近親警報!
海外出張から戻った父親を挨拶もそこそこに自分の部屋に引っ張ってから、伊吹は手を合わせた。
「実は父さんに頼みがあるんだ!」
「はい、おみやげ。どうしたの、急に」
二人にそれぞれ土産を渡してから微笑んだこの男性は父親の
「うん、だからなに?」
伊吹だけではなく、青藍もこれまでに立城が怒ったところを見たことがない。いたずらをしたりした時には叱られることもあるが、立城は激昂して怒鳴りつけたりはしないのだ。
穏やかに微笑む立城から目を離し、伊吹は青藍と顔を見合わせて頷いた。
「実は俺たち、夏休みの課題で、自由研究をしなきゃならないんだけど」
「それでね。淫魔の攻略法を研究しようって兄さんが」
口々に説明する二人を見つめ、立城がなるほどと苦笑する。そこで立城が立ちっぱなしになっていたことに気付き、伊吹は慌てて机の中から椅子を引っ張り出した。ありがとうと微笑んだ立城が静かに腰掛ける。
「だから、その……父さんに母さんの秘密を聞きたくて」
伊吹はそう言って青藍に同意を求めた。青藍が慌てたように頷いてそうそう、と言葉を添える。立城は二人を交互に見つめてからにっこりと笑った。
「秘密ってどんな? 好きな食べ物とかそういうことかな?」
「いや、そうじゃなくって」
「ええと」
説明に困った二人は顔を見合わせてから頷き合った。伊吹は端末の電源を入れ、これまでの研究成果の記された日誌を表示させた。へえ、と感心した顔をして立城が画面を見る。
「なるほど、連敗中だ」
くすりと笑って立城が画面から目を上げる。伊吹は膨れ面をしてそっぽを向いた。確かに言われた通りなのだが、指摘されると腹が立つ。だが青藍は特になにも感じなかったのだろう。立城と似たような笑みを浮かべて言う。
「それでね。お父さんに聞けば、お母さんの……その」
「セックスの嗜好が判ると」
立城がどもった青藍の代わりにさらりと言う。伊吹は青藍と顔を見合わせて何度も頷いた。そうなんだと頷いた立城はやけに嬉しそうに微笑んでいる。
「二人とももうそんな歳なんだね」
「え?」
言われた意味が判らず、伊吹は難しい顔をして首を捻った。隣でも青藍が不思議そうな顔をしている。どうやら青藍にも意味が判らなかったらしい。
「だって淫魔のセックスに興味があるんでしょう?」
「う、まあそうだけど」
「どうすれば淫魔が感じるか、知りたいんでしょう?」
「ええと、多分、そうかも」
すらすらと続く立城の質問に伊吹と青藍は代わる代わるで答えた。にっこりと笑った立城が質問を続ける。
「それは性に目覚めたということじゃないの?」
「いや、それは違う! 俺は単に、淫魔の特性をだな!」
「そっ、そうだよ! ぼくは別に目覚めとか、せ、性とか、そういうのじゃなくて!」
急に恥ずかしくなって伊吹は慌てて言い返した。青藍も赤い顔をして必死の面持ちで言い返す。くすくすと笑った立城がはいはい、と軽い返事をする。
「そんなに興味があるなら見せてあげるよ。今晩、僕たちの寝室においで」
あっさりと言って立城が立ち上がる。伊吹は慌てて違うと喚いた。別に二人がしているところを見たい訳ではないのだ。青藍も焦ったように違うよと喚く。
「約束だよ。必ずおいでね」
「ちーがーうー!」
「ああ、お父さん待って! ぼくは別にそんな、あああああ」
くすくすと笑いながら立城がそれじゃあ、と部屋を出て行ってしまう。残された二人はがっくりとその場に膝をつき、床に手をついてうなだれた。
「……どうするんだよ。お父さん、楽しそうだったよ……?」
「うああああ、この展開は考えてなかったー」
「ううっ、昨日バットでつつくのも怖かったのに、何でリアルタイムで見なきゃならないの」
「判った、逃げよう!」
「お父さんがそれで許してくれると思う? どこに逃げたって捕まるに決まってるでしょっ」
口々に言い合ってから二人は同時に顔を上げた。
「出来るだけ見ないようにすれば何とか!」
「そ、そうだね! 最悪の場合は目と耳を塞いで!」
向かい合わせに座って二人は目に涙を浮かべ、互いの手をがっちりと握り合った。
*****
意外なことに水輝は怒らなかった。
「あー? セックスを見たいだあ? 別に好きにすりゃいいんじゃねえの?」
その日の夜、立城に言われた通り、大人しく寝室を訪ねた二人はあっけらかんとした水輝の態度に唖然とした。パジャマを着てベッドであぐらをかいた水輝が大きな欠伸をして手招きをする。
てっきり殴られるかと思ったのに。そんなことを思いながら伊吹はちらりと青藍を見た。どうやら青藍も似たようなことを思ったらしい。そうだよね、と目で答えてみせる。互いの意志を確認しあう二人に立城がにこにこと笑いながら椅子を勧めてくれる。ベッドの傍に二つ並べられた椅子に伊吹と青藍は並んで腰掛けた。
「どうでもいいが、お前ら風呂は入ったか?」
「あ、ああ。ちゃんと入ったけど」
「だからパジャマを着てるんだけど……」
伊吹と青藍は水輝の質問に口々に答えた。なるほど、と頷いて水輝が唐突にパジャマを脱ぎはじめる。ぎょっとした伊吹は慌てて視線を逸らそうとした。だがそこで立城と目が合ってしまう。
「見ないの?」
「う」
指摘を受けた伊吹はぎこちない動きで顔の向きを戻した。パジャマを脱いだ水輝の上半身はばっちり裸になっている。露わになった柔らかそうな二つの胸の膨らみに伊吹の目は自然と吸い寄せられた。
「さあ来い」
「相変わらず色気がないね」
パジャマのズボンを脱いでベッドの下に蹴飛ばした水輝が両手を広げて立城を誘う。苦笑を浮かべた立城がベッドに乗り、水輝を抱き寄せる。
「うわ……」
抱き合った二人が交わす口づけを見た伊吹は思わず小さな声で呟いた。伊吹と青藍が間近で見ているにもかかわらず、二人は濃厚な口づけを交わしている。伊吹は落ち着かないものを感じてちらりと青藍を伺った。青藍も目のやりどころに困ったのか、ちらちらと伊吹を伺っている。
だが、隣に座る青藍のことを伺う余裕があったのもそこまでだった。微かに聞こえた水輝の声にぎょっとして、伊吹は慌てて目を戻した。口づけをしながら水輝が甘えるような声を漏らしているのだ。よく見ると立城が水輝を抱きしめつつ、むき出しになった乳房を触っているのが判る。やがて立城は水輝をゆっくりと押し倒し、両手を使って水輝の身体を弄りはじめた。
いつの間にか伊吹は絡み合う二人から目を離せなくなった。ごくん、と口の中に溜まった唾を飲み込む。立城がどこを触っても気持ちいいのか、水輝は普段の乱暴な様子からは考えられないほど甘ったるい声を上げている。
やがて立城が水輝の股間に手を滑らせる。ショーツの上から触れられた水輝がびくんと身体を震わせて泣きそうな声を上げた。伊吹は息を詰めて水輝に見入った。無意識に呼吸が荒くなり、身体がやたらと熱くなる。
立城が水輝のショーツをゆっくりと脱がせる。そこに煌めくものを見つけて伊吹は息を飲んだ。水輝の股間から垂れたものがショーツについて糸を引いているのだ。それが水輝の漏らした愛液だと気付いた伊吹は我慢出来ず、自分の股間に手をやった。痛いほどに勃起したペニスをパジャマの上から握る。
二人の目があることを何とも思っていないのか、立城はそのまま水輝の足を開き、身を屈めて股間に頭を突っ込んだ。何をするのかと思っていたら、立城は水輝の腰をつかんで軽く持ち上げると、濡れた股間を音を立てて舐めはじめた。よっぽど気持ちがいいのか、水輝が身体を震わせてしきりに声を上げる。
「あぁ! 駄目、もう、いく!」
すすり泣くような声で言った水輝の足のつま先がぴんと伸びる。
「うあ、駄目だ、我慢できね」
水輝が絶頂に到達する様を目の当たりにし、伊吹は顔をしかめて呻いた。慌ただしくパジャマのズボンをずらしてペニスをはみ出させて直に握る。
おもむろに身を起こした立城が穿いていたものを脱いで水輝の足の間に身体を進める。挿入の瞬間を目の当たりにした伊吹は昂奮に荒い息を吐きながらペニスを扱きはじめた。立城が腰を動かすたびに水輝の身体が揺れ、それにつられて胸の膨らみがたわわに揺れる。
「うっ」
微かな呻き声が聞こえ、伊吹ははっと我に返った。慌てて隣を見ると青藍が伊吹と同じように自分のペニスを握り、俯いていた。ペニスを握った手は震え、白く汚れている。どうやら一足先に射精してしまったらしい。しばし震えてから青藍はゆるゆると顔を上げ、ベッドで交わる二人をうっとりとした目で見つめながらペニスを扱きはじめた。その視線につられて目を戻したところで伊吹はうっ、と呻いた。
いつの間に体位を変えたのか、水輝がこちらを向いている。横向きに倒した水輝の足を自分の足にかけ、立城は力強く腰を打ち付けているのだ。
「すげー……」
伊吹は素直な感想を呟いてペニスを握りこんだ手を忙しく動かした。立城が動くたびに二人の繋がった部分からぐちゅぐちゅという淫らな音が聞こえてくる。あっという間に切羽詰まったものがこみ上げ、伊吹は軽い呻きを漏らして射精した。自然と身体に力が入り、腰から下ががくがくと震える。
「ったく、仕方ねえなあ……」
甘い声で言って水輝が微笑む。伊吹ははっとして慌てて俯けていた顔を上げた。相変わらず水輝は立城に抱かれているし、その頬は昂奮からかほんのりと染まったままだ。なのに水輝は微笑みを浮かべて椅子に座る二人に手招きをした。
誘蛾灯につられる虫のように、二人はふらふらと立ち上がってベッドに上がった。立城が苦笑して水輝から離れる。水輝はゆらりと身を起こして所在なげに座る二人の下履きを剥ぎ取った。
「まだお前らにナマでさせられねえからな。口とか手とか胸とか素股で我慢しろ」
「口……え? 股?」
「スマタ?」
「いいから大人しくしやがれ。立城も笑ってねえで手伝え、このやろう」
拗ねたように唇を尖らせた水輝が鋭い目で立城を睨む。はいはい、と笑った立城が二人を次々に抱き上げてベッドに並べて横たえる。よし、と頷いた水輝がぺろりと唇を舐め、並んで横たわった伊吹と青藍は同時に甘えた声を上げた。
四回戦、敗北?
ほわわんとした笑みを浮かべて伊吹は寝室を出た。並んで部屋を出た青藍も同じような表情をしている。
「すげえ気持ちよかった……」
「うん……」
「淫魔ってすげー」
「うん。気持ちよすぎて気絶するかと思っちゃった」
口々に感想を言いながら伊吹は青藍と一緒に部屋に戻った。まだ快感が身体に残っているのか、妙にふわふわとした感じがある。窓の外はすっかり明るくなっていて、随分と長い時間が経ったというのに伊吹は少しも眠くなかった。
あれから水輝は身体のあらゆる場所を使って二人を射精に導いた。特に伊吹が気持ちいいと感じたのは水輝の乳房に挟まれた時だった。あれは凄い、と感動をこめて唸ってから伊吹は日誌の続きを書き始めた。
「何だか得しちゃった気分」
ころんと伊吹のベッドに転がり、枕を抱えた青藍がくすくすと笑う。そうだなと同意をこめて力強く頷き、伊吹はキーボードを機嫌良く叩いた。