アークエンジェルの艦内を支配しているのは、もはや耳の奥が痛くなるほどの、暴力的で、かつ圧倒的な「沈黙」であった。
メインエンジンは完全に停止され、艦内の照明もエネルギー消費を極限まで抑えるための緊急用低出力モードへと切り替えられている。
空調システムすらも生命維持に最低限必要なレベルにまで絞り込まれた結果、艦内の空気は重く淀み、鋼鉄の壁からは熱が容赦なく奪われ続けていた。
吐き出す息は白く濁り、肺の奥深くまで刺すような冷気が侵入してくる感覚が、生の実感を少しずつ、しかし確実に希薄にさせていく。
この巨大な鉄の箱舟は今、ヘリオポリスという名の故郷であった無残な残骸の群れに紛れ、死んだふりをして暗黒の海を漂っているのだ。
生き残るために、全ての生命活動を意図的に停止させるという、あまりにも残酷な皮肉。
第4資源衛星アルテミスへと続く道は、目隠しをされたまま地雷原を歩くような、絶望的な逃避行であった。
割り当てられた予備士官用の狭小な個室で、ひではパイロットスーツを脱ぐ気力さえなく、冷え切ったベッドに横たわっていた。
鋼鉄のフレームから伝わってくるはずのエンジンの微細な振動すらもなく、ただ自分の心臓の鼓動だけが、静寂の中で執拗に生存を主張している。
目を閉じれば、先ほどまでの凄惨な光景が瞼の裏に鮮明な地獄絵図となって焼き付いて離れない。
目の前でバラバラに砕け散った人工の大地。
宇宙空間に放り出され、一瞬にして物言わぬ肉塊と化した民間人たちの亡骸。
そして、人殺しの業をその細い背中に背負わされた、16歳の少年の絶望に満ちた泣き顔。
それら全てが、ひでの脳髄を休むことなく突き刺し続けていた。
「……クソったれが」
ひでは、誰に聞かせるでもなく、呪詛のような呟きを吐き捨てた。
元自衛官としての矜持など、この理不尽極まりない宇宙の前では、塵芥ほどの役にも立たない。
守らなければならない存在が、あまりにも多すぎる。
自分にできるのは、ただ鉄の塊を操り、敵を撃ち、子供たちの前に立ちはだかる盾になることだけだ。
だが、その精神の限界は、すぐそこまで迫っているように感じられた。
沈黙という名の透明な圧力が、個室の冷え切った空気と共に、ひでの理性をじわじわと削り取っていく。
その時、音もなく部屋の気密扉が開いた。
「……ひでさん」
鈴の音を転がしたような、しかしどこか凍えたように震える声が、暗闇に響いた。
ひでが身を起こすと、そこには薄暗い非常灯の赤光に照らされた香取が立っていた。
ブリッジでの過酷な索敵任務を終えた直後なのだろう。
彼女の端正な顔立ちには隠しきれない疲労の影が色濃く滲み、眼鏡の奥の瞳は、まるで迷子のような不安げな色を湛えて揺れていた。
その手は、自分自身の身体を抱きしめるように強く握られている。
「香取か。交代の時間か?」
ひでは、自分でも驚くほど掠れた声で問いかけた。
香取は即座には答えず、吸い寄せられるように、ゆっくりと部屋の中へと歩みを進めた。
背後で気密扉が静かに閉まり、再び密室に、耐え難いほどの沈黙が戻る。
彼女の体から漂う、女性特有の甘く柔らかな香りが、冷え切った個室の空気を僅かに変質させた。
「いえ、鹿島に代わってもらいました。……あまりにも、静かすぎて。あのブリッジにいると、自分が既に死んで、この艦という巨大な墓場の一部になってしまったのではないかと……そんな恐ろしい錯覚に囚われそうになったのです。データだけが流れる世界で、自分が何者なのか、わからなくなってしまって」
香取は自らの細い肩を抱くようにして、ひでのベッドの側に腰を下ろした。
「ああ、そうだな。サイレントラン……死んだふりをするってのは、精神衛生上、最悪の拷問だ。聴覚を封じられ、視界も制限されりゃ、まともな人間ほど頭がイカれる」
ひでは、自分の隣で小さく震える彼女の気配を感じながら、言葉を繋いだ。
冷たい空気の中で、彼女の体温だけが、唯一の温かい光のように感じられた。
「宇宙は、こんなにも冷たく、無慈避な場所なのですね。私たちが知る海とは、根本的に違います。生命の息吹が、どこからも、欠片ほども感じられません。私たちが信じてきたシステムの音さえも、今は遠くの死者たちが私たちを呼んでいる囁きのように聞こえてしまうのです。ひでさん……私、自分が自分であることを、どこで確かめればいいのでしょうか」
香取の言葉は、詩的でありながら、この鉄の箱舟に閉じ込められた者全員が抱いている共通の恐怖を、正確に代弁していた。
彼女は艦艇の魂を持つ、艦娘という存在だ。
それゆえに、この「死んだふり」を強いられているアークエンジェルの肉体的な苦痛と精神的な絶望を、誰よりも鋭敏に、かつ直接的に感じ取っているのかもしれない。
「俺たちが生きている限り、いつかは終わりが来る。そのためには、今は不格好にでも耐えるしかねえんだ。それ以外に、あのガキ共を連れて帰る方法はねえ。……俺がここにいる。お前もここにいる。今は、それだけで十分だろ」
ひでは、自分を鼓舞するように、努めて強い声を出した。
「耐える……。そうですね、私たちは耐えなければなりません。でも、ひでさん。もしこのまま、私たちが誰にも気づかれず、この暗闇の中で宇宙の塵になって消えてしまったら……私たちの生きていた証明は、誰が覚えていてくれるのでしょうか。私たちの戦いも、苦悩も、ここで感じている震えも、すべてが真空に吸い込まれて無に帰してしまうのではないかと……それが、たまらなく怖いのです」
香取が、ひでの顔をじっと見つめた。
眼鏡の奥の瞳が、熱を帯びたように潤み、溢れそうな涙を必死に堪えている。
極限のストレス。
間近に迫る死への恐怖。
昨日まで無邪気に笑いあっていた者との永遠の別れ。
それらが、冷静沈着を信条としていたはずの彼女の理性を、足元から容赦なく切り崩していた。
「……縁起でもねえことを言うな。俺がついていると言っただろ。お前をノイズなんかにさせやしねえよ。俺が覚えている。お前のこの冷たい指先も、今言った言葉も、全部な」
ひでは、彼女の震える手を優しく包み込んだ。
「怖いのです。この沈黙の中で、自分の体温さえも周囲の鋼鉄に奪われ、失われていくような感覚が。ひでさん、私……自分が消えてしまう前に、誰かに触れていたい。確かな『生』を、この身体に刻み込んでおきたいのです。冷たい金属の壁ではなく、熱を持った、生身の存在としてのあなたに」
香取の細い指先が、ひでのパイロットスーツの胸元に触れた。
その指先は、驚くほど冷たく、凍りついているようだった。
しかし、触れられた場所からは、暴力的なまでの生の執着が伝わってくる。
「香取、お前……」
「生きたいのです。明日も、明後日も、あなたが指揮を執るあの苛烈な戦場で、私はあなたの目であり続けたい。……だから、ひでさん。今だけは、私が生きているという確かな証明を、私の中に刻んでください。冷たいデータの集積ではなく、熱を持った人間としての証を……」
彼女の声から、先ほどまでの迷いが消えた。
代わりに宿ったのは、死の淵で唯一残された、生物としての根源的で、かつ身勝手なまでの渇望だった。
ひでは、彼女の瞳の中に映る、自分自身のボロボロに傷ついた姿を見た。
大人としての重すぎる責任感。
子供たちの盾にならなければという義務感。
それらが、香取という逃れがたい「熱源」を前にして、一気に融解していく。
ひでは何も言わず、彼女の細い肩を力強く抱き寄せた。
「……後悔しないか。俺は、お前が思っているような立派な男じゃねえぞ」
「そんな贅沢な感情、今の私には一欠片もありません。……ただ、熱が欲しいので
す。あなたが生きているという、その力強い熱が。それだけが、今の私を繋ぎ止める唯一の希望なのです」
香取の震える唇が、ひでの次の言葉を遮るように、激しく重なった。
最初の一撃のような接吻は、互いの肺の空気を奪い合うほどの暴力性を孕んでいた。
「んん……っ、……ふぅっ、……ん……」
香取の舌が、ひでの口内を探るように、そして助けを求めるように絡みついてくる。
ひでもまた、彼女の眼鏡を外し、その整った後頭部を強く抱き寄せた。
喉を鳴らすようにしてその甘い呼気を、そして互いの唾液を飲み込んでいく。
「ふぁ……、……んんっ、……んぅ、……あ……」
深い接吻の中で、香取の喉からは抑えきれない嬌声が漏れ出す。
ひでは、彼女の柔らかな唇を何度も食み、その端をなぞるように舌を這わせた。
死の静寂を、ねっとりと絡み合う舌先が生み出す微かな水音が侵入し、塗り替えていく。
「ひで、さん……っ、……んんっ、……はぁっ……」
ひでの手が、彼女の整った軍服のボタンにかけられた。
一つ、また一つと、規律という名の偽りの外殻が、無機質な床へと音もなく剥がれ落ちていく。
「ぁ……っ、……んっ、……あ……っ、……ふぁ……」
ノーマルスーツの重いジッパーが下ろされる金属音が、無音の宇宙で唯一の、生々しい律動となって静寂を切り裂いた。
衣服が床に落ちる微かな摩擦音さえも、この密室では爆音のように響いた。
露わになった香取の肢体は、非常灯の禍々しい赤い光に照らされ、不気味なほどに白く美しく、そして今にも壊れてしまいそうなほどに脆そうに見えた。
「はぁ……っ、……んん……っ、……ひで、さん……っ、……あっ……」
ひでは彼女をベッドへと押し倒し、その柔らかな肌に、己の渇きを癒すように顔を埋めた。
彼女から立ち上る、成熟した女の匂いと、微かな汗の香りが、ひでの理性を、最後の一片まで無残に焼き切っていく。
「っ、ひで、さん……っ、温かい……っ、……あ、あぁ……」
香取の白く細い腕がひでの背中に回り、爪が食い込むほどに強く抱きしめられた。
ひでは、まず彼女の首筋に顔を寄せた。
冷え切った大気の中に晒された彼女の薄い皮膚を、自らの唇で執拗になぞり、そこに小さな火を灯していく。
「んぁ……っ、……あ……っ、……んんっ、……ふぁ……っ、……だめ……」
ゆっくりと、慈しむように。
彼の唇が耳たぶを甘く噛み、そこから鎖骨のくぼみへと愛撫を繋げる。
「はぁ……っ、……んんっ、……んああ……っ、……そこは……っ」
香取はそのたびに激しく肩を揺らし、熱烈な吐息をひでの耳元に吹きかけた。
ひでは、彼女の白い肌に自分の手の跡が残るほど強く、その豊かな双丘を包み込んだ。
「いい声だな、香取。もっと聞かせてくれ……」
「あ……、……ああっ、……ひでさん……、……そんな……」
ひでは指先でその頂を摘み、ゆっくりと、執拗に刺激を与える。
情報の海を統べる彼女の身体が、今はひでの指先一つで、快感の波に翻弄されていた。
「ここか? ここが弱いのか?」
「んぅ……っ、……んん……っ、……あぁ……っ、……は、恥ずかしい……です……っ」
香取は顔を赤らめ、ひでの腕に必死に指を食い込ませた。
皮膚の下で跳ねる脈動が、彼女が血の通った女であることを証明している。
ひではその事実を確かめるように、彼女の腹部から太腿にかけて、丁寧に唇を這わせていった。
「んぁ……っ、……あ……っ、……はぁ……っ、……んっ、……そこ……っ」
ひでの顔が彼女の下腹部へと降りていく。
彼の呼気が彼女の最も敏感な場所に触れるたび、香取は腰を浮かせた。
「かわいい声だ。もっと、もっと俺を呼んでくれ」
「んぁ……っ!、……ひで、さんっ、……だめっ、……あああ……っ!、……んんぅ……!」
「ここか? ここが欲しいのか?」
「ぁ……っ、……んんっ、……あぁぁ……っ、……あ、あ、あ、あっ……! はい、そうです、ひでさん……っ!」
ひでの舌が、閉ざされた扉の合わせ目をゆっくりと割るように這う。
そこは既に、ひでの熱を求めて溢れ出すほどの蜜で潤んでいた。
「ひで、さん……っ!、……んんっ、……ああぁっ!、……そこ、だめぇ、あ……!」
「ん、んんっ……!!、……ふぁぁ……っ、……んんぅ、……はぁ……」
ひでは、彼女の秘所へと舌を深く潜り込ませた。
執拗なまでの愛撫に、香取の身体は痙攣するように震え、絶叫に近い喘ぎを上げた。
「あ……あぁっ、……あああああ……っ!!、……んぁぁ……っ!」
「~~~~っ!!」
「いい声だ、香取。もっと、もっと奥まで聞かせてくれ……」
「んぁぁ……っ、……んんっ、……ああぁっ、……あぁっ!!、……あっ……あっ……あっ……!」
彼女の指がひでの髪を強く掴み、腰が勝手にひでの顔を押し付けるように激しく動く。
ひでの指が、蜜に塗れたその場所を激しく、そして深く抉るようにかき乱す。
「ここか? 奥のほうまで熱くなってるな……」
「ひでさん……っ、……くるっ、……あ、……あああああぁぁぁっ!!、……んんっ! もう、だめですっ、あ、あぁっ!」
「~~~~っ!!」
「んっ、……んあああぁぁぁっ!!、……ああああ……っ!!、……あ、あぁ……っ!」
香取の身体が一際大きく弓なりに跳ねた。
彼女の最奥で快感の激流が限界を迎え、奔流となって溢れ出す。
「あぁ……っ、……あああぁぁぁ……っ!!、……だめ、……あっ、……あぁ……!!」
「~~~~っ!!」
「はぁ……っ、……んんっ……あぁ……っ……んぁぁ……!!……ふあぁ……」
香取はひでの名を叫びながら、全身を激しく震わせて一度目の絶頂を迎えた。
噴き出す蜜が、ひでの指とシーツを濡らしていく。
「はぁっ、……はぁっ、……はぁっ……っ、……!!、……あ、あぁ……」
「すごいな、香取。こんなに濡らして……。本当にかわいい奴だ」
「んぁ……っ、……あぁ……っ、……はぁ……っ、……ひ、ひでさん、意地悪、です……っ」
彼女は激しく肩で息をしながら、快感の余韻に身を任せてベッドに沈み込んだ。
ひでは、絶頂の余韻に浸る彼女の身体を優しく見つめながらも、その指を止めなかった。
「もっと聞かせてくれ。お前の生きてる声、全部俺に聞かせてくれ……」
「んぅ……っ、……あ……っ、……んん……っ、……そんなに言われたら……私……っ」
彼女の身体が、完全にひでの熱に屈し、さらなる欲望に染まりきるまで。
香取の瞳には、もはやデータの残光など微塵も残っていなかった。
あるのは、ただ一人の女としての、むき出しの渇望だけだった。
「ひで、さん……っ、……んぁ……っ、……あぁ……、……お願い、入れて……っ……」
ひでは、彼女の身体が極限まで熱を持ち、自らを迎え入れる準備が完全に整ったことを確認した。
彼女の最奥からは、ひでの熱を求めるように、絶え間なく蜜が溢れ出している。
「ここが欲しいのか? 欲しがってるな……」
「はぁ……っ、……んんっ、……あ……っ、……んぅ……っ、……あっ、あっ……! はい、そうです……あなたの、全部が……欲しいです……っ!」
ひでは彼女の腰を引き寄せ、自らも衣服を脱ぎ捨てた。
剥き出しの肉体同士が重なり合い、汗が混じり合う。
鉄の匂いと、油の匂い。
そして、彼女から立ち上る、甘く、狂おしいまでの生の香り。
「ぁ……っ、……んん……っ、……ひで、さん……っ、……あ……あぁ……」
ひでは、自らの欲望を彼女の入り口へと押し当て、最後の一線を越えるための覚悟を固めた。
「香取……お前を、俺の中に刻むぞ。忘れるなよ、この熱を」
「はい……ひでさん。私を……全部、あなたで満たして……、……あっ……あぁ……っ」
二人の視線が、赤い闇の中で激しく火花を散らして重なった。
ひでは、自らの欲望を彼女の入り口へと慎重に、しかし力強く押し当てた。
触れ合った瞬間の、吸い付くような熱。
そこは既に蜜で溢れ、彼を招き入れようとしていたが、同時に処女(はじめて)特有の、頑なな拒絶のような狭さがひでの前進を阻んだ。
「香取……。怖いか?」
ひでが耳元で低く囁くと、香取は震える手で彼の背中に爪を立て、首を横に振った。
「……いいえ。あなたの熱が……私の中まで、届いてほしいのです。たとえ、それが痛みを伴うものであっても……」
「……そうか。なら、力を抜け。ゆっくり、俺がお前を繋ぎ止めてやる」
ひでは腰を沈め、一点へと全ての重みを集中させた。
薄い膜を突き破り、彼女の聖域へと侵入する、確かな抵抗。
「っ、んあああぁぁぁっ!!」
香取の悲鳴に近い絶叫が、無音の宇宙に響いた。
彼女の身体が弓なりに跳ね、未開の地を裂かれる激痛に、その瞳からは大粒の涙が溢れ出した。
ひでは動きを止め、彼女を壊さないように、その細い肩を抱きしめた。
「すまねえな……。痛かったろ」
香取は激しく肩で息をしながら、ひでの胸に顔を埋め、言葉を絞り出した。
「はぁっ、……はぁっ、……大丈夫……です。……あなたが、私の中に……。これだけで、私は……自分が消えていないと……わかりますから」
「~~~~っ!!」
ひでは、彼女の最奥で感じる、締め付けるような熱い脈動に理性を焼かれた。
自分を丸ごと飲み込もうとするような、あまりに濃密な、しかし純粋な快感。
「香取……。ここか?ここがお前の、一番熱い場所か?」
「ん、あ……、……は、はい……っ。そこ……、……ひでさんの、熱いのが……当たって……、……あ、あ、あぁ……っ」
ひではゆっくりと腰を動かし始めた。
摩擦が生む熱が、冷え切った彼女の身体を内側から作り替えていく。
一突きのたびに、香取は「あ……っ、……んんっ!」と声を漏らし、ひでの名を呼び続けた。
「かわいい声だな、香取。もっと聞かせてくれ。お前が女だってことを、俺に証明し続けろ」
「んぁ……っ!あ、あぁ……っ!そんなこと……言われたら……っ。私……、……おかしく、なっちゃいます……っ!」
「おかしくなっていい。今は俺とお前、二人だけの世界だ。外の地獄なんて忘れさせてやる」
「あ、あああああぁぁぁっ!!ひで、さん……!そこ、すごいです……っ!奥、まで……っ、……あ、あっ、あっ……!!」
ひでは、彼女の弱点を抉り取るように、深く、執拗に突き上げを繰り返した。
肉体と肉体がぶつかり合い、湿った音が密室を支配する。
香取の腰がひでの動きに翻弄され、自らも熱を求めて激しく跳ね回った。
「いいぞ……。締まってやがるな、香取。俺を離したくないのか?」
「んんっ!!だめ……、……それ、言わないで……っ!あ、あ、あぁぁぁっ!!私……、……ひでさんを、逃がしたくない……っ!もっと、奥まで……、……あぁっ、あぁぁっ!!」
絶頂の予兆が、二人の身体を激しく揺さぶった。
ひでは腰の動きを加速させ、彼女の最奥を容赦なく打ち据えた。
香取の呼吸は完全に乱れ、白目を剥きそうな快楽の渦に呑み込まれていく。
「くるか、香取!一緒にいこうぜ!」
「あ……、……あああぁぁぁっ!!きます、ひでさん……っ!私、私……!ああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
「~~~~っ!!」
「~~~~っ!!」
「~~~~っ!!」
ひでは、香取の最奥へと自らの命の全てを解き放った。
熱く、激しい奔流。
香取はひでの首筋に噛み付き、全身を激しく痙攣させながら、二度目の、そして今までの人生で最も強烈な絶頂を迎えた。
噴き出す蜜が混じり合い、二人は重なり合ったまま、動くこともできずに快感の余韻に身を委ねた。
やがて、荒い息遣いだけが部屋に残された。
ひでは、彼女の身体からゆっくりと離れようとしたが、香取の腕がそれを許さなかった。
「……もう少し、このままで。まだ、あなたの熱が……私の中に残っているから」
香取は、ひでの胸に顔を埋めたまま、幸せそうな、しかしどこか儚い声で言った。
ひでは、彼女の汗ばんだ髪を優しく撫で、その温もりを確かめるように抱きしめ直した。
窓の外には冷酷な宇宙が広がっているが、今はここだけが、命の灯火が燃える場所だった。
「……香取」
「はい、ひでさん」
「……こんなことして、鹿島にばれないか?あいつ、勘が鋭いだろ」
ひでの不意の問いかけに、香取は僅かに身体を震わせ、そしてクスクスと小さな笑い声を漏らした。
「……ふふっ。心配ですか?百戦錬磨のひでさんが、女の子一人を恐れるなんて」
「……恐れてるんじゃねえよ。あいつも極限状態で戦ってるんだ。……余計な気を遣わせたくねえだけだ」
ひでは、天井の非常灯を見上げながら言った。
香取は、ひでの胸元に顔を摺り寄せた。
「大丈夫ですよ。……鹿島は、私の一部ですから。私が幸せなら、彼女もきっと、それを自分の喜びとして受け入れてくれます。……それに、私たちはアークエンジェルの『目』です。お互いの心の波長は、既に同期(リンク)していますから」
「……そうか。ならいいんだがな」
「ひでさん……。あなたは、本当に優しいですね。泥を被ると言いながら、一番大切なのは、私たちの心なんですね」
香取の指先が、ひでの胸に刻まれた古い傷跡をなぞった。
「……優しくなんかねえ。俺は、お前たちがいなきゃ何もできねえ敗残兵だ」
「いいえ。あなたは、私たちの提督です。……愛しています、ひでさん。この宇宙が果てるその時まで、私はあなたの傍にいます」
香取のまっすぐな言葉が、ひでの胸に深く突き刺さった。
言葉では言い表せない重みが、再び彼の腰を動かそうと欲求を煽った。
「……香取、悪い。一度じゃ、足りねえみたいだ」
ひでの目が、暗闇の中で再び熱を帯びた。
香取は驚いたように目を見開き、そして慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、彼を再び迎え入れた。
「……ふふっ。いいですよ。……私の全てを、何度でも奪ってください。あなたが生きているという証を、もっと、深く……私に刻んで」
二人の身体が再び重なり合った。
今度は先ほどよりも緩やかに、しかしより深く、互いの存在を確認し合うような接触。
ひでは彼女の首筋を甘く噛みながら、言葉を繋いだ。
「ここか……。さっきよりも、熱くなってやがるな」
「んぁ……っ!あ、あぁ……っ!ひでさんが……意地悪、するから……っ!中が……、……あなたのを、欲しがって……っ、……ん、んんぅ……っ!!」
「いい声だ……。もっと聞かせてくれ。死神が逃げ出すくらい、お前の声を俺に刻め」
「あ、あああああぁぁぁっ!!ひで、さん……っ!そこ、だめぇ……っ!!ん、んんっ!!だめ……、……そこ、狂っちゃう……っ!!」
「狂えばいい。俺がお前のすがる場所になってやる。信じろ、香取」
「信じて、ます……っ!あなたを……、……ひでさんを、信じて……っ!あああああぁぁぁぁぁっ!!」
「~~~~っ!!」
「~~~~っ!!」
「~~~~っ!!」
二度目の絶頂は、一度目よりも深く、長く続いた。
二人は互いの魂を交換するかのように激しく求め合い、そして真っ白な光の中に溶けていった。
静寂の航海(サイレントラン)は続く。
しかし、その密室に残された熱は、アークエンジェルがアルテミスへ到達するための、何よりも確かな動力となっていた。
ひでは、腕の中で眠りにつこうとする香取を抱きしめ、いつか来る夜明けを信じて、静かに瞳を閉じた。
彼らの生は、今、この暗闇の中で、誰よりも鮮烈な輝きを放っていた。