ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
巨大宇宙要塞を背に、異形の大怪獣が漆黒の無重力空間を征く。
その姿は九つ頭に二対の巨翼、一つの巨体と長尾。
アミューズメント店『ブルーシア』が誇る宇宙大怪獣ヴェイガンギア・ヒュドラ。
八つの頭から吐き出される大出力ビーム。二対の巨翼から発射されるおびただしい数のミサイル。巨腕から繰り出される曲折可能なビーム。さらに巨躯から繰り出される小型自律兵器群のオールレンジ攻撃。
これほどの大火力をばら撒いているのに、大怪獣はプラフスキー粒子不足に陥る様子を欠片も見せない。
ぶっとい巨躯に設けられた高加給圧ジェネレーターがステージ上のプラフスキー粒子を吸引し、攻撃でエネルギーを使う端から体躯内へエネルギーを補充し続けているのだ。
巨腕から繰り出される曲折ビーム『ブラックフェザー』を避けきれず両断され、爆散する瀟洒なZガンダム。
八頭から放たれる大出力ビーム『デルタゲイザー』の火網に捉えられ、吹き飛ばされる派手な改造のガンダム・グシオン。
オールレンジ攻撃とミサイルの大弾幕に押し潰され、木っ端微塵に砕かれるオーバードフラッグ。
開戦劈頭に戦力の三割が失われる中、
『ビームなど効かぬわっ! 皆の衆、我に続けェイっ!!』
Iフィールドを搭載した4腕仕様の改造ノイエ・ジールがブラックフェザーとデルタゲイザーのビームを弾きながら突貫していく。
『おおっ! 突撃じゃあっ!』『ぶった切ってやるぜメーンッ!』『花火の中へダイブですわよっ!』
金ぴかの派手なザクⅢとカリカチュア的にゴテゴテとしたガンダム・デスサイズヘル、寄り女性的に加工されたピンクのGアルケインがノイエ・ジールに続く。
『どうする? 続くか?』
スミオの赤黒ジェガンがレールガンを担ぐフミナへ質す。
フミナは多頭の大怪獣と、多腕のモビルアーマーに続く統一性のない姿の戦士達を窺い、
「―――征きます。でも、彼らに続きません。側面へ回ります!」
決断をスミオへ伝え、エリに指示を出す。
「エリ先輩は電子戦を継続っ! ヴェイガンギアの攻撃精度を狂わせてくださいっ!」
『分かりました。ジャミングを展開します。流れ弾と同士討ちに気をつけて』
「了解ですっ!」
フミナは愛機のブースターを猛々しく焚き、翔る。赤黒のジェガンがその黄色と白で彩られた背に続く。
4腕の改造ノイエ・ジールが艦砲射撃さながらのビーム砲火をIフィールドで掻き分けて突貫。返礼とばかりに腕部内蔵ビーム砲と腹部の拡散メガ粒子砲を発射。
巨獣同士が大火力で殴り合う中、ノイエ・ジールの背後からモビルスーツ達が飛び出していく。
『今だ、距離を詰めろっ!』『ヒャッハーッ! 斬り込みだーっ!』『華麗にぶっ飛ばしてやりますわーっ!』
金ぴかザクⅢと中二病デスサイズヘル、女体化アルケインが三方へ散開しながら、改造ノイエ・ジールとビーム砲で殴り合うヴェイガンギア・ヒュドラへ急迫。手持ちの火器をボンガボンガと撃ち込んでいく。
圧倒的に火力で優越した相手と射撃戦など自殺行為。古来よりデカブツ討伐はインファイト上等だ。巨体の懐に飛び込んでチクチクザクザクやるしかない。
もっとも、そんなことは大怪獣だって承知済み。
巨大な体躯に似合いの分厚い装甲は豆鉄砲では塗膜を焦がすことしかできないし、多少の傷は自己修復能力で『ツバつけときゃ治る』だ。それに、四枚の翼に設けられたウェポンベイからフェザーミサイルの群れが放たれ、周囲に展開していた小型自律機シド・スレイヴが近接防御砲火を展開する。
『ぐぉおおおっ!?』『ヒャッ――はぁばあああああ!?』
金ぴかザクⅢが大慌てで逃げ惑い、中二病デスサイズヘルが火網に引っ掛かってガスガスと削られ爆発四散。
『いやぁああああっ! おやめになっておやめになって、おやめ、やめろっつってんだろうがよっ! 開示請求すンぞゴルァッ!!』
女体化アルケインが数機のシド・スレイヴに追い回されながら怒鳴った。
刹那。
ミサイル群の追尾能力が急激に低下し、シド・スレイヴの動きが鈍くなった。ヒュドラ自身のビーム攻撃も狙いが甘くなる。
『な、なんだぁ?』金ぴかザクⅢが抜けた声をこぼした直後、漆黒の宇宙空間を真っ赤な光が走り、ヒュドラの頭を一つ見事に吹き飛ばす。観戦者達の『おおおっ!』と歓声がフロアに響く。
『ふぁっ!?』『何事ですのぉっ!?』
戸惑うザクⅢとアルケイン。そこへ、右翼側面から二機のモビルスーツが光跡を曳きながらヒュドラを殴りつける。
F90・メタルドレス改のレールガンが再び電光を放ち、続く赤黒ジェガンが右手のビームライフルと左手のマシンガンに背の左右ミサイルポッドから熱光線と鉄と炸薬を宇宙怪獣に叩きつけた。
然してジェガンの全力射撃は分厚い装甲に防がれて致命打にならない。だが、大口径レールガンの強力な一撃は四枚ある翼の一つを見事に穿ち、内部のミサイルが誘爆し吹っ飛んだ。本当に怪獣なら『ぎゃおんっ!』と悲鳴を上げるところだけれど、ヴェイガンギア・ヒュドラは無言で大きく仰け反る。
『よぉやったっ!!』
改造ノイエ・ジールは巨大な肩と腰のバインダーからサブアーム展開し、それぞれのサブアームから大出力ビームサーベルを発振。まるで命を刈り取るために生まれたような姿となり、ヒュドラへ突撃する。
『三枚に卸して刺身にしてくれるわぁっ!!』
飛び掛かってくる『ジオンの精神の顕現』に対し、頭と翼を一つずつ失ったヴェイガンの最終兵器はその長大な尾を鋭く振るう。
ずんばらりん。
『なん……だと……』
ノイエ・ジールが腰の辺りで真っ二つになった。ワキワキと宙を掻く多腕。無重力空間に浮かぶ円筒状の胴体や腰回りのバインダーブースター。
その様を遠距離から見ていたエリは思う。切り分けられた甲殻類みたい。
戦場の中心から離れた場所に控えるエリは暢気な感想を抱けたが、激戦のど真ん中にいるフミナ達にしてみれば、真っ二つにされたノイエ・ジールの様を見て笑っていられない。
両断されたノイエ・ジールが大爆発し、高熱圧衝撃波に呑まれて体勢を崩した金ぴかザクⅢがブラックフェザーに文字通り三枚に卸され、悲鳴を上げることも出来ずにサヨナラ。
『ひっ!?』
アルケインが咄嗟に退避を図るも、長尾にどすりと身体を貫かれて捕らわれ、
『まってまってまっ、テメェまてって言ってんだろっ! 炎上させんぞテメェッ!』
抗議もむなしく巨腕にボディを引きちぎられ、どっかーん。
瞬く間に聖鳳学園ガンプラバトル部以外の面子が宇宙の藻屑と化す。
巨大怪獣は傲然と残る羽虫達へ向き直った。損傷した頭と翼の創傷部にシド・スレイヴが群がり、修理を始めている。
『残るはぼく達だけか』
スミオが他人事のように言い放ち、フミナへ問い質す。
『”リーダー”。どう戦う?』
ここで私に振るのっ!? フミナは端正な細面を引きつらせつつも、ごくりと生唾を呑み込んで決断した。
「……私のレールガンは奴の装甲も貫けます。だから、部長とエリ先輩で私が攻撃をブチ当てられるようにしてください」
『了解した。ぼくは近中距離へ飛び込んで奴のヘイトを買いながら、シド・スレイヴを減らす。エリ。アウトレンジからぼくが討ち漏らしたシド・スレイヴを始末してくれ』
『わかりました。電子戦は継続しますが、システムインタラプトは難しいようです。ジャミング対策が取られるまでが勝負だと思ってください』
フミナ達が簡単な打ち合わせを済ませた直後。ヴェイガンギア・ヒュドラが小休止は終いとでも言うように、その圧倒的な大火力で宇宙の闇を引き裂いた。
○
『ブルーシア』のバトルユニット上で戦う赤黒のジェガンは多頭巨竜ヴェイガンギア・ヒュドラの中近距離に留まり、戦艦の主砲並みに強力な大出力ビームの濃密な砲火に身を焼かれ、予測困難な軌道で迫る曲折可能ビームの苛烈な火網に身を焦がされ、大量のミサイル弾幕とシド・スレイヴによる全方位射撃に身を削られ、それでもなおギリギリで致命傷を避けている。
斯くも全身を細かく損傷しながら、ヒュドラに牽制射撃を与えてヘイトを稼ぎ、挙句は周辺に展開するシド・スレイヴを撃って数を減らし、仲間のF90に攻撃機会を設けていた。
「スゲェっ!」「あのファイター、機体は違うけどアジアカップ予選で三位に入った奴だろ?」「カッケー……」
多くの観客から感嘆や賛嘆が漏れる。
より観察力の高い者やガンプラバトルに造詣が深い者は気づく。
おかしい、と。
確かに卓越した操縦技能だけれど、あそこまで回避し続けられるものか?
ガンプラバトルは弾幕シューティングじゃない。ちんたらと画面を埋めていく弾幕なら避けられるかもしれないが、音の何倍も速く迫る
これに視界や認識の外から迫るオールレンジ攻撃が加わったなら、OO系機体のトランザム発動による超高速機動、サイコミュ系機体のサイコフィールドによるオカルトチックなバリア展開などを使わない限り、回避不可能に等しい。例外は作劇上の演出として回避成功が約束された場合だけだろう。
そして、注意深く戦闘を観察している者達は答えを見つける。
回避運動で観客の耳目を集める赤黒ジェガン。強烈なレールガンをぶっ放す黄色いF90。この二機の影に隠れるように戦闘の外郭を翔る航空機化されたデルタプラスに。
その胴体下に装着されたコバンザメみたいな装備を見て、彼らは気づく。
ECMだ。電子戦でブルーシアの大怪獣の攻撃精度を大きく妨げているんだ。
鋭い観客達が自身の発見に口端を上げた刹那。
ずどんっ!!
黄色いF90の放った一撃が多頭巨竜の胴体をぶち抜いた。太い巨躯に生じた貫通孔から真っ赤な爆炎が吹き出す。
大当たり。怪獣映画ならぎゃおーんと断末魔が上がりそうな光景。観客達が歓声を上げ、とどめとばかりにF90が更なる一撃を叩き込む。
どがん! と再び巨躯のどてっぱらに貫通孔が生じた。出血するように爆炎が噴出する。
しかし、死なない。
手負いの巨獣は多頭と両腕からビーム攻撃を繰り出し続け、三枚の翼からミサイルを放ち続け、生き残っているシド・スレイヴがビームを吐き続ける。さらには自己修復機能が腹の大穴を早くも塞ぎ始めている。
信じ難い程のタフネス。圧倒的生残能力。
多頭巨竜の猛弾幕が戦場外郭を飛ぶデータプラスを捉えた。機体左部を消し飛ばされたロービジカラーのデータプラスが小さく爆発して跳ね上がり、直後に爆散した。
デルタプラスが撃墜された途端、ヒュドラの攻撃が精度を取り戻し、ジェガンの被弾が加速度的に増加。F90も被弾し始め、サブアームで展開する大盾がみるみる焼き削られていく。
「押し切られるぞ!」「ここまでかっ!?」
観客達の上げた悲鳴に背を押されたのか、傷だらけの赤黒ジェガンが勝負に出る。左手の機関銃を捨て、空になった背部のミサイルポッドをパージ。左腕のビームサーベルを発振。猛火力の弾幕へ飛び込む。
黄色いF90がフラッシュミサイルで援護。大閃光に紛れた赤黒の影が変則的なバレルロールで大弾幕を掻い潜る、も、死角から放たれたシド・スレイヴの細い熱光線が右肩にヒット。姿勢制御が崩れた。そこへ重ねるようにノイエ・ジールを両断した長尾が一閃。もぎ取られるリーゼント風の頭部センサー。切り飛ばされる左腕。ごっそりと削がれる左脛。千切り飛ばされる左爪先。
ビームサーベルが失われたが、赤黒ジェガンは突撃を続ける。損壊した右腕右脚から火花と黒煙を曳きながら、巨腕の両手から振るわれるブラックフェザーを、紙一重で飛び越えて。
ヒュドラへ肉薄し、右手に握るビームライフルの銃口を胴体貫通孔へ突き立てるように捻じ込み、引き金を引く。苦悶するように身を捩り、ジェガンを振り払おうと暴れ狂うヒュドラ。F90がそこへレールガンの砲弾を叩き込み、頭部や翼、巨腕を破壊する。
「ぅおおおおっ!!」「いっけーっ!!」「がんばれーっ!!」
あまりにも熱い展開に昂奮の喝采を上げる観客達。
発狂したかのように暴れる巨竜から赤黒ジェガンが振り払われ、残っていた5頭から零距離デルタゲイザーをぶち込まれる。バラバラに千切り飛ばされる赤黒ジェガン。
ああああっ! と観客達が悲嘆を上げる中、瀕死まで追い詰められた大怪獣は残る力を絞り出すように、最後の敵であるF90へ今持てる全火力を叩き込む。
デルタゲイザーとブラックフェザーによる怒涛の攻撃に大盾が融解爆発。爆煙に包まれたF90へミサイルの大群がピラニアの如く襲い掛かり、黄色い機体が再び爆炎に包まれた。
誰もが終わったと思った。だが、バトル終了宣言は出ない。
F90は生き延びていた。
関節可動域が許す限界まで体躯を屈め、守り切った長砲身レールガンを手首から先を失った左腕に加え、左膝で支えて構えている。
長砲身の銃を構える爆炎に焼かれ、満身創痍のF90。然して割れ砕けたアイバイザーの奥で、ツインアイが闘志の光に輝き煌めく。
薬指と小指を失くした右手が亀裂だらけの人差し指で、引き金を絞り込むように引いた。
レールガンの砲口から極超音速ペレットが飛翔する。漆黒の闇を駆け抜け、太い胴体から炎と爆煙を垂れ流す多頭巨竜の胸部へその身を叩きつけた。
赤熱色の極超音速弾はその莫大な運動エネルギーを以って、巨竜の最も護りの厚い装甲区画を貫徹。熱エネルギーを伴う質量弾がシステム設定上の絶対的急所であるコクピットを蹂躙し尽くす。
唯一双眼を有する頭部が憎々しげにF90を睨みながら、その目に宿す赤色の光を失う。
『バトルエンドッ!!』
終了宣言と共に、観客が大喝采を上げ、宇宙海賊おじさんが『ブラボーッ!!』と両手を挙げて称賛の言葉を送った。
○
フミナは待機所のベンチに腰かけると、ブラウスの襟元を緩め、ぱたぱたと手を振って風邪を送り、バトルの昂奮と高揚に火照った身体を冷ます。心地良い疲労感は達成感と充実感を伴っていた。
絶体絶命の中で必殺の一撃を決めた手応えが鮮やかに残っていて、エンドルフィンやアドレナリンなどの脳汁がどばどば出た感覚の余韻が、フミナを再び昂奮させる。
最高に気持ち良かった……っ!
両眼を閉じ、成功体験の快感を反芻していると、ぴとっと頬に冷たいものが触れ、
「ひゃんっ!?」
思わず可愛い悲鳴が漏れた。
驚いて目を開けたフミナへ、スポドリのペットボトルを手にしたエリが悪戯っぽく微笑む。
「驚きました?」
「そりゃ驚きますよ!」
抗議するフミナにテヘペロを返すエリ。隣でスミオがからりと笑う。
受け取ったスポドリの蓋を開け、フミナは冷たい清涼飲料水を味わう。火照る身体と昂奮の余韻が抜けぬ心に冷えたスポドリが良く沁みる。
勝利の味。成功の味わい。
フミナは口元からペットボトルを下げ、スミオとエリを真っ直ぐ見つめ、告げる。
「部長、エリ先輩。私……やれました」
「お見事でした。特に最後の猛弾幕を耐え抜いたこと。本当に素晴らしかったです。あれはホシノさんの制作技術が勝利を掴み取ったんですよ」
エリは頷いてフミナの手を取って褒め讃え、スミオはフミナの肩をポンと軽く叩いた。
「ヴェイガンギアを仕留めた時の君は、間違いなくエースだったよ。完璧な一撃だった」
ビルダーとして尊敬する先輩とファイターとして尊敬する部長から絶賛され、フミナは思わず目頭が熱くなる。
「……先輩達がやられた時はもうダメかもって思いました。でも、エリ先輩も部長もリタイヤする時、後を頼むって言ってくれたから、頑張れました」
以前までのフミナなら、エリとスミオがやられた時点で破れかぶれの突撃を選んだかもしれない。リリウム・ウォルコットに意地の捨て身攻撃を容易く返り討ちにされた経験が無かったら、大盾を破壊された時やミサイル弾幕を食らう時、レールガンを壊されないよう守り抜く選択を取れなかったかもしれない。
でも、今回はやり遂げられた。
エリは撃墜される時に『後は頼みました。御武運を』と遺した。
スミオは撃破される時に『やってみせろ、エース』と発破を遺した。
2人の信頼に奮い立ち、期待へ応えられた。フミナはそのことが何よりも誇らしく、嬉しい。
このままだと泣いちゃいそうだった。フミナは落ち着くために再び冷たいスポドリを呷り、ゆっくりと息を吐く。
と。スミオのスマートフォンが初代ガンダムの名曲『窮地に立つガンダム』を奏でた。
「電話だ。ちょっと外すね」
スミオは凛々しい顔を強張らせつつ、不穏な曲を奏でるスマートフォンを手にトイレの方へ歩み去っていく。
入れ替わるように店長の宇宙海賊おじさんがやってきた。
宇宙海賊おじさんはフミナへにかっと邪気の無い笑みを向ける。
「見事な戦いぶりだったぞ、お嬢さん! 少年はこの場にいないようだが……連携も大変に素晴らしかった! ラル大尉め、教え子に恵まれたな!! 羨ましい限りだ!!」
がっはっはっと豪快に笑う宇宙海賊おじさんは懐からチケットを取り出し、フミナへ贈呈した。
「最後まで生き残り、当店自慢のヴェイガンギア・ヒュドラを討ち果たしたお嬢さんには当店の1ゲーム無料券をプレゼントだっ! 君たちのようなファイターはいつでも歓迎する! また遊びに来てくれたまえ!!」
シーユーアゲイン! とダブルフィンガーをピッと振るい、宇宙海賊おじさんは受付の奥へ戻っていく。
その背を見送りながら、フミナは呟く。
「キャラが濃い……」
「楽しんで仕事をしてらっしゃいますね」
エリがくすくすと上品な微苦笑をこぼしていると、スミオが戻ってくる。
「楽しそうだね。何かあった?」
「店長さんから1ゲーム無料券を貰いました」
フミナは贈呈された無料券をスミオに見せる。
「ああ。そういえばヴェイガンギアを倒せば貰えるって話だったな」
納得して頷き、スミオはフッと苦笑いをこぼした。
「あのバケモノを倒して手に入る報酬が、1ゲーム無料じゃ割に合わないな」
「たしかに」
フミナは同意して笑い、天井の照明へ透かすように無料チケットを掲げ持つ。
「でも、私はこれが手に入ったことが凄く嬉しいです」
Tips
作中で触れられなかった設定。
ヴェイガンギア・ヒュドラ。
アミューズメント店『ブルーシア』の名物オリジナル・ガンプラ。飲食店の大食いチャレンジチックな挑戦イベントを催している。討伐に成功した方には1ゲーム無料券をプレゼント。ぶっちゃけ報酬が釣り合ってない。
金ぴかザクⅢ
アミューズメント店『ブルーシア』の常連客。美術造形系の専門学校生。メッキ塗装技術を習得したので、試しにザクⅢを金ぴかにした人。
四腕の改造ノイエ・ジール
アミューズメント店『ブルーシア』の常連客。飲食店バイトチーフ。ナイトシフト前にチャレンジイベントへ参加するのが最近のマイブーム。
中二病なガンダムデスサイズヘル。
アミューズメント店『ブルーシア』だけでなく近隣店舗も巡っているガンプラ高校生。学校に模型部やガンプラバトル部がないため、独りでショップへ訪れている。
女体化Gアルケイン
アミューズメント店『ブルーシア』だけでなく近隣店舗も巡っている自称Vtuber。主にガンダムげーやガンプラ制作を配信している。最高同時接続は100人未満。