リクエスト作です。
楽しんでいただけると幸いです。
私立百花王学園。創立122年を迎える中高一貫の名門校である。
その門前に一人の青年が立つ。
綺麗な黒髪を後ろで雑に団子に纏めた髪型をしており、背丈はそこそこ高い。体格が良く、一目で鍛えられていることが分かる。
青年の名は南雲聖。
生粋のゲーマーであり、数多のゲームのランキングで頂点を飾るプレイヤー。
チェスや将棋でプロをあっさりと負かした程の腕前を持つ。
そんな聖が百花王学園に転校してきた理由は簡単だ。
ここではギャンブルが全てを決める。
人生さえも左右される最高に狂った場所。
幼少期から様々なゲームに挑戦してきた聖がそんな最高に楽しいゲームを知って挑戦しない筈がない。
聖はこの百花王学園の頂点に立つ為にやって来たのだ。
聖は狂気とも呼べる高揚感を抱きながら学園の門を潜った。
◇
「転校生を紹介します」
「南雲聖。よろしく」
聖は柔和な笑みを浮かべる。
端正な顔立ちから放たれる優しい笑みに女子が黄色い声を上げる。
聖は自己紹介を終えると与えられた席に座る。
そして授業が始まるのを待った。
授業自体は普通の高校と変わらない。
聖にとっては必要な情報を脳に入力するだけの作業である。
授業が終わって放課後になると女子達が一斉に聖を囲った。
聖は一斉に飛んでくる質問を当然のように全て聞き分けて答えていく。
「南雲君!なんでここに転校して来たの?」
「ギャンブルで全てが決まるって聞いたからさ。楽しそうで来ちゃった」
「ねえねえ!彼女とかいる?」
「いないよ」
「暇なら私とギャンブルしない?」
「良いよ。やろうか」
聖はトランプを鞄から取り出して女子と向き合う。
ゲームはポーカーである。
用意されたチップは一人100枚である。
女子が口を開く。
「賭け枚数は南雲君が決めて良いよ」
「そう?じゃあ、全部」
「え?」
対戦相手の女子だけでなく、観衆がどよめく。
一枚一万円のチップを初手で全ベットするなんて普通は有り得ないからだ。
聖は飄々とした雰囲気で疑問を口にする。
「どしたの?何か問題?」
「い、いや。何の問題もないよ。本当に良いんだね?」
「勿論。さ、早くやろう」
女子がトランプをシャッフルして互いの手元に配る。
聖は自分の手札を見て、二枚交換する。
女子もカードを一枚交換する。女子は自分の手札を見て笑みを浮かべる。
そして勝ち誇った顔で手札を公開した。
「悪いけど、ストレートフラッシュよ!」
「あぁ。確かに悪い」
聖も手札を公開した。
その役はロイヤルストレートフラッシュである。
観衆も含めた全員が驚愕する。
「そんな……!」
「有り得ない!65万分の1だぞ!?」
「イカサマ!?でもどうやって…!」
チップを全て奪われた女子は崩れ落ちた。
たった一度のゲームで100万も失えば当然だろう。
聖は内心でほくそ笑む。
(イカサマだろうと勝てば正義。負ければ悪か。楽しくなって来た)
聖は勝ったことを誇りもせず当然という態度を取る。
そんな聖に話し掛ける者がいた。
金髪のツインテールの女子である。
「初めまして。私早乙女芽亜里」
「よろしく」
「ねぇ、私とも勝負しない?」
早乙女は笑みを浮かべてそう口にした。
聖は頷いて答える。
「勿論、構わないよ。ゲームは何にする?」
「貴方の好きなゲームで構わないわ」
「じゃあ折角だし、俺の大好きなチンチロで」
聖は鞄からカップと賽子を三つ取り出す。
早乙女は余裕そうな笑みを浮かべて口を開く。
「賭け金は貴方が決めて。チップは取り敢えず120枚用意したわ」
「じゃあ最初は10枚で。親は早乙女さんで良いよ」
「あら、良いの?」
「不利なゲームの方が楽しいからね」
聖はそう言って笑う。
早乙女は内心で狼狽えるが平静を装う。
「先ずは私からね」
早乙女が賽子を振る。
出た目は六である。
続いて聖が振る。
出た目は五だ。
「先ずは私の勝ちね」
「まだまだこっからでしょ。次は30枚だ」
早乙女が出した目は五。対して聖は三である。
しかし聖は余裕を崩さない。
「次は40枚」
早乙女が出したのは六。そして聖が賽子を振る。
出た目は四のゾロ目である。
ゾロ目は三倍払い。つまり全チップを早乙女は奪われる。
早乙女は苦い顔をした。
「くっ…!」
「これで俺の勝ちだね。どうする?まだやる?」
早乙女は内心で葛藤する。
ここで引けばマイナスは少なくて済む。
しかし負けたという事実が残ってしまう。
それはこの学園では最大の恥である。
早乙女は苦々しい顔で口にする。
「追加で100枚用意するわ」
「お、良いね」
早乙女はもう100枚チップを用意する。
聖は悪辣な笑みを浮かべた。
「じゃあ賭けるのは100枚で」
「っ…!」
早乙女のチップを一度の勝負で全て奪い取るつもりの聖に観衆が騒つく。
早乙女は冷や汗を流して聖を睨む。
対する聖は相変わらず飄々としている。
「さぁ、賽子を振って」
早乙女は焦りながらも冷静に賽子を振る。
出た目はヒフミである。
「そんな…!」
「次俺の番ね」
狼狽える早乙女を無視して聖が賽子を振る。
出た目はピンゾロだ。
「お、ラッキー。ヒフミとピンゾロ合わせて十倍払いね」
聖は平然と宣告する。
早乙女は顔を青ざめさせた。
聖はニヤリと笑う。
「でもちょっと可哀想だよね。だからチャンスをあげる」
「チャンス……?」
「そう。俺は1000万を賭ける。代わりに早乙女さんは人権を賭けるの」
「じ、人権…!?」
その狂気の言葉に早乙女が驚愕する。
「あ、俺の賭け金が足りないってんなら俺も追加で人権を賭けるよ。その方が楽しいもんね?」
「狂ってる…!」
「ハハッ。変なこと言うね?狂ってなきゃギャンブルなんてできないでしょ」
狂気の笑みを浮かべる聖に早乙女も観衆も戦慄する。
狂ったゲームに挑む者は相応に狂っているのだ。
「で、どうする?借金を抱えるか、人権まで賭けて逆転のチャンスを掴むか。どっち?」
早乙女は散々悩んだ末に苦しそうに呟いた。
「じ、人権を賭ける……」
「良し!じゃあ早速次のゲームに行こうか!さ、振って振って」
早乙女は震える手で賽子を振った。
そうして出た目は六のゾロ目である。
早乙女は顔を明るくする。
「やった…!」
「おお!じゃあ次俺ね」
聖が喜色を浮かべながら賽子を振った。
出た目はピンゾロであった。
「なっ!?」
「二連続だ。今日は運が良いなぁ」
聖は平然とそんなことを口にする。
早乙女は絶望の表情で聖を見た。
「早乙女さんの人権ゲット!いやぁ、楽しいゲームだったね?」
早乙女は肩を震わせる。
1000万の借金を背負わされた上に人権まで奪われた。
その事実に思考が真っ白になる。
そんな早乙女に聖は優しく語り掛ける。
「今日からペットとしてよろしくね?」
「ひっ…!」
「楽しいゲームをありがとう。あっ、芽亜里って呼ぶね」
「はい……」
早乙女は暗い表情で返事をした。
それを見て聖は追い討ちを掛ける。
「今日この後俺の家に行くから」
「っ…!はい……」
人権を奪われたのだから当然迎えるであろう結末を想像して早乙女が顔を青くする。
聖は呑気に帰宅の準備をしている。
聖は教室の空気が冷めきっていることに気付いて疑問を溢した。
「どしたの?皆」
「いや………お前容赦ないな。あそこで全額賭けさせるなんて」
「ん???だって全額賭けた勝負の方が楽しいじゃん」
「楽しいって……」
「折角ゲームするなら楽しくないと。あ、もうこんな時間だ。ほら、行くよ芽亜里」
聖は早乙女を連れて教室を出るのだった。
向かう先は勿論聖の家である。
聖は学園の近くのマンションで一人暮らししている為にそこまで時間も掛からない。
すぐに家に到着して早乙女を中に迎え入れる。
早乙女はこれから処刑される罪人ような心持ちで部屋に入る。
室内は綺麗に整えられており、棚には様々なゲームのカセットが収納されている。
聖は冷蔵庫からお茶を取り出すとコップに注いで早乙女に渡す。
そして手を叩いてこれからやることを発表した。
「芽亜里にはこれから俺と一緒に映画鑑賞して貰います!」
「は?」
「ん?」
聖と芽亜里は互いに疑問符を浮かべる。
「何すると思ってたの?」
「え?それは、だってエッチなこと、するんじゃ……」
「俺そんな悪人だと思われてんの?そんなことしないよ」
「じゃあ、ほんとにこれから映画見るだけ?」
「そうだよ?友達と映画見るの夢だったんだよね!」
明るく笑う聖に早乙女は拍子抜けしたように肩の力を抜いた。
「何だ。てっきり、私犯されるのかと思ってたわ」
「初対面でそれやる奴相当ヤバいでしょ」
聖はまるで自分がヤバい奴ではないかのような発言をする。
早乙女は冷めた視線を送った。
「で、何見るよ。アクションからホラーまで色々あるよ」
「ホラー以外が良いわ」
「じゃ、ゾンビ映画で」
「最低…!?」
早乙女は聖の言葉に顔を赤くして怒る。
聖はからからと笑ったのだった。
・オリ主
ゲーマーでギャンブラー。
一発勝負を好む。
初対面でいきなり最低な要求をする程の悪人ではない。
・早乙女芽亜里
人権を奪われてオリ主のペットになった。
オリ主に振り回されている。