※この作品はR-18です。

ビルドファイターズ・レイヴン   作:コウサカさんちのコーヒー

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チョイ長め

誤字報告の感謝が遅れました。申し訳ない。
逸壬護狼さん、邪神イリスさん、報告ありがとうございます

一部表現を修正。ストーリーに変化はありません(5/23)


23:VSホワイト・グリント

 ガンプラバトル・ステージ。

『低軌道7』

 

『機動戦士ガンダムSEED』で描かれた地球連合軍艦隊とザフト軍の低軌道会戦を再現した戦場だ。

 地球連合軍の宇宙軍船とモビルアーマー、ザフトの宇宙軍船とモビルスーツ。それらの残骸とファイターのガンプラが時間経過に合わせて地球の重力に引かれて落ちていく、という危険なギミックがあり、ダメージモード『A』設定だと、大気圏突入装備の無いガンプラは熱損・損壊するという恐るべきステージである。

 

 そんな危険な地球の低軌道上を、純白の機体が閃光のように駆けていく。

 Aランカー、J・オブライエンが駆るフルカスタム機ホワイト・グリントは簡易飛行モードを取り、地球へ向かって緩慢と沈んでいく地球連合軍とザフトの軍艦残骸や、メビウスとジンの残骸――大小さまざまな宇宙ゴミ(デブリ)の狭間を縫うように飛ぶ。

 

 ゲームなら大型デブリにぶつかっても平気だけれど、現実の物理法則が反映されるガンプラバトルにおいてデブリと衝突は、秒速約8キロで移動している大質量と衝突することを意味する。その衝撃は走行中の自動車が壁や電柱にぶつかった場合の比ではない。

 

 ホワイト・グリントは危なげなくステージマップの中央に到達し、比較的原型を留めていた連合軍の艦船残骸の甲板に着艦。変形モードを解く。

 狼の口みたいな複眼バイザーをキュウーンと光らせ、ホワイト・グリントは傲然と周囲を見回す。

 

 眼下に広がるあまりにも美しい地球。頭上に広がる数多の星々。周囲に漂う艦船や兵器達の無惨な残骸と大量の破片。その向こうに凄まじく鋭く疾駆する光跡を捕捉した。

 

 大鴉を名乗るファイターが操る深紅(ドゥカティレッド)の機体。

 事前情報では可変式ロングライフルとフルスクラッチの機関銃がメイン兵装とあったが、望遠が捉えた姿は、両肩にジャイアントバズを担ぎ持ち、ライフルと機関銃は背部大型ブースターのウェポンキャリアに据えている。

 

 J・オブライエンは白い仮面の奥で黒曜石のような目を微かに細め、呟く。

「貴様の力。見せてもらおうか」

 

       ○

 

 交戦距離へ突入後、操縦ブース内にはロックオン警告表示と警報が絶えない。

 データ換算数百メートル先、白い敵機はこちらをFCSの真ん中に据えるように円運動を行う。それも、このデブリだらけの軌道上を自由自在に上下左右前後へランダム機動を取りながら。

 

 フードとスカルマスクで顔を覆うスミオは眉間に深い皺を刻み、ホワイト・グリントを観察し続ける。

 ――単純な推力と航宙機動性はこちらが上。運動性は向こうが上。あの噴射持続が長いサイドブースターだな。それにあの背部にある可変ブースターで瞬発力がべらぼうに高い。

 

 ホワイト・グリントはデブリの間を躍りながら、右手のライフルと左手のアサルトライフルを異なるテンポで打ち込んでくる。今のところ不味い当たりは無いが、少しずつ精度が高くなっている。こちらの動きに慣れられたら、被弾は避けられまい。

 

 ――修正が速い。FCSの性能……いや、ファイターの腕か。

 スミオはサイコゲルググに捻り込みをさせ、艦首がモゲた連合軍の軍艦の陰へ飛び込む。ライフル弾がガスガスと軍艦に貫通孔を穿ち、AR弾の群れが艦の装甲に弾かれて宙へ跳ねていく。

 ――ライフルの貫通力が高い。食らったら確実に削がれるな。AR弾も高初速だが、弾頭質量は軽い。こちらは不味いところに食らわなければ大丈夫か。

 

 スミオは高貫徹力のライフル弾と鋭いAR弾の銃撃、散乱する艦船やメビウス、ジンの残骸を回避しながら、両肩に担ぐジャイアントバズで反撃を繰り返す。

 直撃しなくても構わない。ホワイト・グリントの近くにあるデブリに命中すれば、熱圧衝撃波と破砕したデブリが散弾となって襲う。

 

 同じことをホワイト・グリントも考えたらしい。アサルトライフルでスミオの回避運動を誘導し、サイコゲルググが逃れた先に浮かぶメビウスの残骸をライフルで撃つ。

 メビウスの推進剤と搭載弾薬が誘爆。衝撃波と細かいデブリの散弾に襲われ、サイコゲルググの姿勢と挙動が大きく乱れた。

 

「ッチィ……ッ!」

 スミオが髑髏のマスク内で舌打ちした刹那。

 

 ホワイト・グリントの可変背部ブースター、その左右両端にあるミサイルポッドから一発ずつミサイルが発射された。直後、スミオのロックオン警告表示と警報が続く操縦ブース内に、新たな警告が飛ぶ。

 

 ディスプレイに映るミサイルの位置表示が凄まじい勢いで迫ってくる。

 スミオは乱れた姿勢の回復を諦め、背部の大型ブースターを全開噴射。暴力的な加速でその場から動く。が、先んじてミサイルが相対近距離へ接近。

 

 2発のミサイル、その前半部が鳳仙花のように弾け、計16発の小型ミサイルに分裂。拡散しながら追いすがってくる。

 ――あのサイズで分裂ミサイル(MIRV)っ!? しかも子弾も誘導性と追従性が高いっ! まずい、一発でも食らえば、連鎖的に浴びるっ!

 

「クソッ!」

 背部の左サブアームを展開。ウェポンキャリアからM240B仕様の機関銃を取り出し、後方へ弾幕を展開。追ってくるミサイルの群れを迎撃する。次々と撃墜爆散していく子弾の群れ。

「火力も高いのか……っ!」

 

 爆炎の規模に眉をひそめているところへ、新たなミサイルが放たれた。時間差をつけて1発。2発目。3発目。4発目。分裂ミサイル1発に子弾8発。32発が迫ってくる計算。

 スミオはゲルググの身を捻らせて引き撃ち姿勢を取り、両肩に担ぐバズーカを連射。周辺の艦船やモビルスーツなどの残骸へ大型擲弾を打ち込む。

 

 青々と美しい地球の低軌道上に爆炎が幾つも咲き乱れ、無数の欠片が散らばり、ミサイルを呑み込んで新たな爆炎の花を咲かせた。

 ミサイル攻撃を防ぎ、避けきった。スミオがそう認識した一瞬。

 

 爆煙の隙間で発砲炎が煌めいた。

 

 左のジャイアントバズが砲身に被弾して吹っ飛び、サイコゲルググも着弾衝撃に薙ぎ飛ばされる。

 スミオは唖然と目を見開き、マスクの中で思わず息を呑む。

 ――読んでやがった。

 

 今、ジャイアントバズに当たっていなかったら、胸部左上方から機体の芯を撃ち抜かれていた。

 

 ぶわっと冷汗が噴き出し、身が震えた。

 同時に、恐怖より激怒が込み上がり、戦慄より激憤が湧き上がり、スミオはホログラムコンソールを握りしめ、ディスプレイを睨み据える。

「まだだ。やりようはある」

 

      ○

 

 バズーカを一本破壊されたサイコゲルググは高速機動戦闘をやめた。

 低軌道上から地球へゆっくりと落ちていく艦船の残骸を伝うように飛び回り、遮蔽物の陰から両手で構えるバズーカとサブアームが握る機関銃で、ホワイト・グリントへ攻撃を繰り返す。

 戦闘機のような立体的機動戦闘から、歩兵が行うような地形を利用した運動射撃戦へ。

 

「ゲルググは戦術を変えたか」

 二階ラウンジからステージのガンプラバトル・ユニットで描かれるホログラムと、壁に掛けられた薄膜ディスプレイに流れる戦闘映像を見つめながら、ファットマンが呟く。

 

 同席のセレンとマギーは口を結んで戦いを注視している。が、2人は見つめるものが違った。

 セレンは深紅のサイコゲルググがどこまで戦えるかを測るように観察し。

 マギーはホワイト・グリントの挙動から操縦者が死神かどうか探るように監視し。

 

 分裂ミサイルに追い立てられたサイコゲルググの未来位置を予測し、ホワイト・グリントがライフルとアサルトライフルを撃ちこむ。

 

 サイコゲルググは推力に物を言わせてホワイト・グリントの銃撃を強引にかわし、コンパクトなインメルマンターンで反転逆襲。機関銃の点射で宙を漂うメビウスやジンの残骸を撃ち、爆破。爆煙と粉塵で撹乱しつつ、ジャイアントバズの乱れ撃ち。

 

 ホワイト・グリントは咄嗟に可変ブースターを展開。暴虐的な瞬間加速で大型擲弾の掃射を振り切った。

 

 宇宙空間に咲く爆炎の花々と幾つも走る曳光弾の光条。地球上の低軌道に両機のブースターやスラスターが複雑模様の光跡を描く。戦闘は激しさを増す一方。

 

「戦闘と言うより狩りだな。狩る者と狩られる者の立場が頻繁に入れ替わっているが……これは狩りだ」

 ファットマンは腕を組み、感じ入ったように唸ってからセレンをちらりと横目にした。

「あの兄さん、レイヴンだったか? 確かに良い腕だ。なるほど、お前が目をつけるだけはあるよ、セレン。マギーの言う通り、あれでEランクってのは詐欺だな。だが」

 

「実力差を覆すほどじゃない」

 マギーがファットマンの言葉尻を奪った。眼鏡の奥で海色の瞳がぎらぎらと輝いている。

「伍して戦っているように見えるけれど、戦いの主導権はホワイト・グリントが握っていて、しかもまだ余裕を残してる。実力的には完全にホワイト・グリントの方が上よ」

 

「確かにな。だが」

 セレンはファットマンとマギーのシビアな見解に頷き、フッと薄く口角を歪めた。怖気を誘うほど冷たい微笑だった。

「奴はまだ諦めてはいないようだ」

 

 サイコゲルググがザフト軍艦の千切れた艦尾の陰へ飛び込み、ホワイト・グリントは深紅の機影を追って艦尾残骸の上方から回り込む――その矢先。影が飛び出す。

 

 ホワイト・グリントが即応し、ライフルを発砲。

 囮として蹴り出されたらしいジンの残骸が撃ち抜かれ、爆散。

 

 如何なる訳か今までの残骸より爆発の火球が大きい。ホワイト・グリントが火球を避けるように艦尾残骸の陰へ回り込む。も、ゲルググの姿はない。

 

 敵影を見失ったホワイト・グリントが周囲を見回した、刹那。

 

 艦尾残骸の側壁が貫かれ、高貫徹力のビームがホワイト・グリントの右胸部を直撃した。

 

 被弾したホワイト・グリントが激しく吹っ飛び、宙に漂う大きな残骸に激突。意識を飛ばしたように動きを止める。

 

 フロアが歓声と悲鳴に響き渡る。マギーは驚愕に身を強張らせ、ファットマンは目を丸くして唖然としていた。セレンは小さく頷いてぎゅっと拳を握る。

 

 直後、貫通孔の開いた艦尾残骸の側壁が大きく切り裂かれ、銃身が伸張したロングライフルを抱えるサイコゲルググが艦内から現れた。

 

 動かぬホワイト・グリントを仕留めるべく、長槍みたいになったロングライフルを両手で構えた。その時。

 

 ホワイト・グリントの頭部。狼の口みたいなバイザーが血のように赤い光を走らせた。

 

 事象としてはただの再起動に過ぎない。だが、その様相から発せられる極悪なまでのプレッシャーにサイコゲルググの指が思わず止まる。その峻烈なプレッシャーはガンプラバトル・ユニット内に留まらず店内にも波及した。観客達はもちろん、セレン達までも息を呑む。

 

 その意識の間隙を突くように、ホワイト・グリントが可変ブースターの左右両端に装着したミサイルポッドから、分裂ミサイルを発射。

 

 我に返ったゲルググは機を逃したことを悟り、身を翻して後退。ミサイルが着弾した艦尾残骸の爆発に紛れ、サブアームが持つ機関銃で弾幕を張りながら次の障害物へ向かって疾駆していく。

 

 ホワイト・グリントは真っ赤な光を称える頭を蠢かせ、ゲルググを追って傲然と飛翔する。

 

「――奴よ。間違いない」

 端正な顔から血の気を引かせ、マギーは唇を震わせながら、血を吐くように呟く。

「死神」

 

       ○

 

 軍艦やモビルスーツなどの残骸が重力の井戸へ落ち始め、断熱圧縮が生じてプラズマ化した大気の赤熱色を曳き始めた。メビウスやジンの残骸が砕け、推進剤や弾薬が高熱に誘爆し、細かな破片や欠片が一瞬で融解、蒸発し、焼尽していく。

 

 ホワイト・グリントは高度を上げず、大気圏へ落ちていく地球連合軍の軍艦の甲板へ降り立った。

 

「大気圏に突入しながらドンパチチャンバラをする気か」むぅと唸るファットマン。

「妥当な判断だ」セレンはホワイト・グリントの判断を肯定した。

 

 デカいバックパックを背負っているサイコゲルググに大気圏突入の負荷とリスクが大きい。本格的に熱圏へ到達すればまともに機動できなくなる。サイコゲルググが勝つには熱圏へ完全に落ちるまでにホワイト・グリントを倒すしかない。

 

 マギーは口元に拳を当てながら、”初めて”深紅の機体を真っ直ぐ見つめ、呟く。

「貴方はどう立ち向かう……?」

 

 セレン達のように観客達の一部が大番狂わせやジャイアントキリングを期待し始め、店内に緊張感が広がっていく中。

 

 スミオは髑髏マスクの中で息を整える。全身汗みずく。絶え間なくホログラムコンソールを操り続けた両手と両手首、両腕が疲労で攣(つ)りそう。瞬きの不足で目が痛む。

 ――不味い状況だな。

 

 地球上軌道用の高度計の数値が吹っ飛ぶように減っていく。

 熱除けにしているザフトの軍艦残骸が空力加熱で真っ赤に染まり、煌々と赤く輝くプラズマ化大気に包まれて、断熱圧縮の圧力に艦体が端から崩壊していた。

 

 重力の井戸という凶悪なステージギミックがこれ以上の小細工を許さない。こちらは今、藪から飛び出さざるを得ない獣と同じ。向こうは獲物を待ち構える狩人。

 ――だが、まだ手はある。

 

 スミオはもう一度深呼吸し、決断した。

 

 サイコゲルググがザフトの軍艦の残骸から重力の井戸へ躍り出る。

 馬手にロングライフル。弓手に機関銃。左右サブアームにザクマシンガン。手持ちの全火器を構え、眼下の艦上に立つホワイト・グリントへ向け、全速で真っ逆さま。

 

 ホワイト・グリントが狙い通りと言いたげに両手の武器と左右ミサイルポッドを構え、上方から迫るサイコゲルググを迎え撃つ。

 

 サイコゲルググは空力加熱で表面塗膜が焼かれ、プラズマ化した大気の赤熱色とブースター炎を曳きながらフルダイブ。同時にホワイト・グリントへ全火力を叩きつける。機関銃とザクマシンガン、ロングライフルの弾幕に加え、大型ブースターのウェポンキャリアから6発の短距離ミサイルが放たれる。

 

 ホワイト・グリントがブースターを焚いて甲板上を滑走し、弾幕を回避しながらサイコゲルググへ応戦。両手の火器を放ち、分裂ミサイルを発射。

 

 両機の放つ弾幕が交錯し、両機の放ったミサイルが交差した。

 瞬間。サイコゲルググの短距離ミサイルが爆発。高圧電磁波が放たれ、周辺大気のプラズマと干渉。凶暴なまでの電磁気が荒れ狂い、分裂ミサイルの弾頭が熱損して明後日の方向へ飛び去っていく。両機のセンサー群も被害に遭い、火器管制系がブラックアウト。再起動状態に陥る。

 

 が、サイコゲルググもホワイト・グリントも、最も堅牢な電磁波対策が施されている光学系メインカメラを頼りに、目視マニュアル操作で銃撃と回避機動を継続。

 

 降り注ぐ弾幕は純白の機体を捉えきれず、軍艦の甲板を穿ち耕すのみ。

 打ち上げられる弾幕が深紅の機体を捉えた。

 

 サイコゲルググは高貫通力のライフル弾に左手首を砕かれ、機関銃が乱射しながら熱圏へ投げ出された。右脛を撃ち抜かれ、右脚ブースターが停止。姿勢が乱れる。アサルトライフルの弾幕に右サイドアームをもがれてザクマシンガンが失われた。胸部や腹部に被弾。装甲が割れ砕け、内部構造が露出。空力加熱に焼かれて即座に黒煙を吐き出し始める。

 

 それでも、スミオは病的集中力を発揮して突撃を続けた。荒れ狂う大気に翻弄される機体を操り、目算で照準を合わせ、ホログラムコンソールの射撃スイッチを押し続ける。

 

 その執念が実る。

 ロングライフルの一撃がホワイト・グリントの左顔貌付近に着弾。

 

 極悪な電磁気によって強く減衰したのか、熱光線はボディを貫通しきれなかったが、装甲を叩き割って白い体躯が大きく姿勢を崩す。

 

 そこへ、軍船残骸の大きな揺動が重なり、ホワイト・グリントは甲板から艦尾方向へ投げ出された。

 熱圏の地獄へ放り出されかけるも、咄嗟にアサルトライフルを捨て、破壊されていた艦橋へ左手を突き立てた。がりがりとめくれ裂けていく艦橋の外殻。摩擦と衝撃で左手首の白い装甲が削がれ、指のいくつかが千切れ飛ぶ。背部と側部のブースターと各部のスラスターとバーニアを炊き、ぎりぎり艦上に留まることに成功。

 

 既にスミオは追撃へ移っていた。

 右手のロングライフルを捨て、左サブアームのザクマシンガンを捨て。大型ブースターの推進剤タンクと補助ブースターを捨て。少しでも機体を軽くし、出力をオーバーレブさせて推力機関を限界まで全開。手首から先を無くした左腕のビームサーベルを発振し、ホワイト・グリントを引き裂くべく襲い掛かっている。

 

 ホワイト・グリントが右手のライフルで迎え撃つより、どこかからビームサーベルを抜刀するより先に、自分の光刃が届くだろう。

 殺(と)った。

 スミオが確信した。

 

 ――と同時。

 光刃を構えた深紅の影が急迫してくる中、ホワイト・グリントの両肩や脚部、胸部などからメカニカルな部位が開放隆起し、最後に狼の口みたいなバイザーを、損傷した顔貌左部の破孔部までは閉じられなかったものの、防護シャッターが覆い守る。

 

「! まさか――――」

 ホワイト・グリントの“意図”を理解し、スミオが凛々しい顔を引きつらせた。

 

 そして――

 

     ○

 

 バトル・ユニット上はおろか、ナイトクラブの店内を塗り潰しかねないほど強烈な閃光と轟音、軍艦の残骸をくの字にへし折るほどの激甚な衝撃波が発せられた。

 

「アサルトアーマー……っ!?」

 ファットマンは眩しげに目を庇いながら、呻くように吃驚をこぼす。

 

「今の、私達の知ってるアサルトアーマーじゃない」

 マギーが美貌に大きく強張らせ、呻くように言葉を紡ぐ。

「アサルトアーマーはガンプラに蓄積されたプラフスキー粒子を開放機構に収斂圧縮して放つシステムよ。でも今のアサルトアーマーには収斂圧縮のプロトコルが無かった。あの機構に元々蓄積されていた粒子をパルス爆発させたように見えたわ」

 

「新型のアサルトアーマー……ということか」

 セレンが麗貌を険しくしている間に残光が熱圏へ消えていく。

 

 戦いは決していた。

 真っ二つに折れた軍艦の上には、泰然と屹立するホワイト・グリントと、その眼前にサイコゲルググが両膝をついてへたり込んでいる。

 

 ゲルググは顔を覆う増設センサーの奥でモノアイが絶え、全身から黒煙が昇る。大型ブースターの接合部の一部が外れ、背中からくたり垂れ下がっていた。

 

 システムの戦闘終了が宣言されていないから、まだ撃破判定は下っていないのだろうが……

 

 ホワイト・グリントはバイザーシャッターを開き、展張していた各部を収納。センサーの冷却材が溢れているのか、顔貌の破孔部から呼気のように蒸気がこぼれていた。

 傲然と姿勢を直し、右手に握るライフルの銃口を動けぬゲルググへ向けた。容赦も慈悲も無く、引き金が絞られる。

 

 グポォン!

 突如、サイコゲルググのモノアイが輝き、左腕のビームサーベルを発振。身体を起こしながら眼前の敵へ向かって振るう。

 

 ホワイト・グリントの右腕が宙を舞った。

 

 ナイトクラブが吃驚と感嘆にどよめく中、隻腕になったホワイト・グリントは咄嗟にスラスターを吹かして離脱を図る。

 傷ついた深紅の獣は背部の大型ブースターをパージ。逃げるホワイト・グリントを仕留めんと最後の力を振り絞るように各部ブースターとスラスターから排気炎を放つ。

 

 が。損傷した推力系が負荷に耐えきれず、ブロー。背部や脚部が爆発を起こし、サイコゲルググはその場に崩れ落ち、操縦者から小さな呟きが漏れる。

『――……届かなかったか』

 

 

『バトル・エンド』

 システムが終了を宣告する。

 

 戦いは終わった。

 これまで無敗だった大鴉の敗北によって。




Tips

 ホワイト・グリント
 オリ機体。元ネタはACfaの河森デザインの方。ACfaを代表する機体であり、発売当時は専門学校のCMでも取り扱われていたため、ゲームやホワイト・グリントを知らなくても、機体自体を見たことがある人は多い。
 作中アセンと武装は元ネタ準拠。

 アサルトアーマー
 オリ設定。元ネタはACfaとAC6のアサルトアーマー
 前者と後者ではメカニズムが異なる。
 ACfaでは、機体表面を循環するプライマルアーマー用のコジマ粒子を収斂圧縮して開放することで衝撃波をぶっ放す。いわば必殺技。

 AC6では、コア機能の一つとして登場。機体を中心にパルス衝撃波をぶっ放す。ACfaほど凶悪ではなくなったけれど、やっぱり強力。

 本作でのアサルトアーマーの説明については追々。

 プライマルアーマー。
 オリ設定。元ネタはACfa。
 コジマ粒子を機体表面に循環させ、力場を形成。実包などの質量兵器から榴弾やミサイルなどの爆発・熱圧衝撃波兵器も無効化させる。
 機能的にはPS装甲みたいなもん。使っているコジマ粒子が除去不可能な汚染物質というだけ。
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