ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
目の肥えた観客達をシビレさせるほどの激戦は終わり。ナイトクラブ『ヘリオポリス』は一階フロアも二階ラウンジも、激闘に当てられた観客達の昂奮と熱気に満ちている。
然して、戦いの後のセレモニーは盛り上がらなかった。なんせ勝者のJ・オブライエンは試合が終了するや否や幽霊のように姿を消し、敗者のレイヴンも無言のまま控室に去ってしまっていた。
『あー……それではメインイベント開始までしばしお待ちください!』
MCがヤケクソ気味に声を張り、エキシビジョンマッチの終わりを告げた。
昂奮収まらぬ観客達。泥仕合だったノイエ・ジール対α・アジールと打って違い、熱戦熱闘のエキシビジョンマッチですっかり盛り上がっている。賭けに勝った者も負けた者も口々にホワイト・グリントの練達さとサイコゲルググの鮮烈さを語っていた。
もはや誰もサイコゲルググの負けを『順当な結果』と見做していない。Aランクをぎりぎりまで追い詰めた恐るべきEランカー。Rb023レイヴンの名は確かに刻まれた。
一方で、マスター・オブ・アリーナという狂気の祭りを知る者達は、ホワイト・グリントに伝説的なファイター『死神J』の復活を確信し、内心で慄いている。同時に『死神J』相手に善戦したレイヴンというファイターを確かに記憶した。
ただ、会場に居た多くのファイターやガンプラバトルのファンが最も注目していた点は別だった。
戦いの勝敗を決定づけた一撃。ホワイト・グリントが放ったアサルトアーマーに注目し、周囲の者達と熱心に議論を交わしている。
喧噪満ちた店内。二階ラウンジの一角。マギーは椅子の背もたれに体を預け、緊張を抜くように大きく息を吐いた。ファットマンは喉の渇きを癒すようにグラスを大きく呷る。
「いろいろ驚かされたな」グラスを置き、ファットマンはしみじみと「最後の太刀筋。あれがもう少し内に入っていれば、結果は違った」
「かもな」
セレンは腰を上げた。煙草ケースとライターをジャケットポケットに突っ込む。
「帰るの?」
「いや」
マギーの問いかけに首を横に振り、セレンは前髪で隠していない左の紺眼を細め、
「“猫”を拾いに行く」
魂を収穫に赴く悪魔みたいに微笑んだ。
長身の欧亜混血美女が赤毛を揺らしながら階段を降りていく。その様子を視界の端に収めるフナキ・サトミは壁際でバトルの余韻を味わっていた。
……すごかった。ちょーすごかった。すごかったぁ……
語彙力が死亡するくらいに、サトミの頭はエキシビジョンマッチの死闘にシビレている。
デブリの間を縫うように飛び回る高速機動戦闘。宙を漂う残骸を利用した駆け引きと狩り合い。大気圏へ突入しながらの決戦。“推し”の戦いぶりを生観戦した迫力と感動に、サトミは身体の火照りと心の高揚を否応なく自覚する。
すごかった。ちょーすごかった。
文化祭の体験会で知った玩具を使ったお遊びでもない。配信イベントでアスリートのような女性達が見せてくれたハイテク競技でもない。ガンプラという“武器”を使った、人は死なないけれど、心血を注いで制作した作品が損傷し、破壊される痛みを伴う本物の“闘争”。
純度100パーセントに達したファン心理が、恋愛とは違うベクトルの強烈な熱量を生むことを、サトミは体験として学んでいた。
「やっば」
立体不織布マスクの中で密やかに呟く。
来るんじゃなかった、という後悔と自省。
――あんなの見っちゃったら。こんな感動体験しちゃったら。
また生観戦したくなっちゃう。不味いって。絶対に不味いって。観戦のためにアングラなトコに出入りしてたらそのうち絶対に不味いことになるって。
「やっばいってこれ……」
頬が火照る顔を両手で押さえ、サトミは煩悶する。
16歳の小娘が我が身に起きた心境の激変に懊悩している時、その原因であるサイコゲルググのファイター、識別名Rb023レイヴンことアリサワ・スミオはスタッフ用トイレの個室に入り、便器に腰かけていた。
フードとスカルのマスクを下ろし、瞑目して静かに息を整える。スミオは汗で湿った髪を掻き上げて大きく息を吐く。
バトルの高揚と昂奮が冷えた汗に醒まされていくにつれ、心の奥から敗北の苦みが込み上がってくる。
ポケットから外していたペアリングを取り出してぎゅっと強く握りしめ、『ごめん、エリ』とその拳を額に当てて心の中でエリに詫びる。
エリが手塩を掛けて作ってくれたガンプラを完全に壊してしまった後悔。
エリが素晴らしいガンプラを作ってくれたのに、負けてしまったという自責。
何より、勝機を逃したという慙愧。
ロングライフルの不意打ちが当たった時、ホワイト・グリントの迫力に気圧されることなく、追撃の一発を撃ち込めていたら。
大気圏突入時の強襲。あの時、確実にホワイト・グリントへ弾をぶち込めていたら。
アサルトアーマーの発動を見抜いてかわせていたら。
不意に、目頭に熱を覚え、トイレ個室の壁なりドアなりを殴るか蹴るかしたい衝動に駆られる。
「クソ……ッ!」
が、スミオは悔し涙を流したり物へ当たったりする代わりに、自身を罵倒するように毒づいた。項垂れてしばしの後悔と自責に悶々とした後、再び大きく息を吐く。
「……帰ろう」
ペアリングを左薬指へはめ、マスクを着け直してからフードを被り、トイレタンクの上に置いた強化樹脂製ケースを小脇に抱え、トイレを出た。
フードとマスクで覆った顔を酷くしかめながら選手控室へ赴き、労いの言葉を掛けてくるスタッフに丁寧に一礼。貸されたロッカーから三角バッグを取り出し、大破損壊したサイコゲルググを収めるケースを突っ込んで袈裟に背負う。
重い足取りで控室を出る。と。
「私の渡した名刺はまだ持っているか? レイヴン」
赤毛紺眼の混血美女が待ち構えていた。
長身をカジュアルシックな装いに包み、背を壁に預けて立つ姿はクールビューティという言葉そのもの。
以前、名刺を寄越したグレーゾーンの美女。名前は確か――
セレン・ヘイズ。
怪訝そうに眉根を寄せたスミオへ、セレン・ヘイズは告げた。どこかからかうように。
「お前は見どころがある。が、奴のような“本物”を相手には善戦が精いっぱいだ。勝つにはいろいろ足りない。今のまま昇級すれば、“本物”相手に負けることも増えるだろう。稼ぎも減り、場合によっては借金も背負う」
スミオは眉間に皺を刻みつつ、無視して意地悪な美女の脇を抜けていく。
「私ならお前を勝てるようにしてやれる。今日のような戦いにもな」
背に投げられる言葉。普段のスミオなら相手にせず立ち去れただろう。しかし、敗北に乱れている感情が足を止めさせた。肩越しに振り返り、セレンを真っ直ぐ睨みつける。
「話を聞く気になったか?」
苛立ちと怒気のこもった鋭い眼差しを浴びるも、セレンは涼しい顔で微笑む。まるで子猫でも相手にしているように。
「バイクで来てるんだろう? 少し頭を冷やした方が話もし易い。飯倉からC1に入って辰巳のPAで待て」
数秒の逡巡。この怪しげな美女の誘いに乗るリスクを秤にかけた末――
スミオはセレンへ頷き、今度こそ立ち去る。ナイトクラブ『ヘリオポリス』を出た。晩秋の夜が更けても都心の繁華街は煌々と輝き、寒気など存在しないかのように酔客で賑わっている。雑踏へ紛れ込みながら、愛車を止めたコインパーキングへ強く歩き出す。
自身の背を見送る視線があったことに気づかずに。
店を出ていく“推し”の背を見つめていたサトミは、混乱していた。
サトミには“推し”の左手にあった指輪に見覚えがあったから。
「あの指輪って……まさか」
○
高回転型の水冷直列四気筒エンジンが奏で、ヨシムラ菅が歌う。
夜の首都高都心環状線――C1を青白のチャンピオンズカラーに塗られたスズキのスーパースポーツが駆けていく。
深夜ドライブの一般車やお勤め中の貨物トラックの間を縫うように走り、道路交通法に後ろ足で砂を引っかけるようにかっ飛ばす。
運転免許要綱は『メンタルがヤバい時は車やバイクを運転すんなゾ。危ういゾ』と定めている(これは本当)が、スミオは敗北で逆立っていた感情が沈静化していた。
バイクを運転することに集中し、余計なことを考えずに済んでいるから。
なんせバイクの運転は“忙しい”。
右手でアクセルと前輪ブレーキを操作し、左手でクラッチレバーを操作し、右足でリアブレーキを操作し、左足でシフトペダルを操作し、両腕でハンドルを、身体全体でバイクそのものの挙動を操る。目は前方を見据え、逐次周囲とミラーで背後を窺う。
思考も遊んでいられない。周囲の交通状況を絶えず認識し、予測しなければならない。自身も周囲も時速100キロ以上で走っているし、1トン以上の鉄の塊がすぐ傍を走っているのだ。一瞬の誤りや遅れが死神を呼び込む。
オマケに走っている道路は、世界屈指の高難度サーキット『ニュルブルクリンク』並と評される道路設計と深夜でも相応の交通量がある首都高だ。忙しくてメンタルをヨレさせている暇はない。
六本木から辰巳第一パーキングエリアまで約10キロ超の移動。秋夜の寒気と運転に集中していたことで、スミオの精神状態はすっかり落ち着きを取り戻していた。
到着した辰巳第一パーキングは、東京摩天楼の夜景を見渡せる有名ナイトスポットだ。アンポンタン共がたむろするため、たびたび夜間封鎖されてしまうパーキングの一つ。
今宵もいくらか派手な車が目立つ。成金御用達のスーパーカーや外車。恰好だけ金が掛かった国産スポーツカー。それらの下にたむろする暇人達。
スミオは駐輪スペースに愛車を止め、ヘルメットを脱ぐ。顔をスカルのフェイスマスクで覆い隠し、スマートフォンをチェック。
メッセージアプリに着信が二つ。
一つはエリから。オールマインドのライブ配信を見たのだろう。
『お疲れさまでした。気をつけて帰ってきてくださいね』
慰めや励ましはなく、ただ労いの言葉だけ。スミオはその気遣いに感謝と罪悪感を抱きつつ、改めて思う。やはりエリは最高の女であると。
もう一つは今回のエキシビジョンマッチを組んだオールマインドから。
今回の結果は戦績に反映されない旨を改めて記されている。記録上はいまだ負け無しという訳だ。胸中に苦いものが込み上がった。
馬鹿馬鹿しい。大勢が今夜の負けを見たというのに。それで『負け無し』を称しても滑稽なだけだろう。物笑いの種だ。
それと――
「ランク昇級か」
Aランカー相手に奮戦敢闘した実力を評価し、ランク昇級を認めるとのこと。
生贄役を務めた御褒美か。穿った見方をしてしまうのは敗北に拗ねているからだろうか。
スミオがマスクの中で渋面を作っているところへ、辰巳PA内に桜色のポルシェ911が進入してくる。
優美な曲線で構成されるポルシェの名車は駐車場の一角に停車。左右のドアが開き、2人の美女が降りた。
一人はクラブで出会った欧亜混血美女のセレン・ヘイズ。赤毛の長髪を夜風に撫でられるその麗貌はなぜかムスッとしていて不機嫌そう。
もう一人は見覚えのない女性。セレンよりいくらか若く、スレンダーな中背を小奇麗なスカートコーデと秋物コートに包んでいる。美貌と評してよい細面に眼鏡。明るい栗色のミディアムボブに海色の瞳。かといって肌の色味と顔の造作は白人系ともアジア系とも言い難い。
そして、左手でロフストランド杖をついて不自由な左足を庇っていた。
見知らぬ女性は不機嫌なセレンを相手にせず、夜風を浴びて目を細めている。
セレンは駐輪スペースにスミオを見つけ、杖の女性を伴ってやってきた。
「……こいつはマギー。勝手についてきただけだ。気にするな」
マギーこと杖の女性はスミオへ黙礼しつつ、フードを下ろしてスカルマスクだけ装着しているスミオをまじまじと見つめ、探るように尋ねた。
「思ったより……まさかとは思うけど高校生じゃないわよね?」
「……学生」図星を突かれたスミオは、それ以上言わない。
が、マギーは察したらしい。眉間に皺を刻んで隣のセレンへ疑惑の眼差しを注ぐ。
「貴方、知ってたんじゃないでしょうね?」
「知らん。が、どうでも良い。こいつは既に夜の盛り場へ出入りし、アンダーグラウンドのガンプラバトルに参加してるんだ。未成年かどうかは問題じゃない」
セレンはポケットから銀製の煙草ケースを取り出し、口にくわえてロンソン型ライターで火を点す。紫煙を燻らせて嘯くセレンへ、マギは眼鏡の奥で冷ややかに目を細めた。
「大問題でしょうよ。バカなの?」
「誰がバカだ」セレンが不快そうに舌打ちし「口出ししないと約束しただろ。黙ってろ」
「目の前で未成年を囲おうとしてる奴が居たら止めるでしょ、普通」とマギーは咎めるように返す。
「人聞きの悪い言い方をするな」
苛立たしげに紫煙を吐き、セレンはアシンメトリーな前髪で覆っていない左の紺眼でマギーを睨み据えた。
「だいたいこいつの歳をどうこう言えた立場か。お前だって昔は未成年でアングラへ出入りしてただろうが。しかも田舎ヤンキーみたいな恰好で」
「そんな恰好はしてない。普通のストカジよ。だいたいそっちだって――」
やいやいとじゃれ合い始めた年上美女2人に『何を見せられてるんだ……?』とスミオは眉を大きく下げ、横から口を挟む。
「……本題に入ってくれ」
スミオの横槍にセレンとマギーは揃って舌打ちし、じゃれ合いを止めた。そして、
「話は簡単だ」
紫煙と冷気に白く染まる呼気を混ぜて吐き出し、セレンは告げた。
「私と組め、レイヴン」
予想された提案に驚きはない。スミオはかすかに眉をひそめ、セレンへ問う。
「雰囲気で分かる。あんたはファイターだろう? なぜ自分で戦わない?」
セレンは煙草を持つ右手を小さく上げた。
「右手に神経系の後遺症がある。日常生活はともかく、私はもう自分が納得できる水準のバトルを出来ない」
マギーが唇を引き結び、ロフストランド杖の持ち手を強く握り込む。その様子を横目に捉えつつ、セレンは続ける。
「私自身は戦えないが、私の培ったノウハウとコネクション。私の経験で、お前を“本物”と戦えるようにしてやろう」
「ノウハウとコネ、経験。その対価は何だ? 金じゃないんだろう?」
スミオはちらりとセレンが乗ってきた桜色のポルシェへ目を走らせる。
ポルシェ911の三代目、外見を変えずに発展させてきた911型の最終モデル。ポルシェ964とも呼ばれる型だ。市場価格は中古で1000万円を大きく超え、場合によっては『応相談』価格だ。古い高級車だから維持費も安くない。
こんな車をアシ代わりに乗り回しているくらいだ。金は持っているだろう。ガンプラバトルで稼げる小銭なんぞ目的にすまい。
桜の香りがする紫煙を燻らせ、セレンは目的を告げる。
「近い将来、とあるガンプラバトルのイベントが催される見込みだ。お前には私のファイターとして参加してもらう」
「セレン、MoAモドキに未成年者を参加させる気っ? あれがどんな代償を伴うか、貴女自身よく分かってるでしょう!」
マギーが眉目を釣り上げて食ってかかる。ただマギーの様子は、スミオの目には正義感や良識で口を挟んだというよりも、自身の体験に基づいているようだった。
「MoAほど危険とは限らない。お前の懸念は早合点に過ぎない」
セレンが疎ましげに応じるも、マギーは詭弁を弄すなというように追及の舌鋒を刺す。
「なら、MoAほど危険だった場合、その子を参加させないと?」
「”俺”の知らない事情で揉めるのはやめてくれ」
スミオは仰々しいほど大きく溜息を吐く。髑髏のマスクから漏れた呼気が夜風に触れて白く靄がかる。マギーに噛みつかれて不機嫌顔のセレンへ問いかけた。
「あんたは自分の知識や経験、伝手が俺の役に立つというが、その言葉が真実かどうかどう確かめる? 口先だけでない保証は?」
「小賢しいガキだ」セレンは紫煙を燻らせ、鼻で笑う。
「妥当な警戒心でしょ」マギーが皮肉を吐く。
「さっきから鬱陶しいぞ」セレンはぎろりと紺眼でマギーを睨み据えてから、スミオへ顔を向けて「良いだろう。明日の夜、お前が出入りしている西東京のあの会員制クラブに来い」
「ガンプラがない。あんたも見ていた通り、ゲルググは壊れた。当分、バトルは出来ない」
「機体は私が用意する。それを使えば良い」
スミオが真っ当な理由を付けて渋るも、セレンはさらりと言ってのけ、薄く笑う。
「心配するな。取って食ったりしない。アゴアシ代くらいは払ってやる。足を運ぶだけで小遣いを稼げて”遊べる”ぞ」
短くなった煙草を足下へ落として踏み消し、
「明日、来なければ話は無しだ。よく考えろ」
セレンは踵を返して桜色のポルシェに向かって歩き出す。
愛車の許へ向かって歩くセレンをチラリと一瞥し、マギーはスミオへ問いかける。ひどく切実そうに。
「……今夜戦った相手。君はあれと戦って何を感じた?」
奇妙なまでの真剣さに釣られ、スミオは小一時間前に交わしたバトルを振り返る。J・オブライエンとかいう殺し屋みたいな男が操ったフルスクラッチのガンプラ、ホワイト・グリント。
単純に強かった。ファイターとしても、ビルダーとしても、これまで戦ってきた相手の誰よりも強かった。それは間違いない。自分の腕を過信するわけではないが、全国大会出場選手のスドウを相手に伍して戦えるだけの実力は備えている。それでも――
「そう、だな……質問のあいつは最後まで”全力を出さなかった”」
ホワイト・グリントは全力じゃなかった。一発浴びせて本気にはさせたられたようだが、全力を出させることは出来なかった。奴は最後まで余裕を残していた。最後に食らったあの攻撃――『キング・オブ・リンクス』で見たことがあるエネルギー攻撃、アサルトアーマーを使用したことにしても窮鼠の牙ではなく、狙い澄ました必殺の一撃だった。
少し考えて、スミオは言葉を付け足す。
「今思えば、なにか調子を試していたような……そんな感じがする」
マギーは杖を持たぬ右手を口元に当てて考え込む。プロファイラーが殺人鬼の心理分析か行動予測でもしていそうな面持ちだった。
因縁でもあるのだろうか。スミオがそんな想像を抱いたところへ、ポルシェのドアを開けたセレンがマギーを呼ぶ。
「行くぞ、マギーッ!」
思索を邪魔されたことに唇をへの字に曲げつつ、マギーは左手のロフストランド杖をついてポルシェへ向かってゆっくりと歩み出す。と、不意に振り返って告げた。
「この界隈の先達として忠告しておくわ。セレンの提案は断るべきよ。そして、取り返しがつくうちにアングラから足を洗いなさい」
でも。マギーは眼鏡の奥から海色の瞳を真っ直ぐ向けて、言った。
「アングラなガンプラバトルを続ける気なら、セレンと組むことは一つの選択肢よ。あいつは半グレと大差ないけど、騙したり裏切ったりはしない女だから」
スミオは桜色のポルシェを見送り、面倒臭いことになったな、と鼻息をつく。
次いで、美女2人と交わした短いやり取りで得た情報をぽつりと呟いた。
「……MoAってなんだ?」
Tips
フナキ・サトミ
原作のネームド・モブ。半ばオリキャラになっている。
”推し”の生観戦に興奮。”推し”の正体のヒントを掴んで混乱。情緒が忙しい。
セレン・ヘイズ
オリキャラ。元ネタはアーマードコアの人気オペレーター。
いよいよオリ主に接触してきた。
マギー
オリキャラ。元ネタはアーマードコアの素敵なオペレーター。
セレンに苦言を呈し、オリ主に忠告を授ける。
アリサワ・スミオ
本作のオリ主。
アラサー美女に怪しい勧誘を受け、二十代半ば女性に忠告を受ける。