ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
夏の終わり。温かな雨の注ぐ放課後。冷風機の稼働音が響くバトル部の部室。
バトル部部長のアリサワ・スミオと副部長シノダ・エリ、中等部部員のホシノ・フミナは部が保有するガンプラをせっせと整備していた。
今月中に催される文化祭にて、ガンプラバトル部は例年通りに校内限定開催日は生徒向けのガンプラバトル体験会、一般公開日は一般参加を受け入れる個人戦大会を催す予定だった。
体験会へ参加する生徒には部が保有するガンプラを使ってもらうわけだが、当然ながらOBOG達が残していった作品を使わせるわけにはいかない。これまで部員達が練習がてらに制作した『凡庸品』を用いる。この凡庸品の埃を落としたり、経年劣化などで消耗した関節部を交換したり直したり、塗装を塗り直したり破損部を修理したり。
「大会の招待枠は決まったんですか?」
ドムの手入れをしているフミナが問えば、ジェガンの埃を取っていたエリが答える。
「うん。顧問の先生を通して幾つか連絡を取ったところ、聖オデッサ女子学園と宮里学院が招待に応えてくれました」
「聖オデッサ。……まさか」
「サザキさんは来ると思うよ」
エリは柔らかく微笑むも、フミナはちょっと微妙な表情になった。
聖オデッサ女子学園のガンプラバトルチーム『北宋の壺』、リーダーを務めるサザキ・カオルコはフミナと同学年で、今年の地区予選準決勝で戦った際にフミナと壮絶な殴り合いを繰り広げた結果、完全にライバル認定された。
ついでに言っておくと、サザキ・カオルコの兄サザキ・ススムは有名なギャン使いで、ガンプラバトルの世界選手権ベスト16に入った実力者だったりする。
「大会の進展次第じゃ時間が余るかも。その時はホシノさんとサザキさんにエキシビジョンマッチをしてもらおうかな」
スミオがアッガイの折れた関節部を直しながら冗談を言えば。
「それなら、部長と宮里学院のスドウさんが戦う方が盛り上がると思いますけどー」
ジト目で切り返すフミナ。
今年度西東京予選の決勝で聖鳳学園ガンプラバトル部を下して優勝し、全国大会に出場した宮里学院。そのエース、スドウ・シュンスケ。
決勝戦の延長戦にてスミオと一対一で繰り広げた戦いは、西東京地区予選のベストバウトだった。
「というか、宮里学院が招待に応じてくれたのって、絶対に部長と対戦すること前提ですよ」
「確かにそんな気はするな」とスミオも頷く。
全国大会で宮里学院は鹿児島の強豪、我梅学院に一蹴された。チームエースを自負するスドウは思うところが大きいかろう。実力向上のために強い相手とのバトルを望んでいるはずだ。
「お邪魔するよ」
出入り口の方から大人の声が届き、作業スペースに口ひげを生やした中年男性が姿を見せた。
「ラルさん。いらっしゃい」「こんにちは、ラルさん」「こんにちはー」
バトル部の三人が親しみのこもった挨拶で男性を迎える。
来客は『機動戦士ガンダム』に登場する骨太なジオン軍人ランバ・ラルにそっくりな男で、聖鳳学園ガンプラバトル部の外部コーチで、遠征などの際に引率をしてくれている。ちなみに部員も顧問も本名を知らない。が、ガンプラバトル業界では相当に名と顔が知られている人物で、方々で『青い巨星』とか『大尉』とか呼ばれて最大限に敬意を払われていた。
「体験会用の手入れは進んでいるようだね」
ラルさんは卓上に並ぶガンプラ達を見下ろしながら、手に持っていた紙袋を卓に置き、中から茶菓子を出した。
「差し入れだ。英気を養ってくれ」
「ありがとうございます、ラルさん。エリ、ホシノさん。お茶にしよう」
スミオの言葉にエリが腰を上げ、棚から人数分のマグカップを取り出し、飲み物を用意し始める。
「コーヒーで良いですか?」
「ああ。ありがとう」
ラルさんはエリへ礼を言い、インスタントの珈琲を受け取る。
茶菓子を摘まみながら、大人が交じる若者達の雑談。話題はもちろんガンプラ。
「夏のコンテストで聖鳳学園の子が優勝しただろう? それで周りから私の教え子と誤解されてね。返答に困ったよ」
ラルさんが珈琲片手に苦笑い。
ガンプラの大会はバトルに限らない。ビルダーが制作技術を競うコンテストも多い。今年のアースティック・ガンプラ・コンテストの中高生の部を優勝したコウサカ・ユウマは聖鳳学園の一年だったが、バトル部ではなくプラモデル部だ。
このため、スミオはプラモデル部のミヤガ部長にさんざんマウントを取られた。
「……ユウくん」
ユウマと歳違いの幼馴染であるフミナが目を伏せる。長いまつ毛が頬に影を落とす。
幼き日、共にガンプラバトルでチームを組もうと約束したのに……
ちらりと横目でフミナの様子を窺い、スミオは話の向きを変える。
「今年の夏はラルさんに随分とお世話になりました。改めて、ありがとうございました」
「いやいや。気にせんでくれ。若者の活躍に協力出来て私も楽しかった」
ラルさんは鷹揚に感謝を受け取る。大人の余裕。
今年の夏。ガンプラバトル部はフミナたっての希望で『武者修行』が実行された。
ガンプラの聖地静岡で全日本選手権が催されている裏で、プロ・アマ参加自由のオープン大会に出場したり、ショップやイベント会社主催のミニ大会へ参加したり。バトルばかりではなく、コンテストやビルダー向けミーティングにも臨んだ。
これらの『武者修行』では少なからず、ラルさんの横車で参加できたものがある。スミオ達にしてみれば、いくらお礼を言っても言い足りない。
「一般公開日の大会の方は準備が進んでいるのかい?」
ラルさんの尋ねにエリとフミナが答えた。
「招待枠は埋まりましたよ。当日手伝いに来て下さるOBOGの方も決まりました」
「宮里学院と聖オデッサの選手が参加することになってます」
「ほう。全国大会出場選手が来るとなれば、盛り上がりそうだ」
うんうんと楽しみそうに頷き、ラルさんはダンディな微笑を浮かべた。
○
聖鳳学園の文化祭は本来クラス参加が主体である。
スミオのクラスはぬいぐるみ喫茶。生徒が自宅にあるぬいぐるみを持ち込んだり、自作したり。でもって給仕係はちょっと可愛い感じのエプロンを付ける。
本来はメイド喫茶になる予定だったのだけれど、予算の都合でメイド衣装を揃えられない/自作は厳しいという事情から次点のぬいぐるみ喫茶になった。
「カミキとフナキのフレンチ・メイド姿が見たかった……」とうなだれる男子。
スミオのクラスにはなんと現役女子高生モデルが二人もいる。聖鳳学園のアイドルと謳われる超絶美少女カミキ・ミライと、ミライの親友であるフナキ・サトミ。聖鳳学園全男子達の憧れの的。同性の女子達が嫉妬を忘れてシャッポを脱ぐほどの美少女達だ。
「フレンチは下品すぎる。アキバのコンカフェ風の方がエロい」と真面目顔で語る男子。
「性欲に魂を引かれた俗物共め。メイドと言えば、ヴィクトリアン・メイド一択だろうが」と真顔でキレる男子。
頭の悪いやり取りを聞きつつ、スミオは思う。今度、エリにメイド衣装着てもらおうかな……
カノジョ持ちの余裕。
それはさておき。『日頃ガンプラを弄ってるんだから手先は起用だろ』と言われ、スミオは手芸部所属の者や編み物が出来る者達と共に、ぬいぐるみ喫茶の展示用ぬいぐるみと販売用あみぐるみを作らされている。
「オメー、アタシより上手ェじゃん」パンクな装いの手芸部女子ミウラがライバルを見るような目で見てくる。
「いや、ヨシダの方が全然上手い。というか、本当に商品レベルだぞ、あれ」
スミオの言葉に皆の目が向いた先、ゴリゴリマッチョなレスリング部ヨシダが編み棒をテキパキと動かし、プリティ&キュートなあみぐるみを作り上げている。
「そのナリで編み物得意とか意外性ありすぎだろ。P4のカンジかオメー」とパンク・ミウラ。
「P4のカンジ? とやらは知らんが」作業の手を止めることなく、マッチョマン・ヨシダは嘯く「年の離れた妹がこういうの好きでな。よく作ってやっているんだ」
「オメー、良いお兄ちゃんかよ」パンク・ミウラが呆れ顔で賛嘆をこぼす。
とそこへ、
「皆、御苦労様」
カミキ・ミライとフナキ・サトミが現れた。
清楚な雰囲気を漂わせ、穏和で世話焼き気質。『美の完成形』と評される容貌の持ち主でモデル業をしている。家事全般が得意という家庭的な面に加えて、次元覇王流拳法なる武術を修めている意外性を備え、しかも恋愛に疎い。
斯くの如く男子の妄想的理想女性が現実になったような存在であるから、一般男子は当然として女子と見れば盛るようなチャラ男共ですら気後れして粉を掛けない。それほどの美女である。
隣のフナキ・サトミもプロダクションに所属して女子高生モデルを務めるほどの美貌を備えている。のだけれど、ミライが桁外れの美女だから相対的に『普通』っぽく見えるというある種の悲劇に見舞われている。まぁ本人は気にしてない模様。
聖鳳学園を代表する美少女2人は焼き菓子――パウンドケーキとクッキーを盛った紙皿を持っていた。
「喫茶店で出すお菓子を試作したから、食べてみてね」清純に微笑むミライ。
「食べるだけじゃなくて感想も教えてよー」悪戯っぽく微笑むサトミ。
焼き菓子の皿の一つを制作班の手元に置き、2人の美少女は別の班の許へ向かう。
「……何食って育てば、あんな美人になんだろーなー」
遠い目をしたパンク・ミウラの呟きに制作班の女子達が同意の首肯をしていた。
スミオはまだ温かいクッキーを一つ手に取り、齧る。
「ん。カリカリサクサクで美味い」
「パウンドケーキはもう一工夫ほしいな」と評論家風に語る筋肉ヨシダ。
「なんだオメー、まさか菓子作りまで出来るとか言わねェだろうな?」訝るパンキー・ミウラ。
「年の離れた妹へたまに作ってやっているだけだ」出来るに決まっているだろうと言いたげなマッスル・ヨシダ。
「オメー、最高のお兄ちゃんかよ」パンク・ミウラが呆れ顔で称賛を禁じ得ない。
「ミウラさんも菓子作りできるだろ?」とスミオが水を向ければ。
「オメー、女子が皆料理できっと思うなよ?」
ミウラの切り返しに周囲の女子達がしみじみと頷いた。
こんな調子でクラス内制手工業によるぬいぐるみとあみぐるみの量産が進められ、下校時刻を迎えて本日の作業は終了。
スミオがエリと合流すべく教室を出かけたところで、
「アリサワ。ちょっといい?」
ショートヘア美少女フナキ・サトミに呼び止められた。
「人を待たせてるから、手短に済むなら」とスミオが応じる。
「ガンプラバトル部って体験会を開くんだよね? それってガンプラを持ってなくても良いの?」
ガンプラに興味があるタイプには見えないが。とスミオは意外なものを覚えつつ、サトミの質問へバトル部部長として答えた。
「体験会はこちらで用意したガンプラを使ってもらうから、手ぶらで来てもらっていいよ」
「そうなんだ。分かった。教えてくれてありがとね」
手を振って去っていくサトミ。
スミオはサトミの接触を特に深く受け止めず、教室を出た。
○
じゅぽじゅぽとスミオの私室に淫らな水音が響く。
半袖ブラウス以外脱いだエリがスミオの股間に顔を埋め、その陰茎に舌を絡ませるようにしゃぶっていた。
スー君の家に寄っていきたい、とエリが告げたのが10分前。玄関を開けて中へ入った途端にエリが抱き着き、スミオの股間に手を添えたのが8分前。部屋に上がったのが6分前。
そして今。
スミオは股間の快感を堪能しつつ、太縁眼鏡の奥で二重アーモンド眼を潤ませているエリの綺麗な尻を撫で、時折愛液を滴らせる淫裂やヒクつく菊座を指先で弄ぶ。その度、陰茎をしゃぶるエリの口から喘ぎが漏れ、きゃしゃな体がビクンと震える。
「エリ、そろそろ
求めに応じ、エリがフェラチオを止めて顔を上げた。濡れた唇から垂れる唾液がつぅと糸を引く。
エリはコンドームのパッケージを破き、ねっとりとした手つきでスミオの濡れた逸物をゴムを被せ、妖しく微笑む。
「私が挿れてあげますね」
座位のスミオと向き合うように中腰になり、エリはスミオの陰茎を掴んで腰を落とし、自らの中へ埋めていく。
「ん……ぁあ」零れる喘ぎ声。エリの細面が悦と快に歪む。
スミオのものを根元までくわえこみ、先端が自身の最奥に当たった瞬間、電流が走ったようにエリの身体がびくんと強く震えた。軽くイき、エリが蕩け顔でスミオを見つめる。
「スー君の、凄く硬くて熱い。気持ちいい……っ!」
「ぼくもエリの中が凄く気持ちいいよ」
はだけた半袖ブラウスの間から溢れるエリの乳房を揉みながら、スミオは艶やかな髪を振り乱すエリの首元を舌を這わせた。きめ細やかな肌を味わってから、エリと唇を重ねる。
互いの舌が絡み合い、粘ついた音と共に唾液が混ざり合う。エリの腰が早くもうねるように動き始める。
「あっ! あぁんっ! はぅううっ……いいっ! いいよ、スー君のおちんちんっ! 気持ちいいぉっ!」
たちまち腰の動きを大きく強くするエリに、スミオもエリの動きに合わせて突き上げ始める。
「すきっ! すーくん、だいすきっ!」
エリはスミオにしがみついて、より強い快感を求めるように一層激しく腰を振り始める。乳房が揺れ、白いブラウスの汗染みが広がり、太縁眼鏡がずり下がる。
陰茎から伝わるエリの淫猥な熱量に駆り立てられ、スミオもまたより荒々しくエリを求めだす。
ぎしぎしと悲鳴を上げるベッド。互いの愛肉がぶつかり、濡れた淫音が部屋に響き。獣欲のままに貪り合う。
スミオがエリをベッドに倒し、さらに激しく深く打ち込もうとした矢先。
サイドボードの上でスマートフォンが鳴いた。
無視しようとしたが、着信のメロディが機動戦士Zガンダムの『モビルスーツ戦』では無視できない。
疎ましげに舌打ちし、スミオはエリとつながったまま、スマートフォンを取ってメッセージアプリを立ち上げた。
新着メッセージ1件。
発信者の名前は――
『オールマインド』
Tips
ラルさん
ビルドファイターズ/トライの名物キャラ。原作主人公達のサポート役だったり、バトルの解説役を勤めたりと芸達者。
中の人は初代ガンダムでランバ・ラルを演じていたが、トライ放映時に体調を崩して声優が交代した。
永遠の35歳。
カミキ・ミライ
原作のサブヒロイン。原作主人公カミキ・セカイのお姉さん。現役女子高生モデル。
作中では読モと紹介されているが、芸能事務所所属なので、厳密には学生兼業モデル/タレントである。
フナキ・サトミ
原作のネームドモブ。ミライの親友で同じ事務所に所属する女子高生モデル。
原作ではストーリーにまったく絡まないが、OVAでは多少出番があった。
ミウラ、ヨシダ
本作のモブキャラ。前者は手芸部のパンクガール、後者はレスリング部のマッチョマン。
オールマインド
詳細は次回