ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
ペア・マッチ。
その名の通り、二対二で行われる試合だ。一般論では空戦において二機が最小活動単位。公式二次創作などと評された『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』では、MAVと呼ばれるモビルスーツ戦闘の基礎戦術と語られた。
ガンプラバトルでもペア・マッチは珍しくない。1対1やチーム戦とは違う駆け引きと迫力がある。そして、ペア・マッチは必ず身内で組むとは限らない。見知らぬ相手同士で組まれることもあった。
この夜、西東京某所の会員制クラブで催された博打試合はダークウェブサイトの『オールマインド』が斡旋したペアの試合だった。
フードを目深に被り、顔をスカルのフェイスマスクで隠したスミオの前に、男性ファイターが現れた。
「俺はダン=モロ! よろしくな!」
男性は明朗な雰囲気の20代前半。見るからに元気溌剌で爽やかな好青年。生活感ある短髪に真っ直ぐ伸びた鼻梁。変装なのかアスリート用ミラーグラスを掛け、鍛えた長身をベーシックなシャツにチノパン、スニーカー。飾り気はないが確かな品を着こんでいる。
黒寄りグレーなガンプラバトルとは無縁そうな――それこそジム通いしてフットサルチか何かで健全な汗を流していそうな好青年だった。
用意するガンプラは水色ベースに白と黄色を差した変則トリコロールのガンダムGP01ゼフィランサス。なぜか右手に盾を持ち、左手にライフル。右肩にディスペンサー、左肩にミサイルポッドを装備している。どんなステージ、どんな相手でもとりあえず戦える堅実でオーソドックスなカスタムのようだ。
エンブレムは古いコミックヒーローだった。
「レイヴンだ。よろしく頼む」スミオは口数少なに答えた。
「あんた、負け無しらしいな。自分で言うのもなんだが……俺は役に立つぜ!」
嫌みっぽさも皮肉も無い人好きする笑顔を返すダン=モロ。
ホントになんでこんな薄暗い界隈に居るのやら、とスミオは疑問を抱くが、すぐに放り棄てる。素性やバトルに臨む動機はどうでもいい。それにこの界隈で知りたがりは好かれず、詮索屋は嫌われる。
ガンプラバトル・ユニットを挟んだ向かい側に対戦相手のペアが現れた。
2人とも若い男だ。
赤いシャツにジーンズを着た長身痩躯の狐目男。
逆関節脚を装着した紅白のオーバーフラッグを卓に置いた。両腕は手を持たないいわゆる武器腕で機関銃仕様。肩にミサイルポッドと短砲身のキャノンを搭載。エンブレムは緋色の狐。
緑のジャンパーに太いパンツを着こんだ固太りの狸面男。
扱うガンプラは緑黒のジェスタ・キャノンのようだ。右腕にビームライフル。左腕にロングライフル。両肩にミサイルポッド。本来はビームキャノンと三連ランチャーを装備していたバックパックは大型のミサイルポッドに換装されていた。エンブレムは翠玉色の狸。
スミオは一見して相手の戦闘スタイルを把握する。
狐の機体は高機動近距離射撃戦型。軽量な機体を活かす高機動を取りながらミサイルで牽制しつつ、相手に貼りついて機関銃の弾幕で削り、短砲身キャノンをどかんと叩き込むタイプ。
狸の機体は重装甲遠距離射撃戦型。ビームライフルとロングライフルで肉を削ぎ、大量のミサイルをぶち込んで吹き飛ばすタイプ。
前衛後衛の役割をきっちり分けたコンビだ。型にハマればかなり痛い目を遭うだろう。
スミオの視線に気づいたのか、赤シャツの狐目男が言った。
「俺達は上に行く。あんたらには踏み台になってもらうさ。悪く思うなよ」
緑ジャンパーの狸面男がぼそりと言った。
「……悪いな」
と、ダン=モロも応戦。
「弱い輩ほど口ばかりだ。どうせ大した実力も無いんだろ」
かなり辛辣な言い様だが、爽やかイケメンな見た目と毒気の無い声音のせいか、気安い軽口のように聞こえる。事実、狐目も狸面も気分をまったく害していない。
「そう思うだろ? あんたも」
ダン=モロに水を向けられるも、スミオは小さく肩を竦めるだけだ。
え、と言いたげに眉を上げ、ダン=モロは不安そうに「……思ってるだろ? ……思わないのか?」
スミオは思っていた。狐目と狸面にではなく、ダン=モロに。
こいつ、大丈夫か?
そうして準備が整い、ガンプラバトル・ユニットが起動した。プラフスキー粒子が舞い上がり、それぞれのブースにホログラムディスプレイとコンソールが生じる。
『ペア・マッチ。スタンバイ』
レイヴン:サイコゲルググ&ダン=モロ:GP01セレブリティ・アッシュ。
VS
ウィス:オーバーフラッグ・スカーレットフォックス&イェーイ:ジェスタ・エメラルドラクーン。
MCとシステムが宣言した。
「『バトル・スタート!!』」
宣言と共に、それぞれのガンプラがGNベースからユニット上に形成された戦場へ飛び込んでいく。
各ファイターのホログラムディスプレイに映されるガンプラバトル・ステージは――
『北アフリカ5』
字面通り、北アフリカの砂漠地帯が舞台で、背の高い建物や植生は一切ない。地平線まで届く平坦な砂の大地。砂漠を抉ったように走る
そして、不定期に巨大な
スミオには別の問題がある。地上ステージでは背中の増加ブースターとウェポンキャリアが使えない。
いや、使おうと思えば使えるが、邪魔すぎる。ダメージモード『A』であるから、無理して使ったり戦場に投棄したりして壊されてもつまらない。よって、フィールド侵入直後に背部装備をパージ。
得物が右手のロングライフルと左手の機関銃だけになるが、やりようはある。
『背中の装備を捨てたか。ま、仕方ないな』
ダン=モロの水色なガンダムが現れた。
スミオは前衛後衛のポジションについて話し合おうとした矢先、西の地平線から天突くほど巨大な砂塵嵐が現れ、ステージを覆い始める。
この砂塵嵐に呑まれて視界が効かない環境で、初めて組む相手と連携なんてうまくいきっこない。スミオはダン=モロと役割分担について話し合うことを諦め、言った。
「それぞれの判断で戦う。良いか?」
『ああ。俺の経験から言えば、こういう特異なステージのバトルほど肩透かしさ。あまり緊張するな。普段通りやれば、それで良いぜ!』
頼もしい発言を残し、ダン=モロは背中のスラスターベイを吹かして砂漠の地表を駆けていく。スミオはマスクの中で小さく鼻息をつき、GP01を追ってサイコゲルググの背部ブースターを焚いた。
巨大砂塵嵐が迫りくる中、水色のGP01と深紅のサイコゲルググが地形追随飛行をしながらフィールドの中心へ進み――
突如、甲高い警告音が操縦ブース内に響き渡った
『うわっ!?』
ダン=モロの悲鳴とも吃驚とも取れる声が届いた直後、大量のミサイルが降り注ぐ。
『えっ!! こんなにっ?? 無理だ、避けきれねぇ!! うわあああああっ!?』
「? ? ?」
スミオはいきなりミサイル弾幕を叩き込まれたことより、泣き言を言い出すダン=モロに驚く。メインブースターを切り、慣性落下しながら左半身の各部スラスターを全開。暴力的な高負荷水平機動にエリが手掛けた頑健なフレームが軋み、装甲殻がたわむ。
外れたミサイルの群れが次々と砂漠へ飛び込み、大きな火球を生み出し、爆煙と大量の砂塵を巻き上げる。それでも全てのミサイルを振り切ったわけではない。少なくない数のミサイルが追尾してくる。
――想定よりミサイルの機動性が高い。A自律捜索追尾弾頭、推力変更ノズル搭載型。SF系キットの流用品か自作か。いずれにせよ、振り切れないなら。
左手に握るM240B似の機関銃を連射し、追尾してくるミサイルの群れを撃墜。
宙に咲き乱れる火球。一発一発の威力はさほど大きくないが、姿勢を崩させるには十分。つまり、一発でも食らえば連鎖的に何発も食らう羽目になる。
やはり侮れない。
スミオは素早く目線を走らせ、臨時の相棒を窺う。
ダン=モロのGP01は生き延びていた。美しい水色トリコロールが煤と砂塵で台無しになっていたけれど、機体の動き自体に問題はなさそうだ。情けないことを言っていたが、案外実力は高――
『り、離脱! いったん離脱しよう! 体勢を立て直すんだ!』
ダン=モロは上ずった、というより半ば裏声で喚き、機体を翻した。
「は?」スミオ自身がびっくりするほど冷たい声がこぼれる。
が、ダン=モロを罵倒する暇はない。赤白の逆関節脚オーバーフラッグが両腕の機関銃を構えながら斬り込んでくるし、緑黒のジェスタが両腕の長物で狙撃してくる。
髑髏の覆面の中で銃声みたいな舌打ちをこぼし、サイコゲルググに回避機動を取らせ、毒づく。
「実質2対1かよ……」
○
秋の夜長。会員制クラブで催される非公認バトル。
バトルユニットが据えられたフロアで、観客達はダン=モロに罵声と嘲笑、あるいは喝采(おそらくダン=モロの負けに賭けた連中だろう)を浴びせ。赤狐と緑狸に、もしくは“レイヴン”へ熱烈な声援を送っている(多分、レイヴンの勝ちに賭けた連中だろう)。
赤毛紺眼の欧亜混血美女はカウンター奥のディスプレイで流される俯瞰映像を眺めつつ、クラフトビールを口へ運ぶ。
「車だろ? いいのか、セレン?」安彦作品に出てくる悪役みたいな面構えのバーテンがからかうように問えば。
「一杯くらいじゃ検知器も反応しないさ」
グラスを置き、混血美女セレン・ヘイズは右目を隠すように流すアシンメトリーな前髪の毛先を弄り、ディスプレイに流れる戦闘を見つめる。ダン=モロの醜態に鼻を鳴らした。
「あれでよくEランクまで上がれたものだ」
「ダン=モロか。強くも上手くもない。銃を撃てば外すし、サーベルを振れば空振り。ミサイルは明後日の方向へすっ飛ばす。当然戦績は目も当てられねェ。なんならCPUのモデルデータにも負けるヘタクソだ。競馬で言えば駄馬も良いところさ」
バーテンは短い煙草をくわえ、ジッポライターで火を点す。紫煙の香りが鼻孔をくすぐる。もうもうと大量の煙を吐いてから続けた。
「でも、奴さんはえらくしぶといのヨ。手練れに追い回されながら制限時間いっぱいまで生き残ることもざらだ。だからペア・マッチやチームマッチじゃあ意外と役に立ったりする」
「
「ああ。腕の良い奴と組むと勝っちまうんだよ。奴がEランクってのはそーいうこった」
バーテンがセレンへ火を点したジッポを差し出す。片眉を上げつつ、セレンは火を貰って桜の香りがする紫煙を燻らせた。
「道化か」
セレンが煙と共に辛辣な言葉を吐き捨てるも、バーテンは笑って、
「ハードコアばかりじゃ飽きるだろ? ああいう奴も要るのさ。それに」
ディスプレイに映るダン=モロの僚機――レイヴンへ目を向けた。
「“あいつ”にゃあ丁度良いハンデだ」
「……買ってるようだな」セレンが顕微鏡を覗くような目つきでバーテンを窺う。「いまだ負け無しだからか?」
「それ“も”ある」
バーテンは煙草の灰を灰皿へ落とし、にやり。
「あいつは面白ェのヨ」
赤狐の逆足オーバーフラッグが縦軸機動を中心に飛び回りながら両腕の機関銃をばら撒き、肩のビームキャノンを撃ち込む。
緑狸のジェスタがウロチョロするダン=モロを牽制しつつ両腕の長物をぶっ放し、肩と背のミサイルポッドから大量のミサイルを流し込む。
『ひぇっ!? 無理だぜ、こんなの! もうダメだ……散々じゃないか……』
牽制攻撃を浴びて泣き言を垂れ流すダン=モロを余所に、サイコゲルググはスラスターを焚いて地表面で横軸機動を取る。機関銃の弾幕を掻い潜ってビームキャノンの直撃を避け、背部のブースターを吹かしてミサイルの大群から逃げ回る。そのうえで左腕の機関銃で近間の赤狐に反撃し、左腕のロングライフルで遠間のジェスタを牽制する。
巻き上がる砂塵を置き去りにする高速機動を絶え間なく続けながら、一瞬の機会を逃すことなく銃で反撃。狼狽え弾に装甲を削られ、熱光線の擦過や炸薬の爆炎に体躯表面を炙られ、煤と砂塵に塗れても、直撃だけは貰わない。
観客達がレイヴンの機動に歓声を上げ、二機掛かりで仕留められない赤狐と緑狸に怒声を放つ。ダン=モロをからかう声も少なくない。
「面白いとは?」
「セレン。あいつがどの程度の腕に見える?」
問われたセレンは煙草を二度ほど味わってから、冷ややかに評価査定を下す。
「せいぜいがCランク。相手次第ではBランクでも良い勝負が出来るだろうが、Aランクの相手は無理だな。“表”のプロ相手にぎりぎり健闘する程度だ」
「辛口なあんたにしちゃあ高い見積りだな」
バーテンは口から紫煙をこぼしながら苦笑いを返し、言った。
「あいつは上手い。だが別に天才ってクチじゃねェ。どちらかといえば、凡人寄りだ。でも、負けねェ。ただの一度もな。ガンプラも壊さねェ。流れ弾なんかを浴びて損傷はしても致命的な直撃は食わねェ」
セレンは悪党面のバーテンが言わんとすることを理解した。クラフトビールを嗜んでから、呟く。
「……直感やセンスではなく、練度と研究を武器に思考と経験で戦うタイプか」
バーテンは満足げに頷き、短くなった煙草を灰皿に押しつけて、にたり。
「あいつは狩人だよ」
戦場に熱砂の大嵐が迫る中、狐と狸のコンビが戦術を変えた。狸が牽制して狐が叩くのではなく、狐が崩して狸の火力で叩くやり方へ。
セレンは即座に2人の意図を見抜く。
「嵐に呑まれる前に、勝負に出たか」
大規模な
環境的不利へ陥る前に仕留めると判断したことは、間違いではない。が――
狐と狸の戦術変更に伴い、深紅のゲルググも動きを変えた。それまで二機を正面視界に捉えるように動いていたが、狐と狸の間へ割り込む内線機動へ移る。
「勝負に出たのはアイツも同じか」
セレンは煙草を吹かし、紺色の目を細めた。
おそらく増加バックパック無しの回避機動はプラフスキー粒子残量が予想より激しいのだろう。粘って砂塵嵐を利用して戦うという選択肢を採るより、短期決戦を選ぶほどに。
内線機動はある種、数的不利側の常套手段の一つ。相手に味方誤射を恐れさせて手札を制限させられれば、勝ちの目を拾える。が、敵の真ん中に陣取るのだ。一瞬でも集中力を欠けば、わずかでも判断を誤れば、些細なものでもミスを犯せば、即座に致命的事態へ陥ってしまう。
セレンは冷徹な眼差しを紅いゲルググへ注ぐ。
「見せてもらおうか、お前の値打ちを」
迫りくる砂煙の巨壁。赤白と緑黒のモビルスーツの狭間で、深紅のモビルスーツが排気炎を曳きながら砂上を躍る。
狙い通り、赤白のオーバーフラッグは誤射を恐れてビームキャノンを撃てない。
意図通り、緑黒のジェスタは誤射を警戒してミサイル斉射が出来ない。
それでもコンビ戦闘に長けた相手に挟撃されている状況だ。完全な回避は出来ない。ゲルググは機関銃弾とビームに体躯を削がれるも、致命傷に至る直撃だけは避け続け、“機”を図っている。
全てを呑み込む巨大な砂塵嵐が到来するまで秒読みに入った間際、赤い狐と緑の狸が同一線上に位置し、両機の射撃が切れた一瞬。
深紅の大鴉が砂の大地をひと際強く蹴って跳躍。背部メインブースターと脚部スラスターを巧みに空中前転。宙で逆さ状態になりながら、後方の緑狸へ両手武器の全力射撃。
曲芸機動から繰り出された機関銃とロングライフルの弾幕が、緑黒のジェスタへ吸い込まれるように命中。ロングライフルの一撃が右足を吹き飛ばし、機関銃弾が左手を砕き、ミサイルポッドを殉爆させた。
武装の爆発に呑まれて上半身が四散する緑の狸。
フロアは一瞬静まり返り、直後に熱狂的な歓声が上がる。バーテンがぴゅうと口笛を吹く。セレンは無意識に手を握り込んでいた。
想像の斜め上を行く機動と攻撃によって相棒が撃破され、赤い狐が驚愕と戦慄――心理的間隙を抱く。
その刹那を逃すことなく、深紅の大鴉がメインブースターの翼を激しく羽ばたかせ、狐へ襲い掛かる。
反射的に逆関節脚のオーバーフラッグが空へ退避しながら左右武器腕の機関銃と肩のビームキャノンを斉射。深紅のゲルググは両腕の銃を投擲してビームの一撃を誘爆させる。
砂漠に咲く爆炎の花。ゲルググは煌々と輝く火球を突っ切って突撃を続け、オーバーフラッグが機関銃弾幕で迎え撃つ。も、ゲルググがサイドスラスターを焚いて左右に高速蛇行し、射線を散らしたうえで急迫。
狐が爆発に巻き込まれる覚悟で再びビームキャノンを発射する、寸前。
鴉は左右の横軸から縦軸の直上へ機動。ビームを飛び越えてオーバーフラッグの頭上を通過しながら、左腕のビームサーベルを発振し、一閃した。
オーバーフラッグは頭のてっぺんからコックピット部までを割られるように切られ、小爆発を起こして落下。黒煙を曳きながら地表に墜落すると同時に大爆発。
ゲルググがブースターを断って着地すると同時に砂塵嵐が到達し、戦場を覆い隠した。
『……終わった、のか? ……ふぅ』
ダン=モロの安堵の嘆息が聞こえ、戦闘終了宣言が続く。
『バトルエンドッ!!』
フロアに観客達の大歓声が上がり、賭けに勝った者達の喝采と賞賛、賭けに負けた者達の悲鳴と怒号で満ちる。
「二機掛かりで挑んで尚負けるか……」「……やはりな」
ユニットの傍らで肩を落とす赤い狐ウェスと緑の狸イェーイ。
「口ほどにも無かったな。“俺達”の敵じゃなかったぜ!」
落胆する2人とは対照的にご機嫌なダン=モロ。
スミオは思わず『お前は何もしとらんかっただろ』とツッコミを入れそうになったが、口を固く噤んで沈黙を保った。二度と組むことも無いだろうし、悪罵を吐いて要らぬトラブルを生むことも無い。
それに、ダン=モロなんかより、想定以上にサイコゲルググのダメージが大きかったことが問題だ。
悲喜こもごもなファイター達を眺めながら、
「大した小僧だ。あれでEランクは詐欺だな」と悪党笑いをこぼすバーテン。
「思ったより見込みのある野良猫だったか」
セレンは煙草を灰皿で揉み消し、すらりとした身体をカウンタースツールから降ろす。財布から紙幣を二枚取り出してカウンターに置いた。「多いぜ?」と訝るバーテンへ告げる。
「役立たずを抱えて頑張ったあいつに、一杯飲ませてやってくれ」
「奢るのに会っていかねェのか?」
ますます怪訝顔になったバーテンへ、
「“今はまだ”無用だ」
怖気を誘う怖い微笑を返し、セレンは会員制クラブを出ていった。
Tips
ダン=モロ
元ネタはアーマードコア・フォーアンサーに登場した独立傭兵ダン・モロ。
曲者揃いのACfaにおける癒し枠の人。
本作の容姿はオリ設定。
ガンダムGP01
OVA/映画『機動戦士ガンダム0083』の主人公機。ガンダム三大悪女の一人が手掛けた機体として知られている。
本作ではダン=モロが無難に仕上げている。
ウィス&イェーイ
元ネタはアーマードコア・フォーアンサーに登場した独立傭兵コンビのウィスとイェーイ
名前がネタっぽいが、ネイティブアメリカン・セネカ族の言語由来という由緒正しい名前。
ネタは機体名の方で、ウィスは緋色の狐=赤い狐。イェーイは翠玉のアライグマ=緑の狸。つまり、カップ麺の赤い狐と緑の狸。
本作の容姿はオリ設定。
オーバーフラッグ
『機動戦士ガンダムOO』に登場する量産機『フラッグ』のカスタム上位機。
本作では逆関節脚化されているが、これは元ネタのウィス機に寄せたため。
ジェスタ・キャノン。
『機動戦士ガンダムUC』と続編『機動戦士ガンダムNT』に登場した量産機の中距離砲戦仕様。
本作ではバックパックのキャノンをミサイルポッドへ換装。
これは元ネタのイェーイ機に寄せたため。
セレン・ヘイズ
元ネタはアーマードコア・フォーアンサーに登場したオペレーター、セレン・ヘイズ。
本作では赤毛紺眼の欧亜混血美女(アラサー)。性格と言葉遣いがキツい。