ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
暑気も薄れ、日没が早くなった夕暮れ。
アリサワ家でスミオとエリは御茶を嗜む。2人の前にある卓の上には、赤毛紺眼の美女から受け取った名刺。
記された名はセレン・ヘイズ。
「偽名っぽいですね」
「偽名だろうな」
エリの感想にスミオは肯定し、推察を口にする。
「雰囲気からして金回りの良いグレーカラーという感じだったな」
あの赤毛紺眼の美女は犯罪者や悪人の印象を受けなかった。だが、法を踏み越えることに躊躇しない冷徹さが感じられた。
「これはただの挨拶だ」
スミオはエリへ即答し、名刺をこつこつと突く。
「本気でぼくを勧誘する気なら、もっと言葉を尽くして説得を試みたはずだ。けど、実際はこの名刺一枚渡してきただけ。顔つなぎだろう」
「でも、“そういう人”に目を付けられたことに変わりはないですよ」
エリは心配そうにスミオを見つめて続ける。
「しばらく時間を空けたらどうです? アジア・カップやオセアニア・チャンピオンシップの予選に注力しましょう」
眼鏡の奥で二重アーモンド眼が憂慮に翳る様を見て、スミオは罪悪感を抱く。自分がアングラに関わらなければ、エリにこんな顔をさせることも無かった。エリを巻き込んだのは自分だ。エリを危険な目には遭わせられない。
しかし、金が必要という事実も揺るがない。春先から臨んだアングラの賭博試合で稼いだ額はこれまでで100万円を大きく超えている。取り分はスミオとエリで4対3。残る3は賭け金、ガンプラなどの予算としてプールされていた。
まだまだ稼ぎ足りない。が、状況は切羽詰まっているわけでもない。
「……考えてみるよ」
スミオは濁した言葉を紡ぎ、憂い顔のエリを抱き寄せる。嗅ぎなれた恋人の匂いに浸りながら、耳元へ語り掛ける。
「大丈夫。エリを悲しませるようなことはしない」
偽りなき本心の宣誓。けれど、スミオの冷淡な部分が自分の言葉を疑っていて、スミオの臆病な部分が不安を抱く。
エリは無言で頷き、スミオの身体をぎゅっと抱きしめ返す。
互いの愛情を持ち合うような温かい抱擁。
スミオは不意にエリの首元へ口づけし、右手を伸ばしてスカートを脱がし始める。
エリは首筋の性感帯を唇で嬲られるこそばゆい快さを素直に受け入れ、剥ぎ取られるスカートに合わせて腰や足を動かす。スミオの右指先がつぅっとへそから下腹部へ撫で上げられていき、次に薄青色のショーツが膝元までずり下げられていく。
スミオの口づけが唇へ移り、ん、とエリの口元から甘い吐息が零れる。
腰を支えていたスミオの左手がブラウスの中に潜り込み、背骨に沿って昇っていく。くすぐったさにエリのたおやかな身が疼く。
薄青色のブラのホックが外され、ブラウスの中で乳房に解放感を覚えた矢先、スミオの左手が緩くなったブラの中へ差し込まれ、乳房を揉まれる。
口づけ中のエリの吐息に熱がこもり始めた。スミオの両手がエリの身体を弄び始めた。左手乳房を大きく揉み、左中指が乳輪を撫でる。下着がずり下げられた股間に伸びた左手が陰核と小陰唇の縁に沿ってねっとりと往来する。
“開発済み”の肢体は敏感に反応し、エリのきめ細やかな肌がたちまち発情の色に染まりだす。
スミオは口づけをやめ、あ……と名残惜しそうな呼気をこぼすエリを後ろ抱きにし、右手の中指を湿りだした陰部へ焦らすように埋めていく。
「ん……ふぅ……ぁあぅ……」
埋められた指の動きに合わせ、エリの身体が震える。溢れ出した淫らな蜜がスミオの右手から床にぽたぽたと垂れ落ちていく。中指の腹がエリの膣肉を擦る度、水音が奏でられだした。
「ぅ……これ、好き……ぅぅん……スー君の指、好き……好きぃ……」
太縁眼鏡の奥でエリの二重アーモンド眼が悦楽に濡れる。スミオの指使いが早くなるにつれ、滴る愛液が増え、床に濡れ跡を広げていく。
「……スー君、私……もぅ……出ちゃいます、出ちゃう、スー君、私、出ちゃうっ!」
ぎゅうっ! とエリの両膝が合わされ、爪先が絞られる。股間から勢いよく噴き出す淫らな飛沫。スミオの手は止まらない。それどころか、ぐちゅぐちゅと勢いよく掻き回す水音が響き、びくんっ! とエリの身が強張ってさらに多量の愛液が淫裂から噴き出した。
スミオが面白みを見出すように目を細める中、エリが肩で息をしながら、くたりと脱力して背後のスミオへ身を委ねた。
絶頂の余韻に浸るエリのブラウスを塗れた手で外していき、リボンを首元に残すように襟を抜く。はだけるブラウス。垂れ下がる薄青色のブラ。
スミオは両手でエリの乳房を掴み、指先で乳輪と乳首を弄り始めた。絶頂で過敏になっていた乳首を強く嬲られ、エリの身体は再び快楽の波を強くする。
「だめ、だめだめだめ、スー君、そんな……んんっ! あ、そんな強く乳首弄られたら、わたし、また、ぅあっ!」
身が震える度、おわん型の綺麗な乳房がぷるりと揺れる。
「エリ、イキそう?」スミオが吐息でくすぐるように耳元でささやく。
「しちゃう、チクイキしちゃう、私、スー君にチクイキされちゃいま……すぅっ!」
言い終えるが早いか、エリの身体がひときわ大きく震え、再び股間から絶頂の汁が床へ飛び散った。
「あーぁ、床がびしょびしょだぞ、エリ」
「ごめんなさぃ……でも、スー君が気持ちいいことしゅるから……」
「悪い子のエリにはお仕置きが要るな」
「お仕置き……」エリは肩越しにスミオを見た。瞳が肉悦に蕩け、肉欲の期待に輝いていた。「お仕置きしてください、エリに気持ちいいお仕置き、いっぱいしてください」
乱れた三つ編みお下げ。ずり下がった太縁眼鏡。首元に垂れるリボン。乳房の下にずり落ちたブラ。膝下で愛液を浴び、濡れた下着。
スミオは自身のフェチズムな部分を刺激する格好のエリへ、ベッドに手をつかせて尻を突き出させる。手早く服を脱ぎ棄て、昂奮して怒張した逸物にコンドームを被せた。
淫蜜が糸を引いて垂れる股間に逸物をじっくりと擦りつけ、濡らしていく。
生唾の絡んだエリの舌が、昂奮した哀願を紡ぐ。
「早く……スー君、早くぅ……っ! 早く、おまんこに下さい……っ!」
「お仕置きだって」
焦らすように尻肉を両手で押し広げてから膣口に亀頭を添え、
「言ってるだろ……っ!」
スミオはエリの最奥に当たるまで一気に突っ込んだ。
「おぅっ!?」
エリの口から淫らな呻き声が飛び出し、強引に膣肉をこじ開けられて子宮を強く打たれた快感の衝撃に、背骨が曲がりそうなほど仰け反った。股間から大量に噴き出す愛液。がくがくと震えだす両足。
崩れ落ちそうになるエリを支えながら、スミオは桃のように色欲に染まった尻を撫で、
「また床を濡らして……エリはいけない子だな!」
ひくついていた肛門へ左手の人差し指を根元まで差し込んだ。
「ふぅぐっ!? ぃいっ! おまんことおしり、いっぺんに入れられて……しゅごく、いいでしゅうっ!!」
スミオがエリの尻穴を嬲りながら腰を動かし始めると、エリの歓びが一層強く大きくなる。
蕩けるエリの爪先が浮き上がりかけるほどスミオは腰を激しく打ちつけ、陰茎でエリの膣を穿り、指で尻穴を弄ぶ。
ベッドと床に落ちる薄青色のブラとショーツ。ぷるんぷるんと波打つ尻肉。脳まで直撃する快楽にびくびくと震える肢体。
「ぉほっ!? す……ごぃっ!! おぅっ!? 今日の、スー君しゅごいぃっ!」
エリが恍惚の涙と涎を垂れ流しながら叫ぶ。
「ひぅうっ! 気持ちよしゅぎるっ! ばかになっちゃうっ! わたひ、バカんなっちゃいますっ! こんなの……きもちよしゅぎて、ばかになっひゃうっ!!」
スミオは肛門から指を引き抜き、エリの上体を抱き抱えて左右の乳房を揉みしだき、指で乳房を弄りながらうなじへ舌を這わせる。汗と快楽の味。突き上げが一層激しくなり、亀頭の先でエリの子宮がたわむ。
「ひっ…………ぐぅううううううううううううううっ!?」
電流でも駆け抜けたようにエリの身体が強く仰け反った。全身の筋肉が締まり強張り、膣肉がスミオの陰茎をぎゅううっと包み締め上げる。爆発的な快感にスミオも絶頂を迎えた。
子宮内に侵入していたゴムの先端が放出された精で、ぶくっ! と勢いよく膨らみ、エリは快感の第二爆発に襲われ、
「―――――――――――――っ!」
声にも出来ぬほどの快感に意識が飛びかけた。
脱力して崩れ落ちかけたエリを支え、陰茎を引き抜いて優しくベッドへ仰向けに寝かせる。
がくがくと腰を大きく痙攣させるエリを横目に、スミオはコンドームを交換。エリの両足を大きく開かせ、陰部を披露させる“まんぐり返し”をしてから深々と挿入していく。ばんばんばんと腰を打ちつけ、エリの身体や腰が軋む。
半ば意識が飛びかけているエリは与えられ続ける深い肉悦に、言葉にならぬ恍惚の喘ぎ声を海嘯のように繰り返す。
スミオは唇を重ねてエリの口を塞ぎ、二度目の射精を求めて一心不乱に腰を振り続ける。
まるで内心に巣食った不安を忘れ去ろうとするように。
エリが抱いた憂慮を拭い消そうとするように。
この日、ゴミ箱に捨てられたコンドームの包みは四枚に達した。
○
現実逃避な情事に耽った翌日。
「ガンプラバトルについて知りたい?」
四限目が終わって昼休み入りした直後。スミオは投げられた質問を反芻する。
「そう」
現役女子高生モデルでクラスメートのフナキ・サトミがスミオに首肯を返す。横髪だけ長めのショートヘアに明眸皓歯な顔立ち。モデルらしい抜群のプロポーションを誇る肢体。
かくも美麗な容姿の持ち主であるサトミは語り始めた。
「モデルの世界って凄く厳しいのよ。モデルは大勢いるのにファッション誌は斜陽だし、SNSのインフルエンサーにとって代わられがちでフリーランスの子はオーディションに全然通らないし、事務所付きは人気が落ちて仕事が取れなくなったらあっという間に契約解除だし」
「はあ」
スミオは『ガンプラバトルについて知りたい理由』ではなく、縁もゆかりもない業界の事情を(愚痴に近い形で)聞かされて戸惑う。
「そんなモデル業界では今、ガンプラ系に注目が集まってるのよ」
困惑顔のスミオへ、サトミは横髪を弄りながら語り続ける。
「ガンプラって大きなイベントも多いでしょ? ファッション誌やファッション系サイトがガンプラバトル大会の会場でイケてる女の子を誌面に取り上げることもあるし、なんならモデルやアイドルの子が大会のイメージガールとかコンパニオンとか勤めることもあるの」
「ああ」スミオも知ってることに頷き「大きな大会では確かにいるね」
ガンダムキャラのコスプレやガンダムモチーフの衣装を着た美女美少女が、大会やイベントを彩ることは珍しくない。アイドルや芸能人が司会とかMCとかやるケースも増えている。
スミオが相槌を返すと、サトミはうんうんと大きく頷いてからさらに話を続ける。
「で、ここからが重要なんだけど、今、芸能界側から見たガンプラ界隈って代表格がいないの。少し前まではガンプラアイドル・キララが界隈の顔だったけど、あの人は今やハリウッド女優ミホシ。その空いた椅子を狙って鎬を削り合ってるわけ」
「なるほど」スミオはやっとこさ合点がいき「フナキさんも争奪戦に参加したいわけか。それで文化祭の体験会にも来たんだな」
「んー……たしかにそういう打算はあったけどもね……」と答えを濁すサトミ。
「? けど?」再び困惑顔をこさえるスミオ。
「体験会は楽しかったわよ? プラモデルを動かすのってテレビゲームとは違った趣があってさ。でも、体験会でガンダムに触れてみて、気づいたのよ。こりゃあ大変だって」
サトミは整えられた眉を下げる。
「ガンダムって作品が物凄くいっぱいあるでしょう? アニメ、漫画、小説、ゲーム、他にもたくさん。正直、覚えきれない」
「あー……そういう話は聞くね」とスミオは理解を示す。
ガンダムは初代作品から現在まで数十年の歴史があり、しかもマルチメディア展開をし続けているため、その作品数はまさしく大量。その情報量は膨大。特に宇宙世紀シリーズは後付け設定が今も盛られ続けており、全てを把握している人間がいるのか怪しいほどだった。
それに、とサトミはどこか申し訳なさそうに言った。
「ガンプラ作りとか、バトルの操縦とか、本格的にやるには、私にはちょっとハードルが高いわ」
「うーん……そこは根気強くやっていくしかないことだからなぁ」とスミオは難しい顔で頷く。
ガンプラに限らずモノ作りはまず根気よく経験を重ね、技術を磨く必要がある。才能が問われるのは経験や技術を積んだ後の話だ。
バトルの操縦も同じこと。まず以ってガンプラを操るノウハウを身につけなければ、才能云々の話に進めない。
ガンプラバトルは気軽に遊べる玩具の娯楽であるけれど、本気で臨むと一朝一夕ではどうにもならない奥の深さがあった。
「そんなわけで、私自身はガンプラ系に挑戦することを諦めたわけだけども」
サトミは困り顔を作った。
「ガンプラバトルのイベントに出演予定の子がね、事務所に無断で方向性を変えちゃって」
「方向性?」怪訝そうに眉根を寄せるスミオ。
「たとえば……ファッション誌は用意した衣装に合うモデルを選ぶの。あるいはモデルに合わせた衣装が組まれるわ。ミライなら清楚系やキレイめとかね。そんなミライが何の前触れもなく、金髪ベリショにしてピアスやタトゥー入れまくったら、どうなると思う?」
「仕事がキャンセルされそう」
スミオの回答は正解だったらしい。サトミは大きく頷いた。
「そういうこと。先方からダメ出しが入ってね。紆余曲折の末に私がピンチヒッターに選ばれたのよ」
ようやく本題に入ったようだ。
「そのイベントで実況と解説の人と一緒にバトルのコメンテーターの真似事するんだけど、的外れなこと言って炎上したくないし、場を冷えっ冷えにしちゃうと怖いからさ。バトルのことを教えて欲しいなと」
「……そうだなぁ。バトルについて一朝一夕に理解することは難しいから、バトルの見方語り方について助言させてもらうなら」
サトミから大雑把に乞われ、スミオは腕組みして思案してから、言葉を編む。
「ファイターのガンプラや戦い方へケチをつけるような物言いはしないこと。ガンプラがどんなに不格好でも異様でもバカにしたら、炎上待ったなしだ」
「素人が他人様の作品をバカにしたら、そりゃ燃えるわね」サトミは納得して首肯し「戦い方にケチをつけるって言うのは?」
「ファイターの中には客受けが良くない戦い方をする奴がいる。逃げ回って遠距離攻撃に徹する奴とか、一見すると卑怯っぽいやり口をする奴とかね。その場合は実況と解説が批判的なことを言わない限り、非難めいたことは言わない方が良いだろう。戦ってる本人は本人なりに勝つために頑張ってるわけだから」
「何も知らん素人が無暗にファイターを非難するなってことね。りょーかい」
説明を咀嚼するサトミへ、スミオは続けて言葉を紡ぐ。
「あとはまぁ、分からないことは素直に実況や解説に尋ねるとかが無難だろうが、これもやりすぎると、ガノタから『何も知らん奴がガンプラ人気にあやかって踏み入ってきた』と思われるかもしれない。この辺は自己紹介時に『いろいろ教わりにきた新人』感を出せば、多少は和らぐと思う」
「つまり……礼儀正しく振る舞って好感を稼げってことね」
長めの横髪を弄りながら、サトミが聞かされた内容を要約すれば。
「面白みには欠けるかもしれないけどね」スミオはどこかおどけた微苦笑を返す。
「参考になったよ。ありがとう」
サトミはさっぱりした笑顔で礼を言う。現役女子高生モデルとして活躍しているだけあって、商業レベルに磨かれた笑顔は実にチャーミング。初心な男子なら好きになっちゃうだろう。
「どういたしまして」
スミオはふと思い出したようにサトミへ尋ねる。
「ちなみにフナキさんが呼ばれてるイベントって?」
サトミはきょとんとしてから、ああ、と苦笑い。
「言ってなかったね。私が出るのは――」
Tips
シノダ・エリ
原作のネームドモブ。地味眼鏡を取ると美人という古典的変貌キャラ。モチーフは新機動戦記ガンダムWのレディ・アンではないか、と推測されている。
本作のメインヒロイン。性欲に正直で、お尻も開発済み。
フナキ・サトミ
原作のネームドモブ。サブヒロインのカミキ・ミライの親友でモデル仲間。
ショートヘアの美少女。アニメ描写ではミライに匹敵するスタイルの持ち主。
読モ/モデル
華やかでおしゃれな印象と違い、実はかなり泥臭くシビアでキツイ業界らしい。