戦記エロゲーの最強悪役貴族に転生したので暴虐のかぎりを尽くそうと思ったのに、なぜかヒロインたちに激重感情を抱かれるようになった 作:佐間野 隆紀
その後、俺たちは執務室に場所を移すと、明けがた近くになるまでひたすらに互いを求め合った。
最初は不慣れな様子だったメリッサも慣れてくるにつれて大胆な姿を見せるようになり、最後のあたりはこちらのほうが圧倒されてしまう局面もあったほどだ。
流されるまま行為に溺れていた俺も、いつしかメリッサを一人の女性として大切に想うようになっていた。
ゲーム上ではまったく関心を抱くことのなかったキャラクターにまさかこんな形で魅了されてしまうなんて、本当にこの世界はなにが起こるか分からない。
「やはり、あなたはイェルバウト閣下ではないのですね」
さすがに疲れてベッドの上で微睡んでいると、すぐ隣で寄り添うように横になっていたメリッサがポツリと言った。
「あの方は、確かにわたしが女であることをこの体に理解させてくれました。でも、決して愛してはくれなかった」
どうやら女の抱きかたひとつ取っても、俺とイェルバウトでは大きな差があるらしい。
愛するなんて随分と大袈裟な気もするが、俺なりにメリッサのことを大切に思いながら抱いたことは事実だし、それをどう感じるかは彼女自身が決めればいいことだ。
「これより、メリッサはあなたに忠誠を誓いましょう。イェルバウトではなく、名も知らぬあなたに」
メリッサは俺の腕を取ると、まるで大切な宝物でも扱うようにそっと胸のうちに抱き寄せながら告げる。
その瞳があまりにも真摯な輝きを放っていたものだから、俺はしばらく言葉を失ってしまう。
「……俺は、イェルバウトだ。これまでも、これからも」
ようやく紡げたのは、そんな益体もない強がりだった。
たとえメリッサが本当の俺を見抜こうと、この世界に在り続けるかぎり俺はイェルバウトの仮面を被り続けると心に誓っていた。
今はまだ直接手を汚したわけではないとはいえ、それでも俺の下した命令によって失われた命がいくつもある。この先の戦ではさらに多くの血が流れることになるだろう。
今さら逃げ出すわけにはいかない。イェルバウトとして覇道を歩むと決めた以上、最後まで駆け抜けることこそが俺の矜持だ。
「であれば、この先もあなたを知る者はわたしだけということになるのですね」
しかし、そんな俺の覚悟ですら、メリッサは悦びに変えてしまう。
「わたしだけが真にあなたを理解し、あなたに寄り添える。いついかなるときも、決して離れることなく」
いつものように淡々と、それでいて今までにないほど深い情愛を感じさせる声音でそう囁くと、そっと上体を起こして上から俺の顔を覗き込んできた。
「わたしだけの閣下……」
そして、深く深く口づけを交わしてくる。
もはや主君に対する態度ではない。まるで想い人にでもそうするかのような甘やかさで、何度も何度も唇を食んでくる。
(……えらいことになっちまった……)
改めて覚悟を決めたつもりだったが、さっそく俺の頭は困惑の極みにあった。
結果オーライとはいえ、不信感を募らせていたメリッサの信頼を再び勝ち取ることができたこと自体はよかったと思う。
愛こそなかったかもしれないが、それでも彼女とイェルバウトの間には確固たる信頼関係があった。その絆を取り戻せたのだ。
エルザのデレデレっぷりやシスティナがその名を捨ててラコーツ軍に加入してしまったことに比べれば、今回のメリッサの変化など大したものではないだろう。
しかし、今もなお夢中になって口づけを交わしてくるメリッサの姿を見ていると、ことさらに不安だけが募っていく。
(マジでこの先、どうなってくんだ……?)
今さら言っても遅いことは分かってるが、この調子で本当にイェルバウトらしく覇道を歩むことができるのだろうか……。
第四章を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
引き続き第五章をお楽しみください。
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