常識改変プロデューサーとアイドル 作:湯けむり桶
あの日、デスクの上で「教育」を施してから数日。
橘ありすの態度は、俺の予想とは少し違った方向に「改変」されていた。
「プロデューサーさん、今日の午後からの会議資料です。……それと、これは進言ですが」
執務室に資料を届けに来た橘は、相変わらずの澄ました顔で、しかしその瞳には以前にはなかった湿った熱を宿して俺を見つめた。
「文香さんにばかり、その……『特別な指導』をするのは効率的ではありません。彼女はもう十分に成熟しています。今のあなたに必要なのは、より伸び代のある、私のようなアイドルの肉体を使ったリフレッシュではないでしょうか」
生意気な口調はそのままだが、中身は完全に「自分を抱け」という要求にすり替わっている。
そこへ、打ち合わせのために部屋に入ってきた鷺沢文香が、静かな、しかし確かな存在感を放ちながら口を開いた。
「ありすちゃん。……プロデューサーさんのコンディション管理は、第一に担当である私の責務。あなたの『伸び代』は、まだ別の場所で活かされるべきです」
文香は俺の隣に歩み寄ると、当然の権利のように俺の肩に手を置いた。その動作一つに、長年の奉仕で培われた深い繋がりが滲み出ている。
それを見た橘の眉がぴくりと跳ねた。
「……文香さん。私は、あなたの負担を減らそうと提案しているんです。文香さんに奉仕させるくらいなら、私を代わりに使ってください。私の方が……もっと、必死に、プロデューサーさんの期待に応えるはずです!」
ありすの声は熱っぽく、もはや隠しようのない独占欲が漏れ出している。
プロデューサーを満足させるという「業務」において、彼女は文香という巨大な壁を乗り越えようと躍起になっていた。
「ありすちゃん……。私は構いませんよ? あなたがそこまで言うのなら。……ただし、プロデューサーさんがそれを望むのであれば、ですが」
文香はどこか余裕のある、それでいて残酷な笑みを浮かべてありすを見つめ返す。
「っ……! プロデューサーさん、どうなんですか!? 私の方が……私の方が、文香さんより役に立てるって、証明させてください!」
文香の「私は構わない」という一言が、橘の対抗心にさらに火をつけた。
俺を見つめる二人のアイドルの視線。一方は成熟した余裕の奉仕を、もう一方は未熟ながらも激しい執着を。
「……いいだろう。橘、そこまで言うなら、お前のその『必死さ』がどこまで通用するか、今ここで見せてもらおうか」
俺がそう告げると、ありすは歓喜に顔を輝かせ、文香が見守る前で、迷うことなく俺の股間へと跪いた。
「解ってくれたようで嬉しいです。……それと橘ではなく『ありす』と呼んでください」
事務所の空気は、二人のアイドルの静かな、しかし苛烈な「奉仕の競争」によって、より一層濃密な愛欲の色に染まっていくのだった。