを想像して、期待に胸をパンパンに膨らませていた。
「よし……二人とも、そこまで楽しみにしてくれているなら、最高の沖縄出張プランを組み立てるからな。現地では思う存分、自然を満喫して、みんなで泥だらけになって楽しもう!」
二人の純粋な熱意(と、どうしても抗えないワードの破壊力)に包まれながら、プロデューサーは心の中で沖縄の広大な干潟の地図を広げ、はぴはぴなツアーの成功を固く誓うのだった。
「そうですねぇ、プロデューサーさん。漫湖イきに備えて、今からしっかり準備をしないといけませんねえ♡」
菜々は旅行雑誌をパタンと閉じると、胸の前で拳を握りしめて、やる気満々に微笑んだ。
「せっかく沖縄まで赴くんですから、弾丸ツアーじゃもったいないです! 1泊2日くらいの余裕を持って、じっくり時間をかけてイきたいですねぇ☆」
「そうだにぃ☆ 漫湖イくなら一発2日……じゃなくて、1泊2日はしたいにぃ♡」
きらりが満面の笑みで言葉を言い直したが、その一瞬、前半のフレーズに「……ん?」とプロデューサーの思考のアンテナがピクリと引っかかった。
(……いま、一発って言わなかったか? いや、一泊と言おうとして噛んだだけだな。きらりだしな、うん、気のせいだ……)
プロデューサーが必死にセルフマインドコントロールを行っていると、菜々がさらにヒートアップして声を弾ませた。
「そうですよ、きらりちゃん☆ 漫湖イきに向けて、今からしっかり準備して、漫湖(現地)を綺麗にしておかないと☆(※ゴミ拾いや環境保全のウサミン的意識)」
しかし、菜々の早口と熱いテンションのせいで、プロデューサーの耳には文字通り「マンコを綺麗にしておかないと」という、アイドル事務所にあってはならない超ド級のダイレクトワードとして鼓膜に突き刺さった。
「……えっ?」
思わず素の声で聞き返してしまったプロデューサー。
「世界遺産候補ですから、マナーを守って綺麗に楽しまないとですね!」
「うんうん、綺麗綺麗だにぃ☆」
(……聞き違いだ。いや、絶対に聞き違いだ。俺の心が汚れているだけだ……!)
プロデューサーは冷や汗を拭いながら、自分の邪念を全力で右から左へと受け流した。
「あ、ああっ、そうだな……! 環境保護は大切だからな。1泊2日のスケジュールで、現地をしっかりリスペクトしながら、万全の準備をしてイこう……!」
限界を超えてゲシュタルト崩壊を起こしそうな脳内を必死に立て直し、プロデューサーは二人のアイドルと共に、沖縄への「漫湖ツアー」の準備を熱く、そして慎重に進めることを決意するのだった。
「あはっ☆ 漫湖でPちゃんと遊ぶの、すっごく楽しみだにぃ☆」
きらりは大型犬のように尻尾が見えるほどの勢いで、漫湖の干潟でどんなレクリエーションをしようかと、指を折り曲げながらワクワクを爆発させている。
しかし、先ほどから執拗に連呼されるその響きに、プロデューサーの精神的キャパシティは完全に飽和状態を迎えていた。事務所の壁越しに他のスタッフやアイドルに聞かれたら、一発で破滅しかねない。
「……きらり。素晴らしい観光地なのはよく分かったんだが、流石にもう少し上品に……その、な?」
プロデューサーは苦渋の表情を浮かべ、言葉を選びながら、声のトーンを落とすように促した。
「はっ……!」
その言葉に、きらりはハッと気が付いたように両手を口元に当て、大きな体を縮こまらせてプロデューサーに謝った。
「ご、ごめんねだにぃ、Pちゃん! きらり、はぴはぴでテンション上がっちゃって、ちょっとお行儀悪かったにぃ……」
(おお、やっと分かってくれたか……!)
プロデューサーは胸の内で深く安堵し、優しく微笑みかけようとした。言葉の響きが持つセンシティブさに、ようやく気付いてくれたのだと。
だが、きらりの口から次に出た言葉は、プロデューサーのささやかな安らぎを木っ端微塵に打ち砕くものだった。
「『お漫湖』って、言わないと駄目だったにぃ☆」
照れくさそうに、はにかみながら「お」を付け足すきらり。
「そうですねぇ、きらりちゃん☆ ナナたち、一応これでもお年頃の女の子なんですから、やっぱり『お漫湖♡』って上品に言わないと駄目ですよね、プロデューサーさん♡」
菜々が我が意を得たりとばかりに上品に人差し指を立てて、コケティッシュに微笑みかけてくる。
「…………っ」
何も言えない。プロデューサーは完全に言葉を失った。
上品にするという意味が決定的に、壊滅的にズレている。しかし、二人の目はどこまでも純粋で、悪気など微塵もないのだ。
「きらりちゃんも、これからはちゃんとお漫湖ですよ♡ お漫湖♡」
菜々はまるでお姉さんのように、優しく、かつ熱を込めてきらりを諭す。
「うぇへへ〜☆ 失敗失敗だにぃ☆ 『お漫湖♡』だったにぃ♡ ねえ、Pちゃん☆ これからはちゃんとお漫湖って言うから、いーっぱい連れてってねぃ♡」
左右から、これ以上ないほど丁寧な発音で連呼される「お漫湖」の嵐。
プロデューサーはもうツッコむ気力すら湧かず、ただただ引きつった笑みを浮かべ
「あ、ああ……そうだな、お漫湖だな……」
と、魂の抜けた声でオウム返しにするのが精一杯だった。
「あはっ☆ Pちゃんありがとうだにぃ……♡」
プロデューサーの(半ば諦めの入った)魂の返答を聞き、きらりはすっかり上気した顔で、再びプロデューサーの首筋にぎゅーっと抱きついてきた。至近距離から見上げてくるその瞳は、期待と熱気で潤んでいる。
「ねぇ、Pちゃんはぁ……きらりと『お漫湖』で、何したい……?」
吐息混じりに、上目遣いで核心を突くような質問を投げかけてくるきらり。プロデューサーは限界を迎えつつある理性を必死に繋ぎ止め、視線を斜め上へとそらしながら答えた。
「……ああ……その、大自然を楽しんだり……野鳥を観察したり……とか、かなぁ……」
「あはぁ☆ Pちゃんに、きらりの……じゃなくて、きらりとお漫湖、じっくり楽しまれちゃうにぃ……♡ きらりも、いっぱいお漫湖でPちゃんと楽しんじゃうんだからねぃ♡」
きらりは顔を真っ赤にしながら、プロデューサーの胸に顔を埋めて身悶えしている。もはや何を楽しんでいるのか客観的には完全にアウトな領域だが、彼女の脳内ははぴはぴな沖縄一色だ。
そこへ、ソファーの横から菜々が負けじと、今度はプロデューサーの太ももにそっと手を添えながら割り込んできた。
「ちょっときらりちゃん、抜け駆けは禁止ですよぉ! ナナだって、プロデューサーさんと『お漫湖』マンキツしますからねっ☆」
ウサミンパワー全開の菜々は、プロデューサーの耳元にさらに顔を寄せると、とんでもない提案を口にした。
「お漫湖のマングローブと、菜々のマングローブ(※ウサミン星の原生林、あるいは自宅の観葉植物的な何か)を見比べたりしましょうねぇ、プロデューサーさん……♡」
「…………うん?」
プロデューサーの思考回路が、一瞬完全にフリーズした。
(菜々のマングローブ……? 待て、マングローブって熱帯・亜熱帯の汽水域に生える植物だよな。菜々のは綺麗とか言ってたし、自宅でマングローブの盆栽でも育てているのか? それとも……いや、深く考えるな、考えるな俺……!)
「ああっ、菜々ちゃんずるいぃ! きらりもお漫湖のマングローブ、Pちゃんにじっくり、見てもらうんだにぃ☆」
「ふふ、二人でプロデューサーさんにお漫湖のマングローブを大公開、ですね♡」
左右から繰り出される、もはや完全に隠語にしか聞こえないパワーワードの波。プロデューサーは溢れ出そうになる冷や汗をグッと飲み込み、これ以上思考を掘り下げるのをやめて、全力で聞き流すことにした。
「よし……! 二人とも、お漫湖の生態系への関心が高くて何よりだ。マングローブの林は本当に神秘的だからな、現地に行ったらじっくり、隅々まで観察しよう……!」
完全に目が据わったプロデューサーは、二人のアイドルの頭を交互に優しくポンポンと叩きながら、沖縄での「お漫湖マンキツツアー」のしおりを作成すべく、デスクに戻り震える手でパソコンのキーボードを叩き始めるのだった。
プロデューサーが虚無の表情でキーボードを叩く背後では、「お漫湖の入り口って……」「奥までイくと凄いんですよぉ♡」と、菜々ときらりによる純粋なトークが満開を迎えていた。
そこへ、ガチャリとドアが開いて夢見りあむがフラリと部屋に入ってきた。
「おつかれー……って、なんか不穏な単語が聴こえたんですけど!? 何? オマンコの見比べするの!? じゃあボクの見ちゃう!?」
「ちょっ、りあむちゃん!?」
菜々が止めるより早く、限界ヲタクアイドルの突発的な暴走が始まった。りあむは着ていたオーバーサイズのTシャツの裾を両手でグワッと胸元までまくり上げる。
「って、りあむちゃん!! 下、何も履いてないんですか!?」
菜々が顔を真っ赤にして絶叫した。
「はわわ☆ りあむちゃん、下は黒いんだぁ……☆」
きらりが大きな体を屈めて、まじまじと興味深げに観察する。
「へへん! 最近暑いし、このTシャツ大きいから意外と外でもバレないんだ、よ! ほら、風通し最高だし!」
自慢げに、しかし色気のカケラもないポーズで、ノーパン状態のダイレクトなソレを誇示するりあむ。
「う、うらやまし……ゲホン! さすが若い子は発想が大胆というか、違いますねぇ……」
菜々はジェネレーションギャップにクラクラしながらも、どこか眩しそうな目でそれを見つめている。
すると、その場のノリに完全に火がついてしまったきらりが、パッと表情を輝かせた。
「じゃあじゃあ! きらりのも見ちゃう? 見ちゃう?Pちゃんときらりでお漫湖イく前の、お披露目会だにぃ☆」
「えっ、ちょっときらりちゃっ――」
菜々の制止も虚しく、きらりはおもむろに衣服に手をかけると、ダイナミックな動きで自らの『それ』を解放し、二人の前に堂々と晒し出した。
「おーーっ! でっか!!っていうか、きらり先輩のはなんか……ピンクっていうか、凄いはぴはぴ感ある!!」
「はわわわわ! き、きらりちゃんまで! ああっ、プロデューサーさん見ちゃダメですからね!ナナ、まだ心の準備がっ!」
背後から聞こえる、衣類の擦れる音、肌の露出する気配、そして「黒い」「ピンク」「でっかい」というあまりにもリアルでアウトな感想の応酬。
プロデューサーは完全に限界を突破し、パソコンの画面を見つめたままピキピキと凍りついていた。振り返れば、そこには地獄のような光景が広がっているはずだ。しかし、社会的に死ぬわけにはいかない。
「お前ら……っ! 事務所のプロデューサー室で、一体何を開放し合っているんだ……!! いますぐちゃんと服を着ろ!!!」
画面に向かって猛然とタイピングを続けながら、プロデューサーは血涙を流さんばかりの声で叫ぶのだった。
「二人にだけさせるわけにはいかないです……!ナナ、イきます!!」
謎の対抗意識と、永遠の17歳のプライドに火がついた菜々は、ついに自らのガードを豪快にかなぐり捨てた。
「お、おおお……っ!!」
りあむときらりの口から、同時に感嘆の声が漏れる。そこに現れたのは、二人の想像を遥かに超える、あまりにも見事で鬱蒼とした、生命力に満ちあふれた「マングローブ」だった。
「すっごいマングローブだにぃ☆ 菜々ちゃんのお漫湖、大自然のパワーがすっごくみなぎってるにぃ!」
きらりは両手を叩いて大興奮。
「う、鬱蒼としたマングローブっていうか……ぶっちゃけグロマン……いや、なんでもない、よ! とにかく、菜々先輩の並々ならぬ『歴史』と『重み』を感じる……ボク、ちょっと圧倒されてる……」
りあむはあまりの密度と存在感に、畏敬の念すら抱きながら、思わず一歩後ずさりした。
「歴史って言われると、なんだかちょっと恥ずかしいですけど……」
菜々は顔をリンゴのように真っ赤にしながら、もじもじと指先を合わせ、パソコンの画面に向かって完全に硬直しているプロデューサーの背中を、チラリと熱い上目遣いで見つめた。
「……でも、ほぼ独学っていうか、これを実際に見せて、知っているのは……世界でプロデューサーさん、一人だけですから……♡」
(……聴こえない。俺には何も聴こえない。マングローブの生態系の話だ。全部、沖縄の環境問題の話なんだ……!)
背後から漂う、三者三様の強烈な熱気と、菜々の重すぎる独白。プロデューサーは限界を超えたストレスで、ついに「お漫湖ツアー(仮).xlsx」の保存ボタンを連打しながら、静かに白目を剥き始めるのだった。
「独学って何だにぃ? 菜々ちゃん、一人で何のお勉強してたのかにぃ?」
きらりが純粋な瞳で首を傾げると、菜々はどこか遠い目をして、恥ずかしそうに頬を染めながら語り出した。
「それはもう……色々ですよぉ☆ まずはボールペンから始まり、リップクリームのキャップとか、色々試行錯誤して……」
「マ、マジぱねぇ……。ウサミン先輩、ガチのレジェンドすぎるだろ……!」
りあむがその壮絶な努力の歴史に引き気味に聞き入る中、プロデューサーは「聴こえない、俺は何も聴いていない」と壊れたマシーンのように念仏を唱え、火が出るほどの勢いでキーボードを叩き続けていた。
そこへ、プロデューサー室のドアが勢いよく開き、元気いっぱいに赤城みりあが飛び込んできた。
「あ、みんな楽しそう! きらりちゃん達、何盛り上がってるのー?」
「みりあちゃん☆ 今ね、みんなでお漫湖旅行のお話をしてるんだぁ☆」
「そうなんです☆ それで盛り上がって、みんなのオマンコ比べをしてるんですよ☆」
「おい、菜々!!!」
プロデューサーが叫んだのも束の間、みりあの登場によって現場の空気はさらに混沌を極めていく。
「えっ! 沖縄行くの!? ボクもイぎだいっ! 南国で水着になってバズりたいッ!!」
りあむが興奮して鼻息を荒くする横で、みりあは満面の笑みを浮かべた。
「オマンコ比べ? みりあもやるー!」
純粋無垢なみりあは、なんの躊躇もなくガバッとその姿を披露した。
「にょわーっ☆ みりあちゃんの可愛いオマンコだにぃ♡ ちっちゃくて、とってもプリティだにぃ☆」
きらりがその愛らしさに目を細めて見惚れる。
「ああ〜、良いですねえ♡ 懐かしさと若さが溢れる、本当に綺麗なオマンコですねえ……」
菜々は眩しそうに、そしてどこか遠い昔を思い出すようにしみじみと目を細めた。
「うっわ、みりあちゃんのオマンコ! ロリ神降臨じゃん! 眼福すぎてヤバい、マジで拝むわ!!」
りあむが限界オタクの顔になって両手を合わせる中、みりあはみんなに褒められて嬉しそうに胸を張った。
「えへへー! みんなみたいに毛は生えてないけど、褒められてなんか嬉しいなー!」
「……っ!!」
プロデューサーはついに限界を迎え、ガタッと椅子を蹴立てて立ち上がった。
「そこまでだッ!!! お前たち、全員今すぐ服を着直してソファーに座れ!! みりあ、これは旅行の……いや、とにかく服を着るんだ! りあむも拝んでないでツッコミに回れ!!」
もはや何の事務所か分からなくなったプロデューサー室内で、プロデューサーの叫び声だけが虚しく響き渡るのだった。
「あ♡ Pちゃん☆ 誰のオマンコが一番かにぃ☆」
きらりが上気した顔で、ダイナミックな肢体をゆさゆさと揺らしながらプロデューサーへ詰め寄ってくる。
「プロデューサー、見て見てー! みりあのオマンコ、みんなにすっごく褒められちゃったんだよ! 一番でしょー?」
みりあは無邪気そのものの笑顔で、自分の愛らしい「それ」をプロデューサーに誇示するようにトコトコと駆け寄ってきた。
「ちょっと二人とも、プロデューサーさんを困らせちゃダメですよぉ☆ でも……プロデューサーさんと何度も何度も、夜遅くまで楽しい時間を過ごしてきたナナのオマンコも、経験値的には絶対に負けないですからねっ☆」
菜々はプロデューサーの腕をむぎゅっと抱きしめ、潤んだ瞳で必死に対抗意識を燃やしている。
「っていうかツッコミって、物理的に突っ込むのはPサマのほうじゃん! いつものお仕置き、やるんだね!? 今……ここで! ボク、いつでも受け入れる準備できてっから!!」
りあむはTシャツをまくり上げたまま、挑発するようにプロデューサーの目の前で堂々と腰を振ってみせた。
解放された四つの「それ」が、プロデューサーの至近距離で狂い咲いている。
脳の血管が何本かブチ切れる音が聞こえた。プロデューサーの理性が、まさにドロドロに溶けて決壊しようとした、その時――。
ガチャリ、と重々しい音を立ててドアが開いた。
「お疲れ様です。プロデューサー、次の仕事なんだけど……」
入ってきたのは、レッスンを終えた渋谷凛だった。
手にしたクリアファイルを見つめながら入室してきた彼女が、ふと顔を上げた瞬間。
「…………え?」
凛の動きが、完全に凍りついた。
彼女の視界に飛び込んできたのは、
ノーパンのままTシャツをたくし上げてドヤ顔をしている夢見りあむ。ウサミンパワー全開で、プロデューサーの腕に「それ」を押し付けている安部菜々。巨躯をくねらせながら、ピンク色の「それ」を誇示する諸星きらり。
そして、毛の生えていないツルツルの「それ」を全開にして笑顔でバンザイしている赤城みりあ。
その中心で、立ち尽くしながら白目を剥きかけているプロデューサー。
静寂が、プロデューサー室を支配した。
凛の瞳からみるみるうちに光が消え、底冷えするような漆黒の冷徹さが、その美貌を包み込んでいく。
「……プロデューサー。これ、何?」
低く、地を這うような凛の声が響く。
「ち、違うんだ凛!! これは、その、沖縄の漫湖(環境保護)の話をしていて、それがどういうわけか、お行儀の話になって、それから個性のぶつかり合いというか、自然の神秘というか――!!」
プロデューサーの必死の弁明は、凛の冷徹な一言によって完全に遮断された。
「警察、呼ぶね」
凛は一切の躊躇なくスマートフォンを取り出し、画面に「110」と打ち込み始めた。
「待って凛ちゃん☆ 違うにぃ! 旅行のお話だにぃ!」
「そうですよ凛ちゃん!ナナたちはただ、お漫湖を綺麗に保つお話を――!」
「待て凛! 頼むからスマホを置いてくれ!! 俺のアイドルプロデュース生命が、いや、社会的な命が完全に終わるっ……!!」
大パニックに陥るプロデューサー室。
沖縄の美しい干潟へ辿り着く前に、プロデューサーは人生最大の強制終了の危機に直面するのであった。
「……ふーん。オマンコ比べ、ね」
凛はプロデューサーや菜々たちの必死の弁明を聞き、スマートフォンの画面を消すと、すっとポケットにしまい込んだ。その冷徹だった瞳に、どこか挑発的で、楽しむような色が混じり始める。
「……まあ、悪くないかな。いつも私たちをプロデュースしてるんだから、たまにはこっちの個性も品定めしてもらわないとね」
「り、凛……!?」
プロデューサーたちが一様にホッと胸をなでおろしたのも束の間、凛はプロデューサーの前にゆっくりと歩み出ると、おもむろにするっと自身の下着を脱ぎ、スカートの裾をクールな手つきでたくし上げた。
一切の迷いなく、堂々とプロデューサーの目の前に晒される、凛の『それ』。
「ふふっ、どう? プロデューサーにこんな格好見せるの初めてだけど……私の、ちゃんと見てくれてる?」
引き締まった太ももの間で、凛とした美しさを放つ蒼き至宝。挑戦的な、熱を帯びた瞳が、まっすぐにプロデューサーを射抜く。
「にょわー☆ 凛ちゃん、脱ぎっぷりまでスタイリッシュでかっこいいにぃ〜♡」
きらりが大興奮でパチパチと手を叩く。
「う、美しい……っ! 若さと気品が溢れてて、眩しすぎますっ☆」
菜々はその圧倒的なビジュアルの暴力に、思わず目を手で覆いながらも指の隙間から釘付けになっている。
「わー! すっごい綺麗! なんか大人な感じで、みりあ憧れちゃうな♪」
みりあは純粋な羨望の眼差しで、凛の完成されたラインを見つめて目を輝かせた。
「くぅっ……! 限界ヲタクの汚れた心が限界突破で浄化される程の、圧倒的蒼の輝きっ……!! 渋谷凛様、マジで一生ついていきますッ!」
りあむは床に膝をつき、神々しいものを見るかのように全力で拝み倒している。
五人のアイドルが、それぞれの「それ」を全開にしたまま、プロデューサーを取り囲む。事務所の空気は、最高潮の熱気ともはや引き返せない官能的な香りで満たされていた。
凛はたくし上げた裾をキープしたまま、さらに一歩、プロデューサーへと距離を詰める。その絶対的な美貌が、至近距離で妖しく微笑んだ。
「さあ、プロデューサー。全員のオマンコが出揃ったわけだけど……この後は、ナニするの?私達を、どうやって『プロデュース』してくれるの……?」
「お、俺は……っ!!」
前後左右、どこを見渡してもアイドルの秘部が咲き乱れる前代未聞の空間。堪らず膝をついたプロデューサーの理性のダムは完全に決壊し、真っ白になった脳裏に、沖縄の青い海と、激しく波打つマングローブの嵐が吹き荒れるのだった。
「にょわ〜☆Pちゃん、もう逃げちゃダメだにぃ♡」
背後から伸びてきたきらりの長い腕が、プロデューサーの体をガッチリとホールドした。圧倒的な体格差と柔らかな肉壁に包み込まれ、身動きが完全に封じ込められる。
「お漫湖に行く前に、まずはここでみんなのオマンコチェックしようにぃ♡ Pちゃんの手で、いっぱいはぴはぴにしてほしいんだにぃ☆」
「ちょっときらりちゃん、ナナが先ですよぉ♡」
左側から滑り込んできた菜々が、プロデューサーの左手を強引に引き寄せ、自身の熱を帯びた「マングローブ」へと導いた。じっとりと湿った輪郭にプロデューサーの指先が触れる。
「プロデューサーさん♡ いつも夜遅くまでやってるみたいに、菜々のオマンコ♡ 奥の奥まで厳しくチェックして、いっぱい指導してくださいね☆ キャハッ♡」
「ウサミン先輩だけズルいって! Pサマがしたいなら、ボクだっていつでも泥沼に飛び込む覚悟あるから、ね♡」
右側からはりあむが、プロデューサーの右手を自身のアダルトな生身へと擦り付け、限界ヲタク特有の熱い吐息を吹きかけてくる。
左右と背後から強烈な肉の緊縛を受け、プロデューサーの思考が完全にホワイトアウトしかけたその時、足元でコトッと音がした。
「みりあもやるー♡」
しゃがみ込んだみりあが、プロデューサーのズボンのズボンに小さな手をかけ、限界まで張り詰めていた「それ」を容赦なく外へと引きずり出した。
「わあ♡ すっごくおっきい……! ちっちゃく大人しくしてたら、楽しいオマンコチェックは始められないもんね☆」
無邪気な手つきで、ドクドクと脈打つ質量をぎゅっと握りしめるみりあ。そのあまりのダイレクトな刺激に、プロデューサーの口から掠れた悲鳴が漏れた。
「みりあ、そこからは私が引き受けるね」
正面に立つ凛が静かに腰を落とし、みりあの小さな手からバトンタッチするように、プロデューサーの猛り立ったモノをその細い指先でしっかりと包み込んだ。
「準備は出来た? ……じゃ、イくよ♡」
妖しく、そして絶対的な所有権を主張するような笑みを浮かべ、凛はプロデューサーの質量を自身の熱く 潤んだ「それ」の入り口へとあてがい、ゆっくりと腰を沈め始めた。
「り、凛……みんな……っ!!」
逃げ場のない密室、五人のアイドルの秘部と熱情に囲まれ、プロデューサーの理性の最後の一線は、南国の暴風雨に吹き飛ばされるように、完全に消滅してゆくのだった。