ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
「初見の機体だってのに上手く扱うもんだ」
ファットマンはビールを口に運び、しみじみと呟く。口調は気楽な試合観戦者そのものだが、目つきは戦力評価する指揮官さながらに厳しい。
「あのガンプラ、性能的にはどうなんだ?」
「平凡よ」
シャーリーテンプルで喉を湿らせ、マギーはバトルユニットの戦闘映像を注視しながら続ける。
「ブースト系の機能を除けば、ベースキットとの違いはフレーム強度と推力性能くらい。機体性能も兵装も基準値の範疇でしょうね。どんな戦い方も無難にこなせるけど、特化した戦い方は出来ない。そういう癖のない作りよ」
「ふむ……」ファットマンは少し考えて「レイヴンの腕を図るための機体か」
「それ”も”あると思う」
ファットマンの見解へ同意しつつ、マギーは夜の市街地を駆ける灰色のジェガンモドキを見つめ、言った。
「セレンが”楽しむ”ための機体だと思うわ」
その静かな指摘には羨望と嫉妬が見え隠れしていたけれど、ファットマンはあえて気づかぬことにした。代わりに、目線を対戦相手へ向ける。
「しかし……あのドム足のティエレン、やけに硬いな。ミサイルが直撃しても装甲にヒビが走っただけだぞ」
「多分、主要部回りにかなり肉盛りと肉詰めがしてある」
装甲強化の手法は幾つかあるが、その一つにプラフスキー粒子含有パテを盛る『肉盛り』と隙間にパテを詰め込む『肉詰め』という手法がある。機体重量がかなり重くなるし、関節部の負担がハンパないけれど、肉厚になった分だけ頑丈になるし、プラフスキー粒子蓄積量も増加する。
「セレンの機体で、あのティエレンを仕留めるにはかなり苦労するわよ」
マギーは眼鏡の奥で海色の瞳を鋭くしていた。美貌を険しく歪め、瞬きする間すら惜しんで戦闘を注視している。その目はかつてプラフスキー粒子の描く戦場に心血を注いでいた頃へ戻ったかのようで。
――お前はまだあそこに魂を置いたままなのか。
ファットマンは自身の娘みたいな歳の”友人”の様子に、密やかに嘆息をこぼす。次いで、薄膜ディスプレイに映るジェガンモドキを睨む。
――八つ当たりとは思うが……恨むぞ、セレン。
2人が見つめるホンコンシティの戦場で、灰色の巨人と暗紅色の巨人が距離を詰めていく。両者が再び接敵するまで、あと僅か。
○
名高きビクトリアハーバーの北部。麗しき九龍の夜景はもはや見る影もない。
街は2機の巨人が撃ち合う熱光線とミサイルに凌辱され、刻々と蹂躙されていく。
電光の明かりが照らしていた夜空は、今やミサイルの爆炎と市街地の火災が照らしている。ネオン看板が飾られた通りを熱光線が駆け抜け、電磁気の余波にネオン管が爆ぜ、LEDが焼き切られる。巨人達の駆動にアスファルトが割れ、衝撃波に建物の窓ガラスやガラス壁が割れ砕け、水晶のように煌めきながら通りへ降り注ぐ。
流れ弾を浴びた高層ビルが火災を興し、蠟燭のように燃えている。ビームが市街内の緑地に着弾し、樹々を松明に変える。夜空を覆う黒煙が延焼の赤熱色を映し、赤く染まっている。
被弾の損壊と火事による支柱の熱損で崩落を始める高層建築物。膨大な瓦礫片と粉塵が土石流のように通りへ流れ込み、濃霧となって街区を満たす。
そんな戦場と化した町を、暗紅色のドム足ティエレンが煙と塵が作る濃霧をホバー走行で引き裂いていく。
100トンに及ぶ大重量を推進させる脚部の熱核ジェットエンジンのエネルギーは凄まじい。粉塵を吹き払い、道路沿いの建物を震わせ、窓ガラスやショーウィンドウを割り砕き、据付の甘い看板などを吹き飛ばす。
煤塗れになった体躯を疾走させるティエレン。その姿を市街南部の高層ビル屋上から捕捉し、灰色のジェガンモドキは左肩のミサイルポッドから2発のミサイルを発射。
打ち出されたミサイルは煤煙の満ちる夜空へほぼ垂直に
トップアタックモードで放たれた撃ちっぱなしミサイルの命中成否を無視し、灰色のジェガンモドキはブースターを焚いて屋上から飛び降りる。
一方、ティエレンは頭上から迫るミサイルをモノアイでぎょろりと一瞥し、背部ブースターから豪快に排気炎を噴出させ、交差点へ飛び込んで強引に急旋回。
両肩や両脚の端が曲がり角のビルに接触。壁面をガリガリと削り砕き、看板を撥ね飛ばす。直後、2発のミサイルが交差点と角の建物に飛び込み、爆発。火球が生じ、瓦礫片をまき散らして煤煙を立ち昇らせた。
ミサイルをかわしたティエレンはモノアイを忙しなく動かし、ジェガンモドキを捜索。光学系が林立する高層ビルの狭間向こうに灰色の機影を捕捉。素早く身を捻り込み、スケーターのように
4発のミサイルが煤煙の渦巻く夜空へ跳躍し、早期分裂。8発に増えたミサイル群が都市へ降り注ぐ。
「ミサイル着弾まで3秒」
セレンの感情のこもらぬ通告にスミオはジェガンモドキを疾駆させる。高層ビルの林の中だ。クイックブーストで横軸の回避運動は出来ない。オーバーブーストで駆け抜けるには道路の直線が短すぎる。
防御しかない。ジェガンモドキは足を止め、左腕の盾を上方に掲げて腰を落とす。
「弾着、今」
爆炎の華が8つ咲く。破砕される建物の屋上や壁面。穿たれる路面。衝撃波に天高く吹き飛ばされる看板。2発の子弾が盾に当たり、ジェガンモドキの体幹が大きく崩れる。が、堅牢な盾は破られることも壊されることもなく、機体を護り抜いた。
だが、一息つく暇など無い。
「高速熱源体が接近。左だ。通りの先に出てくるぞ」
通りの先、煤と塵に汚れた暗紅色の巨人が道沿いの建物に身を擦りながら姿を現し、両手で構えた大型ビームライフルを速射。
カァオッ! と特徴的な発砲音が市街地内に反響し、青白い熱光線が幾筋も通りを駆け抜けてくる。超高熱に焼かれた粉塵がバチバチと爆ぜる。
「退避しろ! 受けに回れば押し切られるぞっ!」
「指示出しはしないんじゃなかったのか?」
声を張るセレンへ応じつつ、スミオは盾を構えたまま背部ブースターと前面スラスターを吹かして後方へ路面追従飛行。幾筋も迫る青白い熱光線の直撃を避けつつ、後方飛行しながら、追跡してくるティエレンへ右手のビームライフルを撃つ。
巨人達のチェイス・ファイト。暴力の熱光線が通りを飛び交う。建物の壁面が焼き削がれ、路面が融解して沸騰爆発する。火花が蛍のように踊り、飛び散った超高熱粒子が赤熱色の雨が注ぐ。
ブース内に流れ続ける警報。メインディスプレイ上、ターゲットボックスに囲まれた単眼巨人から青白い死の光が幾条も放たれ、機体をかすめていく。
こちらが発射するビームの一発がティエレンを捉える。被弾衝撃に上体を仰け反らせるも立ち止まることすらせず、即座に体勢を立て直して銃撃を続けてきた。
欧亜混血の赤毛美女は澄まし顔の下で、強烈な恐怖感と猛烈な焦燥、重厚なプレッシャーに鮮烈なスリル、脳をシビレさせるほどの高揚と昂奮を覚えていた。同時に、この魂を焼くほど楽しい世界を、自らの操縦で味わえない現実を改めて思い知る。
アシンメトリーな前髪で覆い隠していない左紺眼が動き、飼猫にしようとしているファイターの背中を見つめる。この危機的状況に動揺や怯懦は感じられない。冷静かつ冷徹に操作し続け、回避と反撃を重ねながら離脱を図っている。
「後方、急カーブまで5秒」
セレンの言葉へ反応し、ジェガンモドキが後方飛行をやめて上昇へ以降。
「! 上に飛ぶな! 狙われる!」
セレンの警告がブース内に響く中、慣性が邪魔して斜めに飛んだため、急カーブ先の建物にバックパックがぶつかる。それでもスミオは機体の装甲で壁面を削り、排気炎で建物の内外を焼きながら強引に上昇させ、撃ち込まれるビームを振り切るように夜空へ飛び上がる。
しかし、まだロックオン警報は止まない。ティエレンからミサイルが放たれた。残弾を打ち切る全力斉射。8発のミサイルが夜空へ飛び、16発に分裂増加してジェガンモドキへ襲い掛かる。
「言わんこっちゃない! 下だっ! 対空射撃が来るっ!」
地上からビームライフルの青白い光線が幾条も迫る。オーバードブーストとクイックブーストの機先を制され、回避運動を大きく妨げられる。
ミサイルとビームが詰め将棋みたいな状況。
「4時方向下方へ捻り込め! 対空の射線を切れる!」
即応。スミオはセレンの指示通りに機体をロール運動させて4時方向へ急降下。ティエレンの射線は高層ビル群に塞がれ、対空射撃が絶える。
一方でミサイルの群れが急迫していた。もはやブーストを焚く暇もない。ヘッドバルカンの弾をばら撒き、ビームライフルを放つ。眼前で咲き乱れる爆炎の花々。然して、全てを落し尽くすには距離的猶予が足りず。
「クソッ!」スミオは盾を構えて直撃に備えた。
刹那―――
内臓を震わせるほどの轟音が操縦ブース内につんざき、メインディスプレイを爆発の閃光と炎熱の赤色が埋めつくす。
複数発のミサイルが次々と着弾し、灰色の巨人は再び市街内へ引きずり落とされていった。
暗紅色の単眼巨人はぎょろりとモノアイを蠢かせ、墜ちた灰色の巨人を追って戦火に犯される街を駆けていく。
○
ホログラムディスプレイに表示される各種データは芳しくない。
現在地は九龍地区西部。
ビームライフルは損壊。左肩のミサイルポッドは残弾2発。ヘッドバルカンは連射すれば半秒掛からず撃ち尽くすだろう。シールドの耐久値は40パーセントを切った。カラサワのビームはもう防げまい。残る武装はビームサーベルだけ。
機体は小破状態。各部スラスターは無事だが、盾で守り切れなかった部位はしっかりダメージが入っている。右肩のセンサーブレードも損傷し、捜索追尾性能も大きく落ちていた。
そして、相手はミサイルやビームライフルの直撃が致命傷にならないタフ極まる機体を操りながらも、機体頼みではなく詰め将棋のようにタクティクスを組んで戦う手練れ。
あの頑丈さを考えると、単にビームサーベルで切りつけても、装甲表面を削るだけになりかねない。
「やりようはある」
スミオの思考を読んだようなタイミングで、セレンが声を掛けてきた。
「機体主要部は内も外も相当に分厚い。この機体のサーベルで裂けるか怪しい。関節基部も同じだ。あの自重を支えるだけの補強がされているだろう。まず目を潰し、ブースターかスラスターのノズルからサーベルをぶち込め」
理には適っている。人間もモビルスーツも構造的に目を鍛えられない。ブースターやスラスターは構造的に装甲化出来ない。
だが、そんなことは相手も承知しているから、セレンの策を果たすことはかなり難しい。
セレンは薄く笑う。心底楽しそうに。
「やってみせろ、レイヴン……っ!」
スミオは肩越しに赤毛の混血美女を一瞥し、髑髏のマスクの中で小さく息を吐く。
ジェガンモドキの首を回し、街を窺う。
下町の雰囲気があった街はあちこちで火災が発生し、夜空を煤煙が覆っている。松明のように燃える高層ビル群。延焼を広げていく公園の緑地。崩落したオフィスビル。倒壊した雑居マンション。道路を塞ぐ瓦礫の山。
メゲたセンサーブレードが暗紅色のティエレンのホバー駆動音を捕捉した。メインディスプレイ上、煤煙とビル群の向こうにターゲットボックスが浮かぶ。サブディスプレイに表示したタウンマップの中で敵性反応が高速移動してくる。
「来るか」
スミオはぽつりと呟く。右手のライフルを捨て、腰からビームサーベルを抜く。腰を落としてオーバードブースト、スタンバイ。ジェネレーターが駆動する高周波音が操縦ブース内に響く。コンソールを操作し、最後のミサイル2発を延焼中の超高層ビルへダイレクトモードで照準固定。
「ティエレン、まもなく接敵。5、4、3、2、1」
セレンが怪訝そうに言葉を紡ぎ、
「コンタクトッ!」
チャンシャーワン・ロードの長い直線の突き当り、立体交差を踏み砕くように100トンの巨人が現れた。
スミオはオーバードブーストを解放。爆発的加速でロングストレートを路面追従飛行していく。衝撃波によって中央分離帯の植木がへし折れ、道路沿いの建物から看板やガラスが吹き飛ばされる。
超高速で突撃してくるジェガンモドキを、ティエレンが両手で構えるカラサワの速射で迎え撃つ。
ジェガンモドキは左肩からミサイルを発射。暗紅色の巨人ではなく道路沿いの燃え盛るビルに飛び込み、爆発。火災で脆くなっていたビルは2発のミサイルを浴び、積み木のように上部が崩落。土砂崩れのように道路へ注ぐ大量の瓦礫が、カラサワの強力なビームを妨げる。蒸散爆発する瓦礫塊。焼け散る粉塵や瓦礫片。
「あと約400メートル」
ミサイルポッドとセンサーブレードをパージし、身軽になってさらに加速するジェガンモドキが、爆炎と粉塵を突き抜けていく。
ティエレンは動じることなく迎撃射撃を続ける。距離が詰まれば、命中精度が上がる。
盾が貫かれ、左腕が二の腕から先をもぎ飛ばされた。だが、スラスターがある肩部は無事だ。機動に問題はない。
「あと200メートル」
スミオは瞬きも呼吸も忘れ、野戦機動に完全集中していた。オーバードブーストをカット。脚部スラスターを吹かして跳躍。右爪先がビームに削ぎ落される。
道路沿いのビル壁面を蹴りつけ、強引に上下左右へ機体を振り、熱光線を避けていく。
「あと50メートルッ!」
隻腕のジェガンモドキがビームサーベルを構え、ティエレンの上方から強襲する。
ティエレンは大型ライフルを投げ捨て、左腕に装着された機器からビームブレードを発振。仄蒼い月光のような光刃が煌めく。
双方が熱光の刃を振るう寸前。
ジェガンモドキのヘッドバルカンが弾薬を使い尽くす半秒の全力射撃を放った。モノアイ周りを猛襲する弾幕にティエレンの反応がわずかに鈍り、ビームブレードの太刀筋がブレた。
反応の後れと挙動のズレを逃すことなく、ジェガンモドキはビームブレードの一閃を飛び越えながら、サーベルを振り下ろす。
ティエレンのモノアイを焼き斬りつつ、ティエレンの背後に着地。ティエレンは急旋回しながらビームブレードを横薙ぎに振るう。も、ジェガンは両膝を着くように身を屈みこんでブレードを掻い潜り、左足膝裏から大きなふくらはぎ内へ深々とサーベルを突き刺し、熱核ジェットエンジンを爆発させる。
100トンの体躯を浮かすほどのエネルギーを生む機関の爆発は左足を完全に吹き飛ばし、重厚な体躯をうつ伏せに倒れ込ませた。
アスファルトを割り砕き、路面に埋まる暗紅色の巨人。ジェガンモドキはすかさずその背中を踏みつけて押さえ込み――装甲の無いブースターノズルへビームサーベルを勢いよく刺突し、ティエレンの体内を深々と抉り、焼き潰す。
メインジェネレーターの熱損とコクピットの破壊。パイロットの焼尽。
システムがそう判定し、バトルシステムが戦いの終了を宣言した。
『バトル・エンドッ!!』
○
呑みかけのシャーリーテンプルは氷が解け、グラスが汗だくになっていた。
気を利かせたマギーが新しい飲み物を注文し、卓にサラトガクーラーが置かれた。スミオはマスクをずらし、ライムジュース入りジンジャエールを口に運ぶ。火照った体に冷たい炭酸飲料が染み渡る。キリッとした辛口の爽快感が心地いい。
「グレイトSだったか? あんな強い奴、どこで見つけてきたんだ?」
ファットマンは上機嫌でクラブソーダを呷るセレンへ尋ねた。
「お前達も知ってる奴だ。マックスだよ」
セレンの回答にファットマンとマギーは目を瞬かせた。
「……マックス?」
マギーは訝りつつ、記憶のページをめくる。
マスター・オブ・アリーナにマックスというファイター兼ビルダーが確かにいた。
ガンプラバトル発祥前はミニチュア・ゲーム『ウォーハンマー40,000』のプレイヤーとしてその筋で知られた人物で、ガンプラバトルへ参入後はガンプラを『ウォーハンマー40,000』に登場する強兵『スペースマリーン』みたいな重装甲&大火力に改造していた。
なるほど。言われてみれば、たしかにグレイトSは彼の人を彷彿させた。が―――
「でも、マックスはあんなに髪の毛なかったし、あんなオシャレじゃなかったよ」
試合後にさっさと去っていったグレイトSは固太りした壮年男性。髪の毛はフサフサ。来ている服は世にいうイケオジが着てそうなシャレたもの。記憶の中のマックスは頭頂部からハゲに見舞われ、服装はどこか芋臭かった。
「髪はカツラ。服装の変化は結婚したからだ。名前を変えたのは奴の希望だよ。理由は知らん。今夜は3万で雇った」
セレンの解説にマギーとファットマンは呆気にとられる。
「結婚できたの、あの人……」「世界は驚きに満ちてるな……」
何とも失礼な驚きを露わにする2人を他所に、セレンはバトル後の疲労感を滲ませるスミオへ紺眼を向けた。
「レイブン、私と組むか決めろ」
「……」
スミオはセレンの目を真っ直ぐ見据えながら、思案する。
オペレーターとしてのセレン・ヘイズは優秀だった。だが、人間的に信用できるかはまだ分からない。ただ……戦闘の最中に届く冷たく鋭い声は不快じゃない。その指示が正しい限りは、従うこともやぶさかじゃない。
サラトガクーラーを再び口に運び、スミオは決断して口を開く。
「……条件がある。”俺”の目的は必要な金を稼ぐことだ。あんたの目的であるイベントとやらに付き合って危ない橋を渡る気はない。身体を壊したくないし、逮捕されるような事態はごめんだ。いざという時はあんたと手を切る」
「ふむ……」
セレンは冷たい目つきでスミオをしばし見つめ、煙草をくわえて火を点す。桜の香りがする紫煙が漂う。ゆっくりと一服してから、言葉を編む。
「こっちもお前を使い潰す気はない。お前がビビッて逃げ出すような事態は、私の能う範囲で避けると約束しよう」
棘のある言葉にスミオは眉根を寄せるが、言い返したりはしない。交渉を続ける。
「それともう一つ。こっちは学生だ。あんたの都合より学業の都合を優先させてもらうぞ。なんせ卒業しなきゃならないからな」
「遠足は休ませるな、か?」セレンは鼻で笑い「まあ、良いだろう。だが、金を受け取る以上は無理を通してもらう。それは受け入れろ」
「……分かった」
スミオの承諾を聞き、セレンは大きく頷き、微笑む。
「決まりだな、レイブン」
欧亜混血の繊細な麗貌に相応しい美しい笑顔。けれど、子供を食らう魔女のような怖さと凄みを宿した笑顔。
「お前はこれから私の
「……飼猫」
酷い言われようだ……
組んで失敗だったか、とスミオは早くも思い始めた。
スミオはフードとマスクの中でげんなり顔を作り、セレンは満足げに高々と紫煙を吐き出す。ファットマンがドラ娘ドラ息子の不品行を嘆くように鼻息をついたところへ、
「私から提案がある」
マギーが真剣な顔つきでスミオとセレンへ切り出した。
「レイヴンの使うガンプラは私に作らせてほしい」
Tips
セレン・ヘイズ。
オリキャラ。元ネタはACfaのオペレーター兼――、セレン・ヘイズ。
容姿、性格はほぼオリ設定化。
本作では元ガンプラバトル・ファイター。神経系を痛めた後遺症で現役を引退。
オリ主と組んで、来たるマスター・オブ・アリーナの後継イベント参加を企図している。
マギー
オリキャラ。元ネタはACVDのオペレーター兼――、マギー。
容姿、性格はオリ設定。
本作では元ガンプラバトル・ファイター。神経系を痛めた後遺症で現役を引退。現在はプロモデラー兼造形師として活動中。
原作だと左腕を失っていたが、本作では左足が不自由になっている。
ガンプラバトルに対して燻ぶった感情を抱いている模様。
ファットマン
オリキャラ。元ネタはACVDのオペレーター、ファットマン。
容姿、性格はオリ設定。
本作ではガンプラバトル界隈の最古参。役回りとしては、ビルドファイターズシリーズのラルさんに近いかもしれない。
いつまでもヤンチャなセレンや、過去に囚われている様子のマギーに、父性的心配を抱いている様子。
グレイトS/マックス
オリキャラ。元ネタはAC:MoAのアリーナランカー。
作者の勘違いでランカー名と機体名を取り違えた。
正確には、ランカー名:ヒルホエール、機体名グレイトS。
マックスは英語版のランカー名。
容姿その他はオリ設定。
アリサワ・スミオ
オリ主。一緒にバトルしてみた結果、セレンと組むことに。
『飼猫』呼びされて引いた。