戦記エロゲーの最強悪役貴族に転生したので暴虐のかぎりを尽くそうと思ったのに、なぜかヒロインたちに激重感情を抱かれるようになった 作:佐間野 隆紀
「あの薬、なんの薬か分かったよ」
「なに?」
文字どおり飽きるまで抱き合ったあとのしばしの休息中、俺の体に乗りかかるように寝そべっていたリリエラが不意にポツリと言った。
「惚れ薬だったんだね。そうまでしてイェルはボクを手に入れたかったわけだ。我ながら罪なオンナだなぁ」
そう告げる彼女は何処か得意げな様子だ。
いつの間にか勝手にあだ名までつけられて、どうやらすっかり気を許してくれたものらしい。
しかし、薬を飲まされたと思い込むよう仕向けたのは他ならぬ俺なのだが、まさかそういう誤認のされかたをするとは……。
「それは、俺に惚れたということか?」
「えっ?」
無粋な気もしたが、いちおう訊いてみる。
すると、リリエラが一瞬だけキョトンと目を丸くしたあと、すぐさまその顔を真っ赤に紅潮させた。
「あっ、いや、ちがっ……!」
俺の上で勢いよくその身を起こし、キョロキョロと忙しなく視線を彷徨わせながら戸惑いを誤魔化すように自身の髪をその指先に巻きつけはじめる。
「だ、だから、あの薬のせいで無理やりそういう気持ちにされちゃったってだけで……!」
「まあ、どちらでもかまわんがな」
はっきり言ってその反応は目眩を覚えそうなほどの可愛らしさだったが、さすがにそれを表に出すのはあまりにもイェルバウトらしくはない気がして、俺は必死に無関心を装うことに徹した。
そんな俺の態度がお気に召さなかったのか、リリエラは半眼でこちらを睨みつけてくると、そのまま勢いをつけて再びドスンとこちらに身を預けてくる。
「ねぇ、イェルはさ、オンナに序列はつけないって言ったよね」
そして、顎の下から見上げるように俺の顔を覗き込みながら、ポツリとそんなことを言った。
「どうせもうシスティナとも、こういうことしてるんでしょ?」
「あれはルナニアだ」
「どっちでもいいけどさ」
リリエラはもぞもぞと俺の上を這ってくると、頬ずりでもするかのようにその顔を寄せてきながら告げる。
「ボクのこと、これで終わりにしないでよ? ちゃんと『俺の女』として最後までセキニン取ってもらわないと困るんだからね?」
「心配せずとも、たっぷり可愛がってやる」
俺はもう本当なら今すぐその体を抱きしめてキスでもなんでもしてやりたい気分だったが、イェルバウトの体面を維持するためにそっと頭を撫でてやる程度で踏みとどまった。
「その代わり、これからはおまえにもラコーツ軍の騎士として務めを果たしてもらうぞ」
くすぐったそうにしながらも何処かうっとりとこちらを見上げるリリエラに向けて、俺が告げる。
そもそも俺がこうして彼女を手中に収めようとしたのも、すべてはそのためだった。そのはずだったのだが……。
「分かってるよ。でも、それはあくまでボクについてきてくれたみんなの安全を確保するため……べ、別に、キミのことを好きになったとかじゃないから」
何処か照れくさそうにそんなことを言いながらそっと唇を重ねてくるリリエラに、毎度ながら俺の焦燥感は募っていく。
(くそっ……こんなの、いくらなんでも可愛いすぎるって……)
別にリリエラの心まで欲しいわけじゃない――そう思っていたはずなのに、けっきょく俺はこれまでと同じようにヒロインへの気持ちを抑えることができなかった。
ここまではなんとか原作のシナリオを大きく外れることなく進んでくることができたが、はたしてこの先はどうなることやら……。
第六章を最後までお読みいただきありがとうございました。
この後、断章と第一部のエピローグがございますので、
今少しおつきあい下さいますと幸いです。
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