戦記エロゲーの最強悪役貴族に転生したので暴虐のかぎりを尽くそうと思ったのに、なぜかヒロインたちに激重感情を抱かれるようになった 作:佐間野 隆紀
翌朝、肌に馴染みのない滑らかな寝具の感触に違和感を覚えながら目を覚ました俺は、見慣れぬ天井を眺めながら改めて困惑の渦中にいた。
(夢……じゃなかったのか……?)
ベッドの上で体を起こし、裸のままの自分の体を見下ろす。
目に映るのは生っ白く薄っぺらい貧相な体ではなく、熱い胸板と脂肪の薄い腹筋、そして、筋肉質な四肢を持った逞しい体だった。
視線を横に向けると、すぐ隣にはエルザが生まれたままの姿で寝息を立てている。
その寝顔はゲーム本編の彼女のイメージからは想像もできないほど安らかで、まるでよく似た別のキャラクターなのではないかとすら感じさせるものだった。
――いや、そもそも目の前にゲームのキャラクターが存在しているという時点ですでに信じられない状況ではあるのだが……。
(どうなってるんだ……? マジでイェルバウトを乗っ取っちまったのか……?)
頭の中で考えを巡らせながら、なんとはなしにエルザの頭を撫でる。
すると、彼女は小さく体を震わせ、モゾッとこちらのほうに寝返りを打ってきた。
「んっ……」
そして、薄っすらとその目を開ける。
「もう朝か……」
一瞬、我に返ったエルザが襲いかかってきたらどうしようという不安に駆られたが、幸いにもそれは杞憂に終わりそうだ。
彼女はゆっくりと体を起こすと、そのまま俺のほうに身を寄せ、いきなり深く唇を重ねてきた。
意表を突かれて焦る俺だが、ひとまず表面上だけでも平静を保ってこの場を凌ぐことにする。
「れぅ、んぅ、ちゅ……はぁ……」
やがて、たっぷりと唇の感触を味わって満足したのか、ほっと甘い吐息を漏らしながらエルザが顔を離した。
「まさか、この期に及んで女の悦びを知ることになろうとはな……」
「女の悦び……?」
思わず訊き返すと、エルザはその口許に自嘲めいた笑みを浮かべる。
「そうだ。わたしは女を捨て、強く気高き将であることに誇りを持っていた……いや、そのつもりだった」
そう言ってさらにこちらに身を預けてくると、やけに情熱的な瞳でじっと俺の顔を覗き込んできた。
「だが、己より強き者に抱かれ、女として欲される悦び……それがまさか、これほどまでに心を高揚させるものであったとは……」
エルザの手がやけに艶めかしく太腿を撫でてきて、思わず身震いしそうになる。
こちらを見つめるその瞳は、もはや完全に『女』の目をしていた。
やはり、どう考えても俺の知っているエルザではない。
実際のゲームに登場する彼女は、間違っても『女の悦び』だなんて口にしたりしない。
(どうなるんだ、コレ……?)
うっとりとした様子でこちらにしなだれかかってくるエルザにドギマギしつつも、先行きの見えない展開に俺の焦りは募るばかりだった。
第一章を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
引き続き第二章をお楽しみください。
まだお気に入りや評価をされていない方は↓↓↓からしていただけますと励みになります。